第58話 【開拓】不死王の哀しき過去とオーク将軍の蘇生! 膨れ上がる天大なDPと聳え立つ世界樹の謎!!
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最凶の魔物『不死王』と化したルシーを秒でテイムした俺たちは、現在、旧エルフ集落──元精霊たちの郷であり、オーク軍が拠点として占領していた場所に移動していた。
だが、長々と呼ぶのは色々と面倒くさい。目の前には神々しく輝く超巨大な大樹が聳え立っている。よし、今日からここを『世界樹の里』と呼ぶことにしよう!
里の中央広場には、いつものメンバーに加え、進化した蛇王ザッハーク、眷属となった不死王ルシー、そして保護されたカーバンクルの姿があった。
大半のメンバーは人化形態をとっている。
人化していないのは、構造上人化ができないスラオ、神刀となったムラマサ、雷獣ライゾウ、そしてリスのような小動物カーバンクルくらいだ。
ちなみに俺の右腕はホワイトエキドナとなったハクに、左腕はデメテルとなったレイにそれぞれ抱え込まれていた。
柔らかい感触と甘い香りに包まれ、まるで囚人が連行されているかのようだが……二人とも飛び切りの美少女なので、無条件で許すことにする。
一方、カーバンクルはヒナの腕の中にすっぽりと収まり、気持ち良さそうに撫で回されていた。
「ところでルシー、君はどうやって不死王になったんだい? たしかに死に際に巨大な魔石を飲み込んでいたみたいだけど……」
俺の問いかけに、ルシーはどこか遠い目をして口を開いた。
「あれはね……太古の昔に存在した『初代・不死王』の魔石を飲み込んだのよ。不死王という存在はね、絶対に死ぬことがないの。けれど、あまりにも永い時を生きすぎた結果、生きていることそのものが耐え難い苦痛になってしまったらしいわ。そこでその初代は、己の存在そのものを一結晶の魔石へ変形させ、眠りにつくことを思いついたのよ」
ルシーは自身の細い指先を見つめながら、静かに続ける。
「魔石を呑み込んで同化したことで、どうやら私は初代不死王の記憶まで丸ごと引き継いでしまったみたい。自分の記憶と混ざり合って、少し不思議な感覚だわ。……一度あの神刀で切断されて命を落としたことで、肉体が再構築され、完全な『不死王』として覚醒・蘇生したのよ」
なるほど、一度完全に生命活動が停止したからこそ、頭の中にレベルアップと進化のアナウンスが響いたというわけか。伏線が回収できてスッキリしたぞ。
「ちなみにだけど……魔王軍はまたここに攻めてくるのかな?」
ルシーは首を横に振った。
「それは分からないわ。私はあくまで独自の判断で動いていたの。深淵の樹海で戦力を急拡大させ、その勢いで人間の王国へ攻め込もうとしていたけれど……他の四天王たちがどう動くかまでは把握していないわ」
「へぇ、四天王と言うくらいだから、ルシーの他にあと3人いるんだね。どんな奴らなんだい?」
「まず一人目は、オーガエンペラーの『豪腕のガランド』。奴は救いようのない腕力馬鹿よ。何事も力押しで解決しようとするわ。二人目は、アラクネクイーンの『謀略のジョローニ』。あいつは陰険なクソババアね。本人の戦闘力は低いけれど、裏で汚い謀略を張り巡らせるから、滅多に表に出てこないぶん一番始末に負えないわ。そして三人目が、魔族の『闇のクログル』。重度の魔法オタクで四六時中研究ばかりしているけれど、実力で言えば最も魔王に近い存在よ」
「ふむふむ、みんな格好いい二つ名があるんだねぇ」
俺がニヤニヤしながら頷くと、ルシーは一気に顔を真っ赤にして照れ開いた。
「な、自分で名乗ってるわけじゃないわよッ! いつの間にか周りからそう呼ばれていただけなんだから! 『魅惑のルシー』なんて、恥ずかしくて自分から言うわけないでしょう!?」
ジタバタと照れるルシーのギャップが何とも可愛らしい。
だが、ルシーはすぐに真剣な表情へと戻り、深く頭を下げてきた。
「ヒロト様……私の一族(サキュバス族)は魔界でも数が少なく、魔王軍の中で地位を上げなければ、すぐに他の種族に淘汰されてしまう過酷な立場だったの。お願いです……私の一族を、このガリア樹海に招き、ここでひっそりと暮らすことを許可していただけないでしょうか?」
「いいよ。ルシーも俺の眷属になったんだしね。ただし、他の種族と揉め事を起こさないように、ルシーがしっかり責任を持って監督してね」
「あ、ありがとうございます……! 一族の行動には私が絶対に責任を持ちます! 後で集落へ呼びに行ってきますわ! ……それと、もう一つ相談があるのですが。オニバルの件なのですが……」
「オニバル?」
「先ほど倒されたオークエンペラーのことよ」
「ああ、あの重装甲のオークエンペラーか。彼がどうしたの?」
ルシーは悲しげに瞳を伏せた。
「オニバルを、あの『悪魔のアダマンタイト鎧』と融合させ、私の死霊魔法で『アンデッドナイト』として蘇らせたいのです。オニバルは元々とても忠実で、本当にかわいそうな子だったの……。それに、彼の軍略の才能は必ずヒロト様の役に立ちます」
「いいよ。確かにガラード王国軍を相手に見事な作戦を立てていたしね。将軍としての腕は確かだ」
俺の許可が出ると、ルシーはクレーターの中に横たわるオークエンペラーの巨大な死体へ近づき、怪しく光る骨の杖を掲げて死霊術の呪文を唱え始めた。
ズズズ……ッ!
