第50話 【無双】ダンジョンの悪魔的罠でオーク1万を壊滅! 絶望のゲリラ奇襲と、救出されし象獣人伯爵!!
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進撃の口火を切ったのは、5万のオーク大軍勢から分裂した1万の別動隊だった。
「ヒロト様、オーク軍1万が進発いたしました! 予期していた通り、南東に点在するオークの集落へと向かっております!」
スパの小蜘蛛ネットワークから送られてくる念話映像を、作戦室のスクリーンよろしく思考内で確認する。
南東の集落に住んでいた野良オークたちは、すでに我が国の地下ダンジョン第2階層へと完全避難を完了させていた。
地上に残されたかつての集落跡地は、ヒナのダンジョン改変機能によって跡形もなく消し飛び、ただの平穏な草むらへと貌を変えている。
駆けつけたオーク軍の兵士が、首を傾げて混乱の声を上げた。
「お、頭ぁ! 集落がありませぬ! 広場になっております!」
「なに……? 一体どういうことだ! 探せ!」
困惑するオークキングAが周囲を見渡すと、青々と茂る草むらの中央に、ポッカリと地下へ続く無骨な洞窟の入口がひとつだけ佇んでいた。
「むむ……あの怪しい洞窟を調べろ! 中に隠れているに違いない!」
オークキングAの命令を受け、探索のスキルなど一切持ち合わせていない先遣隊のオーク10名が、無警戒に洞窟内へと雪崩れ込んだ。
──だが、そこは悪魔の罠が張り巡らされた、ヒナ特製の絶対死地である。
「ぬわあああぁぁぁっ!?」
仕掛け床を踏んだ先頭のオークが、底なしの落とし穴へ滑落。底に敷き詰められた無数の鋭利な槍へ激突し、悲惨な串刺しとなる。
動揺した次のオークが足元の糸を引っかけると、左右の壁穴から凄まじい速度で極太の矢が連射され、肉体を蜂の巣に穿つ。
パニックになった後続が逃げ惑い別の踏み板を踏めば、天井から数トンもの巨大岩が落とし蓋のように叩きつけられ、ペシャンコの肉塊へと変えた。
ガタガタと全身を激しく震わせ、血まみれになった一人のオークだけが、半狂乱で洞窟から這い出てきた。
「ひ、ひぃぃぃっ! ど、洞窟の中は悪魔の罠だらけです! 私以外、全滅いたしましたぁぁっ!」
「ぬむむ……賢しくも罠などを仕掛けおって! たかが小細工、大勢で一気に突入して押し潰せぇいっ!」
オークキングAの力押しの命により、今度は100名のオーク軍が怒号を上げて洞窟へ乱入した。
だが、どれほど数を増やそうと、狭い洞窟内では自慢の巨体とパワーは何の役にも立たない。
次々と罠にかかって息絶えていく仲間たち。生じた死体の山を越え、死体の上に足を取られながら無理やり前進を試みるが、すれ違いすら不可能な絶望的な道幅だ。文字通り「死体の山を踏み越えて進む」しかない。
何とか罠地帯を強行突破した頃には、あんなにいた100名のオーク軍は半数以下の無惨な数へと激減していた。
ゼェゼェと荒い息を吐きながら進んだ先は、運悪く(あるいはヒナの設計通りに)T字路になっていた。
そこには、軽装の防具に身を包んだ我が国のゴブリン防衛部隊がニヤニヤと笑いながら待ち構えていた。
「ヒヒッ! 来た来たw 鴨がネギ背負ってやって来たぞw」
前衛のゴブリンAが姿勢を低くして長槍を極狭の通路へ向け、後ろのゴブリンBが手慣れた手つきで弓を引き絞る。
オーク兵がT字路の分岐点に顔を出した瞬間──!
シュバババッ! ドスッ!!
左右の影から死角を突く無数の矢が刺さり、さらに左右から極太の槍が寸分の狂いもなく首筋と心臓を突き穿つ!
「ぐあっ!?」
倒れた死体を強引に引きずり下ろし、次のオークが前に出た瞬間、再び左右から矢と槍の猛攻が襲いかかる!
