第69話 【忠誠】壊滅した巨人の王国と神懸かりな絶品グルメ! 誓いの眷属化と、深淵を覆う絶対覇道の未来計画!!
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妖精族とエルフたちの呆れ返るほど身勝手な目論見に対し、会議室のボルテージは最高潮に達していた。
世界樹と精霊たちを「自分たちの所有物」と言い放った暴言に、正妻のハクや精霊王レイをはじめ、出席していた最高幹部たちの怒りは頂点に達し、殺伐とした気が部屋中に満ち溢れている。
このままでは会議室が破壊されかねないと察したのか、影の隠密・スパが静かに一歩前へ出て、冷徹な声を響かせた。
「皆様、お怒りはごもっともですが……次はトロル族の領地の現状についてご説明いたします。続けても宜しいでしょうか?」
「ああ、すまない。話を中断させてしまったね。……よし、みんな一度静かにしてくれ」
俺が手をついて静観を促すと、沸き立っていた幹部たちもハッと我に返り、ぐっと殺気を収めて静まり返った。
スパは深々と一礼し、解説を再開する。
「トロル族の領地は、深淵の樹海北部に位置しております。オーク軍との苛烈な戦争が終結したことに伴い、当国へ避難していた集落の住民たちは順次領地へと帰還いたしました。しかし集落の壊滅的な被害から復旧は急務であり、現在我が国による大規模な復興支援を実施中となります。なお、かつての宿敵であったオークによる支援人材の派遣は住民感情を著しく逆撫でする恐れがあるため、コボルト族およびゴブリン族を中心とした支援部隊を現地へ派遣しております」
スパの説明が終わると、特別巨大席に座っていた巨人が、ずしりと重厚な音を立てて巨体を起こした。
トロル族の長老、トロボだ。
身の丈5メートルにも及ぶ圧倒的な体躯。薄い緑色の皮膚と太く強靭な筋肉を誇る、まさに怪力の巨人である。一般的にトロルといえば醜悪な容容姿と低い知能を持ち、大雑把で粗暴な種族として知られている。だが、この樹海王国で保護されたトロボたちは、DPで生成した頑丈な布の服をきちんと着用しており、その瞳には知性と理性が宿っていた。
トロボは5本の太い指を胸元で組み、深く頭を下げた。
「ヒロト王……温かい保護と手厚い復興支援、本当に有難う。お陰で、俺たちは無事に我が故郷の領地へ帰ることができた」
膝の上にライゾウを乗せたヒナが、やんわりと微笑む。
「オーク軍の襲撃、本当に大変だったよねー」
トロボは大きな顔を歪め、悔しそうに拳を握りしめた。
「ああ、生きた心地がしなかった……。ある日突然、山脈の壁面に不気味な大洞窟が現れ、そこから地獄のように無数のオークどもが湧き出てきたんだ。俺たちも必死に立ち向かったが、圧倒的な数の暴力に押され、大半の仲間が惨殺された。……俺の親父であり、先代の族長だったトロルキングのトロダムも、仲間を逃がすために最後まで戦って殺されたよ。一族は散りぢりになり、親父の後を継いで族長になったものの、これからどうすればいいのか途方に暮れていたところを……ヒロト王に救われたんだ。この巨大な恩義、一生かけて必ず返す」
トロボは見た目に反して実に聡明だ。まあ、族長が馬鹿では過酷な異世界で種族そのものが滅んでしまうからな。
すると、トロボは覚悟を決めた眼差しで、ドスンと大きな片膝をついた。
「ヒロト王……お願いだ、俺を……俺をあんたの【眷属】にしてくれ!」
「もちろん良いよ。喜んで受け入れるよ」
俺が即座に頷くと、トロボの表情がパッと明るくなった。
トロル個人の単体戦闘力や腕力は、コボルトやゴブリン、オークをも遥かに上回る。知能が低めの個体が多いので集団での高度な連携戦術は難しいかもしれないが、直感的なパワーファイターとして圧倒的な戦力になってくれるはずだ。
俺は迷わず手伸ばし、テイムスキルを発動した。
<トロル(トロボ)をテイムしました>
頭の中に機械的なメッセージが流れる。
その瞬間、トロボの全身を黄金色の魔力光が包み込み、その巨体から放たれる圧迫感が目に見えて跳ね上がった!
