第53話 【激突】ガラード王国軍2万対オーク3万! 罠に沈む国軍と、手薄な敵本陣へ放たれる最強の電撃強襲!!
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深淵の樹海の浅瀬エリア。旧ゴブリン集落の無骨な跡地で、無警戒に野営を張っていたオーク軍の小隊100名。そこへ、ついにガラード王国軍2万の先進斥候部隊が接近し、接敵を果たした。
その息詰まる光景は、スパの小蜘蛛ネットワークを通じて、俺たちの城のリビングに置かれた大型の視界スクリーンへリアルタイムで鮮明に投映されていた。
「まあ……! 敵の息遣いや汗の粒まで、こんなに鮮明に見ることができますのね」
アリアが感嘆の声を漏らすと、ヒナが自慢げに小さな胸を張った。
「ふふ〜ん、すごいでしょ! スパちゃんの偵察網と私のダンジョンモニター技術のコラボレーションなんだから!」
ヒナは膝の上にすっぽりと収まった30センチのミニライゾウを、なでなでと愛おしそうに撫でながら微笑む。ライゾウも「うむ、苦しゅうないぞ」と言わんばかりに気持ちよさそうに目を細めていた。
「よし、ちょうどダンジョン領域のすぐ外側で最初の戦闘が始まりそうだね」
「うん! 私がわざわざ地下ダンジョンを展開して広げなくても、勝手に表で潰し合ってくれるからすっごく楽で助かっちゃうわ」
画面の向こうでは、ガラード王国軍の凄腕と名高いアレオン将軍が、見事な指揮を執っていた。
王国軍は迅速に3つの部隊へ雲散鳥散の如く散開。左右に分かれた部隊が大回りしてオークたちの退路を素早く遮断し、正面の中央部隊がもっとも基本的な横一列の陣形『横陣』を組み、怒涛の奇襲を仕掛けたのだ。
「ぐわっ!? 人間の兵隊だと!?」
「奇襲だ! 敵襲ぁぁっ!」
突然の挟撃に、オーク小隊はパニック状態に陥る。
しかし、小隊長を務める巨漢オークは即座に敵の圧倒的な数を見抜き、怒号を響かせた。
「ええい、構うな! 撤退だ! 本隊の待つ拠点まで死に物狂いで逃げ延びろ!」
だが、中央の王国軍は傘を開くように包囲網を縮めていく。左右はすでに敵の壁だ。
後ろへ逃げようと後退を試みるが、左右から回ってきた側翼部隊がまさに包囲網を閉じようとしていた。
「死ねぇぇいッ!」
オーク小隊長と周りの側近幹部たちは、凄まじい威力の巨斧を振り回し、包囲網が完成する直前のわずかな隙間へ肉弾突撃を敢行。強引に人間兵を吹き飛ばし、命からがら包囲を突破して死地を脱出していった。
ガラード王国軍は、逃げ延びた小隊長たちの背中を追うように、堂々と樹海の深部へ向けて進軍を開始する。
◇
ほうほうの体で本隊の鎮座する旧エルフ集落跡地へ辿り着いた小隊長は、上官であるオークキングへ惨敗を報告。その報はすぐさま、最奥に鎮座する『オークエンペラー』へともたらされた。
「……ほう、人間の軍勢が2万とな?」
巨躯を揺らすオークエンペラーは、邪悪な笑みを浮かべて指示を下した。
「ふむ、2万か。貴様に3万の兵を預ける。こちらの拠点の防衛には2万も残しておけば十分すぎるだろう。愚かな人間どもを徹底的に蹂躙してこい。……作戦は『啄木鳥戦法』だ」
「はっ! 御意に!」
