第379話 【至高の執事と災厄の撃破!】凶獣キメラの大群を粉砕!地獄の支配者アスタロト降臨と最強眷属陣の圧勝劇!
次なる脅威として戦場の一角を埋め尽くしていたのは、あまりにも不吉な姿をした空中要塞——キメラの大群であった。
ライオンと山羊、そして毒々しい大蛇という三つの頭部を併せ持ち、ライオンと山羊が混ざり合った獰猛な巨躯、蛇の尾、そして大空を自在に滑空する凶悪な鳥の翼。
一匹だけでも一国の都市を容易く滅ぼし得る災厄の魔獣が、ここでは恐ろしいほどの密度で群れをなしていたのだ。
ライオンの頭部が解き放つ地鳴りのような猛吼は、対峙する者の精神を直接揺さぶって萎縮させ、全身を硬直させる。
山羊の頭部からは絶え間なく高威力の攻撃魔法が放たれ、連射される爆炎と雷撃。
そして尾をなす大蛇の口からは、触れた者を骨まで溶かし尽くす死の毒ブレスが吐き出され、広範囲の敵を片っ端から蹴散らしていく。
(……まさに災厄の魔獣だな。俺が駆けつける前の防衛線で、樹海帝国軍の兵士たちは本当によく耐えてくれたものだ)
キメラの群れが蠢く周辺の地表には、召喚されたガーゴイルたちが何体も無惨に破壊され、転がっていた。防衛戦において一般兵士と魔法兵団の戦死者が最も多く出てしまったのも、間違いなくこの凶暴なキメラの群れが原因だろう。
この地獄のような惨状を完全に打ち破るべく、俺がキメラ討伐のために選抜した樹海帝国の精鋭陣は、以下の規格外のメンバーたちだ。
北西地域から召喚した、オーガエンペラーのオガ1副将軍。
同じく北西地域より参戦した、ゴーゴンエンプレスの蛇王国女王リンダ。
荒野地域から召喚した、不死の魔竜ヒュドラのヒュウ。
そして樹海帝国の世界樹の里から呼び寄せた、皇帝城の執事たる悪魔アスタロトと、カーバンクルのカイン。
まず突撃を敢行したのは、オガ1副将軍だ。
かつて魔王軍の一員として樹海へと侵攻してきたオーガ軍の元将であり、当時は『オーガキング』であった男である。俺の眷属となってからは、血の滲むような幾多の戦場と壮絶な修行を乗り越え、ついに『オーガエンペラー』へと至った。
国家の総力を挙げなければ対応できないとされる災害級の存在——エンパー種となったオガ1の強固極まる肉体は、キメラが放つ威圧の咆哮も、山羊の極大魔法も、大蛇の毒ブレスすらも一切寄せ付けず弾き返す!
「ハハッ! この程度の攻撃でワシの皮膚に傷がつくと思うてかッ!」
オガ1はアダマンタイトの大剣を握り締めると、地表を削り取るほどの跳躍力で一気に高々とおどり出た。真横から襲いかかるキメラに対し、大剣を一閃! 剛腕から繰り出された斬撃は、キメラの巨躯を三つの頭部ごと豪快に叩き斬り、空中で肉片へと変えて見せた。
続いて大空を舞ったのは、蛇王国の現女王リンダだ。
元蛇王国国王リザルド元帥の娘であり、俺の愛する妻・皇后ハクの姉にあたる。父の跡を継いで蛇王国を統べる女王となった彼女は、俺の眷属となったことで【ゴーゴンエンプレス】へと見事な覚醒を果たしていた。
髪の毛が無数の蛇として蠢いているものの、その顔立ちは妹のハクによく似た息を呑むほど美しい至高の佳人。上半身はしなやかな人間の女性、下半身は優美な大蛇であり、背からは一対二枚のドラゴンの翼が力強く羽ばたいている。両手でしっかりと保持しているのは、銀色に輝く巨大な大剣だ。
「帝国の安寧を脅かす不快な化け物ども……我が剣の露と消えなさい!」
リンダはドラゴンの翼を鋭く羽ばたかせ、キメラの群れと凄絶な空中戦を展開する。
彼女が振るうシルバーの大剣から煌めくような一閃が繰り出されるたび、天空を埋め尽くしていたキメラたちの三個の首が鮮血を撒き散らしながら次々と地表へ落ちていった。
そして、地上で圧倒的な破壊力を振り撒いていたのが、ヒュドラのヒュウだ。
かつて魔王軍の四天王『漆黒のクログル』が召喚した恐るべき魔竜で、絶対の不死性と驚異的な超回復力、そして絶大な毒のブレスを誇る怪物。一度はリザルド元帥によって丸呑みにされて倒されたが、後に吐き出されたところを俺が眷属として迎え入れた経緯がある。
眷属化に伴う全ステータス2倍の補正を受けたヒュウの圧倒的スペックは、もはや災害の域すら超えていた。
九つの頭部を持つ超巨大な長頸の蛇。背には一対二枚の漆黒の蝙蝠の翼、力強い四本の足、黒と紫が交錯する重厚な竜鱗。鋭利な爪と牙、そして不気味に光る蛇の目を備えている。
「グオォォォォォンッ!」
至高の竜鱗と無限の超再生能力を持つヒュウは、キメラたちの爪や魔法の反撃など痛痒とも感じず真っ向から突進。九つの頭部を滑らかに動かしてキメラたちへ次々と喰らい付き、口からは周囲の空間ごと腐食させる壊滅的な毒ブレスを撒き散らし、鋭い竜爪でその肉体を豪快に引き裂いていく。
そして——この戦場の空気を一瞬で一変させたのが、最後の一人であった。
日頃は皇帝城で洗練された執事服を身に纏い、俺の身の回りの世話を完璧にこなしてくれている男、アスタロト。俺自身も彼の「真の姿」は未だ見たことがない。
元々は不死王ルシーが契約していた地獄の支配者であり、神々や上位悪魔との最終決戦を想定してルシーから紹介され、俺の眷属となった超規格外の存在だ。普段は帝国城の筆頭執事として控えてもらっていたが、この大陸の命運を賭けた最終大戦ということもあり、満を持して戦場へと召喚したのである。
寸分の狂いもない正統派の燕尾服に身を包んだ、長身で完璧な美形。オールバックに美しく固められた金髪に、すっと通った高い鼻筋を持つダンディな男——アスタロトが、静かに一歩前へ踏み出した。
「ヒロト様。これより、我が真なる力の一端をお見せいたしましょう」
アスタロトが優雅に一礼した瞬間、彼の背中——燕尾服を突き破るようにして、三対六枚の漆黒の天使の翼が雄雄しく展開された!
ドゴォォォォン……ッ!
空間そのものが重圧に耐えかねて悲鳴を上げるような、絶望的で冷徹な邪気が一瞬にして戦場全体を押し包む。
さらには、アスタロトの足元の影がどろりと蠢き、底なしの闇の中から漆黒の巨躯を誇る伝説の黒竜が静かに姿を現したのだった。




