第39話 横暴なSランク冒険者を一閃!ブラック精霊召喚師を討伐し、囚われし四精霊を救出して眷属にせよ!!
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ついに冒険者ギルドによるゴブリン討伐作戦の当日が訪れた。
前線に放っていた小蜘蛛からの念話が届く。ガリアの町から出撃した総勢300名の冒険者集団が、樹海へと足を踏み入れたようだ。
俺はスパの小蜘蛛を通じて至近距離の映像を共有しつつ、上空からは巨大化したライゾウとリザの背に乗って全体の戦況を遠目で見下ろしていた。
得られた情報はリアルタイムの念話で各部隊長へと共有していく。ちなみに【眷属化】していない指揮官には配下を専属の連絡員として付けており、リガント将軍にはリガールを、ダークエルフのグレンシーさんにはハーピーのハピを配置して連絡体制は完璧だ。
冒険者たちが向かったのは、ガリアの町から最も近い場所に位置するゴブリンの第一次拠点の集落。約500匹のゴブリンが駐留する場所だ。もちろん、ここもすでにヒナの手によって完璧にダンジョン化・領域化されている。
大群で押し寄せた冒険者ギルドは、威勢よく集落を取り囲んで奇襲を仕掛けた。
その先頭に立つ男──Sランク冒険者『災厄のゼータ』が、手に装着した怪しげな『精霊の腕輪』を掲げて大声で呪文を詠唱し始める。
「古の約定に基づき、契約を履行せよ! ゼータが望むウンディーネよ、津波で全てを洗い流せ!!」
腕輪から眩い光が放たれ、上級の水の精霊・ウンディーネが虚空に召喚された。だが、その顔は激しい痛苦と拒絶に歪んでいる。
直後、集落のど真ん中で荒れ狂う巨大な大津波が発生! 猛烈な濁流が集落を丸ごと呑み込み、木々や建物を粉砕しながらゴブリンたちを一気に押し流していった。
その光景を空から見ていたライゾウが、憤怒の表情で叫ぶ。
「ひ、酷い……! あんな無茶苦茶な場所で大津波を起こしたら、限界を超えて魔力を使い切ってしまうぞ! 嫌がっている精霊に、奴隷術式で無理やり強力な魔法を行使させてやがるんだ!」
命を削るような大魔法を強制されたウンディーネは、全身を力なく萎ませ、消え入りそうな青ざめた顔で背中を丸めると、引きずり込まれるように精霊の腕輪の中へと消えていった。
「あぁ……っ! 精霊をあんな道具みたいに酷使するなんて、絶対に許せない……!」
ライゾウが身体を震わせて悔しがっている。
下を見渡せば、津波に飲み込まれた500匹のゴブリンのほとんどが溺死するか押し潰されて倒れていた。
俺は静かに拳を握りしめる。
「……あの精霊たちも助け出してあげたいな」
地上では、津波が引くやいなや冒険者たちが叫び声を上げて突撃していった。
「ヒャッハーッ! 動けねぇ奴らから片っ端から殺せーッ!」
彼らは倒れているゴブリンの首を跳ね、ナイフで腹を割いて魔石を強欲に切り出していく。
「ガハハ! 流石はSランク『災厄のゼータ』様だぜ! 一発でゴブリンどもが壊滅したな!」
「へへっ、今まで依頼が全く達成できなくて参ってたが、今回参加して正解だったぜ! 魔石の山で稼ぎ放題だ!」
「全く良質なカモだぜ、ヒャッハー!」
冒険者たちが目をギラつかせて魔石を剥ぎ取っていた、まさにその時──。
ズズズ……と地面を揺らす不気味な足音が、四方八方の深い森の中から響き渡った。
「な、なんだ……!? この地鳴りは……!?」
「まさか罠か!?」
血生臭い快楽に酔い痴れていた冒険者たちが慌てて周囲を見回すと、集落を包囲するように森の暗がりから無数の醜悪な顔が溢れ出してきた。
その数──なんと怒涛の3,000匹!!
先ほどまでの500匹など前菜に過ぎなかったのだ。10倍以上の圧倒的大軍勢に包囲され、冒険者たちの顔が一瞬で絶望に染まっていく。
「ひ、ひぇぇええっ!? なんだこの数はッ!?」
「助けてくれぇぇぇッ!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図と化す中、異様な速さで脱出を図る3人の影があった。前線で戦っていたSランク冒険者たちと、その後ろを必死に追うゼータである。
「ゼータさん! 完全にゴブリンどもに嵌められたな! 調査不足もいいとこだ! 無事に帰れたら報酬は倍だからな!」
「くそっ、分かっている! どう見ても3,000以上はいる! ここは奴らを捨て駒にして逃げるのが先決だ!」
ゼータは再び精霊の腕輪を掲げて叫んだ。
「古の約定に基づき、契約を履行せよ! ゼータが望むシルフよ、強風の道を作れ!!」
腕輪から引きずり出された風の精霊・シルフが悲鳴を上げ、前方に凄まじい暴風のトンネルを作り出す。立ちふさがるゴブリンたちがガラガラと吹っ飛んでいく。
(あの前を走る3人がSランク冒険者たちか。……それにしても、呪文を唱えないと魔法を放てないのか?)
