第369話 【驚愕の激闘!】四凶・窮奇の秘技『羿除六害』発動!亜神ペナンガルのビーとヒロト軍団の最終決戦!
「ヒロト様、あの不遜なる風の魔獣は私にお任せください。私が一瞬で叩き伏せてみせます!」
そう宣言して真っ先に一歩踏み出したのは、亜神ペナンガルへと覚醒を遂げた俺の愛しき妻の一人、ビーであった。
彼女はかつてキラービーエンプレスとして君臨していたが、極限の進化を経て蜂を守護する神秘の亜神へと昇華した。その姿は進化前の特徴を色濃く残した美しき人形である。
頭部には二本の優美な触角と、禍々しい装飾が施された銀のティアラが光る。艶やかな黒の長髪をすっきりとポニーテールに結び上げ、小さな小顔には長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳、真っ直ぐに通った高い鼻筋、そして何よりも目を引く紅く妖艶な唇が刻まれていた。まさに外国のトップ女優を思わせる極上の美貌だ。
その圧倒的な容姿を引き立てる体躯も凄まじい。豊満でこぼれ落ちそうな巨大な胸、キュッと細く引き締まった腰、そして豊満で大きな丸みを帯びたお尻。胸元が大きく開き、黒地に鮮やかな黄色のラインが走る革ドレスを身に纏っている。ノースリーブの超ミニ丈裾からは、首筋から鎖骨、胸の谷間、そして二の腕の濃艶な生肌が惜しげもなく晒されていた。
膝上まで伸びる黒ストッキングとガーターベルトの隙間から覗く、滑らかな太腿の絶対領域は見る者の目を奪って離さない。黒のハイヒールロングブーツを履きなし、背からは薄く透明な蜂の翅が優美に羽ばたいている。徹底したセクシー路線で見事に俺の心を射止め、見事に皇后の一人としての座を射止めた傑物であった。
「待っておれ、風の怪異! ヒロト様の前で無様な姿を晒させてやる!」
ビーは背中の翅を高速振動させ、疾風のごとき速度で空中の窮奇のもとへと一気に飛びかかった。
だが、上空で待ち受ける四凶・窮奇は、襲い来るビーの気配を察知すると狂気じみた嘲笑を浮かべた。
「ハハハハッ! 愚かな小娘が! 中華の大地を脅かした伝説の悪獣どもよ……羿除六害の契約に基づき、この窮奇の招きに応じ今こそ姿を現せ! 悪獣召喚ッ!」
窮奇が前足の鋭い爪を空間へ叩きつけると、その眼前に突如としてドス黒く歪んだ六つの邪悪な神気の塊が湧き出した。
凄まじい大気の震動とともに、神気の塊から古代の凶悪な六体の悪獣たちが姿を現し、亜神ペナンガルのビーの眼前に怒濤の威圧感をもって立ち塞がる。
体に蛇の鱗を纏い不気味な人の顔を持つ怪蛇、窫窳。
鑿のように異常に伸びた長い牙を持ち、巨大な盾と極太の矛を構えた凶暴な人型の怪物、鑿歯。
頭部が九つも存在する異形の巨竜であり、赤と青の属性魔力と炎と水の奔流を周囲に揺らめかせる、九嬰。
風を巨大な翼に纏い、暴風を巻き起こす超巨大な怪鳥、大風。
濁流のごとき水を全身に纏った、山をも呑み込む巨大な大蛇、修蛇。
そして、全身を鋼鉄以上の堅牢な皮膚で覆い尽くし、歩く度に周囲へ絶対的な恐怖の波動を撒き散らす巨大な魔猪、封豨。
神話に謳われる六つの絶望が戦場へ降り立った瞬間、俺の隣で戦況を見ていた元勇者のエルダーリッチ、ユイがポンと手を叩いて声を弾ませた。
「あ! あの豚さん、封豨じゃない! 前にみんなで丸焼きにして食べた時、すっごくジューシーで美味しかったよね! ねぇヒロト、また食べたいなー!」
すると、龍脈の魔女ウィーラも長い髪を揺らし、嬉しそうに涎を拭いながら同意した。
「ふむふむ、まったくもって同感じゃのう。あの脂の乗り切った極上の肉質……思い出すだけで口の中に唾液が溢れてくるわい。今回も美味しく調理して貰うとしようぞ」
封豨が周囲に撒き散らす「精神を崩壊させる絶望の恐怖波動」など、俺の頼もしすぎる妻たちの前では一切の威力を発揮せず、ただの極上食材としてしか認識されていなかった。
一方、四凶・窮奇に向けて一直線に突撃していたビーの目の前に、召喚された悪獣の一体である九嬰が割って入った。
九つの頭を持つ巨竜九嬰は、真っ赤に燃え上がる中央の龍頭を大きく開くと、灼熱の極大炎ブレスをビーへ向けて激しく吐き出した。
「くっ、鬱陶しいわね!」
ビーは空中を身軽に跳躍して炎のブレスを紙一重で回避。即座に反撃へと転じ、右手を掲げて超高速の連続針攻撃『針弾』を猛烈な勢いで九嬰の巨体へ連射した。
シュシュシュシュッ!
しかし、九嬰の巨体を覆うように渦巻いていた青い水のバリアが強力な流動防御を展開し、放たれた針弾をすべて威力を殺して弾き返してしまった。
「ちっ……防御が硬いわね!」
水と炎の二重の防壁を張る九嬰の強固な守りに、ビーの眉がピクリと跳ね上がる。その様子を上空から観察していた俺は、即座に判断を下した。
「あの規模の悪獣が六体も相手となると、流石にビー一人だけに任せるのは時間がかかりそうだな。よし、俺たちも一気に加勢しに行こう!」
俺の呼びかけに、傍らに控えていた美しき妻たちが力強く頷いた。
「はい、ヒロト様! お供いたします!」
俺と共にこの場へ駆けつけていた妻たち——美しき漆黒の髪を持つダークハイエルフのグレイア。勇者であり現在は強力なエルダーリッチへと転生したユイ。長き時を生きる知識と強大な魔力を秘めた魔女ウィーラ。そして強力な蜂と蟻の軍団を束ねるキラーアントエンプレスのアンナ。
俺を含めた五人の戦力が、即座に窮奇と六体の悪獣が陣取る戦域へと急降下を開始する。
敵の陣容は、四凶・窮奇が一柱に、召喚された悪獣が六体で計七つの脅威。
対するこちらは、先陣を切ったビーを含めても俺たち合計六人だ。
数がひとつ合わないなと俺が一瞬思考を巡らせた直後、ユイが可愛らしく微笑みながら自身の召喚陣を展開した。
「ふふっ、人数なら大丈夫だよヒロト! はい、おいでキュウちゃん!」
ユイの呼びかけに応じ、眩い光とともに彼女の使い魔である神獣・九尾の狐のキュウが姿を現した。
ちなみに、魔女ウィーラの使い魔である巨大なロック鳥のロクは、現在ウィーラをその背に乗せて優雅に滞空している。そのため、ウィーラとロクの二者については合わせて『一つの戦力』として数えるのが妥当だろう。
こうして、神話級の悪獣軍団と樹海帝国が誇る最高峰の戦力による、真の決戦の火蓋が切って落とされたのだった。




