第402話 【三悪魔結集と巨神夸父の追い詰め!】蛇の凶計を破る連携!剣聖オニバルの神殺し奥義『イツノオハバリ』炸裂!
激化の一途を辿る戦場の中、無数の魑魅魍魎を薙ぎ払いながら、二つの影が猛然と突き進む。
アンナとオニバルの二人は、凄まじい勢いで目の前の敵を斬り伏せながら、一直線に巨神夸父の潜む決戦の地へと向かって突き進んでいた。
その遥か先——龍脈の直上では、巨大化した悪魔ボティスことリザルドと巨神夸父が、一進一退の激闘を繰り広げていた。
そこへ上空から急降下し、颯爽と参戦したのが悪魔ヴィネことライカだ。
夸父の規格外の剛力に押し込まれつつあったリザルドにとって、彼女の介入は間違いなく窮地を脱する助けとなった。しかし、プライドの高い激高の悪魔であるリザルドにとっては、それがどこか面白くない。
巨体を揺らしながら、リザルドは大剣を横に構えてライカを睨みつけた。
「おい小娘! 余計な口出しをするな、そこで指を咥えて見てろッ!」
ライカは背中のドラゴンの翼を優雅に羽ばたかせ、肩をすくめながら黒い日本刀を軽く振った。
「えー。でもー。オニバル将軍からリザルド元帥の手助けをするように言われて来たんですよー?」
「助けなど要らんと言っている! 俺一人で十分だッ!」
「はぁ……全く、面倒くさい人ですねー……」
「なにッ!? その目上の者に対する口の利き方はなんだッ!」
リザルドが角を立てて怒鳴り散らすが、ライカはどこ吹く風といった様子で不敵な笑みを浮かべる。
「はいはい、本当に危なくなったら助けてあげますからー。頑張ってくださいねー」
「ふんッ! 助けなど金頭にいらん、見ていろッ!」
二人の悪魔が口論を繰り広げる姿を、巨神夸父は冷ややかな眼光で見下ろしていた。
「……話は終わったか? ならば続きを始めるとしよう」
ドガァァンッ!
夸父は踏み込んだ足元の大地を陥没させると、弾丸のような速度でリザルドに向かって跳躍した。
空気を押し潰すほどの極大の右拳が、唸りを上げてフルスイングで打ち出される!
「ハッ、見え見えなんだよッ!」
巨大化したリザルドは巨躯に似合わぬ敏捷さでその大拳を余裕でかわしてみせた。
だが——真の狙いはその直後にあった。
夸父の右腕に巻き付いていた凶悪な大蛇が、打撃の空振りのタイミングをあえてずらし、獲物の喉笛を目掛け猛然と跳ね上がったのだ!
「なにッ!?」
リザルドは咄嗟の判断で左腕を引き上げ、自身の喉元を防御した。
バチィィッ!!
間一髪で防いだものの、牙を剥いた大蛇はリザルドの左腕の肉へと深々と食いついた。
「捕まえたぞ……ッ!」
夸父は蛇の巻き付く腕ごと強引にリザルドを引き寄せ、無防備となった彼の腹部へ左拳の強烈なボディフックを叩き込んだ!
ドスッッ!!
「ぐふっ……!?」
あまりの威力を受け、リザルドの巨大な身体が「く」の字に折れ曲がる。
夸父は容赦なく右腕の蛇を介してリザルドをさらに引き戻し、無防備な腹部へ追撃の猛烈な膝蹴りを突き刺した!
絶体絶命の連撃——だが、その右側から黒い疾風が駆け抜ける!
「そこまでですッ!」
ライカが夸父の右側へと一瞬で肉薄し、手に持った黒刀を振り下ろして右腕の大蛇へ一閃を放った!
切断を恐れた夸父の右腕の大蛇は、慌ててリザルドの腕から噛みつきを離す。同時に夸父自身も即座に体を引き、ライカの黒刀の斬撃をギリギリの紙一重でかわしてみせた。
「あれー……? 今のは完全に死角から狙ったつもりでしたのに、見えてないと思ったんだけどなー?」
空中へ着地したライカが不満そうに首をかしげる。その横で、腹を押さえながら体勢を立て直したリザルドが忌々しそうに吐き捨てた。
「……夸父の頭に巻き付いていた蛇が見てやがったんだ。あの頭の蛇どもも、実に厄介な目を持っているようだな」
ライカは黒刀を胸の前で静かに中段に構え直した。
「なるほどですね。圧倒的な剛力の他に、あの四匹の蛇たちも相当厄介というわけですか」
言うや否や、ライカの身体がブレた。
中段の構えから繰り出されたのは、空気が摩擦熱で発火するほどの神速の突刺!