俺の疑問に、ハクが説明してくれる。
「精霊術士はね、精霊の誰に何をさせるか、長ったらしい指示の術式を口に出して命令しないと発動できないのよ」
ライゾウも小さく頷いた。
「そうだよヒロト。人間は呪文を唱えないと魔法を使えないんだ。精霊や僕たち魔物は身体の一部として魔法を使うから呪文なんて要らないけどね。そもそも魔物は喋れない奴の方が多いし!」
「あちゃー……じゃあ俺がスラオやライゾウに無詠唱で魔法を使ってもらっていた時、周りの人間たちは相当驚いてたんだな」
「そうだよ! 人間の世界で無詠唱なんて、よっぽどの超高位な大賢者しか出来ない伝説級の技術なんだから!」
そんな会話をしている間にも、地上の逃走劇は破滅へと向かっていた。
ゼータたちの逃走ルートを遮るように、森の奥から巨躯を誇る3匹の『ゴブリンジェネラル』が躍り出たのだ!
「グハハハ! ここから生きて逃げられると思うなよ、人間ども!」
「チッ、邪魔だッ!」
Sランクの剣士(冒険者D)が一瞬でゴブリンジェネラルAの間合いに肉薄し、極太の剣を横一文字に薙ぎ払う!
重厚な打撃音が響くが──なんと、ジェネラルの着ている漆黒の重鎧に阻まれ、刃が通らない!
「な、何ッ!? 鎧が硬すぎ──」
「甘いぞ愚か者が!」
ゴブリンジェネラルAの巨大な大剣が閃き、冒険者Dは一刀のもとに斜め一文字に斬り伏せられた。
「くそっ! 死ねぇッ!」
後ろから弓を構えたSランクの弓手(冒険者E)が矢を放とうとした瞬間、その背後の影からゴブリンジェネラルBがヌッと姿を現した。
ズスッ!と長槍が背中から胸突き抜け、吐血する。
「よそ見はいけないな……」
壊滅的な状況に、ゼータの顔が引きつる。
「くそっ! 古の約定に基づき、契約を履行せよ! シルフ、強風で我を後方へ吹き飛ばせ!!」
さらにゼータは、隣にいた最後のSランク冒険者Fの背中を全力で蹴り飛ばした!
「がはっ!?」
冒険者FはゴブリンジェネラルCの足元へと転がり落ちる。
「俺が逃げ切る時間を稼げッ! お前たちの犠牲は忘れないぞ!」
「ゼ、ゼータぁぁぁッ! この汚い卑怯者がぁぁぁッ!!」
仲間を身代わりに差し向けたゼータは、シルフの強風に乗ってゴブリンたちの包囲網をまんまと抜け出した。
役目を終えたシルフもまた、限界を超えた消耗により背中を丸め、泣きそうな顔で腕輪の中へと引き戻されていく。
「ハハハ! 逃げ切ったぞ! バカどもめ、俺の糧となれて光栄に思え!」
ゼータは誰もいなくなった退避ルートを全速力で駆け抜ける。
──その前方の空から、俺は黒刀『ムラマサ』を手に静かに飛び降りた。
ドスンッと着地し、立ち塞がる。
「待てよ」
ゼータは急立ち止まり、凄まじいギョロ目で俺を睨みつけた。
「誰だ貴様……ッ! ……黒髪、オッドアイ……!? 貴様、噂のヒロトか!?」
「ご名答」
「底辺の魔物使いが! そこをどけぇッ! 邪魔をするなら殺すぞ!」
「逃がさないよ。お前みたいな最低な人間は、ここで終わりだ」
ゼータは狂ったように腕輪を掲げた。
「古の約定に基づき、契約を履行──」
呪文を唱え終わるより早く。
俺は一歩踏み込み、居合いの極意で『ムラマサ』を横一文字に閃かせた。
ドスッ、という軽い手応え。
「がッ……!?」
ゼータの左腕が、腕輪ごと空中に舞い散る。
間髪入れず、返す刀で斜め上から一閃──!
極太の斬撃波がゼータの胴体を真っ二つに切り裂いた。
「あ……が……ば……っ!?」
Sランク冒険者『災厄のゼータ』は、反撃の暇すらなく絶命し、地面へ倒れ伏した。
腕輪が砕け散ったことで封印の術式が解け、中から四体の精霊──ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームが実体化して空中に現れた。どれも激しい暴虐により傷つき、怯えている。
そこへ、空から降り立ったライゾウとレイが優しく声をかけた。
「「助けに来たよ!」」
ライゾウは精霊たちに歩み寄り、胸に手を当てて語りかける。
「嫌なエルフの奴隷術式は、もう終わりだ。俺と一緒に自由になろう?」
ライゾウとレイは、怯える精霊たちに俺の【眷属化】の仕組みについて丁寧に説明した。
エルフの残酷な強制契約とは違い、絆で結ばれ、レベルアップや進化をして共に強く成長していける素晴らしい力であることを。
俺はムラマサを鞘に納め、精霊たちに向き直った。
「強制はしないよ。ここから自由にどこかへ逃げてもいい。でも、もし俺たちの仲間になって一緒に戦い、成長したいと思ってくれるなら……歓迎する。選択はあなた方の自由だ」
四体の精霊たちは顔を見合わせると、涙を拭い、満面の笑顔で俺の胸へと飛び込んできた!
【告:精霊『ウンディーネ』『シルフ』『サラマンダー』『ノーム』が眷属となりました】
「みんな、よろしくな!」
俺はすぐさま【MP分配】を発動し、傷つき疲弊していたウンディーネとシルフに莫大なMPを注ぎ込んで完全回復させた。輝きを取り戻した精霊たちが嬉しそうに俺の周囲をくるくると飛び回る。
「よし……精霊たちの救出は完了だ。それじゃあ、ゴブリンの集落へ戻ろうか」
俺は不敵に微笑み、戦場へと視線を向けた。
「次は──俺たちとゴブリンどもの本番の戦いだ!」
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