第424話 【圧巻の無双戦法!】豪剣を振るう激神リザルド!凶牙の睚眦を粉砕し勇者たちが反撃へ打って出る爆裂決戦!
荒野を揺るがす熾烈な猛攻の中、救援として舞い降りた樹海帝国の屈指の幹部たちが牙を剥く。
元蛇王バジリスクから驚異的な進化を遂げ、いまや樹海帝国軍を率いる重鎮・悪魔ボティスのリザルド元帥は、巨大な大剣を肩に担ぎ、勇者タクミと勇者ハーミアが死闘を繰り広げている戦域へと視線を送った。
黄色い牛の龍である囚牛、そして凶暴な四つ足の獣の形をした龍である睚眦。その二体を見比べたリザルドは、ニタリと口元を歪め、獰猛な殺気を全開にして睚眦へと一直線に向かって跳んだ。
「ハッハッハ! どちらも良い顔をしておるが……見たところ、こいつの方が歯応えがあり、戦いがいがありそうだぞ!」
ドゴォンッ! と地表を砕くような勢いで睚眦の真っ正面へ飛び込んだリザルドは、挨拶代わりに大砲のような威力の超重圧大剣を頭上から豪快に叩き落とした。
その身を切り裂かんとする一撃の凄まじさに、睚眦は冷や汗を流しながら慌てて横へと飛び退く。
振り抜かれた大剣が地面を大きく削り取り、凄まじい衝撃波が巻き起こった。
土煙の中から大剣を軽々と引き抜いたリザルドは、肩で息をする勇者タクミへ向けて豪快に言い放った。
「タクミ、このトカゲ野郎は儂が引き受けた! お前はさっさとハーミアの元へ行き、協力してあの牛頭を片付けろ!」
「リザルド元帥……! 有難う御座います、お言葉に甘えさせていただきます!」
タクミは感謝の言葉を叫ぶと、すぐさま背を向け、苦戦する勇者ハーミアと戦っている囚牛の元へと全速力で駆け出していった。
こうして始まった、悪魔ボティスのリザルドVS獣の龍である睚眦の死闘。
仲間を奪われ、一対一となった睚眦は、激痛と怒りに身を震わせながらリザルドを恐ろしい眼光で睨みつけ、地響きのような唸り声を上げた。
「ガアアアアアッ!!」
その瞬間、睚眦の姿が消えた。大気を置き去りにするほどの凄まじい神速の一歩。直前で爆発的な跳躍を見せ、鋼鉄をも容易く切り裂く爪を鋭く突き出し、リザルドの顔面を抉り取らんと襲いかかる。
だが、リザルドは大剣を上段に構えたまま、微動だにせずその場に待っていた。圧倒的な威圧感と、逃げ場を与えない完璧なインターセプトの構え。
あまりの隙の無さに、肉食獣としての直感が危険信号を鳴らしたか、睚眦は爪を振り下ろす寸前で強引に軌道を逸らし、攻撃を断念して回避へと転じた。
ズドンッ!
空を切る形でリザルドの大剣が遅れて振り下ろされる。睚眦は辛うじて直撃を免れたものの、あまりの風圧と衝撃波に煽られて体勢を大きく崩してしまった。
「甘いな!」
そこへ、リザルドの極大の蹴りが一切の猶予なく叩き込まれる。
ガギィィンッ!
衝撃音が響き渡り、睚眦は体を「く」の字に折り曲げながら遥か後方へと吹き飛ばされた。何度も荒荒しい地面をバウンドし、土煙を上げながら着地する。
すぐさま跳ね起きて身構える睚眦。肉食獣特有のしなやかな体躯を極限まで緊張させ、瞬きすら忘れて獲物の隙を狙う瞳でリザルドを鋭く睨みつける。
「ふむ……流石は龍の鱗と言うべきか。一発叩き込んだ程度では、蹴り殺す事までは出来んか」
リザルドはニヤリと笑うと、大剣をぬうっと中段に構え直した。
睚眦はリザルドから決して目を離さず、重心を極限まで低く保ちながら、ゆっくりと円を描くようにリザルドの周りを回り始める。対するリザルドも、正面を絶対に崩さないよう、じりじりと睚眦の動きに合わせて身体の方向を変えていく。
徐々に、だが確実に速度を上げる睚眦。円運動の軌道を歪め、旋回しながら着実に間合いを詰めていく。
刹那。
睚眦が猛然と一歩を踏み込んだ。
(——フェイントか!)
