第72話 爆速建国&怒涛の決戦前夜! 婚姻の儀から動き出す大国たちの激動、そして影で暗躍する最凶の仲間たち!
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アーシュ男爵の自滅ぶりと、アラント辺境伯の苦悶の表情に全員で一頻り盛り上がった後、隠密のスパが静かに影から進み出て、次なる報告へと移った。
「続きまして、シルミル教国、古龍山脈、そして魔族の国についての状況ですが……現在、子蜘蛛たちの全域への展開が完了しておりませんため、今回は概要のみの報告となります」
俺は椅子の背もたれに体を預け、深く頷いた。
「分かった。知っている範囲で構わない、続けてくれ」
スパは手元のアサシンダガーをスッと納め、影のような静けさで口を開く。
「はっ。まずシルミル教国ですが、深淵の樹海より南東に位置しております。先のガラード王国軍の大敗戦を受け、なにやら不穏で危険な動きを見せております。急速に軍備を拡充しており……最悪の場合、弱体化したガラード王国への侵略戦争に打って出る可能性が極めて高いかと」
俺は眉をひそめた。
「それは危険な兆候だな……。今のところガラード王国そのものを直ちに救済するつもりはないが、隣国が暴れ出すとなれば我が国への影響も避けられん。情報収集は極めて重要だ。子蜘蛛の配置と展開を急いでくれ」
「御意。即刻手配いたします」
スパは深く一礼すると、間髪入れずに次の報告へ入る。
「次に、深淵の樹海の北に広がる古龍山脈についてです。各部族や集落の生活基盤は戦争前と大きな変化はありませんが……優秀なドワーフ族がそっくり我が国へ移民してきたため、山脈全体で凄まじい鍛冶製品不足に陥っております。現在彼らはアキード商会に完全に依存しており、特に高品質な武器や防具の供給を強く買い求めている状況です」
俺は顎に手を当てて思案した。
「武器と防具か……。まずは我が樹海王国軍への最新装備の配備を完全に終わらせてからだな。型落ちしたものや、性能のレベルを意図的に少し落とした型落出品をアキード商会経由で売るとしよう」
「承知いたしました。……そして最後に、古龍山脈のさらに北に位置する魔族の国についてです。魔王軍四天王の一人、『豪腕のガランド』ことオーガエンペラーが、凄まじい勢いで軍備を増強しております。いずれかのタイミングで我が国、あるいは周辺国へ大規模侵略を仕掛けてくるのは確実かと。魔族の領地全域にはまだ子蜘蛛が到達しておらず、詳細な行軍時期までは不明です」
「北の魔族も動いているか……。こちらも教国同様に非常に危険だ。最優先で情報収集を進めてくれ」
「はっ、深く静かに潜入させます」
一通りの現状報告が終わり、会議室に一瞬の静寂が訪れた。俺は一つ呼吸を整えると、かねてより考えていた『重要事項』を切り出すことにした。
「さて……いつまでも正式な国名を決めずに『我が国』などと呼んでいては、さすがに格好がつかないからな。俺の中で国名を決定したので、ここで正式に発表する!」
「「「おおおおおっ!!?」」」
幹部たちが一斉に身を乗り出し、固唾をのんで俺の口元を見つめる。
俺は堂々と胸を張って言い放った。
「国の名は──『樹海王国』とする! ……まあ、気づいたら樹海の王になっちゃってたからな!」
「「「………………。」」」
……あれ? 妙な静けさが漂っているぞ?
ハクもルシーもヒナも、長老たちも、なんとも微妙な表情で顔を見合わせている。反対こそされないものの、絶妙な生温かい拍手がパラパラと響いた。
くっ……ネーミングセンスが無いと言いたいんだろ! わかってるよ! だがな、君たちの安直な名前を見ればわかるだろ! この国の血統なんだよ!
気を取り直したハクが、ぱっと表情を明るくさせて提案してきた。
「ねえヒロト! 大規模な戦争が本格的に始まっちゃう前に、今のうちに『建国の儀』と『結婚の儀』を一緒にやっちゃわない!?」
すると、俺の婚約者であるルシーもヒナもアリアも、目を輝かせて大賛成した!
「賛成〜! いいねいいね、パパッと豪華にやっちゃおうよ!」
……ん? いま『結婚』って言わなかったか? 婚約じゃなくて、いきなり本番の結婚なのか!?
まあ……愛するみんなと結ばれるなら、順番なんて細かいことはいいか!
