第51話 【開戦】ガラード王国軍2万が出撃! 絶望のオーク5万を討つべく、最強の盟友と挑む電撃総力戦!!
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ガリア町の住民数人が、密かに樹海の深部へと足を踏み入れようとしていた。
かつての激戦の際、命からがら生き残った冒険者たちはガリア町には戻らず、散り散りに他の街へと流れていってしまった。
さらに、冒険者ギルドのギルド長や副ギルド長が相次いで命を落としたことで、ガリア町の冒険者ギルドは開店休業の壊滅状態に陥っていた。
これは、魔物の素材や魔石の仕入れで商売を成り立たせている商人たちにとって、まさに死活問題だ。
そのため、商人自らが危険を冒すか、あるいは金で雇われた住民たちが極秘裏に薬草などの素材を採取しに樹海へ潜り込むことが頻発していた。
さすがに凶悪な魔物の討伐は無理でも、浅瀬での薬草採取くらいなら素人の住民でも何とかなるだろう……という甘い考えなのだろう。
「ヒロト様、ガリア町の住民数名が樹海へと進入しております」
スパから念話でリアルタイムの報告を受け、俺たちは作戦室のモニター映像を眺めながら頭を抱えていた。
「住民が危ないわ……!」
アリアが青ざめた顔で呟く。
「うん……このままだと、うろついているオーク軍に見つかって一瞬で喰われるね」
スパが視界の端の映像を拡大しながら付け加えた。
「ヒロト様、オーク軍の小隊が住民たちの進路に向かって接近中です」
「小隊と言っても、かなりの数だね」とヒナが眉をひそめる。
オーク軍の小隊は、およそ100人規模だ。
俺たちが執拗なゲリラ奇襲を仕掛けてからというもの、オーク軍は少数での行動を完全にやめ、見回りひとつ出すのにも100人単位の重武装で行動するようになっていた。
「はぁ〜……助けるか。樹海には絶対に入るなって、あれほど冒険者ギルドを通じて触れ回っていたのに……一般住民には伝わっていなかったのか」
俺はため息を吐くと、影の中に潜むコボミへ指示を出した。
「コボミ、オーク軍に見つからないよう反対側へ回り込んで、爆発の魔道具を作動させてくれ。敵の注意を逸らすんだ」
「かしこまりました、ヒロト様!」
映像の先では、住民たちがようやく忍び寄るオーク100人の威圧感に気付き、ガタガタと恐怖に震えながら必死に脱出を図り始めていた。
直後──!
ドガァァァンッ!!
住民たちが逃げる方向とは完全に真逆、オーク軍小隊の右斜め前方で、腹に響く凄まじい爆発音が轟いた!
「ぬおおっ!? 敵襲か!? あの爆発音のした場所へ急げぇいッ!」
オーク軍は住民の存在に全く気付くことなく、一斉に爆発音の方向へと全速力で走り去っていった。
爆発の現場には砕け散った魔道具の残骸が転がっているだけで、もちろん誰もいない。
胸を撫で下ろした住民たちは、命からがらガリア町へと逃げ帰っていった。
◇
ガリア町の領主の館、豪華絢爛な『領主の間』。
前頭部が悲しく禿げ上がり、金髪に混ざる白髪が目立つ小太りの男──ガリア町領主、アーシュ男爵(50代)はイライラと部屋の中を歩き回っていた。
ギラギラと欲に狂った小さな目、脂ぎった醜い顔。
高級なシルクの貴族服を纏っているが、その表情は焦燥感に満ち満ちていた。
かつて冒険者ギルドが活発だった頃、このガリア町がもたらす利権と税収は莫大なものだった。だが、現在は激減の一途を辿っている。
数前、アキート商会を陥れて財産を根こそぎ奪い取ろうと画策し、失敗に終わってからというもの、どうにも領地経営が上手くいかない。収入は減る一方だ。
頼みにしていた冒険者ギルド長『災厄のゼータ』も、ゴブリン討伐で大失敗をやらかしたまま消息を絶った。
さらに今日、樹海に入った住民から「オークの大軍勢を目撃した」という悪夢のような報告が届いたばかりなのだ。
直属の上司であるアラント辺境伯経由でガラード国王へ「樹海への国軍派兵」を要請し、了承されてから相当な時間が経つが、いまだに出兵の知らせがない。
そこへ、年老いた執事が申し訳なさそうに部屋をノックし、入ってきた。
