第44話 蛇王すら悶絶する破格の覚醒! 突如として「国王」へ奉られた俺と、逃した魚の大きさに戦慄する蜥蜴将軍
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果てしなく広がる広大な湿原の最奥に鎮座する、巨石で築かれた威厳溢れる蛇王の城。
その厳粛な謁見の間にて、俺は蛇王リザルドと対峙していた。
「蛇王様、先日の戦いにおける助太刀、心より感謝申し上げます。おかげさまで無事にゴブリンキングを打ち倒すことができました。本日はその御礼の品をお持ちいたしました。どうかお納めください」
俺が合図を出すと、配下たちが恭しく献上品を並べた。
莫大な魔力を秘めたゴブリンキングの巨大な魔石。そして我が拠点で作られた至高の食糧や高級食材、ダンジョンの技術を惜しみなく注ぎ込んだ高性能な武器や防具の数々だ。
蛇王は金の瞳を細め、満足げに頷いた。
「うむ! 婿殿、ありがたく頂戴しよう。……ところで婿殿、主自身はあまり意識しておらんのかもしれぬが、この度の戦争によって、主はコボルトとゴブリンの全集落群、さらにはオークの集落の大部分をも実質的に支配・統治する立場となった。これは紛れもない事実である」
「はぁ……言われてみれば、確かにそうなりますね」
「我が国としては、婿殿の圧倒的な勢力と正式に『同盟』を結びたいと考えておる。そして同盟を結ぶにあたり──婿殿には建国してもらい、正式に『王』となってもらわねばならんのだ」
「えっ!? 国!? 俺が……国王!?」
突拍子もない言葉に、俺は思わず素声を上げてしまった。
蛇王はニヤリと力強い笑みを浮かべ、説明を続ける。
「国とは即ち『主権』『領土』『国民』の三要素が存在し、他国がそれを承認すれば成り立つのだ。婿殿には既に揺るぎない主権と広大な領土、そして数多の国民(配下)がおる。まずは我が国が真っ先にそれを承認しよう。さらに、救出されたダークエルフの国も婿殿との同盟に参加したいと熱望しておる。この三国による相互不可侵条約を結びたいのだ」
「なるほど……。相互不可侵条約は、これから拠点を発展させていく俺たちにとっても願ってもない提案です。ぜひともよろしくお願いいたします!」
棚から牡丹餅どころか、いきなり一国の王になってしまうとは。人生何が起きるか分からないものだ。
一筋縄ではいかない政治の話が一区切りつくと、蛇王の視線が俺の隣に立つハクへと向けられた。
「ところでハク、風の噂で聞いたのだが……伝説の『ホワイトゴーゴン』に進化したそうではないか」
「うん、進化したよ」
ハクが素っ気なく答えると、蛇王は玉座から身を乗り出し、目を輝かせた。
「おおおッ! それはおめでたい! 伝説の種族への進化、我が娘ながら誇らしいぞ! 今夜は盛大にお祝いの宴を開こう。2、3日はこの城に泊まっていきなさい!」
「いや! 戦後処理が色々あって忙しいから帰るわ」
食い気味の即答かい!
絶対そんなに忙しくないだろ!
断られた蛇王はショックを受けたように肩を落とし、ギラリと怪しい光を瞳に宿して俺を直視してきた。
「む、婿殿……ハクが居ないと、戦後処理とやらは進まぬのかね……?」
おいおいおい、俺に振るんじゃない!
ハクの冷たい視線と、蛇王の縋るような視線が俺に集中する。
「え~……それは、ですね……その……」
どう答えるのが正解なんだ!? 俺が焦って冷や汗を流していると、ハクがズカズカと前に出て、腰に手を当てて父親を睨みつけた。
「お父さん! ヒロトに余計なこと聞かないで! 私がいなくても戦後処理くらい余裕でできるわよ! でもね、正妻である私が不在の隙に、他の女の子たちにヒロトを独占されたら大問題でしょ!? 国を治めておいてそんな乙女心も分からないの!? 全くもう!」
ハクはぷんぷんと顔を真っ赤にして怒っている。
おお……! さすが正妻ハクさん、完璧すぎる120点満点の解答だ!
蛇王リザルドは「ぐぬぬ……」と悔しそうに顔を歪めた。
「うむぅ……そうだったのか。主たちがそこまでラブラブならば、親として邪魔はできぬな……。致し方あるまい。また余裕ができたら来なさい」
「はいはい。それじゃ、帰るわよヒロト」
(ねえハク、お父さんあんなに残念がってるし、1日くらい泊まっていってあげたらどうだい?)
