第419話 【不落の難攻不落要塞化!】崩壊した城壁都市を電撃奪還!怒濤の軍勢展開と地下迷宮トンネル開通作戦!
レイの防衛魔法が光の粒となって消え去ると同時に、待ってましたと言わんばかりに再び無数の魑魅魍魎たちが蠢き出し、凄まじい咆哮を上げながら襲いかかってきた。
俺たちは武器を手に取り、群がる異形どもを薙ぎ払い、踏みつぶしながら前進を再開する。だが、どこを見渡しても敵、敵、敵。地表の亀裂や影から無限に湧き出てくるような狂乱の勢いに、当初の計画よりも進軍速度は明らかに大幅な遅れを見せていた。
「ふむ……このペースだと、今日中に目的地へ到達するのは流石に厳しいな。今日の宿泊場所はどうするか」
俺は一旦立ち止まり、影に潜むスパへ念話で問い合わせを飛ばした。
『スパ、この近くに安全に羽を伸ばして泊まれそうな場所はあるかい?』
頭の中で、スパの落ち着いた声が返ってくる。
『陛下、スパでございます。ここから約二キロメートル先、かつて南の王国の重要拠点であった城壁都市の跡地が存在いたします。ただし……現在は魑魅魍魎たちが巣窟として集結しており、かなりの数が溜まっておりますね』
『ありがとう、十分だ。そこを俺たちの第一前進拠点にしてしまおう』
俺は念話を終えると、すぐ横で紫電をバチバチと撒き散らしているライゾウと、甲冑を響かせるアンナに向かって鋭く指示を出した。
「約二キロ先に城壁都市跡がある。そこを奪還して今晩の拠点にすることにした。ライゾウとアンナ、先行しての中に溜まっている魑魅魍魎どもを一気に掃討してくれ! アンナは掃討後、そのまま都市の防衛体制を整えてくれ」
俺の言葉に、ライゾウは凶悪な笑みを浮かべて豪快に胸を叩いた。
「ハハハッ、任せとけ! 害虫駆除なら俺の雷撃が一番手っ取り早いからな!」
「承知いたしました、ヒロト陛下。我がキラーアント軍団の威信にかけて、即座に安全を確保いたします!」
直後、ライゾウの身体が眩い巨大な紫の雷光へと変化し、地表を這う魑魅魍魎たちを片っ端から極絶の電流で蒸発させながら、弾丸のような速度で前方へと突き抜けていった。
続いてアンナが両手を掲げると、空を黒く染め上げるほどの無数の翅蟻の群れが召喚された。超音波のような羽音とともに押し寄せた翅蟻の津波は、前方に立ちふさがる異形どもを瞬く間に食い散らし、肉片すら残さず消滅させていく。
さらにアンナは、強靭な大顎を持つ巨大なキラーアント部隊を大量に召喚。翅蟻の攻撃を生き延びた撃ち漏らしの敵を、完璧な連携で次々と噛み殺し、掃討していった。
「よし、俺たちも二人に続いて突撃だ!」
圧倒的な先制攻撃によって作られた安全な道を通り、俺たち本隊も敵の残党を蹴散らしながら猛スピードで突き進む。
そして到着した城壁都市の跡地。
外周を囲む巨大な石造りの城壁はあちこちが激しく崩落し、かつての凄惨な戦闘の爪痕を色濃く残していたが、大部分は辛うじて原形をとどめていた。
俺たちが崩れた大門から都市の内部へと足を踏み入れると、そこには文字通り山のような魑魅魍魎たちの死骸が転がっていた。ライゾウの神雷によって黒焦げになった屍と、アンナの眷属に噛み砕かれた残骸が泥のように広がる。
すでにアンナのキラーアントたちが手際よく働き、街中に散らばる死骸を巨大な顎で運んで数箇所に整然と積み上げて整理していた。城壁の崩れかけた隙間や周囲にもキラーアントたちがびっしりと配置され、外部からの新たな敵の侵入を完璧に防いでいる。
「すごい……一瞬で都市一つを鎮圧しちゃうなんて」
勇者タクミが息を呑み、ユイやハーミアも感嘆の声を漏らした。
「よし、まずはこの崩落した城壁の緊急復旧と、万全な防衛体制の構築だな。相手の数が底無しなら、こちらも圧倒的な『数』と『組織力』で対抗するとしよう」
俺は空間を切り裂き、樹海帝国が誇る強力な軍団長たち——コボ1、ゴブ1、オク1、オガ1の4人を一気に召喚した。
召喚の光の中から姿を現したのは、悪魔アモンのコボ1、悪魔ロノウェのゴブ1、亜神ヴァラーハのオク1、そして悪魔モラクスのオガ1だ。
「みんな、急な召喚に応えてくれてありがとう。俺たちは今、南の王国の深部まで進出してきた。この都市を南の王国侵攻における最重要拠点『前線基地』とする! 諸君の眷属であるコボルト、ゴブリン、オーク、オーガの大軍勢を召喚し、東西南北の防衛と城壁の急速復旧をお願いしたい。眷属は適宜交替させて休ませながら、24時間態勢で対応させてくれ」
