第381話 【反逆の大召喚陣!】不死の闇軍団と精霊王の威光!オダーン軍の圧倒的物量を打破する至高の全軍突撃!
「そうだ、あの男なら……!」
俺は即座に思考を巡らせ、能力を発動させた。空間が歪み、俺の目の前に一人の男が滑り込むように姿を現す。
かつて魔王軍の四天王としてその名を轟かせた男——『漆黒のクログル』だ。
「ヒロト様、お呼びでしょうか」
恭しく頭を下げるクログルに対し、俺は前線の惨状を指差しながら単刀直入に切り出した。
「クログル、お前がかつて魔王軍として戦っていた頃に率いていたアンデッドの群れだが……ここへ一気に召喚することはできないか?」
俺の問いかけに、クログルは眉をひそめ、真剣な表情で全線の魔力流動を測るように目を細めた。
「大規模召喚の魔法陣自体を構築することは造作もございません。……ですが、あれほどの巨大な死霊軍団を一網打尽に呼び寄せるとなると、私一人の魔力では到底足りませぬ」
「ふむ、魔力不足か。なら問題ない。魔力ならスラオから無限に供給できる。すぐに魔法陣を構築してくれ」
「なんと……! バアルゼブル様からの魔力供給ですか! かしこまりました、直ちに準備に入ります!」
クログルの答えを聞くやいなや、傍らに控えていたスラオがニヤリと不敵な笑みを浮かべ、クログルの背中に莫大な魔力の奔流を注ぎ込み始めた。
「さあ受け取れ、クログル! 存分に使えッ!」
「ははッ、恐悦至極……ッ!」
スラオから溢れ出る底なしの魔力を受け取ったクログルが、地表へ向けて両手を突き出す。
ドゴォォォォンッ!!
大地が激しく揺動し、広大な戦場の中央に漆黒の極大魔法陣が瞬く間に刻み込まれていった。重厚な闇の魔力が膨れ上がり、ついには魔法陣の中心に地獄の門を思わせる巨大な『闇の扉』が威風堂々と出現する!
ギギギギ……ッ!
重厚な響きとともに闇の扉が打ち払われると、その奥底から地獄の叫びのような死霊の雄叫びが轟き、無数のアンデッドの大軍勢が怒涛の勢いで溢れ出してきた!
「全軍、進軍を開始せよ! オダーン軍を恐怖の底へと叩き落とせッ!」
召喚者であるクログルが大将として全軍に号令をかける。闇の扉から躍り出たのは、デュラハン、バンシー、グール、ゾンビ、そしてマミーといった死霊の精鋭たちだ。
先陣を切るのは、首無しの騎士【デュラハン】。
自らの首を手に抱き、あるいは首無しの魔馬に跨がった重装騎士たちだ。全身を漆黒の重鎧で固め、巨躯から繰り出される大剣の一撃は無類の怪力を誇る。敵の防衛線を力任せに粉砕し、オダーン軍の兵士たちをなぎ倒していく!
