第4話 『鑑定』持ちの目玉モンスターをゲット!?覚醒するステータス画面と、判明した破格のチートポイント!
「何かが……飛んでいる?」
リザの警戒の声に息を呑み、俺は木々の隙間の暗がりに視線を凝らした。
鬱蒼とした森の奥、光が届かない木陰の空間に、ふわふわと不気味に浮遊する影があった。
小さな白い翼──まるで小鳥のような翼を羽ばたかせているが、身体のパーツが根本的に狂っている。胴体も、脚も、頭部すらない。
距離を詰めようと一歩踏み出すと、影はフワリと距離を置く。立ち止まると、向こうもピタリと停止する。一定のディスタンスを保ちながら、こちらをじっと観察しているようだ。
木漏れ日が、その不気味な姿をはっきりと照らし出した。
「うおっ……!? なんだあれ!?」
思わず声が出た。
そこに浮いていたのは──直径三センチほどの、グロテスクでありながらどこか神秘的な『巨大な眼球』だった。
真ん丸な目玉の両脇から、天使のような真っ白な翼が生えている。羽ばたいているというより、まるで無重力空間にでも漂っているかのように滑らかに滞空していた。
不気味だが、攻撃してくる気配はない。
俺は意を決して、右手を差し出した。
「頼む……『テイム』!!」
『──魔物『フライングアイ』のテイムに成功しました──』
脳内に通るシステムアナウンス!
よかった、今回も成功だ!
(俺はヒロト。よろしくね! 君に名前はあるかい?)
(なまえ……ない……)
頭の中に響いたのは、鈴を転がすような可憐で透き通った少女の声だった。
(それじゃあ、今日から君の名前は『アイ』だ!)
『──個体名『アイ』の命名を確認。ネームドモンスターへと進化しました──』
眩い光が眼球を包み込み、瞳の虹彩が宝石のエメラルドのように美しい輝きを放ち始めた。
(アイ! 名前、嬉しい……! よろしくね、ヒロト!)
(アイはどんなことができるのかな? 何か特技はあるかい?)
(アイはね……魔物のこと、情報、ぜんぶ見渡せるよ!)
「情報が見える……!? それって、まさか……!」
俺の心臓がドクンと跳ね上がった。
Web小説で嫌というほど目にしてきた、あのチートスキルの代表格──『鑑定』か!?
(アイが見えた情報って、俺にも伝えることができるかい?)
(前はできなかった……でも、ヒロトに名前をもらってからは、頭の中に直接送れるよ!)
なるほど、ネームドモンスターに進化したことで、念話経由の情報共有リンクが確立されたわけか!
(頼むアイ! アイ自身の情報を俺に教えてくれ!)
(うん、送るね!)
次の瞬間──俺の視界の隅に、半透明の黄金色に輝くウィンドウがポップアップした。
まるで最新のRPGゲームをプレイしているかのような、洗練されたステータス画面だ!
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【名前】アイ
【種族】フライングアイ
【性別】♀
【レベル】1
【HP】5/5
【MP】5/5
【スキル】
・鑑定(Lv.1)
・浮遊(Lv.1)
・MP吸収(Lv.1)
【その他】ヒロトの眷属
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「きたあああああッ!!」
思わず叫んでしまった。
見知らぬ異世界に来てからずっと渇望していた『ステータス画面』が、ついに目の前に現れたのだ!
アイは女の子だったのか。それにしても『MP吸収』なんて強力そうなスキルまで持っているとは、想像以上の掘り出し物だ。
「よし……! アイ、他の仲間たちのステータスも順番に見せてくれ!」
(はいっ、見せるね!)
視界のウィンドウがパッと切り替わる。
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【名前】スラオ
【種族】スライム
【性別】♂
【レベル】1
【HP】7/7
【MP】3/3
【スキル】
・消化吸収(Lv.1)
・物理耐性(Lv.1)
【その他】ヒロトの眷属
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「おお……! スラオには『物理耐性』があったのか!」
あの驚異的なクリーニング能力の『消化吸収』に加え、物理攻撃を和らげる耐性まで所持しているとは。最弱に見えて、タンク(盾役)としての素質を秘めているのかもしれない。
続いて、左腕の植物ブレスレット──レイのステータスが表示された。
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【名前】レイ
【種族】木霊
【性別】♀
【レベル】1
【HP】5/5
【MP】3/3
【スキル】
・植物憑依(Lv.1)
・認識阻害(Lv.1)
【その他】ヒロトの眷属
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やっぱりだ! 最初に存在感が薄かったのは『認識阻害』のスキルが発動していたからなんだな。先ほどの巨体イノシシの足をすくった『植物憑依』と組み合わせれば、暗殺や足止めにおいて無類の強さを発揮しそうだ。
そして、木の上で果実を届けてくれたトカゲのリザ。
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【名前】リザ
【種族】フォレストリザード
【性別】♀
【レベル】1
【HP】10/10
【MP】0/0
【スキル】
・木登り(Lv.1)
【その他】ヒロトの眷属
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「……うん、見事に『木登り』だけだな!」
潔いほどのシンプルさだが、HPは10と眷属の中では一番高い。素早さと高所からの索敵能力はピカイチだ。
「……待てよ、アイ。あそこにいる『白蛇』のステータスも見れるか……?」
右腕に『白蛇の手甲』として巻き付いている、あのテイム不能だった神々しい蛇だ。
俺が尋ねると、アイの瞳が白蛇に向けられた。
直後──アイの全身がガタガタと激しく震え出した。
(ひっ……!? ヒ、ヒロト……これ、ナニ……!? レベルが……測定不能……表示が真っ赤で……破裂しそう……っ!!)
「おい大丈夫か!? 無理するな、鑑定を中止しろ!」
慌てて制止する。アイの視界から送られてきた白蛇のステータス画面は、文字が激しくノイズを起こし、名前すら【????】と化していた。
レベル差がありすぎて、Lv.1の鑑定スキルでは詳細すら読み取れない……!
右腕の白蛇は、どこ吹く風といった様子で「なあに?」と首を可愛らしく傾げている。
……やっぱりこいつ、とんでもない規格外の神獣か何かじゃないか!?
冷や汗を拭いながら、俺は本題に取り掛かることにした。
「よし……最後だ。アイ、俺自身のステータスを表示してくれ」
(うん……ヒロトのステータス、送るね!)
一瞬の静寂の後、目の前に最も大きな黄金のウィンドウが広がった。
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【名前】サトウ ヒロト
【種族】人間
【職業】魔物使い(テイマー)
【性別】♂
【レベル】1
【HP】10/10
【MP】0/0
【スキル】
・テイム(Lv.1)
【SP】200
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「なっ……!?」
俺は画面に食い入るように顔を近づけた。
全員見事にレベル1。戦闘力ゼロの弱小パーティ。
だが──一番下に記載された、見慣れない項目。
『SP:200』
「SP……スキルポイント……!? に、二百ポイントもある……!?」
通常、レベル1の初期状態なら0か、あっても数ポイント程度のはずだ。
三十五年の社畜生活で死ぬほどすり減らした命の代償か、それとも過労死寸前の過酷な経験値が還元されたのか──理由は分からない。
だが、この『200』という数字が、常識破りの異常な値であることだけはハッキリと分かった。
「これって……新しいスキルを獲得したり、強化したりできるやつか……!?」
絶望的な無能力者として投げ出されたと思っていた異世界。
しかし、目の前には想像を絶する『大逆転の扉』が、静かに提示されていた──!