「アーシュ様! 王家より、出兵の準備が整った旨の緊急連絡が入りました!」
「おおおっ! やっと来てくれたか! して、何人ほどの兵を派遣していただけるのだ!?」
身を乗り出すアーシュ男爵に、執事は胸を張って答えた。
「アレオン将軍を大将として、兵数はなんと2万! さらに、宮廷魔術師部隊もフルメンバーで参加しているとのことです!」
「おおおッ! まさにガラード国軍をあげての本格的な大討伐ではないか! 素晴らしい! すぐにオーク5万の件も急ぎ追報として王都へ連絡しなさい!」
「かしこまりました!」
──そのやり取りを、俺たちはスパの小蜘蛛ネットワークを通じてバッチリ視聴していた。
「アリア、このガラード国軍2万の出兵、どう思う?」
アリアは腕を組み、真剣な表情で考察を述べる。
「アレオン将軍はガラード王国でも『常勝』と謳われる一番の凄腕将軍です。宮廷魔術師部隊まで投入となると、国も本格的に樹海の制圧へ本腰を入れたのだと思います」
「でも……兵数は2万だろ? 5万のオークに対して少なくないか?」
「……非常に少ないですね。通常のゴブリンやコボルト相手なら同数でも勝てますが、オーク相手となると最低でも『オーク1匹に対して人間2人』の兵力が必要です。物理的なスペックが違いすぎますから」
「宮廷魔術師部隊の広域火力で、その絶対的な戦力差は何とかなるものなのかな?」
「……正直、何ともならないと思います。オーク軍が相手で数が倍以上となれば、ガラード国軍の敗北はほぼ確定でしょう」
アリアの厳しい分析に、俺は納得の頷きを返した。
「スパ、王都の方にも小蜘蛛の派遣ってできているか?」
スパは自慢げに微笑み、優雅に礼を執った。
「まったく問題ございません、ヒロト様。王都の監視を行いつつ、各地で密かにスパイダー系の魔物を眷属化して増やしております。戦闘の際には裏でコソコソとレベル上げもこなしておりますので、ガリア樹海に棲息するスパイダー系の魔物は、すでにほぼ全て我が国の眷属となっておりますわ」
「おお! さすがスパ、完璧すぎる! 頼もしいよ。引き続き国軍の動向も監視しておいてくれ」
「承知いたしました」
◇
さて、情報が出揃ったところで、我が国の全首脳陣を集めた緊急作戦会議を開始するとしよう。
【参加メンバー】
■俺の側近陣:
俺、ハク、レイ、ライゾウ、リザ、スラオ
■俺の婚約者陣:
ヒナ、アリア、スパ、ハピ、コボミ
■領主陣:
湿原の領主・ゴーゴンのリンダ(蛇王の長女。初登場。冷艶な美貌と凄まじい魔力を秘めたゴーゴン族の姫君)
ダークエルフの女王・グレイア
コボルト領領主・コボ1
ゴブリン領領主・ゴブ1
オーク領領主・オク1
■その他最高幹部陣:
蛇王・リザルト
将軍・リガント
外務大臣・アキート
獣人国辺境伯・ガネーシャ
円卓を囲むのは、まさにガリア樹海を統べる最高峰の猛者たちだ。
「念話で事前に伝えた通り、ガラード王国からアレオン将軍率いる2万の国軍が出兵した。宮廷魔術師部隊も同行しているらしい」
静まり返る会議室で、俺は力強く宣言した。
「これを絶好の機会と捉え、我が国もオーク5万の大軍勢に対して【全軍総攻撃】を敢行する! みんな、出撃の準備をしてくれ!」
「「「「「承知いたしましたッ!!!!」」」」」
響き渡る万雷の雄叫び。
「ガラード国軍2万とオーク軍は、開けた平原で激しい野戦を行うと予想される。だが、俺たちにはダンジョンの絶対防壁と機動力がある。全軍で正面から当たる必要はない」
俺は作戦図を指差し、不敵な笑みを浮かべた。
「国軍2万とぶつかるオーク軍は、おそらく2万から3万。……つまり、敵の本陣や各集落に残された残存勢力は2万から3万にまで削られる! 俺たちはその隙を突き、手薄になった敵の重要拠点を電撃強襲する!」
そして、俺は腰の黒刀『ムラマサ』の柄に手をかけた。
「混乱の渦中、いつものように俺たち最強の精鋭メンバーで敵本陣へ突入し、大将である『オークエンペラー』の首を直接叩き落とす!!」
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