第371話 【驚愕の超展開!】窮奇が明かす最悪の罠!大悪魔バエル・スパ&悪魔ナベリウス・コボ2参戦とステラド攻防戦!
「フフフ……ハハハハッ! 打ち倒す、だと? まったく呑気な男だぜ、樹海帝国の皇帝とやらは! 良い気になってこんな場所で油を売っていて本当にいいのかなぁ!?」
四凶の一柱である窮奇は、嘲笑を浮かべながら虎の大きな口を歪ませた。その言葉の裏に不穏な気配を察知した俺は、鋭く問い返す。
「何……? 一体どういうことだ」
すると窮奇は、太い前足で空を軽く叩きながら、勝ち誇ったような大声で真相を暴露した。
「知れたこと! 饕餮の奴と俺は、貴様ら樹海帝国の主要戦力をこの大自然へ引きつけるための『陽動』に過ぎんのだよ! 本命の狙いは……オダーン大帝国の本隊だッ!」
「何だと……!?」
窮奇が放った衝撃の言葉に俺が目を見開いたその時、すぐ隣の空間が激しく歪んだ。黒い魔力の渦の中から、一人の美麗な女性が静かに舞い降りる。
かつてアラクネエンプレスとして君臨し、さらなる高みである悪魔バエルへと至った俺の側近、スパだ。
悪魔への覚醒を果たした彼女は、重力を無視して悠然と空中に浮遊していた。優美な仕草で胸元に手を当てると、真剣な眼差しで俺に告げる。
「ヒロト様……窮奇の言っている言葉は、あながちブラフや間違いではないかもしれません」
「スパ! 一体何があったんだ、説明してくれ!」
「ハッ。ヒロト様がここ大自然の戦場へ向かわれたのと完全に時を同じくして、オダーン軍が全軍の進攻速度を急激に早めました。奴らはすでに広大な砂漠を強行突破し、我が帝国の重要拠点であるステラド地域へと激しい大規模攻撃を仕掛けております」
「なんだって……!? 今、ステラドの迎撃にあたっているのは誰なんだ!?」
「現地ではマシラン将軍が率いる防衛軍と、我が国の魔法兵団が必死の覚悟で迎撃を行っております。……ですが、圧倒的な戦力差により、このままでは遠からず討ち破られるのは時間の問題かと」
「くっ……それは非常に不味いな……!」
ステラド地域が突破されれば、帝国の防衛線は一気に崩壊しかねない。焦りを募らせる俺の姿を見て、空中の窮奇はここぞとばかりに腹を抱えて高笑いした。
「ふははははッ! どうする、樹海帝国皇帝よ!? ここでおめおめと指を咥えて、自国の領地が焼き払われるのを指を指して眺めているかッ!?」
窮奇の煽りを受け止めながら、俺は冷徹に思考を巡らせた。ステラドの救援は一刻を争う。だが、目の前で煽ってくる四凶・窮奇をこのまま放置して立ち去れば、大自然の戦域に更なる大打撃を与えかねない。
「……窮奇、お前という脅威をこのまま放っておくわけにもいかないからな」
俺は即座に空間召喚の術式を展開し、頼もしい配下を呼び寄せた。
「出番だ、コボ2!」
光の陣から姿を現したのは、虎の身体を持つ窮奇と対峙するに最も相応しい存在——かつて三つ首の猛犬ケルベロスから、大進化を遂げて悪魔ナベリウスへと至ったコボ2だ!
かつての三つ首の異形に、漆黒の悪魔の翼を生やしたコボ2。その全身からは、神話の悪獣をも凌駕する圧巻の気迫が溢れ出している。虎に翼を持つ窮奇の相手としては、まさにこれ以上ない最高の適任と言えた。
背の翼を羽ばたかせ、空中に降臨したコボ2は、三つの首を交互に動かしながら俺へ恭しく首を垂れた。
「ヒロト様、お呼びに預かり光栄です。あの生意気な虎……窮奇めを叩き潰せば良いのですね?」
「ああ、頼んだよコボ2! 俺はこれより急ぎステラド地域へ向かう!」
俺は念話の回線を即座に開き、現在も悪獣たちと激闘を繰り広げている妻や仲間たち全員へ緊急連絡を飛ばした。
『みんな! 今ステラド地域がオダーン軍の奇襲を受けている! 俺は直ちにステラドの救援に向かう! みんな、ここは頼んだぞ!』
すぐさま、戦場に散る全員から力強い思念が返ってきた。
『承知いたしました、ヒロト様!』『ここはあたしたちに任せて、早く行って!』『ヒロト様、お気をつけて!』
仲間たちの頼もしい言葉を聞き届け、俺が転移の術式を組もうとしたその瞬間——。
「ハハッ! この俺の前で簡単に行かせると思うなよッ!」
窮奇が咆哮を上げ、その身体を突風へと変えた。目にも留まらぬ速度で俺の死角へと肉迫し、暴風を纏った鋭い牙が俺の首元を狙って閃光のごとく輝く。
だが——。
ズガァァァンッ!