「兵を1万ずつ3つの部隊に分けよ。2隊は左右の茂みに息を潜めて伏せさせろ。そして中央の1万で敵と正面から開戦するのだ。いくら人間でも、1万の兵力を前にすれば逃げ出しはせん。そこでわざと押し負けたフリをして撤退せよ。追撃してきた敵の背後と側面を、左右の伏兵で急襲! 逃げていた中央隊も反転して挟み撃ちにし、全滅させてやれ!」
「ハハッ! 悪魔的試み、見事になし遂げてみせます!」
オークキングは3万の大軍勢を率い、ガラード王国軍との決戦へ向けて出撃していった。
──その全やり取りを、俺たちはリビングで優雅に珈琲を飲みながらバッチリ傍受していた。
「……くくっ、これは願ってもない大チャンスだね!」
俺は立ち上がり、腰の黒刀ムラマサの柄をポンと叩いた。
「敵本陣の防衛はたったの2万にまで減った。オーク軍の拠点にはまともな城壁も防壁もないから、実質ただの野戦と変わらない。我が国の誇る2万4千の超連合軍なら、正面から完全に粉砕できる! 混乱の隙を突き、俺たち遊撃隊がオークエンペラーの首を狩れば終戦だ! 全軍、出撃!」
「「「「お命のままに!!」」」」
◇
ガリア樹海の開けた平原エリアにて。
出撃したオーク3万のうち、中央隊1万がついにガラード王国軍2万と正面から対峙した。
「ずいぶんと大勢で湧いて出たな、豚どもめ」
馬上のアレオン将軍が不敵に呟く。傍らの副官が叫んだ。
「将軍! 敵の先鋒、およそ1万! 如何いたしますか!?」
「ふん、まずは兵法の基本通り、遠距離からの絶対火力で削る。しかる後に包囲殲滅だ」
アレオン将軍は手慣れた手つきで全軍を「5千・5千・1万」の3部隊に分割。左右の5千を側翼へ展開させ、中央の1万に強固な『方陣』を組ませた。
方陣は、重厚な三列の正方形隊列だ。
1列目は巨大な金属盾を構えた『重装歩兵』。
2列目は『弓兵部隊』。
3列目は『弓兵』と、強力な広域魔法を操る『宮廷魔術師部隊』。
「1列目、膝をつけ! 盾を固定! 2列目および3列目、隙間から狙いを定めよ!」
重装歩兵がズシンと片膝をついて巨大な盾の壁を作り、その上と隙間から無数の矢と魔導書が構えられる。
「宮廷魔術師隊、超広域詠唱を開始せよ! 弓兵隊、構え!」
対するオーク軍は、陣形も何もないバラバラの状態で我先にと突進してくる。
足の速いオークが前の仲間を突き飛ばして追い越し、足の遅いオークが後ろから怒号を上げる。連携の「れ」の字もないただの暴走だ。
「ふ、やはり知性のない野蛮な獣か。陣形すら組めぬとはな」
アレオン将軍が嘲笑い、間合いが完璧に重なった瞬間に剣を振り下ろした。
「全魔法、解き放てぇッ!! 次の詠唱を直ちに開始せよ!」
ドババババババッ!!
宮廷魔術師たちの放った【ファイアボール】と【ファイアランス】の連群が、空を赤く染め上げた! 一つひとつの威力は基本魔法でも、数百人が一斉に放てばまさに『極大の炎の嵐』だ!
「さらに弓隊! 矢の雨を降らせよッ!」
ヒュオオオオッ! ドド暴!
炎の嵐に続いて、数千本の矢の雨が突撃するオークたちの頭上へ激しく降り注ぐ!
「まだ行ける! 魔法隊、第二波を叩き込めぇッ!」
再び襲いかかる炎の連撃!
先頭を走っていたオークたちは全身を火だるまにされ、絶叫しながら転がり回る。だが、後ろのオークたちは味方の焼け焦げた死体を強引に踏み越え、ヨダレを撒き散らして突進を継続する!
「重装歩兵、前進! 包み込めッ!」
ドガンッ!!
ついに重装歩兵の盾の壁と、オーク軍が激突した!
