第418話 【怒濤の無双バトル&絶品バーガータイム!】襲い来る魑魅魍魎の怒濤をチート能力で一掃!荒野で広げる至高のランチ!
南の王国の深部へ進むにつれて、空気はさらに禍々しく淀み、湧き出る魑魅魍魎たちの密度は跳ね上がっていった。もはや敵に見つからないよう忍び足で回避することなど不可能なほど、あたり一帯は異形どもで埋め尽くされている。
「チッ、こう数がちゃ邪魔だな! まとめて消し飛べ!」
先頭を進むライゾウが叫ぶと同時に、その全身から眩い紫電が爆発した。超高圧の雷撃が何十匹もの魑魅魍魎を一瞬で蒸発させ、爆風が荒野を吹き抜ける。倒れた残骸や魔石は、すぐさまグレイアが影の空間へと手際よく収納していった。
だが、敵もさるもの。正面を塞がれたと見るや、今度は左右の鬱蒼とした木々や岩陰から、奇声を上げながら襲いかかってくる。
「ヒロトに手出しはさせないわよ! 『極大消滅波』!」
ユイが掲げた宝珠の杖から放たれた極彩色の光線が、群がる魑魅をまとめて消滅させた。打ち漏らした敵に対しては、上空を舞う火の鳥フェンが滑空し、神聖なる炎で焼き尽くす。
「我が聖剣の糧となれ! ハァァッ!」
勇者ハーミアの凛とした声とともに、聖剣から放たれた一閃が巨体の魍魎を縦一文字に両断する。
「へへっ、僕だって負けてられませんよ! 『聖光斬』!」
勇者タクミも負けじと踏み込み、聖剣を薙ぎ払って迫り来る魑魅たちの群れを光の刃で一網打尽にした。
さらに上空からは、神聖なる翼を羽ばたかせるヴァルキリーたちが舞い降りる。
スクルドの光を纏った槍が不気味な化け物の眉間を正確に突き刺し、ヒルドの激しい雷撃が追撃して黒焦げに変える。スコグルは重厚なトライデントで巨大な怪異を豪快に刺し飛ばし、フリストの鋭利な爪が襲い来る影を瞬時に切り裂いていく。
無敵の精鋭たちによる圧巻の無双劇。だが、倒しても倒しても地面の亀裂から無限に湧き出してくる光景に、俺は思わずため息を漏らした。
「ふう……本当にきりがないなぁ」
「全くだー! 倒しても倒しても湧いてくるじゃない!」
ユイも杖を肩に担ぎながら、あきれたように叫ぶ。
南の王国の中央部を目指す俺たちの進撃は、文字通り激烈を極めていた。
一体一体の魑魅魍魎は俺たちにとって雑魚に過ぎないのだが、とにかく圧倒的な「数」が多いのだ。このままでは途中で腰を落ち着けて飯を食う暇すらありはしない。次から次へと地這う蟲のように現れては襲いかかってくる。
「っと……ちょっとタンマ!」
俺は戦闘の合間を縫って、アイテムボックスから焼き立てのパンを取り出すと、ガブリと大きくかじりついた。
その瞬間、頭上の樹上から巨大な蜘蛛の妖怪が毒液を垂らしながら急降下してきた。
「甘いな」
影の中からぬっと伸びたスラオの黒い闇の触手が、空中で蜘蛛の妖怪をガッチリと拘束すると、そのまま勢いよく遥か方角へ投げ飛ばした。ズドンと遠くで轟音が響く。
「スラオ、ありがとな! ナイスだ! 触手で刺して倒すと血とか汁が飛散して飯が不味くなるからな、投げ飛ばすっていう配慮が素晴らしいよ!」
俺はスラオの気遣いに感謝しながら、今度は左手に持った水筒から温かいコーヒーをゴクリと飲んだ。
神刀ムラマサは一度腰の鞘へと戻し、右手に香ばしいパン、左手にコーヒーの入った水筒というスタイルだ。
すぐ隣で、ユイが迫り来ようとした魍魎の頭部を杖で叩き潰し、呆れ顔で俺の手に持ったパンを見つめてきた。
「ずるい! ヒロトだけズルい! 私はお腹空いた! 私も何か食べたーい!」
「よし、じゃあ一回ちゃんと休憩しよっか」
俺が提案すると、目の前の魑魅を聖剣で左右真っ二つに薙ぎ払ったタクミが、パッと表情を明るくして気の抜けた声を上げた。
