第7話 瀕死の妖怪『土蜘蛛』を救え!ヒーラー覚醒と情報網の完成──そして明かされる集団襲撃の真実!
初バトルでLv.10ゴブリンを討伐し、後処理を完璧に終えた俺たちは、再び木の陰に身を寄せて息を整えていた。
「よし……! 戦闘も無事終わったし、みんなのステータスを確認してみよう!」
(ヒロト様、申し訳ありません……。私はレベルアップしておりませんわ)
右腕に巻き付いたハクが、少し悔しそうにマリンブルーの瞳を伏せた。
(ハクさんのレベルは最初から30だもんね。システムメッセージにもハクさんの名前は出なかったし、理解してるよ。ごめんね)
(うぅ……もっと強い魔物を倒して、早くヒロト様のお役に立ちたいです……!)
(焦りは禁物だよ。いきなり高レベルの魔物と戦うのは危険すぎるからね。少しずつ着実に強くなっていこう)
俺は心の中で【眷属共有】を発動させ、みんなのステータス画面を一括で展開した。
スキルレベルの向上と、新たな変化に目を通していく。
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【名前】スラオ
【種族】スライム
【レベル】3(Up!)
【スキル】消化吸収(Lv.3)/ 物理耐性(Lv.3)
【名前】レイ
【種族】木霊
【レベル】3(Up!)
【スキル】植物憑依(Lv.3)/ 認識阻害(Lv.3)/ 【回復魔法(Lv.1)NEW!】
【名前】リザ
【種族】フォレストリザード
【レベル】3(Up!)
【スキル】木登り(Lv.3)
【名前】アイ
【種族】フライングアイ
【レベル】3(Up!)
【スキル】鑑定(Lv.3)/ 浮遊(Lv.3)/ MP吸収(Lv.3)
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「うおっ……! レイが『回復魔法』を覚えてる!?」
俺は思わず左腕に巻き付いている深緑の植物ブレスレット──レイを見つめた。
(レイ、回復魔法が使えるようになったのかい!?)
(うん……ヒロトが怪我したとき……治したくて……覚えたの……)
(素晴らしいよレイ! 最高のヒーラー(回復役)の誕生だ!)
(ふふ……ヒロトの役に立てて、嬉しい……)
レイが嬉しそうに小さな葉をパチパチと揺らす。
パーティに回復役がいるかどうかは、生存率に天と地ほどの差を生む。これは破格の進歩だ!
そして、肝心の俺自身のステータスはというと──。
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【名前】サトウ ヒロト
【種族】人間
【職業】魔物使い(テイマー)
【レベル】2(Up!)
【スキル】テイム(Lv.10)
【SP】1
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「……あれ? 俺だけレベル2だ。みんなレベル3に上がったのに」
ガックリと肩を落とす。
(あら、ヒロト様。どうして落胆なさっているのですか?)
(俺だけレベルが2しか上がってないんだよ。眷属みんなは一気にレベル3になったのに……)
(ふふっ、当たり前ではありませんか。ヒロト様のスキルは【『眷属』経験値UP】なのですから! ご自身には適用されなくて当然ですよ)
(あ、そっか……『眷属』経験値UPだもんな。俺のバカ……)
(良いのです、ヒロト様。魔物使いの本領は、眷属を限界まで強化して戦わせることにあるのですから。ご自身が直接前線に出る必要などないのです。眷属が強くなれば、それで満点ですよ)
(ハクさんの言う通りだな! 割り切ろう!)
その時──上空で広域警戒にあたっていたアイから、切迫した念話が届いた。
(ヒロト! 前方、左の樹の根元……何か、動く……! 弱ってる……!)
(アイ、すぐに『鑑定』してくれ!)
(うん、鑑定送るね!)
アイの視界を経由して、黄金のステータスウィンドウが脳内に浮かび上がる。
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【名前】なし
【種族】土蜘蛛
【性別】♀
【レベル】15
【HP】2/95(極限瀕死)
【MP】10/10
【スキル】
・蜘蛛糸(Lv.5)
・毒(Lv.5)
・消化液(Lv.5)
・小蜘蛛生成(Lv.5)
・蜘蛛眷属化(Lv.1)
・変化(Lv.1)
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「土蜘蛛……!? 日本の妖怪みたいな名前の魔物だ!」
しかもレベル15! 先ほどのゴブリン(Lv.10)よりも遥かに格上だ。
しかし──HPの項目を見ると『2/95』。あと一押しで命の灯火が消えそうなほどの致命傷を負っている。
「……助けよう!」
(あら、ヒロト様はお優しいのね)
ハクがくすりと微笑む。
俺たちは警戒しながら、アイが指し示した古木の根元へと向かった。
そこに横たわっていたのは、体長五十センチほどの巨大な黒褐色の蜘蛛だった。
頭胸部と腹部を覆う重厚な毛並み。鋭い鎌状の1対の鋏角と、先端に爪を備えた8本の歩脚。そして二列に並んだ8つの瞳が、苦痛に揺れている。全身から溢れ出る血と傷痕が痛々しい。
俺はそっと手を差し伸べた。
「頼む……生き延びてくれ! 『テイム』!!」
『──魔物『土蜘蛛』のテイムに成功しました──』
『──【眷属強化(Lv.10)】発動:全ステータス及び回復力が2倍に補正されます──』
「ギィッ……!?」
土蜘蛛の巨体が大きく震えた。
眷属化による能力補正とステータス2倍化の爆発的なエネルギーが体内を駆け巡り、驚愕に瞳を見開いている。
(俺はヒロト。よろしくね! 君の名前は『スパ』だ!)
