第349話 【愚者へ下る絶対の天罰!】領主の暴政を即座に破砕! 圧倒的武威で平伏させる新皇帝の絶対領域!
「止まれ! それ以上進むなら容赦しないぞ」
俺は静かに、だが一切の容赦のない冷徹な声を掛け、瞬時にアキルイの前へと滑り込んだ。
右手を神刀ムラマサの柄へと掛け、親指で鍔を押し上げて静かに鯉口を切る。
右足を半歩前に出し、身をわずかに捻って隙のない完璧な居合いの構えを取った。
だが、権力を笠に着た二人の騎士は、俺の洗練された構えの意味すら理解できない愚か者だった。
「ハッ、平民のガキが何をイキがって——」
俺の忠告を鼻で笑い、嘲笑を浮かべながらズカズカと間合いに侵入してくる騎士たち。
神刀ムラマサの超絶的な『居合いの間合い』に相手の身体が入った——その刹那。
シュバッッッ!!!
視線すら追いつかない神速の抜刀。
閃光のような一閃が空間を切り裂いた。もちろん、刃は完璧に回転させて『峰打ち』に修正してある。
横薙ぎに放たれた凄まじい衝撃波が前を歩いていた騎士の胸甲を捉え、ガァァンッ!と重厚な金属音を響かせた。
騎士の体はまるで大型トラックにはねられたかのように宙を舞い、そのまま宿の頑丈な石壁へと叩きつけられてぐったりと動かなくなった。
「なっ……!?」
もう一人の騎士が驚愕に目を剥くより早く、俺は返す刀でムラマサを翻し、上段からの鋭い袈裟斬りを打ち据える。
ドガァァンッ!!
これも完璧な峰打ちだ。肩口から強力な衝撃を叩き込まれた騎士は、床に激しく叩きつけられ、白目を剥いて一瞬で気絶した。
「ひ……ひぃぃぁぁぁッ!?」
自慢の近衛騎士が手も足も出ずに一瞬で撃沈された光景を目の当たりにし、領主ラバガル子爵は哀れな悲鳴をあげた。
「な、何をしているんだ貴様ぁッ! 平民風情が……! 我はラビリスの領主、子爵なるぞ!?」
あまりの恐怖に腰を抜かしそうになりながら、ラバガルは情けなく後ずさりし、転げるように宿の入り口から逃げ出していく。
娘のラブリルも、信じられないものを見る目で顔を青ざめさせて慌てふためいていた。
「ヒロト! あなた、何をしているのか分かっているのですか!? 貴族である父上に逆らうということは、この国全体で恐ろしい犯罪者として指名手配されるということなのですよ!? どこにも生き場が無くなるのですよ!?」
「ふん。そんな事は何の問題にもならないな」
俺は刃を峰にしたままムラマサを低く構え、静かに一歩前へ踏み出す。
その圧倒的な威圧感に気押され、ラブリルは悲鳴をあげそうになりながら叫んだ。
「お、お願いだから聞き入れなさい! あなたが我が騎士団長になった後、ゆくゆくは私の婿にしてあげようと考えていたのですから! さあ、今すぐアキルイを差し出して、父上に泣いて詫びを入れなさいッ!」
「断る」
俺は無言のまま、氷のように冷たい眼光で刀を構えたままじりじりと前進する。
「ひ、ひぃぃぃッ! 来ないでぇぇッ!」
恐怖に耐えかねたラブリルも、ヒールを鳴らしてなりふり構わず宿の外へと逃げ出していった。
静もり返る『小鳥の宿』の酒場。
宿泊していた大切な商人アキルイを、領主ラバガル子爵とその騎士団が無知と欲望のままに捕まえに来た。
完全な冤罪であり、ただの領主の勝手な都合だ。
目的は、俺たちがダンジョンで命がけ(?)で採取してきた破格の超高級素材。
俺たちを力で屈服させて配下に収め、直接素材を回収させれば、間に入っている商人など必要ないと考えたのだろう。
だが——俺に誰かの配下になる気なんて、微塵も存在しない。
だから一蹴して断ったのだ。
それなのに「密漁を許してやるから騎士団長になれ」などと、上から目線で都合のいい提案をしてくる。本当にかみ合わない愚か者たちだ。
そもそも密漁?
