第407話 【猪神ヴァラーハの角笛と漆黒の羽ばたき!】悪魔フルカスと亜神オク1の蹂躙劇!コボ4の覚醒と兄弟結集!
突如として空間を打ち破り、ド派手に戦場へ躍り出たオク1の姿に、アレオンは思わず目を丸くした。
そこに立っていたのは、かつてのオークエンペラーの面影を残しつつも、圧倒的な神威と荘厳なる圧迫感を放つ存在——亜神ヴァラーハへと超進化を遂げたオク1の威風堂々たる姿であった!
亜神ヴァラーハ。
力強い猪の頭部とオーク特有の獰猛な威厳を併せ持ち、首から下は強靭極まりない神の鎧で強固に身を固めた人間の躯。そしてその背からは太く力強い四本の腕が生え出で、それぞれに神聖なる車輪、重厚な法螺貝、天を突く大矛、そして煌めく神剣を携えている。
「オク1……救援感謝する! だが貴様、何だその姿は……凄まじい神気を纏っているではないか!」
アレオンが青い炎を散らすアンデッドホースの上から叫ぶと、オク1は四本の手に持つ武器を誇らしげに構え直し、豪快に鼻を鳴らした。
「ガハハハッ! ふふふ、陛下に直接お願いしてこの竜王山決戦への出陣をお許しいただいたのだ! 亜神としての初陣、凄まじい戦果を上げて陛下にお見せせねば男がすたるというものよッ!」
言い終わるや否や、オク1は手にした巨大な法螺貝を口元へと当て、朗々と息を吹き込んだ。
ブオォォォォォォォォンッ——!!
戦場全体、そして空の彼方まで届くほどの轟々たる法螺貝の重低音が響き渡る。
その音色は単なる合図ではない。空間そのものを振動させ、幾重もの巨大な召喚陣を地表に瞬時に出現させると同時に、味方全軍の士気と戦闘能力を爆発的に底上げする神聖なる戦歌の波動であった!
「進め、我が同胞たる眷属たちよッ! 大自然に仇なす妖怪どもに、我らオーク一族の絶対なる剛力を見せつけてやれぇぇッ!」
ドガガガガガガッ!!
光の陣から溢れ出したのは、重厚な黒鉄のフルプレートアーマーを全身に纏った巨大なオークの大軍勢であった!
彼らが手にするのは、重厚な魔力と研ぎ澄まされた刃を持つ漆黒の魔槍、そして巨大な魔斧だ。
「ウオォォォォォッ!! ヒロト陛下に勝利をッ!!」
咆哮を上げて突撃するオーク軍団の参戦により、戦況は一気に樹海帝国軍の圧倒的優位へと傾いた。
いまや帝国の旗下に集うオークたちは、かつての弱小な魔物などではない。個々のレベルは跳ね上がり、最低でも熟練のオークソルジャーか、強力な魔導を操るオークメイジ。隊長格には百戦錬磨のオークジェネラルがずらりと並び、軍を率いるのは城をも一つで落とせるほどのオークキングたちだ。
「死ねやぁぁッ!」
オークソルジャーが振り下ろした巨大な魔斧が、一閃で魍魎の首を叩き飛ばす。魔槍を構えた別の兵が、押し寄せる魑魅の頭部を深々と突き穿ち、そのまま豪快に持ち上げて周囲の群れごと投げ飛ばした!