オニバルの死体の下に、濃密な紫色の巨大な魔法陣が浮かび上がる!
吹っ飛ばされていた鉄仮面が磁石のように飛び来ると、オニバルの素顔を優しく覆い隠した。仮面の奥の瞳が、命の灯火のように真っ赤に発光する!
宙へ浮き上がった巨躯がゆっくりと着地し、カチリと金属音を立てて力強く立ち上がった。
「……お久しぶりです、ルシー様」
「オニバル、貴方は強力なアンデッドナイトとして生まれ変わったわ。これからもよろしくね。それと……あちらのヒロト様が私の主となったわ。これからはヒロト様の命令にも絶対に絶対服従しなさい」
オニバルは重厚な兜を深々と下げ、俺に向かって膝をついた。
「承知いたしました。ヒロト様、このオニバル、忠誠を尽くします」
「こちらこそ、よろしく頼むよオニバル」
力強い味方がまた一人増えたな!
◇
さて、戦争が一段落したところで、各種事後処理を進めるとしよう。
俺は真っ先に、遠方にいるオク1へ念話を送った。
(オク1、ガラード王国軍を追いかけていったオークの別動隊も全員眷属化しておいてくれ。あんな場所で暴れられたら迷惑だからね。手続きが終わったら、全員ここに連れて戻るように)
すぐさまオク1から頼もしい返信が届く。
(オク1:承知いたしましたヒロト様! ただいま現場へ急行中ですが、こちらに留まっていたオーク軍の敗残兵は、すべて眷属化の手続きを完了いたしました!)
見ると、なんとオク1の種族名が【オークエンペラー】へと進化していた。
(仕事が早すぎるよ! 助かる、よろしく頼んだぞ)
各領地の集落の住人たちは、開戦前に地下ダンジョン内へ避難させてあるので、折りを見て地上へ戻す手配をしよう。
戦場に転がっていた万単位の死体は、ダンジョン機能によって全て魔力(DP)として自動消化されたため、破壊された民家を除けば街の景観は驚くほど綺麗だ。傷ついた仲間や保護したオークたちも救護室へ収容済みで、道端で倒れている者もいない。
俺はヒナの方を振り向いた。
「ヒナ、この壊れた家屋だけど、ダンジョンの修復機能で一気に元通りにした方がいいかな? それとも精霊たちの住処として、一度全て解体して自然の状態に戻した方がいいと思う?」
すると──ヒナが口を半開きにしたまま、呆然と固まっていた。
「……あ……あ……ああああああああぁぁぁぁッッ!?」
突然、ヒナが耳をつんざくような大声を張り上げた!
「どうしたのヒナ!? 急に大声を出して!」
ヒナはプルプルと震える手で、空中に浮かぶ透明なダンジョン操作パネルを指差した。
「DPが……DPが大変なことになってるの! どんどん、どんどん増えていくのよぉぉっ!」
「……え? 増えていく? 『増えた』じゃなくて?」
「うん! こうして話してる今この瞬間も、毎秒数万単位でDPにポイントが加算され続けてるの! カウンターの数字が速すぎて目視できないレベルなのよ!?」
「あー……その原因って、絶対に『これ』だよね」
俺は苦笑いを浮かべながら、目の前に聳え立つ巨木──天を衝くほど巨大な『世界樹』を静かに仰ぎ見たのだった。
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