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魔物使いの異世界大陸平定記〜神々や大悪魔すら配下!? 規格外のテイム能力で異世界の理をぶち壊し、気づけば大陸全土を制覇していた〜  作者: ボルトコボルト
第一章 深淵の樹海

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第383話 【洗脳の勇者と聖戦の激突!】狂気の聖剣を振るうハーミア!決死のスクルドとオダーン軍本陣の終局!

 アンデッドの死霊軍団と精霊たちの天変地異が及んでいない数少ない戦域——そこには、大空から紅い眼光を光らせた吸血鬼たちが舞い降りていた。


 ヴァンスの率いる吸血鬼の兵士たちは、軽量の漆黒の鎧を身に纏い、背から生えた黒いコウモリの翼を自在にはためかせて空を縦横無尽に飛び回る。


 上空から目にも留まらぬ超高速で滑空し、鋭い剣で敵の首筋を叩き斬り、手にした長槍で鎧ごと胴体を一瞬で貫いていく。あまりのスピードと滑空速度に、地面のオダーン軍の兵士たちは迎撃の矢を放つことすらできず、手も足も出ないまま次々と血の海に沈んでいった。


 そして、その激戦の末端——ステラド軍、魔法兵団、アンデッド、精霊、吸血鬼たちが討ち漏らした数少ない生存者たちを、後方から着実に狩り尽くしていたのが、オニバルとバズの二人だった。


 剣聖たる悪魔キマリスのオニバルが、一切の無駄がない完璧な一閃を繰り出す。神速の至高刀による一刀両断の剣技は、迫り来る敵兵を左右へ、あるいは上下へと一瞬で斬り払っていく。


 一方、魔神パズズのバズが指先を滑らせると、空間を切り裂く極限の不可視の風の刃が発生し、群がる兵士たちを肉片へと細切れに変えて潰し散らした。


 まさに逃げ場のない、地獄のような虐殺の光景が広がっていた。


 この圧倒的な混乱と勝機を見逃さなかったのが、ヴァルキリーの部隊を率いるスクルドだ。


「今だ! 本陣の守備が崩れている! 我に続けッ!」


 スクルドは絶好の好機と判断するやいなや、周りに控えていた勇猛なヴァルキリーの戦士たちと共に、オダーン軍の本陣を目指して一気に突撃を敢行した。


 本陣を死守しようと群がる屈強な重装兵たちに対し、空中から苛烈な雷撃を撃ち込んで吹き飛ばし、迫る槍兵の突撃を自身の長槍で強引に弾いて深々と突き刺し、力任せに遠くへ振り飛ばす。


 怒涛の猛進の末、ついに彼女の視界の先に、怯えと焦燥を顔に浮かべる敵将オダーンの姿がはっきりと捕らえられた。


「——オダーンッ!!」


 スクルドは激しい執念の叫びを上げると、全身の雷撃を槍に宿し、一直線にオダーンの首を狙って躍り出た。


 しかし——その直後。


 ガキンッ!!


 鋭い金属音が戦場に響き渡り、スクルドの放った必殺の一撃は、横合いから滑り込んできた一つの影によってあっけなく弾き返された。


「な……ッ!?」


 スクルドと敵将オダーンの間に、防壁のように割り込んできたその戦士の姿を見て、スクルドは絶句し、驚愕で目を見開いた。


 そこに立っていたのは——両手持ちの眩い光を放つ聖剣を中段に構えた、神々しいまでの偉容を纏う女戦士だった。全身を白銀の聖鎧で包み込み、その眼光には尋常ではない殺意が宿っている。


 彼女の顔に、スクルドは見覚えがありすぎた。


「は、ハーミア……!? なぜお前がここに……!?」


 アマゾネス国の元王女、ハーミアだった。


 スクルドの混乱を余所に、後ろに隠れていたオダーンが、わざとらしい悲愴感を漂わせながら叫んだ。


「おお、勇者ハーミア殿! 我が国の誇り高き兵士たちが、あの恐ろしい魔王の軍勢によって今や風前の灯火なのだ! 我々の希望の明かりは、貴方だけだ……! どうか勇者の名において、あの邪悪な悪を倒してくれッ!」


