第34話 全奴隷解放&商会ごと豪快転移!?腐敗した衛兵詰所を襲撃し、仲間を救って金庫ごと爆速強奪せよ!!
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ガリアの街の裏手にひっそりと佇む、石造りの二階建ての建物──ここが街で唯一の奴隷商館だった。
怪しげな重い扉を開けて中へ入ると、奥から一人の男が出迎えてきた。
黒いローブを纏ったその男は、身長160センチほどの小太りな体型で、腰まで届く長い黒髪と暗い雰囲気を漂わせている。
「……いらっしゃいませ」
「やあ、久しぶりだね」
アキートさんが親しげに声をかけると、俺たちは奥にある広々とした綺麗な応接室へと通された。室内には見るからに高価そうな謎の壺やアンティークな絵画が飾られている。
「景気はどうだい?」
アキートさんの問いかけに、奴隷商は深々と溜息を吐いた。
「さっぱりですよ。近頃は樹海に入るのが難しくなっていて、奴隷の仕入れが極端に少ない。商売になりませんよ……近いうちにこの街からの撤退も考えているくらいです」
「今、奴隷は何人いるんだ?」
「ちょうど10人です」
「全員見せてくれ」
奴隷商が手に持った鈴を鳴らし、部下に指示を出すと、地下へと続く階段から続々と奴隷たちが連れてこられた。
アイがすかさず全員のステータスとスキルを鑑定していく。
まず入ってきたのは、小柄だが筋肉質なドワーフの男が3人。驚いたことに3人とも超優秀な『鍛冶』スキル持ちだ。年齢は10代、20代、60代といったところか。
続いて、小さな身体を寄せ合ってブルブルと震えている獣人の子供が2人。兎耳の女の子と虎耳の男の子で、どちらも5歳くらいの幼子だ。スキルは未所持だが未来への伸び代は無限大。なにより可愛い。隣のヒナが目を作動させて「モフモフしたい……!」と今にも飛びかかりそうな顔をしているので、購入は即決定だ。
次に、小人が3人。年齢も性別も不詳だが、それぞれ『料理』『裁縫』『大工』という生活に欠かせない神スキルを所持している。
さらに、妖艶な雰囲気を纏ったダークエルフの美女が1人。見た目は20代の極上セクシー系で、なんと貴重な『錬金』スキル持ちだ。
最後は、二足歩行の蜥蜴人──リザードマンの男が1人。20代ほどで非常に体格が良い。
その時だった。リザードマンの男が、俺の隣に並ぶハクの顔を見るやいなや、激しく目を見開いて絶叫した!
「ひ、姫ぇぇぇっ!? ハク姫様ではありませんかッ!!」
「……あちゃ~」
ハクは参ったというように頭を抱えると、リザードマンに向けてパチンとウィンクを飛ばし、右手の人差し指を可憐な唇に当てて「シーッ」と微笑んだ。
「ヒロト、この人買ってあげて!」
「ヒロト! 私はあの可愛い獣人の子たちが欲しいわ!」
「オーケー、全員まとめて買い取ろう」
俺の即答に、奴隷商はポカンと口を開けた。
「え……? 全員ですか!? 在庫処分できて撤退できますから助かりますが……本当によろしいのですか!?」
アキートさんに手慣れた金額交渉をお願いし、手持ちの金貨半分と、不足分は高価な魔石を渡して支払いを完了させた。
奴隷商が【契約魔法】の羊皮紙を発動し、10人の所有権が俺へと正式に移譲される。
その瞬間、俺の服の中にいたスラオがぴくりと反応した。
『【魔法解析】完了……スキル【契約魔法】を習得しました!』
(おおっ! いいねスラオ! 進化して会話もどんどん上手くなってきたな!)