おかしな話だ。今や迷宮『千尋の洞窟』の全階層を統括するダンジョンマスターの魔神パズズ(現バズ)は、俺のテイムによって完全な眷属になっている。
所有権の観点から言えば、あの迷宮はまるごと俺の私有物みたいなものじゃないか。
宿に乱入してきた哀れな騎士たちを瞬殺してぶっ飛ばしてやったら、威勢の良かった領主とその娘は一目散に宿の外へ逃げ出していった。
俺は左目に宿る神眼アイの能力と魔力探知を広げ、宿の周囲の状況を仔細に調べる。
宿のすぐ前には、冷や汗を流しながら震える領主と娘。
その周囲を固める近衛の残党。
さらに、宿を包囲していた20名近くの重装騎士たちが、主君の危機を察してぞろぞろと宿の正面へと集結しつつあるのが分かった。
「……やれやれ。それじゃあ、決着をつけに行きますか」
俺たちは静かな足取りで『小鳥の宿』の出入口をくぐり、表の通りへと出た。
そこには、陣形を組んで待ち構えていたラバガル子爵、娘のラブリル、そして殺気を露わにする騎士団の大群がずらりと並んでいた。
俺たちの姿を見るなり、後ろに控えさせていた無数の騎士たちに守られたラバガル子爵が、強気を取り戻して下品な顔で嘲笑った。
「ハハハッ! 愚かなゴミクズどもめ、我が騎士団の前に自ら姿を現すとはな! 我に歯向かうとはいい度胸だ! これより貴様らを王国全土で指名手配とし、罪人として地獄を味わわせてやる! ……だが、今ならまだ間に合うぞ? その場に土下座し、靴を舐めて我の忠実な奴隷となれッ!」
「きっぱり断る」
俺は一切の迷いもなく、冷ややかにと言い放った。
「……ところで、さっきから『密漁』『密漁』と騒いでいたけれどさ。『千尋の洞窟』って、あんたの所有物なのか?」
俺の問いかけに、騎士団の小隊長らしき男が剣を突きつけながら怒鳴り散らした。
「ハッ! 何を血迷ったことを抜かしている! この『千尋の洞窟』はラバガル子爵領の領地内にあるのだ! 領地にある資源が子爵様の所有物であることなど、世界の常識だろうがッ!」
「ふ~ん……そこに有るからあんたの物だと言うんだな。なるほど、よく分かったよ」
要するに、ここにあの迷宮が存在しているから自分の物だと主張しているわけだ。
なら、その根底から覆してやれば文句はないわけだな。
ラバガルは勝った気になって、醜い笑みを浮かべながら宣告した。
「不法侵入、領地資源の密漁、我が騎士団への暴行罪、そしてこの我への重大な不敬罪! もはや弁解の余地など欠片も無いわ! 惨めに死ねぃッ!」
「不法侵入と密漁と言ってもさぁ……その素材は全てアキルイ経由で、あんたら領主一族が破格の安値で買い叩いて入手していたはずだけどな?」
「黙れッ! なんと言おうと無許可の侵入と密漁である事実に変わりはないわ! 騎士ども、叩き斬れッ!」
怒号を飛ばす領主に対し、俺は心底呆れたように肩をすくめた。
「はぁ……しょうがないなぁ。これ以上話しても無駄みたいだし、ちょっと『常識』ってやつを教えてあげるよ」
俺がそう呟くと同時に、背後に控えていたユイ、グレイア、ウィーラ、そして鎧の下のスラオたちが、世界を揺るがすほどの凶悪な絶対的圧力を静かに解放し始めた。