オークたちは巨大な大斧やハルバードを力任せに振り下ろし、重装歩兵の頑丈な盾を力技で叩き割りにかかる。
だが、人間側も負けてはいない。極めて密集した陣形を維持しているため、オーク1匹に対して常に『2対1』『3対1』の形で長い槍を隙間から突き刺し、確実に息の根を止めていく!
左右の5千の部隊も順調に背後に回り込み、完璧な包囲殲滅陣が完成しようとしていた。
その瞬間──!
「撤退だあぁぁっ! 全員、全力で逃げろぉっ!」
指揮を執っていたオークキングが唐突に叫び、オーク軍は我先にと後ろへ向きを変えて逃げ出し始めた!
殿の防衛部隊すら存在しない、完全な「自由撤退」だ。
「なっ……逃げるだと!?」
重装歩兵たちが追いかけようとするが、オーク一匹一匹の威圧感と個の破壊力が凄まじく、完全な包囲網を閉じきることができない。何より、人間側の重装歩兵は極めて重い全身鎧を着用しているため、足が遅く、逃げ足の速いオークたちに追いつくことができなかったのだ。
「フハハハッ! 敵は敗走したぞ! 追えぇッ! 全軍、一気に殲滅せよ!」
勝利を確信した王国軍が、逃げるオーク軍の後ろ姿を追撃していく。
──だが、馬上でその光景を見ていたアレオン将軍だけは、鋭い眉をひそめていた。
(……おかしい。あまりにもあっさりと退却しすぎではないか? 通常、野性の魔獣というものは手負いになれば死狂いで暴れ回るはず。……まさか、オークどもに統制の取れた指揮官が存在するのか……?)
副官が笑いながら馬を並べた。
「将軍、考えすぎでございますよ! たかが豚どもの出来損ないに、そんな高度な知恵などあるはずがございません!」
「……む、そうだな。攻撃を緩めるな、追撃せよ!」
王国軍が敗走するオークを追い、完全に森の奥深くへと踏み込んだ──その時!
ガサササササッ!!
「「「グオオオオオオアアアッ!!!」」」
突如として、左右の深い茂みから、それぞれ1万──合計2万のオーク大軍勢が咆哮とともに姿を現したのだ!
「な、何ぃッ!? 伏兵だとぉっ!?」
アレオン将軍の顔色が、一瞬で土気色へと変わった。
「くっ……不覚! ハメられたかッ!! 全重装歩兵、殿に回れ! 魔法兵、即座に【ファイアウォール】で炎の壁を展開せよ! ガリア町へ向けて全軍撤退だあぁぁッ!」
ゴーッ!!
宮廷魔術師たちが焦燥に駆られて放った巨大な炎の壁が、左右の森を遮るように燃え上がる。
ガラード王国軍は炎の壁の『狭間』を通り抜けるようにして、死に物狂いで撤退を開始した。
足の遅い重装歩兵たちが一番後ろに残り、殿として迫り来るオークの波を必死に食い止める!
だが、狂乱したオーク軍は全身を炎で焦がしながらも【ファイアウォール】を力任せに突き破り、左右から怒涛の勢いで押し寄せてきた!
「ひぃぃぃっ!? 助けてくれぇっ!」
「陣形が崩れる! 逃げろぉぉっ!」
常勝を誇ったガラード王国軍2万は、恐るべき挟撃の前に見る影もなく崩壊し、惨めな大敗走へと転落していった。オーク軍は歓声を上げながら、敗走する人間たちを狩り立てるように追撃していく。
──そして。
ガラード王国軍とオーク軍の本頭が完全に激突し、お互いが身動きの取れない死闘へと突入したその瞬間。
「……よし、かかったな」
ガリア樹海の別エリアにて。
俺たち2万4千の超連合軍は、手薄になったオーク軍の本拠地(旧エルフ集落)へ向け、静かに、そして圧倒的な殺意とともに電撃強襲を開始したのだった!
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