「さんせーい! お腹と背中がくっつきそうでした!」
「レイ、周りの防衛を頼んだぞ」
俺の左手首には、世界樹であるレイの分身が緑色の手甲となってしっかりと絡みついている。
俺の声に応えるように、レイは手甲の姿から可憐な分身の姿へと一瞬で変貌すると、両手を広げて広域精霊魔法を放った。
『お任せください、ヒロト様! 『世界樹の檻』!』
地鳴りとともに周囲の地面から太い樹木が急速に生い茂り、俺たちの周囲をぐるりと囲む頑丈な植物の壁となった。木々から伸びた無数の蔦がウネウネと蠢き、防壁に近づこうとする魑魅魍魎を片っ端から絡め取って強力に締め殺していく。
それでも壁の隙間をすり抜けて侵入してこようとする抜け目ない妖怪に対しては、スラオの触手が影から伸びて正確に突き刺さり、完全にシャットアウトした。
「よし、これでちょっと手が空けられるでしょ。みんな、昼飯にしよう。と言っても、手軽に食べられるパンと飲み物メインだけどね」
俺がそう声をかけると、ユイが一番に手を挙げた。
「私は絶対に照り焼きバーガー! あとキンキンに冷えたコーラ希望!」
「あ、私もユイ様と同じものをお願いします! あの甘辛いタレが恋しいですわ」
ハーミアも目を輝かせて乗っかってくる。続いてタクミが身を乗り出した。
「俺はビッグバーガーとコーラで! お肉をがっつり食べたいです!」
タクミのリクエストしたビッグバーガーは、香ばしく焼いたバンズ3枚にジューシーなハンバーグを2枚挟み、シャキシャキの刻みタマネギとレタス、特製のサウザン・アイランド・ドレッシングをたっぷりかけた例の「あれ」だ。勿論、とろけるチーズと酸味の効いたピクルスも贅沢に挟んでいる。
「私は……ハンバーガーに厚切りトマトとレタス、そして濃厚なミートソースを挟んでほしいわね。あと飲み物は冷たい牛乳でお願いするわ」
グレイアが大人っぽい微笑みを浮かべてリクエストし、ライゾウはダイナミックに胸を叩いた。
「俺は肉だ! トリプルバーガー肉多目を3つ! 飲み物は濃厚なヨーグルトで頼むぞ!」
「了解! すぐ用意するよ」
俺は樹海帝国城の厨房に控えている優秀なブラウニーの給仕係——ブラリリ、ブラルル、ブラロロの3人を召喚した。
みんなの細かい注文と希望のメニューを素早く伝えて一旦城へ送還し、厨房で出来上がった熱々の料理を受け取って再び召喚する。
ちなみにヴァルキリーのスクルドたちには、女性に大人気の照り焼きバーガーと、甘くて温かいコーンスープを用意して手渡した。
「おいしい……! こんなに美味しい食べ物、天界にも存在しませんわ!」
「このコーンスープというものも、身に染み渡る美味さだな……!」
スクルドたちヴァルキリー隊も、ジューシーなお肉と濃厚なスープの味わいに大感激の様子だ。全員が至福の表情で豪快にバーガーを頬張り、腹を満たしていった。
「ふぅ、美味しかったー! ごちそうさま!」
ユイがコーラを飲み干し、大満足の笑みを浮かべる。全員のお腹が完全に満たされたのを確認し、俺は立ち上がった。
「よし、みんな満足したみたいだし、先に進みますか」
用事を終えたブラウニーのブラリリ、ブラルル、ブラロロを感謝とともに城へ送還し、防衛を終えたレイが再び俺の左手首へと戻って緑色の手甲へと姿を変える。
俺は神刀ムラマサの柄に手をかけ、引き締まった表情で全員を見渡した。
「それじゃあ、出陣だ! 蚩尤の首を取りに行くぞ!」
「「「応!!」」」
エネルギーを完璧に充填した俺たちは、再び地獄の如き魔界の深部へと向かって、圧倒的な破竹の勢いで進撃を再開するのだった。




