第430話 【いざ最終決戦へ!】集結する最強の眷属と絶望を破る熱量!降臨せし日照り神・魃が打ち払う灰色の暗霧!
全軍発動の昂揚感が広がっていく中、ふと後ろを振り返ると、そこには苦笑いを浮かべた悪魔ゼパルのリガント将軍と、毅然とした表情の悪魔ナベリウスのコボ2が立ち並んでいた。
「ヒロト陛下……! これほどまでの精鋭と重鎮たちが出陣するというのに、私たち二人を置いていくなんて殺生なことは言わないでしょうな!? 樹海王国が建立される以前から将軍を務めていたこの私めが、過去最大の決戦に参加もできず、指を咥えて見ているだけなんて到底耐えられません!」
リガント将軍が胸を張り、燃えるような眼差しで熱弁を振るう。その隣で、コボ2も深く頷いて一歩前に踏み出した。
「勿論、私も参戦いたします。陛下の力となり、敵勢を壊滅させて見せましょう」
思わず苦笑いが漏れる。前回の戦闘で、俺たちが初めて敗北を喫して手ぶらで撤退してきたからな……。みんな、俺たちの身を本気で心配して、少しでも戦力を補強しようと駆けつけてくれたのだろう。
「良し……分かった! お前たちの忠義、頼もしい限りだ。この豪華なメンバーで全軍突撃するぞ!」
いざ蚩尤との決戦に出陣しようと陣形を整えたその時、さらに空間が揺らぎ、俺の妻たちが世界樹の前に転移してきた。
「ヒロトーっ!」
駆け寄ってきたのは、俺と同じく地球からの異世界転移者であり、ダンジョンマスターでもある吸血鬼真祖のヒナだった。ヒナはギュッと俺の腰に抱きついて胸に顔を埋めてくる。
「ヒロト……無理だけは絶対にしないでね。嫌だからね、あなたが傷つくのは」
「分かってるよ、ヒナ」
ヒナの頭を優しく撫でていると、そのすぐ後ろから、同じく異世界転移者である魔女のサクラが、愛猫の黒い猫又ミサキを肩に乗せながら歩み寄ってきた。
「ちょっとでも危なくなったら、意地なんて張らずに直ちに逃げて来てよ? 帰ってくる場所はここなんだからね」
心配そうに眉をひさげるサクラの横では、龍脈の魔女であるウィーラが不満そうに腕を組んで佇んでいた。
「むぅ……儂も連れて行くのじゃ! 魔法の支援なら任せるが良い!」
「だめに決まってるでしょ、ウィーラ。君には小国軍西部の難民受け入れと避難所全体の管理を全権で任せてるんだから。ここを空けられたら困るよ」
「むむ……そうなんじゃが……しかし心配で居ても立っても居られんのじゃ……」
しゅんとするウィーラを宥めていると、元は人間であり、俺の力によって美しい翼を持つ天使へと進化を遂げたアリアが静かに駆け寄ってきた。
「ヒロト様……お願いです、必ず……必ず無事で戻ってきてください」
アリアの透き通るような瞳には、溢れんばかりの情愛と不安が揺れていた。
「勿論だよ、アリア。必ず蚩尤を倒して、みんなの元へ戻ってくるさ」
俺は力強く微笑みながら、アリアの小さく温かな両手を優しく包み込むように握りしめた。
さらに、後方の拠点を預かる大悪魔バエルのスパも静かに俺の後ろへと姿を現した。
「ヒロト陛下。我らは勝利を固く信じております。最高の祝勝会の準備を整えて、お帰りをお待ちしております」
スパの後ろには、専属メイドであるブラウニーのブラリリ、ブラルル、ブラロロの三人も勢揃いし、健気な笑顔を浮かべて頭を下げている。
「陛下のために、とびきり美味しいお料理を沢山ご用意してお待ちしますね!」
「ああ、楽しみにしているよ。みんなよろしく頼むな」