目にも留まらぬ刃が、夸父の分厚い喉元を正確に穿とうと迫る!
しかし夸父は間一髪で首を捻って突きをかわすと、今度は左手に巻き付いていた大蛇を解き放ち、ライカの両腕へ蛇の如く素早く絡みつかせた!
「捕らえたぞ、小娘ッ!」
「しまっ——!?」
腕を封じられ、動きの止まったライカ。だが、夸父が追撃を繰り出すよりも早く、リザルドの怒りの蹴りが夸父の横腹へ激しく叩き込まれた!
ドガァァンッ!
「ぬぐっ!?」
リザルドの捨て身の蹴りを受け、夸父は後ろへ大きく跳び退くことで蹴りの威力を受け流した。その衝撃でライカの両腕を拘束していた大蛇も離れざるを得なくなる。
後方へ着地した夸父は、二柱の悪魔を睨みつけながら低く唸った。
「ふむ……流石に悪魔二柱を同時に相手取るのは、少々分が悪いか」
まさにその時であった。
ライカの背後、死角となる空域から、全身を強固な鎧で固めた巨人『ゴリアテ』が巨大な魔槍を構えて突進してきたのだ!
「死ねぇッ、悪魔めッ!」
背後からの不意打ち——それに気づいたリザルドが、牙を剥き出しにして割り込んだ!
「ライカ、引けッ!」
ガキィィィンッ!
リザルドは差し出された巨大な槍の穂先をその巨手で力任せに掴み取り、ライカを庇うように立ち塞がった。
「私の背後を狙うとは、良い度胸ですわねッ!」
振り向いたライカは、眼光を鋭く輝かせると、手に持った黒刀で横一文字に薙ぎ払った!
黒い斬撃波がゴリアテの胸甲を砕く! 危険を察知したゴリアテは刺さった槍を即座に手放し、豪快に後方へ跳び退いた。
着地したゴリアテの右手に巨大な魔剣が、左手に重厚な大盾が瞬時に実体化し、威圧感たっぷりに構えられる。
「……フン、これで二対二だ」
手負いのゴリアテが不敵に言い放った、その瞬間——
「いやいや、三対二……いや、俺たちが圧倒的に有利だな!」
頭上から響いた朗らかな声と共に、大量のサイクロプスを片付け終えた悪魔サブナックのライゴーが降り立ってきた!
ライゴーは着地と同時に空中で身を翻し、夸父の背後から逆袈裟懸けの必殺の斬り上げを繰り出す!
「ぬぁぁッ!」
夸父は咄嗟に足を踏み込むと、左手でライゴーの手首を強引に掴み取り、そのまま腹部へ強烈な蹴りを放った!
だが、ライゴーは焦らない。
夸父の蹴りを自身の両足でガチリと受け止めると、掴まれた手首の関節を巧みに捻り、体重移動を利用して巨大な夸父の巨躯を豪快に地面へ投げ飛ばしてみせたのだ!
ドスンッッ!!
地響きを立てて転がる夸父へ、ライゴーは刀を優雅に納刀しながら不敵に笑う。
「ふっ、オニバル流は刀術だけじゃないぜ。素手での格闘術も完璧に叩き込まれているんでね!」
再び素早く刀を抜き、中段に構えるライゴー。
立ち上がった夸父は、身構えながら周囲を取り囲む悪魔たちの圧迫感に顔を歪ませた。
「チッ……頼みの巨人軍団も全滅させられたか。これ以上は完全に分が悪いな……!」
勝ち目がないと踏んだ夸父は、龍脈の力を足元に集中させ、瞬時に撤退すべく後方へと跳躍しようとした。
だが——その撤退の意図すらも、一瞬早く見抜かれていた。
天と地を引き裂くような凄まじい衝撃波と、禍々しくも神々しい剣気が空間を駆け抜ける!
「逃がすと思うか……『伊都之尾羽張』ッ!!」
空間そのものを切り裂くような鋭い咆哮が響き渡る。
そこに立っていたのは、神気を限界まで高めた剣聖オニバルであった!
彼が手にする伝説の黒刀『生大刀』が、神々しい黄金と漆黒のオーラを纏って狂おしく唸りを上げる。
空間を歪めながら放たれた絶対不可避の神殺しの剣撃が、逃走を図ろうとした巨神夸父の全身を容赦なく呑み込んでいくのだった!