リザルドは間髪入れず、中段の構えから必殺の一刺しとして大剣を突き込む。
しかし睚眦は前へ飛び込まず、右側へと電光石火の跳躍を見せた。突き出された大剣の刃を紙一重で躱すと、その勢いのまま空中で跳ね上がり、リザルドの左側から無防備となった首元へ向けて凄まじい大顎を開いて噛み付いてきたのだ。
死角からの完璧な奇襲。勝ち誇るかのように目をギラつかせる睚眦。
だが、死線を幾度となく潜り抜けてきた戦神リザルドの反応速度は、その予想を遥かに凌駕していた。
「ぬるい!!」
リザルドは無理に大剣を引き戻さず、そのまま柄頭を逆手に持ち替え、鋼鉄の如き大剣の柄で睚眦の顔面を横から強打した。
ゴカァッ!!
「グガッ!?」
強烈すぎる一撃を顔面に食らった睚眦は、頭部を右側へ大きく曲げられ、空中での体制を完全に喪失する。
その一瞬の隙を、リザルドは見逃さない。
「砕け散れぇぇぇッ!」
瞬間。八相の構えへと一瞬で移り変わった大剣が、閃光のような最速の袈裟斬りとなって繰り出された。
ズバァァァァンッ!!
絶大な破壊力を秘めた一刃が、神獣睚眦の頑強な鱗も肉体もまとめて斜め一文字に両断した。膨大な鮮血が爆発するように舞い散り、二つに分かたれた巨体が荒野へとドサリと崩れ落ちる。
一方、別視点では勇者ハーミア&勇者タクミVS牛の龍である囚牛の死闘が続いていた。
勇者ハーミアは、終始囚牛に圧倒され、防戦一方に押し込まれていたのだ。
囚牛の全身から流れる奇妙な曲が空間を震わせ、ハーミアの体調や平衡感覚を激しく狂わせる。まともに立つことすら困難な状態の中、囚牛の鋭い角、鋭利な爪、そして鞭のようにしなる尾が、執拗にハーミアの身体を傷つけていた。
ハーミアは息を荒らげ、致命的な一撃だけはすんでのところで躱し続けている状態だ。
「くっ……まだまだ……私は折れない……!」
そこへ、敵をリザルドに任せて駆けつけてきたタクミが勢いよく飛び込んできた。
「ハーミア! 助けに来たぞ!」
「馬鹿か! 不用意に近付くな!!」
ハーミアが叫ぶが、時すでに遅かった。
「えっ……!?」
間近に飛び込んだ瞬間、囚牛の奏でる不気味な曲がタクミの神経にまで侵入し、その空間認識と感覚を瞬く間に狂わせる。
一見すると牛の姿でありながら、その異様に細長い身体が、まるで巨大な蛇のように怪しくうねりながらタクミへと襲いかかる。
しなやかにとしなった囚牛の尾が、爆音とともにタクミの足元を打つ。
タクミは即座に危険を察知し、完璧なタイミングで跳躍して躱した……つもりだった。
しかし、現実は異なっていた。激しく打ち下ろされた囚牛の尾は、タクミが完璧に躱して無事に着地したはずの場所を、まるで最初から狙っていたかのように正確に打ち付けたのだ。
曲によって感覚を狂わされたタクミは、まるで自ら進んで攻撃が降り注ぐ場所へと移動してしまったかのようだった。
「がはっ……!?」
強烈な一撃によって足を払われ、タクミは激しくバランスを崩して地表へと倒れ込んでしまう。
『竜生九子』の凶悪な特異能力の前に、勇者たちは再び絶望的な試練へと直面していた。




