第60話 【忠誠】女王グレイアの甘い誘惑と将軍の覚醒! 歓喜のテイムと、ダークエルフ全土を束ねし絶対的覇道!!
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世界樹の里の中央に新たに設けた絢爛な謁見の間。
重厚な扉が開かれ、ダークエルフの女王グレイアと、その傍らに控える猛将グレンシー将軍が静かに入室してきた。
俺は玉座に腰掛け、仲間たちと共に二人を出迎える。
グレイア女王は美しく豊かな銀髪を揺らし、胸元で深く手を組むと、美貌に歓喜と敬意を滲ませて深々と頭を下げた。
「ヒロト様……この度のガラード王国軍およびオーク軍との激戦、そして勝利、誠におめでとうございます」
「ありがとうございます。グレイア女王、ならびにダークエルフの皆様の多大なるご協力があってこその勝利でした」
俺が礼を述べると、グレイアは感慨深げに大きく息を吐き出した。
「今回の戦により、長年この樹海で猛威を振るっていたエルフの主力軍勢はほぼ壊滅いたしました。生き残ったごくわずかなエルフどもは妖精の国へと惨めにも逃げ延びたようですが、これで我らダークエルフとエルフとの永きにわたる因縁にも、ようやく一つの区切りがつきました。……実に感慨無量でございます。それに加え……一生拝むことなど叶わぬと諦めておりました伝説の世界樹様に拝顔できましたこと、喜びも一入にございます。本当に……本当にありがとうございました」
その瞳には、かすかに涙すら浮かんでいる。
俺は前々から気になっていた疑問を口にしてみた。
「そういえば……エルフとダークエルフは、そもそも何が原因でそこまで深く揉めていたのですか? やはりエルフ側が一方的に迫害を?」
「概要はその通りでございます」
グレイアの美しい顔が、わずかに苦々しく陰った。
「エルフという種族は、自らの『血の純血性』を異常なまでに神聖視いたします。そのため、他種族との間に生まれたハーフエルフや、闇の魔力に目覚めた我がダークエルフは『不浄の存在』として徹底的に狩られ、討伐の対象とされてまいりました。元々は追われる身として息を潜めていた少数派に過ぎませんでしたが……先代の国王が幸運にも蛇王リザルト様と知古を得ることができ、蛇王国の全面的なご支援を受けて、ようやく国を興すことができたのです」
「なるほど。その頃から蛇王国とは強い絆で結ばれていたんだね」
「はい。その後、エルフたちの怒涛の猛攻を耐え抜き、大陸中に散らばっていた同胞たちも集まってまいりました。さらに我がダークエルフは、不妊傾向の強いエルフとは異なり、非常に子宝に恵まれやすい種族にございます。世代を重ねるごとに人口も飛躍的に増え、ついにエルフと拮抗する大勢力へと成長いたしました」
そこまで語ると、グレイアはふっと妖艶な笑みを浮かべ、あでやかな足取りで俺の玉座へと近づいてきた。
「……ですのでヒロト様。もしヒロト様がお望みとあれば、いつでもお側に控え、お世継ぎ作りの面でも絶大なご貢献ができますのですよ……?」
言うや否や、グレイアは俺の目の前まですり寄ってきた。
ち、近いって……!?
胸元が大胆に大きく開いた深紅のドレス。上から覗き込むと、豊満で柔らかな双丘がはっきりと目に入ってしまう。
もしや……いや確実にわざとだ! 完全に誘惑しにかかってきている!