俺が念話で密かに語りかけると、ハクは即座に念話で返してきた。
(嫌よ。お父さん、娘離れできてなくてキモいんだもん)
蛇王様……娘にそこまで言われるなんて、心底かわいそうだな……。
気を取り直し、今度は俺の隣に控えていたリガント将軍が前に出た。
「蛇王様、ただいま戻りました。事前報告の通り、蛇王軍としての責務を無事全うし、ゴブリンどもに完全勝利いたしました。我が軍の死者はゼロです。このような完璧な勝利、我が武勇の歴史においても初めてにございます」
「うむ、よくやった! 婿殿の支援があったとはいえ、お主の采配が見事であったと報告を受けておるぞ」
「滅相もございません。全てはヒロト様の卓越した戦略と戦術、そして神々しき眷属様方の圧倒的なお力のおかげにございます」
「ほう……婿殿の配下は、それほどまでに凄まじいか」
「はい。そして私自身もヒロト様の眷属にしていただき、此度の戦で戦う前の倍以上の力を手にいたしました。さらには……『リザードマンキング』へと進化を遂げたのです!」
「なにィ!? む、むむむ……っ!」
……あれ? 蛇王様、リガント将軍が俺の眷属になる件って既に了承済みじゃなかったっけ? なんでそんなに動揺してるんだ?
蛇王は羨ましさと悔しさが混ざり合った表情で、唸るように呟いた。
「たった一度の戦で、倍以上の力と王種への進化だと……!? うぅ、羨ましい……なんという羨ましさだ……!」
そっちの動揺かい! 破格のボーナスに対する嫉妬かよ!
リガント将軍は誇らしげに胸を張り、追い打ちをかけた。
「ははは! 息子のリガールも共に『リザードマンキング』へと進化いたしましたぞ!」
「何とッ!? むむむ……わ、儂もヒロト殿の眷属になり……いや、一国の王である身でそれは無理か……しかし……むむむ……ッ!」
蛇王様、本気で身悶えして羨ましがっている。威厳が台無しだ。
「つきましては蛇王様。この後、私はヒロト様の領土へ戻り、正式に眷属として配下に入る所存です。今まで長きにわたり、誠にありがとうございました。腹心と私兵を連れ、ヒロト様の領地へ帰らせていただきます」
「……うむ。大義であった。婿殿のもとで、さらに武名を轟かせるがよい」
「ははっ!」
熱い別れの挨拶を終え、俺たちは謁見の間を辞した。
長い廊下を俺とハク、リガント将軍の三人で歩いていると、前から焦った様子で走ってくる一人の壮年のリザードマンがいた。リガント将軍の長男、リガリアだ。
「父上ッ! ヒロト殿の配下になられたと聞きましたが、本当なのですか!?」
リガリアは信じられないといった様子で叫んだ。
リガント将軍は足を止め、厳格な表情で長男を見下ろす。
「うむ、真じゃ。ヒロト様の眷属となったおかげで、儂は『リザードマンキング』へと進化を果たし、さらに左目には絶大な力を秘めた『魔眼』を授かった。……それからリガリアよ。ヒロト様は近く一国の『王』となられるお方だ。口の利き方には十分注意せい」
「リ、リザードマンキング……!? 一国の王……!?」
あまりの衝撃事実に、リガリアは開いた口が塞がらない様子だ。
「お主がヒロト様からの眷属化の打診を断り、代わりに弟のリガールが眷属となったのは知っておろう? そのリガールもまた、儂と同じく『リザードマンキング』へと超絶進化を遂げたぞ」
「えぇッ!? あのリガールまでキングになったのですか……!?」
リガリアの顔がみるみる蒼白になっていく。
かつて自分が見下していたかもしれない弟が、自分を遥かに置き去りにして最高峰の種族へ進化してしまったのだ。
リガント将軍は深く息を吐き、重厚な声で息子に諭した。
「人生には、己の運命を左右する重大な選択の瞬間がある。儂とリガールはヒロト様の眷属となる道を選び、リザードマンキングとなった。この選択が本当に正しかったかどうかは今後の働き次第だが……お主も今後、重大な選択を迫られた時は、目先のプライドにとらわれずよく考えて選択するのだな」
「ッ……! 今からでも……今からでもヒロト様の眷属になりたいと言ったら、やはり無理でしょうか……!?」
プライドを捨て、縋るような目で尋ねるリガリア。
だが、リガント将軍は容赦なく首を横に振った。
「無理じゃな。それ以前に、お主は蛇王様の前で大見得を切って眷属化を断ったのだぞ? 今さらどのツラ下げてそんなことが言えるのだ」
「…………っ」
ぐうの音も出ず、その場に崩れ落ちそうになるリガリア。
そんな親子の愛憎混じるやり取りを、俺は少し離れた場所から「うわぁ……逃した魚が大きすぎたパターンの顔だ……」と思いながら生暖かく見守っていた。
「さて、それじゃあ拠点に帰ろうか!」
ハクの手を握り、俺たちは意気揚々と自分たちのホームへと帰還した。
それにしても……『国』かぁ。
自分の国を持つなんて、地球にいた頃には考えもしなかったな。
(国を作るとなると、まずは国名を決めなきゃな。どんなかっこいい名前にしようか……?)
一国の王としての第一歩を踏み出した俺は、これから始まる壮大な国造りと賑やかなハーレム生活に胸を躍らせるのだった。
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