「アキート、急な話で悪いが婚約と結婚の準備はどこまで進んでいる? 建国記念と合わせて、最短で挙行できる日はいつだ?」
アキートは冷や汗を拭いながら、素早く帳簿をめくった。
「は、ははっ! 奥様方の極上ウェディングドレスはすでに最高級のアラクネ絹で完成しております! 誓いの指輪もバッチリご用意しておりますぞ! 宗教的な格式を省いたパーティー形式の披露宴であれば、今日明日にでも可能ですが……『建国式典』となると、国威発泡のための準備に数か月は……」
俺は即座に手を振った。
「形式なんてどうでもいいんだよ! 大切なのは中身だ! 建国なんて、和紙に達筆で『樹海王国』って書いて、眷属念話で全国民にイメージをドカンと一斉送信すれば一瞬で終わるだろ!」
ヒナがころころと可愛らしく笑う。
「ふふっ、まるで日本の元号発表みたいだねー! 『令和』ならぬ『樹海王国』! わかりやすくて私は好きだよ!」
「だろ? 建国は結婚パーティーのついでに軽く発表するだけで十分さ。参加メンバーだって、今この会議室にいる身内だけで気楽にやろう」
アキートは唖然としながらも、プロの顔に戻って深く頭を下げた。
「ははっ……承知いたしました! 発表の件につきましては後日、周辺諸国へ書簡にて正式通知いたします。本日の披露宴参加者はこの会議メンバーのみですね」
「よし、なら今晩の夕食時にドカンとやっちゃうか!」
「「「やったぁぁぁぁぁっ!!」」」
婚約者たちが飛び跳ねて歓喜する中、ハクの姉であるリンダが慌てて手を挙げた。
「あ、あらあら、ちょっと待ちなさいな! 妹の大切な結婚式ですもの、姉として素晴らしいプレゼントをご用意したいわ! もう少しだけお時間をいただけないかしら? たぶん他の領主様たちも焦ってしまうわよ?」
ハクはぷくーっと頬を膨らませた。
「ぶー! お姉ちゃん、プレゼントなんて後でいいよー! 今すぐヒロトのお嫁さんになりたいんだもん!」
俺も苦笑しながらリンダとなだめる。
「周りの状況がきな臭くなってきましたからね、早めに決着をつけておきたいんです。皆さんの温かいお心遣いは本当に嬉しいですが、お祝い品は後から落ち着いた時にいただければ十分ですよ」
婚約者たちが一斉に拳を突き上げた。
「けーっ・てーい!」
リンダ、グレイア、キャル、ウルズ、モンタの重鎮たちは、「やれやれ……」と盛大な溜息を吐き出しつつも、どこか嬉しそうに目を細めていた。
「かしこまりました。それでは至急手配いたします」
アキートはすぐさま控えていた給仕用のホムンクルスを呼び寄せ、料理長のおばさんへ今夜の超豪華結婚式準備の伝言を走らせた。
「よし、パーティーの前にあといくつか内政の決定事項を片付けておくぞ」
俺は姿勢を正し、幹部たちを見渡した。
「オーク軍から新しく我が国の国民になった者たちだが、数が凄まじく多い。現在はオク1の眷属になっているが、オク1は領地の本格的な経営と建設で多忙を極めている。そのため、新オークたちの管理をオク1から外すことにする」
オク1がホッとしたように胸を撫で下ろし、深く頭を下げた。
「ははっ! ヒロト様、お心遣い深く感謝いたします! 正直、膨大な数の同胞の面倒と建設作業でパンク寸前でございました! 助かります!」
「うむ。そしてオニバル、お前にオーク軍全体の管理と指揮を任せる。オニバルには我が国の『将軍』として存分に活躍してもらうから頼んだぞ!」
元オーク軍総大将であり、現在は漆黒の鎧を纏うアンデッドナイトのオニバルが、感涙にむせびながら膝をついた!
「おおおっ……! ありがたき幸せにございます、ヒロト王! このオニバル、ヒロト王の絶対なる覇道のため、粉骨砕身して将軍職を全うしてみせまする!」
「オニバル、早速だが状況を聞いた通り、我が国は復興支援のためにコボルトとゴブリンの優秀な人材をかなり外へ派遣している。そのため本国の農場や牧場の人手不足が深刻だ。コボ1、ゴブ1と密に相談し、不足している人員をオーク軍から農場と牧場へ優先的に配置してくれ」
コボ1、ゴブ1、そしてオニバルが力強く胸を叩いた。
「「「謹んでハチの命、承りました!」」」
「それとオニバル、お前には『空を飛べない』という唯一の弱点がある。それを補うため、空中索敵ができる邪眼族1名と、機動力抜群のドラゴン1名を直接のお前の配下としてつける。リガント、人選を頼めるか?」
ドラゴンの頭領リガントがニヤリと鋭い牙を見せた。
「委細承知いたしました。最強の配下を選抜いたしましょう」
オニバルは震える手で地面に頭を擦り付けた。
「重ね重ねの破格の御恩、言葉もございません……! ヒロト王、どうかこの機会に、私を正式にヒロト王の『眷属』に加えてはいただけないでしょうか!?」
俺は隣のルシーへ視線を向けた。
「ルシー、オニバルを俺の眷属に上書きテイムしても大丈夫かい?」
ルシーは紫の瞳をくすりと揺らした。
「ええ、全く問題ないわよ。オニバルは私の死霊魔法で蘇らせたけれど、私の直接の眷属枠には入れていないの。私に逆らえない縛りをかけているだけだから、ヒロトがテイムすればもっと強力な眷属として上書きされるわ」
「そうか、なら遠慮なく」
俺が手をかざしてテイムスキルを発動させると、脳内に澄んだシステムメッセージが響き渡った。
『──アンデッドナイト【オニバル】をテイムしました』
その瞬間、オニバルの漆黒の鎧から爆発的な漆黒のオーラが吹き荒れた!