 オダーンの言葉を受け、ハーミアは聖剣を強く握り締め、真っ直ぐな瞳でスクルドを射抜いた。


「承知した! ——我が聖剣にかけて、魔王ヒロトに味方する愚者どもには正義の鉄槌を下す!」


「ハーミア! 目を覚ませ、騙されるな! そのオダーンこそが、民を苦しめる真の悪だッ!」


 あまりの理不尽にスクルドが怒号を上げるが、ハーミアの瞳には冷たい怒りしか宿っていなかった。


「スクルド、私は知っているぞ! お前たちが罪のないミレースの民たちを大量に殺戮したことをな……! 見損なったよ。正義を司るヴァルキリーだと信じて尊敬していたのに……この大陸の平和な秩序を破壊し、全てを支配しようと目論む忌まわしい魔王ヒロトの片棒を担ぐとはな!」


「何を言っても無駄というわけか……! 私とて、王家と愛しい人の無念を晴らす仇を討たねばならんのだ! 許せとは言わない……お前を斬り倒してでも、私はオダーンを討つ!」


「騙されているのはスクルド、お前の方だ! 平和だったこの大陸を恐怖の底へ叩き落とし、大陸制覇を目前に控える魔王ヒロトの狂気に狂わされているのだ! 人類の未来と希望は、このオダーン軍にしか残されていないのだからッ!」


 悲壮なセリフを叫びながら、聖剣を激しく交え始める二人の美しき戦士。


 一方、その激闘を少し離れた空中で見下ろしていた俺は、冷ややかに戦況を観察していた。


 樹海帝国軍の圧倒的な猛攻により、あと一押しでオダーン軍を完全に壊滅させられるというところまで追い詰めた。だが、本陣に攻め込んだスクルドの立ちふさがったのは、アマゾネス国の元王女ハーミア。


 どうやら彼女は、あの短期間で『勇者』へと進化を遂げたらしい。

 そして、あろうことか『樹海帝国皇帝ヒロト』——つまり俺のことを「大陸を征服しようとする邪悪な魔王」だと完全に断定し、自分を庇うオダーン軍こそが「正義の軍隊」だと固く信じ込んでいるようだ。


(やれやれ……正義だの悪だの、そんなものは戦場に存在しないんだけどな。誰がどう思おうと、俺の愛する仲間や帝国を脅かす勢いは、正義を気取ろうが悪だろうが容赦なく粉砕するだけだ)


 俺は隣に浮遊している大悪魔バエルのスパへ、ふと疑問に思ったことを問いかけた。


「なぁスパ、ハーミアの奴はどうやってあの短時間で『勇者』にまで進化したと思う? 上位種である勇者へ至るには、相当な量の経験値が必要だと思うんだけどな」


 俺の問いに対し、スパは知的な光を宿した瞳でハーミアを見つめながら、冷静に考察を口にした。


「恐らくは……南の王国や小国群において、オダーン軍と敵対していた勢力や、その無抵抗な民たちを大量に虐殺したのでしょうね。その上で、巨体を持つ巨人種や神獣といった、莫大な経験値を持つ存在を狩り尽くした……と考えるのが最も自然かと」


「やっぱりそうだよなぁ。あの時のハーミアの強さじゃ、最初から強い巨人や神獣を倒せるはずがない。手っ取り早くレベルを上げるために、弱い人間や民を大量に殺して経験値を稼ぎ、その上で大物を倒したってわけか……」


 正義を口にしながら、最も血生臭い道を選んで力を得た「勇者」の矛盾に、俺は小さく息を吐き捨てたのだった。

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