第378話 【無双の魔王軍!】悪魔軍団の蹂躙劇と哀愁のリガリア!?南西精鋭陣の猛攻と格差の結末!
俊敏な動きと目にも留まらぬ速度で襲いかかる猛毒のサソリ尾——そんな危険極まりないマンティコアの大群に対し、俺は南西地域から召喚した圧倒的な精鋭たちに討伐の指示を出した。
まず戦場へ足を踏み入れたのは、かつて不死王ルシーが連れてきた闇の王、デルガ侯爵だ。エルダーリッチから更なる高みへと覚醒を果たし、【悪魔ビフロンス】へと進化を遂げた男である。
射抜くような鋭い光を宿す黒い瞳に、流れるような黒髪。鷲鼻に整えられた口髭、頭部から生える曲がった二本の角。そして背から雄々に広がる黒い三対六枚の翼と、先が鋭利な矢印型となった長い尾。
デルガ侯爵が静かに両腕を広げると、大気を激しく震わせるほどの恐ろしい邪気が全方位へ一気に解き放たれた。
「ヒロト様のために……蠢く虫ケラどもよ、絶望の中で潰えるがよい」
圧倒的な邪気の脈動を身に纏ったデルガ侯爵には、マンティコアの群れすら近付くことすらできない。それどころか、周囲に渦巻く邪気が無数の漆黒の触手へと姿を変え、極大の槍となって襲いかかるマンティコアたちの肉体を次々と深々と突き刺し、串刺しにして貫いていく!
続いて、かつてダークエルフ国の将軍として国を支えた逸材、グレンシー将軍が天空を舞う。俺の眷属となった後、ダークハイエルフを経て【悪魔エリゴス】へと進化を遂げた名将だ。
美しい二枚の翼を広げた神聖なる天馬に跨がり、重厚なシルバーの鎧を身に纏う端整な騎士。黒髪の間からは二本の折れ曲がった角が覗き、手には誇り高き軍旗と巨大な長槍が握られている。
「我が槍の露と消えよッ!」
グレンシー将軍が天馬を駆り、超高密度の高速飛行で急降下しながら極大の槍を投擲! すると空中で一本の槍が無数の闇の槍へと分裂し、地表を埋め尽くすマンティコアたちを壊滅的な勢いで射抜いていった。全身を串刺しにされ、身動きが取れなくなったマンティコアたちが、そこら中で虚しく蠢いている。
さらに、同じく南西地域から参戦したリリア副将軍が舞い降りる。
蛇王国出身の彼女は、幼少期より女王リンダや俺の妻である皇后ハク、そしてリーネット副将軍の姉妹と共に過ごしてきた生粋の戦士だ。俺の眷属となり、死線と修行を重ねた結果、【ゴーゴンエンプレス】へと見事な進化を果たしていた。
通常のゴーゴンと身体の大きさ自体は変わらないものの、その小柄な肉体には凝縮された凄まじいオーラが脈動している。頭髪は無数の毒蛇が蠢いているが、その顔立ちは恐ろしいほどに整った絶世の美貌。上半身はしなやかな女体に銀色のビキニアーマーを装着し、下半身は巨大な大蛇、背には一対二枚の蝙蝠の翼が広がり、手には鋭利な長槍を構えている。
「その不快な尾、届くと思っているのですか?」
リリアは空中を自在に飛翔し、マンティコアの鋭いサソリ尾の刺突を容易く回避。上空から正確無比な鋭い刺突で、マンティコアたちの眉間を次々と貫いていった。
そして、蛇王国の元国王リザルド元帥の娘であり、女王リンダや皇后ハクの妹にあたるリーネット副将軍も参戦する。
ラミアクイーンから【ラミアエンプレス】へと進化した彼女は、流れるような長い髪に、幼く可憐な顔立ちと、それとは極めてアンバランスな豊満すぎる胸を誇っている。上半身は銀色のアダマンタイト製ビキニアーマーを纏う美しき女体、下半身は美しい鱗を持つ大蛇だ。
かつて俺におねだりしてきたため、左目には魔眼を憑依させてある。右の澄んだ青い瞳と、左の妖しく光る赤い瞳のオッドアイ。手にしているのは最高級アダマンタイト製の大剣と大盾だ。
非常に甘え上手な性格で、事あるごとに、
「義兄ちゃん!」
と可愛らしく俺へおねだりにやって来ては、欲しいものをすぐに手に入れてしまう甘やかし甲斐のある義妹である。もちろん、今身に纏っているアダマンタイトシリーズの最高の武器と防具も、俺がすぐに作って与えたものだ。
「義兄ちゃんに見てもらうんだから、みんなまとめて斬っちゃうんだから!」
魔眼の飛行スキルで滑空したリーネットは、襲いかかるマンティコアのサソリ尾をアダマンタイトの大盾で軽々と弾き返すと、アダマンタイトの大剣を荒々しく振り回し、群がる魔獣どもを豪快に滅多斬りにしていく!
……と、ここまでは完璧すぎる無双劇なのだが。
最後に残った一線で、猛烈に苦戦している男がいた。リガント将軍の長男であるリガリ ア副将軍だ。
俺と初めて出会った際、プライドが邪魔をしたのか眷属になることを拒否してしまったため、他の副将軍たちと比べると進化のスピードが圧倒的に遅れている。幾多の戦争と血の滲むような過酷な修行を経て、ようやく『リザードマンキング』へと辿り着いたばかりだ。
どうやら今更になって「眷属にしてください」とは口が裂けても言えないらしい。だが、眷属化すればステラド全補正によって全ステータスが倍化するのに対し、非眷属の彼は他の眷属と比べて半分以下の力しか出せないのだ。
(あれ……勢いで召喚しちゃったけど、召喚しない方が良かったか……?)
案の定、マンティコアの規格外のスピードと縦横無尽の連撃に、リガリアの反応速度が全くついていっていない。
地表で唯一、泥臭い泥沼の肉弾戦を展開するリガリア。マンティコアの凶悪なサソリ尾の突きを必死の思いで幾度もかわそうとするが、あまりの数の多さに避けきれず、体勢を崩して泥まみれになりながら転がり回っている。
「ぬぐっ……!? くそっ、速すぎる……ッ!」
ザシュッ!!
間一髪で死線をかわすものの、マンティコアの強靭な前足の爪によって装甲ごと肉体を深く切り裂かれるリガリア。キング種特有の驚異的な回復力によって傷口は即座に塞がっていくが……はっきり言って体力が持つかどうか絶妙なラインだ。
(おいおい、サソリ尾の猛毒だけは絶対に刺されるなよ……!)
ヒヤヒヤしながら見守っていたその瞬間——。
ドスッ!
「ぐはぁッ!?」
案の定、背後から滑り込んできたマンティコアのサソリ尾が、リガリアの太腿へ深々と刺さってしまった!
一瞬で全身に毒が回り、白目を剥いて倒れかけるリガリア。だが次の瞬間、上空に控えていた世界樹レイから温かな神聖なる回復魔法の光が降り注ぎ、瞬時に猛毒が浄化されて体力が全回復した。
「ふぅ……間一髪助かった……。おい誰か、リガリアをちょっと手伝ってやってくれ!」
俺は心の中でそっと救援を呼びかけた。
まあ……リガリアの苦戦はさておき、南西地域の精鋭たちのおかげで戦場は概ね圧倒的に蹂躙できている。
リガリア、死なない程度に頑張ってくれよ!