「ま、まあまあ! グレイア女王、一旦落ち着いてください!」
俺は鼻の下が伸びそうになるのを必死で耐え、両手で優しく彼女の華奢な両肩を押さえて距離をとった。
「コホンッ……大変失礼いたしました」
グレイアは頬をほんのり朱に染めながら、スッと胸元を正して姿勢を直した。
「ヒロト様の眷属として拝命してはおりますが、私は一国の女王。今回はこれにて一度、ダークエルフの国へと帰還したいと存じます。今後のご用命の際は、念話にて何なりとお命じくださいませ。宜しいでしょうか?」
「勿論です。一国の女王が長期間不在にするわけにはいきませんからね。どうぞお戻りください。それと、今回の戦で共に戦ってくれた共闘へのお礼の品ですが、準備が整い次第、後日国へお届けいたします」
俺がそう提案すると、グレイアは微笑みながら首を横に振った。
「いいえ、ヒロト様。今回の戦は我が国にとっても脅威であった敵との戦い。それに何より、私はすでにヒロト様の大切な眷属にございます。お礼の品など滅相もございません。……ですが、もしどうしてもとお仰られるのでしたら、戦いの中で我が軍が回収した討伐魔石を、そのまま持ち帰るお許しをいただきたく存じます」
「魔石くらい、いくらでも持っていって構いませんよ! ですが、本当にそれだけで良いのですか?」
さすがは一国を束ねる女王だ。何も受け取らないのはこちらに角が立つため、『魔石を譲り受けた』という体にして、俺の顔を立ててくれているのだろう。実に聡明で気遣いのできる女性だ。
「ええ、魔石さえいただければ大満足にございます。……それとヒロト様。私はすでに貴方様の眷属ですので、どうか私への敬語はお控えくださいませ」
「そ、そうか。眷属なんだから、確かに気負う必要はないね」
「はいっ!」
グレイアは花が咲いたような満面の笑顔を見せた。
すると、それまで沈黙を守っていた巨漢のグレンシー将軍が、耐えかねたように前へ一歩踏み出し、床に片膝をついた。
「話を遮る非礼、どうかお許しいただきたい! ヒロト様……この度の戦の報酬として、私めもヒロト様の眷属にしていただきたく、伏してお願い申し上げます!」
「えっ、眷属に!? 将軍がどうして急に?」
俺が驚くと、グレンシー将軍は熱い眼差しを俺に向けて叫んだ。
「今回の激戦において、ヒロト様の眷属となられた方々の人外じみたご活躍を、私はこの目で幾度も目にいたしました! 特にグレイア女王様が見せつけた圧巻の力と輝きは、同じ武人として羨ましくて仕方がなかったのでございます! もし我が国に報酬を下さるのであれば、どうか私を眷属へとお加えください! 私が強くなれば、ダークエルフ国の軍事力は跳ね上がります! それは延いては、我が主であるヒロト様の全戦力を底上げすることと同義にございます!」
凄まじい熱意だ。
本人がそこまで望んでくれているのなら、断る理由なんて何一つない。配下をテイムするには対象の同意と従属の意志が必要不可欠だが、今の彼からは完璧な誠意が伝わってくる。
「そこまで言ってくれるなら、断る理由はありませんよ。ぜひ俺の眷属になってください」
「おおっ……! かたじけなく存じます!」
将軍と呼ばれるほどの男だ、元より高い戦闘力と軍を率いる卓越した指揮能力を持っているはず。そんな傑物が仲間になってくれるなら、これほど心強いことはない。
俺はグレンシー将軍をまっすぐ見つめ、深く息を吸い込むと高らかに唱えた。
「──【テイム】ッッ!!」
ジュワッ……と眩い光の粒子がグレンシー将軍の全身を包み込む。
『──【ダークエルフ将軍・グレンシー】のテイムに成功しました』
「うおおおおおぉぉぉッ!? こ、これは……なんという……! 全身から溢れ出してくるような、圧倒的な力強さだぁッ!」
グレンシー将軍は己の分厚い両手を握り締め、歓喜に全身を震わせた。
「グレイア様がなぜあれほどまでに凄絶なご活躍をされていたのか、身をもって理解いたしました! ヒロト様、この命に代えましても、忠実なる手足として御使い申し上げます! ご用命の際は、いつでも念話にてお呼び出しください! ……そして私めにも、どうか敬語はお捨てくださいますよう!」
「ああ、分かったよグレンシー。これからよろしく頼む!」
グレイア女王も嬉しそうに目を細め、最後にもう一度俺へ深く頭を下げた。
「ヒロト様、本当にありがとうございました。私どもは一度国へ戻りますが、ご用の際はいつでもお呼びくださいね。……いつでもヒロト様のお側に居られるよう、国に戻って万全の準備を整えてまいりますから」
グレイアはそう言うと、語尾に甘い響きを込め、その美しい深紅の瞳をキラリと怪しく光らせた。
(……ん? 『いつでもお側に居られるよう』って……それ、絶対『将校として仕える』以外の怪しい意味が含まれてないか……!?)
そんな一幕がありつつも、グレイア女王とグレンシー将軍は晴れやかな顔でダークエルフの国へと帰還していったのだった。
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