第344話 【暴かれし迷宮の真実!】突如出現した魔神パズズ! 激突する異世界の覇者と黒幕ダンジョンマスター!
俺は悪魔ナベリウスことコボ2の背に乗せてもらい、キラーアントエンプレスのアンナが先導する下の階層へと続く最短ルートを爆走していた。
「主上、前方より階層の魔物群が接近!」
「スラオ、任せたよ!」
進行ルート上に出てくる魔物は、俺の身体に同化している亜神バアルゼブルにして大悪魔ベルゼブブのスラオがすべて引き受けた。
出現するたびに、スラオの漆黒の触手が無数に伸び、魔物の急所だけを一瞬で穿つ。素材や肉を一切傷つけない完璧な精度での瞬殺劇だ。
討伐した魔物の素材は、スラオの闇魔法によって専用の異空間ストレージへ即座に収納されていく。まさに素材回収と経験値の稼ぎ放題状態だ。
そんな無双状態を楽しんでいるうちに、俺たちは何のトラブルも問題もなく、地下30階のボス部屋前へと無事に到着した。
重厚な大扉の前まで差し掛かると、そこにはすでに先回りしていた仲間たちが、通路の両脇に整然と二列に並んで待機していた。
(……いやいや、君たち来るのが速すぎるよ)
俺はアンナの案内で間違いなく最短ルートを突っ切ってきたはずなのだが、手分けして狩りを楽しんでいたはずのメンバーが全員集合している。
その光景はまるで、極道か暴力団の若い衆が本部の幹部を出迎えているかのような圧倒的な圧力を醸し出していた。
俺は少し気恥ずかしさを覚えつつも、その出迎えの列の真ん中をコボ2に乗ったまま堂々と進む。
最前列にいたダークハイエルフの女王グレイアが、深く腰を折って優雅にお辞儀をした。
「主上、お待ちしておりました。討伐の準備は万全に整っております」
「よし……みんな、ご苦労様。ボス部屋に入るぞ」
俺の合図で重厚な大扉が地響きを立てて開いた。
ボス部屋へと足を踏み入れたのは、コボ2の背に乗った俺。
左手には精霊王にして世界樹のレイ。左目にはあらゆる真実を解き明かす神眼のアイ。左腰には神刀ムラマサ。身体にはスライムから進化を重ねた悪魔ベルゼブブのスラオ。
さらにダークハイエルフのグレイア、キラーアントエンプレスのアンナ、九尾の狐のキュウ、龍脈の魔女ウィーラ、エルダーリッチにして元勇者のユイ、そしてユイの肩に止まる不死鳥フェン。
ちなみに、アンナの配下であるキラーアントたちや、コボ2が呼び出した魔犬の軍勢は扉の外で待機させてある。あまりに人数が多すぎて室内で邪魔になるし、必要になればいつでも召喚できるからな。
広いボス部屋の内部には、息が詰まるほどの禍々しい魔力が渦巻いていた。
とはいえ、かつて死闘を繰り広げた不死王ルシーの魔力と比べれば、まだまだ弱い部類だ。
わざわざレイが精霊力の結界でみんなを包んで保護しなくても、この程度の瘴気や重圧に気圧されるような軟弱な仲間は、いまの俺の陣営には一人も存在しない。
みんな、本当に頼もしく強くなったものだ。
……ん? 俺自身はどうかって?
俺個人は相変わらず弱っちいので、神刀ムラマサが発する神聖な魔力を身体に纏わせることで、ボスが発する威圧に耐えている。というか、部屋に入る前から臨戦態勢を感じ取ったムラマサが、自動的に強力な魔力の護符となって俺を守ってくれているのだ。
部屋の中央、空間の歪みの中に鎮座していたのは——邪悪なる異形の存在だった。
ライオンの如き凶暴な顔と筋骨たくましい両腕。
獲物を逃さぬ鷲の脚と、背中に生えた4枚の巨大な黒い翼。
尻尾は危険な毒針を持つ蠍であり、男根は生きた蛇の姿をしている。
全身を濃い体毛と圧倒的な筋肉で覆ったその姿は、間違いなく古の魔神パズズであった。
俺はパズズの尋常ではない雰囲気に違和感を覚え、隣のアンナへ問いかけた。
「アンナ……この千尋の洞窟って、地下30階が最深階ってわけじゃないよね?」
「はい、主上。すでに私の配下が先行し、現在地下34階までの階層構造と状況の監視体制を完了しております」
「……だとしたら、急にボスのレベルが上がりすぎてないか? この魔神パズズってやつ、明らかにおかしいだろ」
「仰る通りです。私が事前に監視していた時点では、この部屋のボスはただのオーガキングでした。……恐らく、何らかの理由で急激に変貌を遂げたものと思われます」
俺はアイの『神眼』を発動させて観察してみたが、地下25階のボスだったオーガキングとは比較にならないほど、極端にレベルと能力値が跳ね上がっている。
俺は一歩前へ出て、咆哮を上げようとする魔神パズズへ気楽に問いかけてみた。
「……どういうことかな? 貴方、本来の地下30階のボスじゃないでしょ?」
パズズは猛禽の眼光でこちらを睨みつけ、地響きのような重低音で吼えた。
「お前ら……一体何者だ!? どこから現れた!!」
「どこからって……見ての通り、ただの迷宮攻略に来た旅人グループだけど」
「黙れ! 貴様ら、そうやって俺の迷宮を滅ぼす気だな!?」
「俺の迷宮……? ほう、お前がこのダンジョンを管理しているダンジョンマスターなのか」
俺が指摘すると、パズズは口端を吊り上げて威嚇するように羽ばたいた。
「そうだ! これ以上俺の愛しい迷宮の魔物どもを殺されては、ダンジョンの維持すら出来なくなる! だからこそ……お前たちにはここで死んでもらう!」
「いやいや、そんなことないだろう。これだけの規模の俺たちが迷宮に入り込んでいれば、お前のもとには大量のダンジョンポイントが入ってきているはずだぞ?」
「何……!? ……む? ……ほ、本当だ……!? ポイントが凄まじい勢いで加算されている……!?」
パズズは困惑したように空を見上げ、目を見開いた。
「だろう? ここにいる俺の仲間たちは、どれも規格外のレベルと存在値を持つ者ばかりだからね。ただ迷宮内に滞在しているだけでも、管理者側には相当なダンジョンポイントが自動的に稼げているはずだ」
「な、なぜそんなシステムを知っている……! お前たちもダンジョンマスターだというのか!?」
「まあね。俺の眷属の中にダンジョンマスターがいるからさ。ダンジョンの基本的な管理方法やポイントの仕組みくらいは熟知しているよ」
「むむむ……っ! だが、ポイントが得られるからといって、このまま最深部まで土足で踏み込まれるのを許すわけにはいかん!」
パズズは蠍の毒針をシャカシャカと鳴らし、凄まじい殺意を膨らませた。
「そうか。じゃあ、君はどうするつもりだ?」
「決まっている! ここでお前たち全員を殺し、その魂を我が糧とする!!」
「そうか。話し合いで解決しないなら……よし、戦おうか!」