「おおおおっ……!? なんという満ち溢れる力……! 身体が驚くほど軽く、全ステータスが跳ね上がりましたぞ! 全身の底からパワーが湧き上がってくる!!」
「これからよろしく頼むよ、オニバル将軍」
「ははっ! こちらこそ、この命果てるまでヒロト王に捧げ奉ります!」
「よし。……それとリザルド、君はまだまだ前線で戦闘に参加したいかい?」
元龍王のリザルドが、ニカッと豪快に笑った。
「そうよのう! 儂はまだまだレベルを上げまくって、さらなる高みへ進化したいのじゃ!」
「はは、頼もしいな。だが無職というのも格好がつかないからな。軍事面の最高相談役として、リガントやオニバルを陰から助けてやってくれ」
「ふむ! 相談役か、悪くないのう! 承知したぞ!」
「さて、最後だ。我が国は急激に領土と人口が拡大しているため、内政を回す専門の人員が圧倒的に不足している。これからもさらに国家は巨大化するはずだ。俺自身は面倒な書類仕事は一切するつもりがないからな! 誰か事務や内政が得意な優秀な人材に心当たりはないか?」
俺が尋ねると、幹部たちは「う〜む……」と顔を見合わせた。基本脳筋の戦闘狂が多いからな。
だがその時、ルシーが妖しく微笑んだ。
「ふふ、ヒロト……不死王としての古い記憶の中に、打ってつけの超絶優秀な内政の天才の心当たりがあるわ。私に任せて頂戴」
「おおっ!流石はルシー! 助かるよ、人配の手配を頼むね!」
「ええ、すぐにスカウトして連れてくるわ」
「よし、以上で本日の会議を終了する! 特に他にご意見はないな?」
全員が頷こうとしたその時──パンパンに太った愛らしい聖獣が、短い手足をバタバタさせて割り込んできた!
「ちょっと待つのじゃあぁぁっ! 我は! 我はいまだに無職じゃぞ!! 偉大なる聖獣カーバンクルたる我にも、何かカッコいい役職を求めるのじゃあっ!」
カインが必死に叫ぶ姿に、会場からどっと笑いが巻き起こる。
「ん! ああ、そうだったねカイン。……よし、お前には『内政および外交の最高相談役』を命じる!」
カインはドヤ顔で短い胸を張った。
「くっくっく……了解じゃー! この我の頭脳で、樹海王国を導いてやるのじゃ!」
こうして、嵐のような建国会議は無事に幕を閉じたのだった。
──その日の夜。
樹海王国の王宮では、最高幹部たちだけが集う非公式の『結婚&建国披露宴』が盛大に執り行われた。
アキートが手配した絶品料理と至高の酒が振る舞われ、アラクネの絹で作られた息をのむほど美しいウェディングドレスに身を包んだハク、ルシー、ヒナ、アリアの可憐な姿に、俺は完全に心を奪われた。
宴は深夜まで大盛り上がりで歓声が響き渡り、最高の一夜となった。
そして夜も更け、一切の支障もなく平和な朝を迎える。
……ん? 何の支障も問題もないぞ? 何とは言わないが、妻たちの厳正なる話し合いの結果、ハクの提案によって『出会った順番によるローテーション制』という絶対ルールが制定されたため、夜の順番を巡るドロドロの修羅場など全く存在しなかったのだ! 完璧な解決策である!
「それじゃあヒロト、優秀な内政官をスカウトしに行ってくるわね」
翌朝、艶やかな笑みを残し、ルシーは頼もしく内政要員のスカウト旅へと出発していった。
怒涛の建国と結婚式を終え、俺たちは訪れた穏やかで幸せな数日間を、心ゆくまでゆっくりと楽しむのであった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
スランプ中で筆が止まってます。
書き貯めたてる分から投稿しました。
数話は書き貯めたものがあるので、
最低1日1話は投稿したいと考えてます。
書きたい事はいっぱいあって、
先のストーリーの構想はあるのですが、
小説を書くのは難しいですね。
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