「ゴオォォォッ!」
俺と窮奇の間の空間に、コボ2が一瞬で空間転移して割り込んだ。三つの口から解き放たれるのは、空間すら歪める極大の『黒炎ブレス』!
漆黒の炎と暴風が正面から激突し、凄まじい衝撃波が空間を跳ね飛ばす。突風となって迫っていた窮奇は直撃を避けるため強引に軌道を切り替え、上空へと反れながら元の虎の姿へと戻った。
「クッ……! 樹海帝国には、一体どれだけの底知れぬ戦力が隠されているというのだッ!?」
忌々しそうに吐き捨てる窮奇に対し、コボ2の三つの首が同時に凶暴な笑みを浮かべた。
「身程知らずの牙を持つ虎よ……お前ごときが我が主、ヒロト様に気安く触れられると思うな」
上空で強大な魔力を撒き散らし、お互いに身構えて激しく睨み合う窮奇とコボ2。
「コボ2、ここは完全に任せたぞ!」
「ハッ、承知いたしました! ヒロト様……あの窮奇という悪獣、息の根を止めてしまっても構いませんね?」
「ああ、ぜひ倒してくれ! 生かして逃げられると後々厄介だからな!」
俺の返答を聞いた窮奇は、屈辱と激怒に顔を歪ませてコボ2を睨みつけた。
「よし、スパ! ステラドへ飛ぶぞ!」
「御意に、ヒロト様!」
俺とスパは転移魔法を発動し、一瞬にしてステラド地域へと姿を消した。
残された大自然の上空では、窮奇とコボ2による超絶的な高速空中戦が幕を開けていた!
自らを風そのものに変え、縦横無尽に天空を駆け巡る窮奇。
対するコボ2は、空間転移を自在に駆使してあらゆる死角から唐突に現れては消え、黒炎を叩きつける。
両者の超神速の死闘は、周囲の戦況すら巻き込む大混戦へと発展していた。
窮奇が風の残像を残してロック鳥ロクに跨る魔魔女ウィーラへ襲いかかると、すかさずグレイアが漆黒の闇の触手を伸ばしてその突撃をガッチリと防ぐ。
コボ2が放った黒炎が蛇身人面の窫窳を呑み込もうと迫れば、巨蛇修蛇が張り巡らせた高密度の水壁が割り込み、蒸気を上げながら激しいブレスを遮る。
ペナンガルのビーが放つ鋭い『針弾』が怪鳥大風の羽ばたきを穿ち、対する九頭竜九嬰の灼熱の火炎ブレスがアンナの頭上から降り注ぐ。
だが、アンナは全身を炎に包まれながらも平然と歩みを進め、手にした漆黒の長槍を凶悪な怪人鑿歯へ向けて突き出す。
ガキィィィンッ!
鑿歯の巨大な矛とアンナの長槍が激しい火花を散らして交差する。
そこへユイの放った眩い魔法の稲妻が巨大魔猪・封豨の皮膚を直撃。だが封豨はその稲妻の雷光を全身に纏い、恐怖の波動を増幅させながらアンナへ向かって猛然と突進する!
さらに九尾の狐キュウが九本の尾から色とりどりの極大属性魔法を放てば、大風が切り裂くような『風刃』を連射して相殺を図る。
そこへ撃ち落とされたはずの巨獣ヘカトンケイルが大地から生成した城塞級の大岩を投擲し、それが空を舞うロック鳥ロクの側腹を直撃して激しい泥沼の混戦が繰り広げられる。
極限の混沌と化す大自然の戦地を後にし、俺とスパは新たな激戦の地——ステラド地域へと降り立ったのだった!