「おおおッ!? 内側から凄まじい力が湧き上がってくるのが分かるぞ……! これで俺は名実ともに、ヒロト王の絶対の配下だ! トロルの圧倒的な怪力が必要な時は、いつでも何なりとお命じください!」
力強く胸を叩くトロボに、俺は優しく問いかけた。
「頼もしいよ、ありがとう。……そういえば現在、避難してきたトロルたちにはどんな仕事をしてもらっているのかな?」
ヒナが空中盤を指で弾きながら答える。
「土木工事とか、建材の運搬みたいな力仕事の単純作業を主にやってもらってるわー!」
トロボは大きく頷き、照れくさそうに頭を掻いた。
「ヒロト王、きちんとお給料が貰えて生活が劇的に安定したからな。領地に帰ってからも、引き続きうちの者を雇って仕事を与えてもらえるとありがたい」
「それはこちらからもぜひお願いしたいところだよ。重労働をこなしてくれる巨人の存在は本当に助かるからね」
「ありがたい! だが……そうすると単身赴任みたいな形になっちゃうけど大丈夫?」
ヒナが尋ねると、トロボは即答した。
「全然大丈夫だ! 荒れ果てた領地を復旧させるためにも資金は喉から手が出るほど欲しい。避難していた仲間たちも少しずつ戻ってきているから、むしろもっと仕事が欲しいくらいなんだ」
ヒナはニシシと可愛らしく笑ってみせた。
「ふふ〜ん、仕事なら世界樹の発展に合わせて山ほどあるよー!」
「本当か! 有難う、本当に助かる!」
「へへっ、なんだかこれじゃあ、トロルの領地は完全に樹海王国の『属国』みたいだねー!」
ヒナが冗談めかして言うと、トロボはバツの悪そうな顔をするどころか、満面の笑みを浮かべた。
「属国で結構! むしろ大歓迎だ! 実質、この樹海王国なしでは俺たちの生活はもはや成り立たないんだからな! 今さら昔のような、野山を駆け回る原始的な生活に戻りたいと思う仲間なんて一人もいないさ。……なんと言っても、この国の食事が美味すぎる! あんなに旨いものを知っちまったら、血生臭い生の肉なんて二度と食えん!」
その言葉に、激しく首を縦に振って同意した連中がいた。
元・獣人国の長老たち──ケットシー族のキャル、ウェアウルフ族のウルズ、猿人族のモンタの3人だ。
キャルがピクピクと猫耳を揺らしながら叫ぶ。
「そうそうにゃッ! 寿司とかいうあの新鮮で甘いお魚が食べられるなんて、絶対に反職……うにゃ、反則的な美味しさだにゃー!」
ウルズも鋭い牙を覗かせて太鼓判を押す。
「何と言っても秘伝のタレで焼いた肉が絶品すぎる! もう昔食っていたような獣人国のパサパサな肉なんて喰えたもんじゃないぞ!」
モンタも深く頷き、頬を緩ませた。
「フルーツも、あのふわふわしたスイーツとやらも、何もかもが天上の味わいじゃ……! この樹海王国から離れるなんて、狂気の沙汰としか思えんわい!」
絶品グルメの魅力に毒された長老たちの熱弁に、トロボも大きく手足を振って共感する。
「そうなんだよ! だからむしろ、単身赴任でずっとこっちに住み着いて美味いものを食いたいって言う奴が多くて困ってるくらいでな……」
ヒナが「よしっ!」と胸を張った。
「じゃあトロル領の復旧が進んだら、こっちと同じレベルの最高のお料理が食べられるように流通ルートを整えましょー!」
「おおおッ! そうしてもらわないと、みんなの暴動が起きちまうから助かるぞ!」
巨人族と獣人たちが食事の話題で大大盛り上がりしている様子を微笑ましく眺めつつ、俺はふと思い出した疑問をヒナへ投げかけた。
「そういえばヒナ、さっきトロボが言っていた『オークが湧き出てきた大洞窟』はどうなっているんだい?」
すると、隣に座っていた不死王ルシーが「あら」と艶やかに微笑んだ。
「それは昔、私が魔族の国と行き来するために作った秘密の抜け穴洞窟のことですわね」
ヒナは空中盤をパパッと操作しながら、ドヤ顔で答える。
「あの洞窟はねー、速攻でダンジョン化しちゃった! だから魔族の国側からは絶対に利用できないようになってるよー! 入口がこっちの樹海側からしか開かないプロテクトをかけてあるんだ! 今は両方の出入り口を完全に塞いであるから、誰も通れない安全な状態だよー!」
「完璧な処置だね! ありがとうヒナ。まあ、当分の間は使うこともないだろうし、封印したままでOKだね」
こうして頼もしい力強い味方を新たに配下に加え、樹海王国の揺るぎない絆と覇権は、また一段と強固なものへと昇華していくのだった。
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