(は……はひ……っ!? す、スパ……!?)
突然の命名と脳内に響く念話に、スパは混乱しているようだ。
(レイ! 『回復魔法』でスパを治してあげてくれ!)
(うん……! 『ヒール』……!」)
左腕のレイから暖かな緑色の治癒光が放たれ、スパのボロボロだった身体を包み込む。
一度、二度、三度──。
重傷だった傷口が凄まじい勢いで塞がり、HPが急速に全快へと向かっていく。
(あ……あぁ……っ! 傷が……痛みが消えていく……! ありがたき幸せにございます……!)
正気を取り戻したスパが、深々と8本の脚を折り曲げて俺に平伏した。
(スパ、一体何があったんだい? どうしてこんな大怪我を……)
スパは悲痛な思いを振り払うように、静かに語り始めた。
(……私は遠く南の島から、土地を追われて流れてきた土蜘蛛一族の生き残りにございます。過酷な旅の果てに仲間は減り……私と数名でこの森へ辿り着いたのですが……そこで、凶暴なゴブリンどもの奇襲に遭いました。仲間たちは皆殺され……残されたのは、私ひとりだけに……)
重く切ない過去。俺は言葉を失った。
(……命が助かって良かったではありませんか。仇のゴブリンどもは、いつか私が皆殺しにしてあげますわ)
ハクが冷ややかだが頼もしい声をかける。
(はいっ……! 感謝いたします……!)
(まあ、『いつか』ね! さっき討伐したゴブリンの親玉は『ゴブリンキング』っていう強敵らしいから、まずは俺たちがレベルを上げないとね)
((えっ……ゴブリンキング……!?))
ハクとスパが同時に息を呑んだ。
(ふふ、やはりそうでしたか。この森にゴブリンが異様な密度で潜伏している理由が分かりましたわ。キングという統率はばかるボスが現れ、群れを拡大していたのですね)
(スパ、君のステータスにあった『蜘蛛眷属化』と『小蜘蛛生成』って、どういうスキルなんだい?)
(はい! 小蜘蛛を生成し、あるいは野生の普通の蜘蛛を配下に置くスキルにございます。眷属となった蜘蛛たちの視界や気配は念話で私に共有されますので、広域の『密密な密偵』として機能いたします)
(素晴らしいじゃないか! 蜘蛛の魔物もテイムして配下にできるのかい?)
(以前、この森に棲む『フォレストスパイダー』という魔物を従えようと試みましたが、Lv.1の私では叶いませんでした……。ですが、ヒロト様のもとでレベルが上がれば、魔物の蜘蛛すらも従えられるかと!)
(頼もしすぎるスキルだ! 今も周囲に小蜘蛛を放っているのかい?)
(はい。私が移動していない状態であれば、小蜘蛛たちを広範囲に巡らせて警戒網を敷いております。現在、半径数十メートル以内に敵対的な魔物の気配はございません)
(あら素晴らしい。じゃあ、私たちが近づいてきたことも気づいていたのね?)
(はい……知っておりましたが、傷が深すぎて動くこともできずにおりました……)
ハクとスパの会話で、警戒網の優秀さが証明された。
(スパ、もう一つの『変化』というスキルは?)
(自身の身体の大きさを自在に伸縮・変化させるスキルにございます)
(それなら! 小さくなって俺の左腕にくっついていてくれないかい? レイの『認識阻害』と組み合わせれば気配も消せるし、歩かなくていいから体力を温存できるだろう?)
(お配慮、恐悦至極にございます……!)
スパの身体が瞬時にキュッと小さくなり、手のひらサイズの可愛らしいミニ蜘蛛へと変化した。そしてレイが巻き付く左腕の空きスペースへとちょこんと収まった。
『白蛇の手甲』の右手。
『蔦と土蜘蛛の手甲』の左手。
『スライム』の肩。
『スカウトトカゲ』の背中。
『上空の眼球』。
防具、索敵、回復、分解、情報網──最強の極振りテイマーパーティの陣形が、ここに完全に完成した!
「よし……! 後方警戒をスパに任せて、このまま南の人間の国へ向かって進むぞ!」
「「「「(おおおおおっ!!)」」」」
信頼できる6匹の眷属たちと共に、俺たちは深淵の樹海の奥深くへと力強く突き進んでいった。
タイトルに第○話を追加しました。
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