第375話 【覚醒の死闘!】暴走ベヒーモスの部位解体!?堕天使&悪魔の超絶狩獲と雷神トール・ライゾウ降臨!
「ぐあっ……!?」
ベヒーモスの凶悪な爪に弾き飛ばされ、地面へ激しく激突したゴブ2。手足はあらぬ方向へ折れ曲がり、胸元からは鮮血が噴き出していた。だが、次の瞬間——折れた骨がメリメリと不気味な音を立てて繋ぎ合わさり、肉芽が爆発的な速度で盛り上がって傷口を塞ぎ切る。
エンパー種特有の常軌を逸した『驚異的超回復力』によって一瞬で立ち上がったゴブ2は、血を吐き捨てると、上空を見上げて小さく舌を鳴らした。
「チッ……やはり自力で空を飛べないと、あの規模の巨獣相手には致命的に不利だな。……朱雀様! 失礼を承知でお願いがございます!」
空中を優雅に舞う四聖獣の一角・朱雀へ向けてゴブ2が叫ぶと、朱雀は甲高い美しい鳴き声を轟かせ、旋回しながら急降下してきた。
「ふん、皆まで言わずとも良い! 眷属たる者、我が背に乗って思う存分その力を振るうがよい!」
「おおッ! かたじけない、助かります!」
ゴブ2が素早く朱雀の背へと跳び乗ったその間にも、猛攻は止まらない。
風を切り裂いて肉迫したのは、オッドアイの魔眼を光らせるリガール副将軍だ。
ベヒーモスが払ってくる巨大な爪を、魔眼による精巧な飛行術で間一髪かわすと、全身の力を乗せた凄まじい大剣の一撃をベヒーモスの頭部へ叩きつける!
ガキィィィィンッ!
「む……! 流石に硬いな」
金属同士が激突したような甲高い重音が響き渡るが、大剣は分厚い皮膚に弾かれてしまう。リガールは眉一つ動かさず、そのまま空中で旋回すると、隙を狙ってベヒーモスの首筋へと滑り込むように移動を開始した。
ベヒーモスの巨体が不気味に揺れ動く。その黄色く濁った瞳は、頭上に舞い降りた二つの圧倒的な存在——黒き堕天使と赤き悪魔へと強く注がれていた。
赤き悪魔ゼパルへと覚醒したリガント将軍の全身からは、空間を歪めるほど禍々しい真っ赤な魔力が溢れ出している。
一方、元死神から覚醒し堕天使サリエルとなったデステル伯爵からは、周囲の空気を凍てつかせるような冷徹で神聖な神気が静かに拡散していた。
「いくぞ、デステル!」
「フッ、遅れるなよリガント!」
リガント将軍が真紅の大剣を低く構えてベヒーモスへ急降下すれば、デステル伯爵は漆黒の三対六枚の翼を大きく広げ、巨大な『大鎌』を悠々と振りかぶる。
突進するリガントの赤き大剣に対し、ベヒーモスは凶悪な頭部の巨角を持ち上げて正面から受け止めた! 幾ら強大な防御力を誇る魔獣といえど、悪魔の王たるゼパルの一撃を素の皮膚で受けるのは危険だと本能で察知したのだろう。
ズドォォォォンッ!
「ほう! このワシの大剣を受け止めるとはな。なかなか硬くて良い素材ではないか!」
リガントがニヤリと凶悪な笑みを浮かべた直後、上空からデステルの黒き大鎌が円弧を描いて真下に薙ぎ払われた。
ベヒーモスは咄嗟に前足の太い爪を持ち上げて防ごうとするが——。
ザシュッ!!
「クゥ……ッ!?」
あらゆる魂と物質を断ち切る『大鎌』の刃は、ベヒーモスの軌道を容易く変えさせ、そのまま右前足の巨大な爪と指を一瞬にして綺麗に斬り払った!
苦痛に顔を一瞬歪めるベヒーモス。だが、デステル伯爵の手加減なき追撃は止まらない。返す刀で大鎌を鋭く閃かせ、今度は右前足の肉そのものを豪快に削ぎ落とす!
「ハハハッ! 幾ら絶対の防御を誇る魔獣とて、俺の『大鎌』の前にはただの肉塊だな!」
デステル伯爵は不敵に笑うと、空中へ高々と舞い散ったベヒーモスの巨大な爪と指を、即座に手元に展開した闇の異空間へと放り込んで収納した。
しかし、大災厄と呼ばれるベヒーモスの超回復力は、まさに異常と言うほかなかった。
斬り飛ばされた右前足の先端から肉と骨が爆発的に再生を始め、数秒と経たずに元の完全な状態へと戻っていくのだ。
「ほう……再生速度もなかなかのものじゃないか。肉体そのものも素晴らしい素材になりそうだ」
デステルの言葉に、大剣を打ち込んでいたリガント将軍が同意するように深く頷く。
「うむ! あの異常な硬度を誇る皮膚があれば、我が樹海帝国軍の全兵士に行き渡る至高の鎧が作れそうだな」
「ククク、違いない。爪と牙を集めれば、我が国の鍛冶師たちが喜ぶ名剣が何本も打てるぞ」
「ふむ……では陛下へ最高のお土産をお渡しできそうだな」
「良し、頭の巨角は一番の特出品として陛下へ直接献上しよう。どれ、爪はあと十数本ほど再生させてから、じっくり狩り集めるとするか!」
あまりの規格外の巨獣を前にして、デステル伯爵とリガント将軍の二人は、もはや完全に『素材の自動回収モード』に入っていた。
その二人を追うように、首筋へ到達していたリガール副将軍が、強固な皮膚と皮膚の僅かな装甲の隙間を狙い、真横から大剣を深々と突き立てた!
「グオォォォッ!?」
激痛に暴れるベヒーモスが巨頭を激しく振り回し、リガールを強引に振り払う。しかし、リガールは空中で魔眼の飛行スキルを滑らかに発動させて体勢を整えると、悠々と上空へ退避した。
「ゴブ2! 奴の硬い皮膚の隙間、あるいは接合部であれば攻撃が十分に通るぞ!」
朱雀の背に乗り、大剣を上段に構えたゴブ2がリガントの隣へ並び立つ。
「流石はリガール、鋭い! 剣が通るポイントは他にもありそうだな……一気に畳みかけるぞ!」
一方で、救援として駆けつけた樹海帝国の最強精鋭たちは、オダーン軍の魔獣たちをまさに虫ケラのごとく圧倒的に蹂躙していた。
特に、空中から雷撃を撒き散らしていた異形の魔獣・鵺の大群と対峙していたのは、樹海地域の精鋭部隊だ。
その先頭に立つのは、かつて雷獣からサンダーバード、鵺を経て、神の領域である雷神トールへと至った頼もしき古参——ライゾウである!
神へと昇華したライゾウは、雄々しい『人形』の真なる姿をとっていた。
頭部には白銀の翼が刻まれた『角付兜』を戴き、兜の下からは長く燃えるような赤い髪が背へとなびく。射抜くような灼熱の赤い瞳。鋼のごとく鍛え上げられた筋肉質の肉体には、鮮烈な赤のノースリーブ革鎧と、重厚な毛皮のブーツを纏っている。
その腰には、装着者の筋力を爆発的に跳ね上げる神の帯『力帯』。
両腕には、如何なる超高熱の雷すら完全に制御する『鉄の籠手』。
そしてその右手には、無数の極大放電を全方位へ撒き散らす神の槌——『真っ赤な槌』が、圧倒的な威圧感を放ちながら怪しく輝いていた!