みんなが俺を心から心配してくれているのは痛いほど分かるが、正直ちょっと大袈裟じゃないだろうか? 早く出発しないと、心配した眷属たちがまだまだ際限なく集まってきてしまいそうだ。
「よし……全軍、行くぞッ!!」
俺は空間跳躍の魔法を展開し、拠点の都市地下深くに広がる大ダンジョンの中心広間へと一気に転移した。
暗闇に包まれた広間には、すでに避難を完了させた悪魔アモンのコボ1、悪魔ロノウェのゴブ1、亜神ヴァラーハのオク1、そして砂漠から戻った悪魔パイモンのアンナが待機していた。
俺は速やかに、今回共に出撃する最強の決戦メンバーたちを広間へと召喚する。
「アンナ、地上と迷宮入口の戦況はどうなっている!?」
アンナは即座に手元の魔導書を開き、真剣な面持ちで報告を口にした。
「現在、悪魔モラクスのオガ1が率いる防衛部隊が、迷宮の最深部入口にて侵攻してきた魑魅魍魎たちを迎撃しております! しかし、敵は例の悪夢のような灰色の霧を全面に展開しており、こちらの視界と魔力が阻害されて完全に押され気味です……! オガ1の圧倒的なタフネスと防衛能力があるからこそ、何とか時間を稼げているという非常に危機的な状況です!」
「ふむ……状況は理解した。ならば一刻の猶予もないな。これから迷宮の外、敵軍の背後へ全員を直接召喚する! 押し寄せる魑魅魍魎の雑兵どもは、ゴブリン、コボルト、オーク、オーガ、そしてキラーアントの防衛軍勢に任せるぞ。みんな、覚悟は良いな! 行くぞッ!」
「「「おおおおおっ!!!!」」」
眷属たちの猛々しい咆哮が地下ダンジョン全体を激しく揺らした。
次の瞬間、俺は全魔力を解き放ち、敵主力が展開する蚩尤軍の完全なる背後空域へと果敢に一括転移を果たした!
空間が歪み、俺を中心として樹海帝国最強の精鋭たちが凄まじい圧迫感とともに一斉に降臨する。
不穏な気配を察知した巨体の魔神蚩尤が、その牛の頭部をぬっと遅ろ前へ振り返らせ、爛々と光る四つの目で俺の姿を捉えた。
「ハッ……性懲りもなく、また死にに来たか、愚かな人間どもめ」
蚩尤の冷徹な言葉とともに、側近である風伯と雨師が怪しい呪文を詠唱しながら前へ進み出る。瞬く間に、あの視界と魔力を奪うドス黒い灰色の霧が爆発的に湧き出し、俺たちの周囲を立ち込めさせて覆い尽くそうとした。
だが——もう前回と同じ展開にはさせない!
「ハーミア! 頼んだぞッ!!」
俺が全軍の先陣を切って叫ぶと、砂漠から緊急召喚された勇者ハーミアが、一本足で堂々と大地に立ち、力強く頷いた。
「任せて! 私の全てをかけて、この悪夢を晴らしてみせるわ!」
日照り神である『魃』へと進化したハーミアの体内から、世界を灼き尽くさんばかりの途方もない超高熱量が、一瞬にして全方位へと爆発的に拡散された!
ゴォォォォォッ!!
大気が一瞬で干上がり、空間そのものが赤く狂暴に歪む。
ハーミアが放つ絶対的な『日照り』の権能は、迫り来ていた神聖なる灰色の霧に含まれる水分という水分を一瞬で蒸発させ、影も形もなく完膚なきまでに消滅させてみせた。
「なに……!? 我が霧が……消えただと!?」
風伯が驚愕に目を見開き、雨師が絶句する。
水分を完全に失った霧は、ただの薄い神気の残り香となって虚空へ散っていく。視界は遮られることなく晴れ渡り、魔力の阻害も完全に解除された。
ついに、蚩尤軍が誇る最大の絶対障壁を打ち破ったのだ!
「よし! 秘策は成功だ! 灰色の霧は完全に封じたぞ!!」
俺の勝利の宣言が、戦場全体に轟き渡った。




