第365話 【大自然の激闘!】四方に広がる巨人大軍勢!蛇王リザルド、白竜王ドラシル、悪霊王アレオンの圧倒的参戦!
大自然の上空、澄み渡る空の真っ只中に空間の歪みが生じ、俺たちは一瞬にして転移を果たした。
眼下に広がる広大な大自然の地平では、タキーダ辺境伯率いる凶悪な巨人の大軍勢と、それを迎え撃つ樹海帝国軍の精霊や獣人、魔物たちが激しい怒号とともに熾烈な死闘を繰り広げていた。
「ハハハハハッ! おうおう、すでにド派手に始まっておるではないか!」
豪快な高笑いとともに、一瞬遅れて空間を割って現れたのは、悪魔ボティスへと昇華を遂げたリザルド元帥だ。
リザルド元帥は元々『蛇王』として君臨していた猛者であり、俺の側近である応龍ハクの実の父親でもある。つまり、俺にとっては義理の父親にあたる存在だ。かつて彼が治めていた蛇王の湿原は、現在では樹海帝国の傘下である『蛇王国』として存続しており、現在は彼の娘であるリンダが見事に統治している。
全身を覆う漆黒の禍々しい重甲冑、その手には身の丈を遥かに超える巨大な漆黒の大剣。頭部からは鋭く伸びる二本の大きな角と鋭い肉食獣の牙が覗き、背からは圧巻の一対二枚の漆黒の蝙蝠の翼が羽ばたいていた。
悪魔ボティスのリザルド元帥は、戦場の中央で暴れ回る不気味な多腕の巨体をギラギラとした猛禽のような眼光で見下ろした。
「ヒロト殿! 儂はあの不気味な百本腕の巨人とやらと戦うぞ! 久しぶりの大物だ、血が騒ぎおるわ!」
「ヘカトンケイルだな。リザルド元帥、思う存分暴れてきてくれ。任せたぞ!」
「ガハハハッ! 承知した!」
リザルド元帥は凄まじい風切り音を立て、漆黒の翼を羽ばたかせて速攻でヘカトンケイルのもとへ急降下していった。
その直後、今度は空を切り裂くようにして神々しい白銀の輝きが上空に飛来した。竜王ドラシルである。
竜王——この広大な世界において、無数に存在する竜たちの頂点に君臨する絶対者。魔王、精霊王、不死王と肩を並べる、世界の均衡を司る強大な存在だ。そして今代の竜王の座に就いているのが、この白竜ドラシルであった。
白竜ドラシルは、全身が純白の輝きを放つ、あまりにも神々しい光の古竜だ。絶対的な光属性のスキルを極めており、その飛行スピードは全竜種の中でも文句なしの最速を誇る。彼が放つ光の極大ブレスは、山をも一瞬で穿つ差し詰め大出力のレーザービームであった。
ドラシルの後ろには、無数の精鋭なる古竜たちがズラリと翼を並べて飛来していた。
ドラシルは優雅に翼を羽ばたかせ、俺の前で恭しく首を垂れた。
「ヒロト様、タキーダ辺境伯軍に恐ろしい巨人兵団が現れたと聞き及び、加勢すべく古竜の精鋭を率いて駆けつけました」
「ドラシル、助かるよ。ヘカトンケイルにはリザルド元帥が向かってくれた。ドラシルたち古竜軍団は、あの猛烈な炎の武器を振り回している炎の巨人の群れを頼む!」
ドラシルは黄金の瞳を強く輝かせた。
「承知いたしました。我ら竜族の真なる力、巨人どもに見せつけてやりましょう……者たちよ、行くぞ!」
ドラシル率いる古竜たちの咆哮が天を揺るがし、凄まじい速度でギガンテスの軍勢が陣取る戦域へと突撃を開始した。
さらに間髪入れず、北部の大地から凄まじい濃度の死気が立ち込め、黒い雲とともにアレオン軍団が戦場へと到着した。
軍団を率いるアレオンは、かつてガラード王国の優秀な人間将軍であった男だ。俺に討ち取られた後、デルガの死霊魔法によって亡霊として蘇り、スペクターとなった経緯がある。
だが現在のアレオンは、幾多の死闘を経てスペクターエンペラーへと正当な進化を遂げていた。その背後には、彼が統率する無数のスペクター、レイス、ファントムの不死者軍団が黒い地獄の絨毯のように広がっている。
「ヒロト様、到着が遅くなり申し訳ございません!」
アレオンは漆黒の死気を纏いながら空を駆け、俺の前で片膝をついて拝礼した。
「いや、素晴らしいタイミングだ。アレオン、お前たちは一つ目の巨人サイクロプスと真っ正面から交戦している、ミノタウロス族のミロイドたちの援護に回ってくれ!」
「はっ! 直ちにサイクロプスどもを挟撃し、踏み潰してご覧にいれます!」
スペクターとは、いわゆる肉体を持たない高位の亡霊だ。生前のアレオンと同じ姿形をしてはいるものの、全身が半透明で、立ち昇る恐ろしいほどの禍々しさを漂わせている。
彼らの進化系統は、ジェネラル種からキング種、そして最高峰のエンペラー種へと進化が進む毎に、内に秘めた禍々しさと威圧感が極限まで増していくのだ。エンペラー種となった現在のアレオンは、最早『悪霊の王』と呼ぶに相応しい、息を呑むほどの圧倒的で不気味な威圧感を放射していた。
彼が引き連れるレイスたちは、実体を持たない幽霊の魔物だ。漆黒のローブを纏い、足は無くゆらゆらと宙を浮遊している。光属性の魔法には弱いものの、物理攻撃を一切無効化する厄介な特質を持つ。
そしてファントムも同じく肉体を持たない亡霊だが、こちらは無機質な灰色の仮面を顔に着けている。脚の造形はあるもののレイス同様に実体はなく、生前に着用していた甲冑や服を灰色の半透明な状態で纏っていた。
下界を見下ろせば、ミノタウロス族が苦戦している相手——一つ目の巨人サイクロプスが暴れ回っていた。
サイクロプスは、顔面の中央に巨大な眼球がたった一つだけ存在する異形の巨人だ。額からは極太の角が一本突き出し、岩のように盛り上がった筋肉質な緑色の巨体を誇る。上半身は裸で腰蓑だけを巻き、手には不気味な金属製の巨大な棍棒を握りしめていた。その一振りは地表を破砕し、衝撃波だけで周囲の兵士を吹き飛ばしている。
「ふむ……どれも一癖も二癖もある凄まじい相手ばかりだな」
俺は右目に宿る神眼のアイを発動させ、広大な戦場全体の配置と敵の戦力を一瞬で把握した。
「だが、こちらには最強の眷属と頼もしい味方が勢揃いしているんだ。タキーダ辺境伯の巨人兵団……ここで一気に殲滅させてもらうぞ!」
俺の力強い宣言とともに、大自然の広大な大地を揺るがす最終決戦の火蓋が、ついに切って落とされたのだった。




