第400話 【覚醒の波涛と悪魔化する英雄たち!】覚醒勇者タクミとハーミアの無双劇!オガ1とゴブ1の限界突破進化が敵陣を叩き潰す!
サイクロプスの怒濤の猛攻を凌ぎ切ったオガ1の巨躯から、突如として周囲の空間が歪むほどの濃厚で妖しい魔力が怒涛のごとく溢れ出した。
その魔力は激しく脈打ち、どろどろとした禍々しい漆黒の邪気へと変質していく。
「ぬおおぉぉぉぉぉッ!」
オガ1の咆哮と共に、黒い邪気が彼の全身を包み込み、視界を遮るように濃密に渦巻いた。
樹海帝国が誇る無敵の戦士として、そしてオーガ族の絶対的な指導者として、彼の中に眠っていた秘めたるポテンシャルが、強者との死闘によって一気に覚醒のときを迎えたのだ。
やがて、黒い邪気が静かに霧散していく。
そこに佇んでいたのは、もはやただのオーガではなかった。
「ふぅ……俺はオーガであることに強い誇りを持っていた。だが……陛下に直談判してこの地に立った以上、ここで醜く負けることだけは、この俺自身が絶対に許さん……! さあ、我が主に授かりし、進化したこの力……存分に見せてやるぞ!」
そこに降臨したのは、悪魔モラクスとなったオガ1であった。
その肉体は筋骨隆々のたくましい黒に染まり、下半身にはアダマンタイトの鎧が神々しく残されている。顔は威厳に満ちた牛の異形となり、頭部からは二本の鋭く巨大な角が天を突くように伸びていた。そして背には、一対二枚の禍々しくも美しい黒い翼が広げられている。
悪魔モラクスへと超進化を遂げたオガ1は、翼を羽ばたかせると、音速を超えた圧倒的な速度でサイクロプスたちの群れに向かって飛翔した!
「ぬぁぁぁッ!」
空中で反転したオガ1は、上空からライゴーの横へ迫っていたサイクロプスの顔面目掛け、頭部の二本の鋭い角を突き立てて豪快に体当たりを叩き込んだ!
ドガァァァァンッ!
「ギガァッ!?」
巨体を誇るサイクロプスが、まるでダンプカーに激突されたかのように吹き飛び、山肌へと激しく衝突して沈黙する。
着地したオガ1へ、空中で刀を構えていたライゴーが目を見開いた。
「オガ1さん……待たせすぎですよ! それにしても、随分と格好良く変わりましたね!」
オガ1は牛の面から太い息を吐き出し、力強く笑った。
「ハハッ! 陛下に直談判までして出撃させてもらったのだからな! この程度で不甲斐なく倒れるわけにはいかんのだろう!」
「ふっ、ごもっともです!」
言葉を交わした二人は、示し合わせたように一気にサイクロプスの群れへ突撃し、蹂躙を開始した!
サイクロプスが振り下ろす丸太のような金属棍棒に対し、オガ1は避けるどころか、突進しながらその棍棒を握る極太の手首をガチリと素手で掴み取った。そのまま圧倒的な腕力でサイクロプスの巨体をブンブンと振り回し、周囲の他のサイクロプスたちへ叩きつけて倒していく!
そこへライゴーが影のように滑り込み、鋭い抜刀の一閃でサイクロプスたちの体を残らず綺麗に斬り裂いていく。
無敵を誇ったサイクロプス軍団は、瞬く間に二人の悪魔によって絶望の淵へと叩き落とされ、次々と転がる肉塊へと変えられていった。
◇
一方その頃——ギガンテスの大軍勢が怒濤の如く押し寄せていたゴブリン軍の戦場。
ギガンテス。それは頑強なフルプレートアーマーに身を包み、大盾とメラメラと燃え盛る炎を纏った大剣を振るう最強クラスの巨人族だ。
いくら樹海帝国の精鋭とはいえ、小柄なゴブリンたちでは数で勝っていても、ギガンテスの重装甲を打ち破ることができず、じりじりと押し込まれるジリ貧の戦況に陥っていた。
その中心で孤軍奮闘していたのが、ゴブリン軍を率いるゴブ1であった。
「ぬああぁぁッ!」
ゴブ1はギガンテスが振るう炎の大剣を間一髪でかわすと、凄まじい跳躍力で空へ躍り出た! そしてギガンテスの喉元目掛けて渾身の力で魔剣を突き刺す!