後方に陣取ったオークメイジ達が一斉に長杖を掲げると、空中で炎と嵐の極大複合魔法が炸裂。吹き荒れる地獄の業火と真空の刃が、魑魅魍魎の群れを数十匹単位で丸焼きにし、切り刻んでいく。
さらに、前線で猛威を振るうオークキングの魔槍が一振りされるたび、空間を薙ぎ払う衝撃波によって数十体の妖怪が上下真っ二つに両断されて空へと舞った。
「ガハハハッ! 追いついてみせよ、アレオンッ!」
「言われずともッ!」
亜神となったオク1と、悪魔フルカスへと進化したアレオンの二人は、もはや軍勢という枠組みすら超越した傍若無人な暴れぶりで、圧倒的な破滅の嵐となって敵陣を食い荒らしていった。
◇
一方その頃——
ボロボロに傷ついた電母は、激痛に顔を歪ませながら左手で激しく血を噴く右肩を固く押さえ、たった一柱だけ生き残った雲使いと共に、龍脈の直上に鎮座する夫・雷公の元へと這うようにして辿り着いていた。
「つぅぅぅっ……やられました、雷公……っ!」
苦悶の声を漏らす妻の惨状を目にし、太鼓を浮かべた雷公は鳥の嘴を重々しく開いた。
「……生きて戻っただけでも良しとせねばなるまい。一体何があったのだ?」
「信じられません……光となって移動するこの私を、正確に捕捉し、その肉体を傷つけるなどという真似ができる者がいるなんて……!」
「……神器の類であろうな。しかも、概念すら叩き切るほど強力な代物だ」
傍らに控える生き残りの雲使いが、不満と恐怖を混じらせた声で叫んだ。
「あの忌々しいオヤジ、雷の属性を纏っておきながら土の宝貝を使うなんて反則ですッ! 私たちの雲も光も、全部砂嵐の中に閉じ込められて……ッ!」
「む……雷神の一柱であることは間違いないようだな。それに、その後に戦場へ現れた悪魔や亜神どもも侮れん。絶望的だった地上の戦況を、たった数柱で一気にひっくり返して見せた」
電母は冷や汗を流しながら、必死に尋ねる。
「他……他の戦場の状況は如何ですか? 蚩尤様のお力で生み出した魑魅魍魎たちで、押し潰せておりますの……?」
雷公は不機嫌そうに太鼓を叩き、暗い表情で首を振った。
「……思わしくないな。敵の本陣から、規格外の強力な救援が続々と各戦線へ投入されている」
◇
大自然の東部領域——
そこから進軍を開始したコボ4軍もまた、ゴースト系のアンデッド大軍勢を率いて、無限に生み出される魑魅魍魎たちと壮絶な死闘を繰り広げていた。
北部のアレオン軍と同様、実体を持たないメリットを生かして序盤は優勢に進めていたものの、敵の魔法攻撃と底なしの物量の前に完全に足止めを喰らい、戦況は深刻な膠着状態に陥っていたのだ。
「クソッ……! 押し切れん! このままでは拉致が明かんぞッ! 俺も限界を超えて覚醒するッ!」
焦燥に駆られたコボルトのスペクターエンペラー・コボ4は、全身から凄まじい漆黒の魔力を爆発させ、悪魔グラシャラボラスへと超進化を果たした!
悪魔グラシャラボラス。
本来は犬の身体に一対二枚の鷲の翼を持つ悪魔だが、コボルトのスペクターエンペラーから進化したコボ4は、艶やかな漆黒の毛並みを持つコボルトの勇姿に、巨大な黒い鷲の翼を背負う禍々しくも美しい姿へと変貌を遂げていた。
「ハァァァァッ!!」
バサァッ! と黒翼を羽ばたかせ、天空へと舞い上がったコボ4は、手に集約させた高濃度の邪気の塊『邪弾』を地上へ向かって超高速で連射した!
ドババババババッ!!
地上で蠢いていた魑魅魍魎たちが、頭上から降り注ぐ邪悪の弾幕に撃ち抜かれ、次々と爆発を起こして消滅していく。
しかし——龍脈から湧き出る敵の速度はあまりにも異常だった。一匹倒せば三匹、五匹と新たな妖怪が生み出され、倒した数を遥かに上回る密度で地表を埋め尽くしていく。
「クソッ……! 倒しても倒してもキリがねえッ! 一体どんだけ湧き出てきやがるんだッ!」
空中にて息を荒らげるコボ4のすぐ真横へ、風を切り裂いてもう一つの影が並び立つように飛翔してきた。
「おいおいコボ4、随分と苦労しているようだな?」
羽ばたいていたのは、同じく翼を得て戦場へ駆けつけた実の兄・コボ1であった!
「あ、兄貴ッ……!? 来てくれたのか! 有難う……助かったぜッ!」
死線を潜り抜けてきた兄弟が空中で固い絆の視線を交わし、眼下に広がる黒い群勢を睨みつけるのだった!