俺の命を受け、4人の将軍たちは力強く拳を胸に当てて膝をついた。
「ハッ! 陛下のお言せのままに! 我がコボルト軍団の工芸と建築の技、存分にお見せいたしましょう!」
「ヒロト様のために、ゴブリンたちの圧倒的な数とチームワークで鉄壁の陣を敷きますぞ!」
「フハハ! 我がオークの豪腕にかかれば、城壁の修復など朝飯前でございます!」
「オーガの怪力で、寄ってくる化け物どもを片っ端から粉砕してみせましょう!」
4人は即座に東西南北の四方に分かれ、それぞれ無数の眷属を召喚して大規模な作業と防衛を開始した。
俺はアンナに向き直り、その肩を叩いた。
「アンナ、先陣を切っての掃討と防衛、ご苦労様。ここからの外周防衛はコボ1たちに任せて、アンナの眷属は都市内部の拠点化と、俺たちが快適に休めるための陣地設営を頼む」
「承知いたしました、ヒロト陛下! すぐに最高の司令部と宿泊所を構築いたします!」
こうして、南の王国の廃城壁都市に立て篭もり、着々と「絶対不可侵の前線要塞化」が進められていった。
所々が崩れ落ちていた城壁は、オク1のオークたちが巨石を担ぎ上げ、コボ1のコボルトたちが土木魔法と錬成術で瞬く間に修復・強化していく。四方八方から匂いを嗅ぎつけて押し寄せてくる魑魅魍魎たちに対し、修復された城壁の上から怒濤の迎撃が叩き込まれる。
東の防衛線はコボ1率いるコボルトの精鋭弓兵・魔法兵部隊。
西の防衛線はゴブ1率いるゴブリンの重装歩兵集団。
南の防衛線はオク1率いるオークの大盾重騎士隊。
北の防衛線はオガ1率いるオーガの超絶戦鬼部隊。
傷付いた者がいれば即座に送還して回復させ、万全な状態の元気な者を新たに召喚する。絶え間ない召喚と送還のローテーションにより、前線の疲労は完全にゼロに保たれていた。
今のところ防衛線は完璧に機能し、敵をことごとく返り討ちにしている。だが、地底から無限に増殖して溢れ出てくるような魑魅魍魎の不気味な気配を考えると、地上だけの防衛には一抹の不安が残る。ここでもう一つ、完璧な保険を打っておくべきだ。
俺は吸血鬼真祖のヒナへ念話を繋いだ。
『ヒナ、聞こえるか? 今いるこの南の王国の前線拠点まで、そっちのダンジョン地下迷宮を伸ばしてくれないか?』
すぐにヒナの明るい声が頭の中に響き渡る。
『はーい、ヒロト様! もちろんいいよー! 地下深くから極太のトンネルを掘って速攻で伸ばすねー!』
『助かるよ、ありがとう! 伸ばして接続できたら、この拠点都市の敷地全体をダンジョンの管理区域として迷宮化してほしいんだ』
『了解したよー! サクラやバズにも手伝ってもらって、一気に迷宮化しちゃうねー!』
『よし、頼んだぞ!』
これでよし。拠点そのものをダンジョン化して地下トンネルで樹海帝国と直結させれば、いざという時には迷宮の転移機能を使って一瞬で後方へ退避できるし、大量の補給物資や強力な増援も無限に送り込める不落の籠城要塞が完成する。
ふと、俺の頭の中に素晴らしいアイディアが閃いた。
『ヒナ、ついでに聞きたいんだけど……この地下迷宮トンネルをそのまま、最終目的地の蚩尤たちがいる南の王国中央部最南端まで一気に伸ばすことってできないかな?』
地下から敵の本拠地へ直接突入できれば、地上で激しい消耗戦を繰り広げる必要もなくなり、一気に勝負を決められる。
『わぁ、すごいアイディア! やってみるよー!』
ヒナは意気揚々と作業を開始してくれた。これで一気に敵の喉元まで行ければ万々歳なのだが——。
数十秒後、ヒナから少し困ったような念話が返ってきた。
『うーん……ごめんねヒロト様。南に行けば行くほど、龍脈の狂乱エネルギーが凄まじすぎて、ダンジョンの壁や穴を掘り進められなくなっちゃうよー。龍脈のエネルギーに阻まれちゃうみたい』
『そうかぁ……流石に敵の本丸の直上は甘くないか。残念だけど仕方ないね』
やはり地上の過酷な魔界を突っ切るしかないようだ。だが、ヒナの頑張りによって、この前線拠点からかなり南の地点までは地下迷宮トンネルが到達してくれた。
俺は一行を見渡し、力強く微笑んだ。
『ヒナ、今からみんなを呼ぶから、とりあえず迷宮を伸ばせた最南端の到達地点まで、ダンジョンの転移機能を使って俺たちを速攻で移動させてくれ!』
『りょーかーい! いつでも飛ばせるよー!』
地上での過酷な進軍を一気にスキップし、敵の喉元まで一躍躍り出る絶好のチャンス。
頼もしい仲間たちの瞳に再び激しい戦闘の炎が宿る中、俺たちは光に包まれ、さらなる激戦の地へと一瞬で転移していった。