だが——
キンッ!!
「チッ……弾かれたか!」
鋭い刺突はギガンテスの咄嗟の回避によって浅く掠れ、分厚い鉄の鎧に空しく跳ね返されてしまった。体勢を崩したゴブ1へ、別のギガンテスが炎の大剣を振り下ろそうと迫る!
まさにその絶体絶命の瞬間——!
「ゴブ1さ〜んッ! 助けに来ましたよッ!」
一筋の閃光と共に飛び込んできたのは、勇者タクミと勇者ハーミアの二人だった!
二人が掲げた聖剣から、眩いばかりの聖なる光が炸裂する。
勇者タクミが手にする聖剣は、異例の『聖刀』だ。日本から召喚された彼の適正に合わせ、樹海帝国の世界最高峰の鍛治技術を結集して作り上げられた、斬ることに極限まで特化した至高の日本刀である。
「はぁぁぁッ! 一閃ッ!」
タクミの放つ神速の横一文字が、ギガンテスの誇る頑強なフルプレートアーマーすらも紙のように易々と切断した!
「ガアァァッ!?」
腕を、脚を、そして首を、次々と切断されて倒れ伏すギガンテスたち。
一方、勇者ハーミアが振るうのは身の丈ほどもある巨大な聖大剣だ。かつてオニバルとの死闘によって叩き折られた聖剣を、樹海帝国の超技術によって完全再生・強化した破壊の象徴である。
「私を弄んだ者どもへ……その罪、死をもって償いなさいッ!」
ハーミアは憎悪と闘志を滾らせ、巨躯のギガンテスを豪快な大剣の連撃で八つ裂きにしていく! 聖なる炎と衝撃波が戦場を包み込み、ギガンテスの群れを一気に押し戻していった。
その圧巻の戦いぶりを目撃し、ゴブ1の瞳に激しい熱が宿った。
「若き勇者どもがあれほど戦っているのだ……俺も負けていられるかッ!」
ゴブ1もまた、ゴブリンであることに深い誇りを持ち、これまでゴブリンの国を力強く支え続けてきた。しかし、樹海帝国始まって以来のこの大決戦に自ら志願して参戦した以上、自分だけの矜持にこだわっている場合ではない。
ゴブ1は、これまで自らに課していた『進化の封印』を力強く解き放った!
ドゴォォォォンッ!!
ゴブリンの小さな身体から、爆発的な魔力が湧き上がり、周囲を黒と紫の閃光が包み込む!
光が弾けたとき、ゴブ1は悪魔ロノウェへと覚醒進化を果たしていた。
悪魔ロノウェ。
その姿は恐ろしくも洗練された鬼の異形。背には一対二枚の漆黒の翼が羽ばたき、尻尾が鋭く揺れ、引き締まった長い手足からは底知れぬ魔力が溢れ出ていた。
「ハハッ……これが、陛下の与えてくださった新たなる力か!」
悪魔ロノウェとなったゴブ1は、翼を羽ばたかせて一瞬で上空へと飛翔! ギガンテスの背後に静まり返るように降り立つと、その長く強靭な両腕を伸ばし、ギガンテスの巨大な首を力任せに捻り千切った!
ドシャッ!
「次だッ!」
横から迫る別のギガンテスの炎の大剣を紙一重でかわし、鋭い悪魔の尻尾を伸ばしてギガンテスの腕を強固に絡め取る! 動きを完全に封じた瞬間、ゴブ1の手刀が貫通力を増して相手の首筋へ深く突き刺さった!
勇者ハーミア、勇者タクミ、そして悪魔ロノウェとなったゴブ1の三人による怒濤の反撃により、あれほど猛威を振るっていたギガンテスの軍勢は瞬く間に壊滅状態へと追い込まれていくのだった。
◇
だが、戦局は休むことを許さない。
蚩尤軍の幹部である巨神夸父が龍脈から呼び出した巨人族の中でも、最も凶悪なる異形——百本の腕を持つ伝説の巨神『ヘカトンケイル』。
その不気味で巨大な異形は、地響きを立てながら、無数のキラーアントを率いるアンナの陣営目掛けて猛然と進軍を開始していた。