続いて大空を揺らしたのは、悲壮な叫びを上げる【バンシー】の群れだ。
流れるような長い黒髪に身を包み、緑色の服とグレーのマントを纏った赤い瞳の悲劇の女性たち。彼女たちが一斉に放つ凄絶な泣き声——『死の嘆き《レクイエム》』は、戦場全体に響き渡り、オダーン軍の兵士たちのステータスを激減させ、激しい混乱と恐怖を引き起こしていく。
地上を埋め尽くすのは、死体を喰らう屍食鬼【グール】だ。
紫に怪しく光る瞳と、岩盤をも引き裂く鋭い爪と牙を持つ人間の捕食者。あらゆる身体能力が人間を遥かに凌駕しており、混乱する敵陣へと飛び込んでは、容赦なくその肉体を噛み千切っていく。
そして、不気味な足音を立てて押し寄せる生ける死体【ゾンビ】。
痛覚という概念が存在しない彼らには、限界というものが存在しない。
一般的に人間が命の危険に直面した際に出す力を「火事場の馬鹿力」と呼ぶが、これは通常、肉体が自壊するのを防ぐために脳がかけているリミッターを一時的に解除する現象だ。しかし、ゾンビにはそのリミッターが最初から存在しない。
己の筋肉が千切れようが、腕や脚の骨が折れようが、全身がどれほど腐肉と化していようが関係ない。自らの肉体を限界を超えて破壊しながら、信じられないほどの規格外の腕力を発揮して敵に襲いかかるのだ! さらに、彼らに噛みつかれたオダーン軍の兵士は、瞬く間に毒に侵されて同類のゾンビへと変わり、敵の内部から破壊を広げていく。
最後に、全身を頑丈な包帯で固く巻き上げた【マミー】の群れだ。
元より完全に死んでいる永久死体である彼らは、剣で切りつけられようが、槍で深々と突き刺されようが、一切動きを止めることなく進軍する。その凄まじい怪力で敵の盾を叩き割り、戦列を蹂躙していった。
クログル率いるアンデッド大軍勢の乱入により、押し込まれていた戦局が一気に押し戻されていく!
(……だが、まだ足りないか? オダーン軍の総兵力は相当なものだ。これでもまだ向こうの数の方が多そうだな……)
俺は戦場全体を冷徹に見渡す。
樹海帝国の領土内には、まだまだ無数の兵士や頼もしい国民たちが生活している。だが、俺の召喚スキルで今すぐこの場に呼べるのは、俺と直接契約を結んでいる『眷属』だけなのだ。
一般の兵士たちを今からこの遠方の大戦場まで自力進軍させようとすれば、どれほど急いでも月単位の時間がかかってしまう。今この瞬間に戦局を変えるには、この場で新たな戦力を生み出すしかないのだ。
俺が焦燥を滲ませて思案していると、隣に立っていた精霊王レイが、慈愛と強い決意を秘めた瞳で俺を見つめ、静かに口を開いた。
「ヒロト様……世界樹の里で暮らす、我が精霊たちを戦線へ参戦させましょう」
「えっ!? レイ、いいのか……!? 精霊たちはようやく世界樹の里で平和に暮らし始めたばかりじゃないか。戦いに巻き込むのは……」
突然の申し出に俺が驚くと、レイは凛とした美しい微笑みを浮かべて 首を横に振った。
「心配はいりません、ヒロト様。精霊たちもまた、誇り高き樹海帝国の国民なのです。帝国がこのような存亡の危機に直面しているというのに、自分たちだけが安全な場所で遊んでいるわけにはまいりません」
「レイ……ありがとう!」
俺の感謝の言葉を受け止めると、レイは両腕を天へと掲げ、神聖なる精霊力を全身から解き放った。
「世界樹の里に集う精霊たちよ、精霊王たる我が声を聞け! 精霊王が命ずる——我が愛する帝国の敵を殲滅するため、この地に来たりて共に戦え! 『精霊界大召喚』ッ!!」
レイが解き放った圧倒的な精霊力が俺の目の前の空間に凝縮され、眩いばかりの聖光を放つ巨大な門が顕現した!
ゴォォォォン……!
輝く精霊の門が解き放たれると、その向こう側から世界樹の里で暮らしていた無数の精霊たちが、輝かしい光の粒子を纏って一斉に飛び出してきたのだ!
火、水、風、地、光の精霊たちが大空と大地を満たしていく。
「精霊王様! そしてヒロト陛下! お呼びいただきありがとうございます!」
「我々もまた、誇り高き樹海帝国の一員です! 我が家園を脅かす不快な侵略者どもを、一匹残らず叩き潰してみせます!」
歓喜と闘志の声を上げる精霊たちは、色彩豊かな精霊魔法の嵐を巻き起こしながら、怒涛の勢いでオダーン侯爵軍の陣営へ向けて怒り狂う津波のように襲いかかっていったのだった!