なにせ通路が「一人分」の幅しかないのだ。どんなに敵が莫大な大軍勢を誇ろうと、この交差点においては常に【ゴブリン4対オーク1】という圧倒的有利な局地戦を強いられる。オーク軍はどれだけあがいても、そこから一歩先へ進むことすら叶わなくなった。
結局、命からがら洞窟から這い出してきた生存者オークが、涙目でオークキングAに報告した。
「あ、頭ぁ! 罠で半数以上が戦死し、奥のT字路でゴブリンどもに迎撃され、これ以上一歩も進めませぬぅぅっ!」
「ぬぐぐ……おのれ、不快な洞窟め! 仕方ない、ここは放置して他の集落へ進撃するぞ! 全軍撤収だ!」
作戦室でその光景をモニタリングしていたヒナが、ふふんと誇らしげに胸を張った。
「ふふ〜ん! ダンジョンマスターとしての私の真価が、やっと完璧に発揮できたわ!」
アリアも感動したように目を輝かせている。
「凄いですわヒナ様! たった4人のゴブリンで、100人のオーク大軍勢を完全に撃退してしまうなんて……!」
「まあ、実際は疲れが出ないように3交代制を組んでいるから、実質12人配置なんだけどね。仮にあのT字路を突破されても、その先にはさらに凶悪な第二・第三の罠と迎撃ポイントがいくつも控えているから、人数はもう少し用意してあるよ」
その後、オーク軍は他のオーク集落へも次々と進撃していったが、どの集落も寸分違わず「罠と迎撃の地下ダンジョン化」が完了しており、手も足も出ずにコテンパンに叩かれて本隊へと逃げ帰っていった。
地下へ避難していた元野良オークたちは、1万のオーク軍が手も足も出ずに脱兎のごとく逃げ出していく様を眷属念話の映像で視聴し、腹を抱えて大喜びしていた。
◇
野良オークの取り込みに失敗した5万のオーク本隊は、標的をオーク以外の他種族へと切り替えた。
コボルト、ゴブリン、ダークエルフの集落へも出撃したようだが、こちらも全て我が国によって「絶対防御ダンジョン化」されていたため、手ぶらで撤退を余儀なくされた。
痺れを切らしたオーク軍は、我が国の傘下に入っていない小人と獣人の集落へ怒涛の勢いで襲いかかった。
小人族は妖精たちと協力して集落に籠城。妖精の強力な【結界】を張り展開することで、かろうじて猛攻を持ちこたえている。
一方、自慢の牙と腕力に絶対の自信を持つ獣人たちは、愚かなことに平原での正々堂々とした野戦を挑んでしまった。結果は大惨敗。壊滅的な打撃を受けて惨めな撤退を余儀なくされ、いまや樹海の深林へ散り散りに逃げ延び、泥沼のゲリラ戦を展開せざるを得なくなっていた。
城の応接間にて、退屈そうに大剣を磨いていた蛇王様が、不満げに鼻を鳴らした。
「婿殿ぉ、儂はすっかり退屈でおかしくなりそうだぞ。いつまでこうして、亀のように洞窟へ引っ込んでおらねばならんのだ?」
「ふふ、そうですね。そろそろ……少しだけ反撃に出ましょうか」
その時、応接間の扉が開き、30センチのミニサイズになったライゾウがパッと飛び込んできた。
「俺もその反撃に参加するぞ、主様!」
「お、ライゾウ! 帰ってきたんだね。エルフの里に取り残されていた精霊たちはどうなった?」
「全員無事に保護し、ダンジョン内の『精霊の泉』へ送りとどけたよ。みんな喜んで泉で泳いでいるさ!」
「ありがとうライゾウ。よし、そのまま俺たちの反撃に力を貸してくれ!」
俺たちは志願者を募り、森で泥沼のゲリラ戦を繰り広げているオーク軍へ『奇襲作戦』を仕掛けることにした。
スパの小蜘蛛監視網は、いまやガリア樹海全体を網羅しており、オーク軍の移動経路や部隊配置は手のひらを見るように完璧に把握できている。さらに、ヒナのダンジョン機能を駆使すれば、樹海のあらゆる場所へ一瞬で繋がる「ダンジョン出入口」を無数に設置可能だ。
少数で調子に乗って捜索を行っているオークの探索隊や、追い詰められた獣人を深追いして本隊から孤立した小規模部隊の頭上に、出入口から一瞬で奇襲を叩きつける!
「なっ!? どこから現れたあぁっ!?」
「グギャアァァッ!?」
前兆ゼロの空間跳躍から放たれる、俺や蛇王様、ライゾウ、ハクたちの圧倒的な暴力。
オーク軍は反撃の機会すら与えられず、日に日に着実にその数を減らしていった。5万の大軍勢からすれば微々たる数字かもしれないが、敵の精神的な疲労と恐怖は確実に蓄積している。
何より、敵の狙いである「戦力の増強(レベルアップと苗床確保)」を完全に阻止できているのが大きい。
そんなゲリラ奇襲の最中、オーク軍に追い詰められていた獣人の部隊を救出した際、何人かの獣人有力者と懇意になることができた。
その中でも一際異彩を放っていたのが、巨躯を誇る象の獣人『ガネーシャ』だ。
彼はなんと本国である「獣人国」の現役伯爵であり、本国においても絶大な発言力と武力を持つ重鎮だという。
「ヒロト殿……! 我らを見捨てず救っていただき、感謝の言葉もございません!」
現在、ガネーシャ伯爵とその生き残った優秀な部下たちは、我が国の安全な地下ダンジョンへと避難し、至れり尽くせりの歓待を受けてすっかり我が国のファンになっていたのだった。
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