ハクが「姫」と呼ばれた件は大いに気になるところだが、今のガリアの街は爆発寸前の危険な状況だ。急いで移動しなければヤバい。
俺は奴隷商の館を出ると、即座に全員を巻き込んで【拠点】へと集団転移した。
「ハク、さっきの『姫』の件は後でたっぷり確認だからね」
「うんっ、後で全部ヒロトに話すね!」
ひとまず奴隷たちとヒナを拠点に残し、初期対応はヒナに丸投げすることにした。ヒナはさっそく獣人の幼子たちを狂喜乱舞でモフモフしており、まったく問題なさそうだ。
俺はスラオの解析した【契約魔法】を応用させ、奴隷たちの首に刻まれた奴隷紋を一瞬で消去・解除してやった。
小人の一人が目を丸くして叫ぶ。
「ええっ!? 奴隷契約を解いちゃって良いのですか!? 僕たち、逃げちゃうかもしれませんよ!?」
「その時はその時さ。できればウチで一緒に仕事をしてくれると助かるな。もちろん、ちゃんとお給料も払うよ。お願いできるかい?」
「そんな温かいこと言われたら、ここで一生懸命働くしかないじゃないですかーっ!」
ドワーフの老人が豪快に髭を擦った。
「ガハハ! 奴隷から解放してくれた大恩があるでな! しばらくここで世話になってやるわい。美味い酒さえあれば文句は言わんぞ!」
「酒なら任せてくれ。よろしく頼むよ」
兎耳の幼い獣人が、俺の服の裾をぎゅっと掴んできた。
「助けてくれてありがとう……お父さんもお母さんも死んじゃったの。ここに置いてください……!」
その言葉に、後ろで待機していたヒナの手がワキワキと怪しく動き出す。
「良いわよ〜! お姉さんにぜーんぶ任せなさいっ!」
ダークエルフの美女が、豊満な胸を俺の腕に押し当てて妖しく微笑む。
「私も大歓迎よん♡ 身も心もヒロト様に捧げちゃってもいいわ。夜のお相手もばっちりこなしてみせるわよ?」
「夜のお相手は結構です!!」
間髪入れずにハクが割り込み、キッパリと断った。あれ? ハクが勝手に拒否してるぞ……まあ、いいか。
リザードマンの男が俺の前で膝をつく。
「私はハク様に従います」
「ヒロトに従いなさい」
「承知いたしました! ヒロト様にこの身を捧げます!」
「よし! みんなよろしく! 俺は商会に戻るよ!」
◇
アキート商会へ戻ると、アキートさんはすでに店を畳むための怒涛の準備を進めていた。
使用人たちには希望を聞き、十分すぎる退職金を渡して次の仕事を探してもらうか、アキートさんと共に逃げるかを選択させたらしい。
その時、左手首のスパから緊迫した緊急念話が入った!
『ヒロト様! 衛兵の一団がアキート商会に向かって急行中です! 重要参考人として同行を求める名目で詰所へ連行し、冤罪をかぶせて商会の財産を丸ごと没収する手はずです! どうやら大量の魔石を一度に売り捌いたことで、強欲な領主がアキート商会に目を付けた模様です!』
「報告ありがとうスパ。……うわぁ、権力を持ってる奴の横暴さは本当にかんべんしてほしいね」
俺は隣で焦るアキートさんに話しかけた。
「アキートさん、今の報告、聞こえましたか?」
「はい……くっ、急ぎで魔石を売り捌いたのが完全に裏目に出てしまいましたか……!」
「アキートさん、俺の拠点に一緒に来ませんか?」
アキートさんは目を見開いたが、すぐに力強く頷いた。
「ありがとうございます……! ヒロト様の拠点がどんな場所かは存じ上げませんが、これまで共に行動させていただき、そのお人柄は痛いほど分かっております。心から信頼しておりますので、ぜひご一緒させてください! このガラード王国を敵に回して逃げ切るのは、私一人では到底不可能ですから……!」
「よし、決まりだ!」
俺は念話で拠点にいるヒナへ連絡を入れた。
(ヒナ! 拠点の地下3階に、アキート商会の建物がまるまる収まる巨大なスペースを作ってくれ!)
(了解〜! 一瞬で作っちゃうわね!)
「よし、ハク! 頑張ってね!」
ハクがポカンと目を丸くした。
「え……? ひ、ヒロト……これ(アキート商会の巨大な建物)を丸ごと運ぶの……!?」
「そそ。空間転移でドカンとね」
「うう〜っ! ヒロトのためなら頑張る〜〜っ!」
街道の先から、ジャラジャラと甲冑を鳴らした衛兵の一団が走ってくるのが見えた。
アキートさんが「ヤバい、ヤバいっ……!」と冷や汗をダラダラ流して焦りまくっている。
「──転移!」
ハクの絶大な空間魔法が発動。
次の瞬間、アキート商会の敷地全体が眩い光に包まれ、建物ごと跡形もなく消失した!
「えっ……!? えええぇぇぇっ!? ここ、どこですかーーーっ!?」
地下3階の大空間に建物ごと一瞬で移動し、アキートさんが絶叫した。
現場に踏み込んで、建物が土台ごと消え去っているのを見た衛兵たちのビックリした顔も拝みたかったが、今はアリアとレイクの救出が最優先だ。
(スパ、二人の状況はどうなっている?)
『はい。アリア様とレイク様は、衛兵詰所の地下牢に不当に拘留されております。同じ傭兵団の仲間5人も一緒に捕らえられているようです』
「よし……突入して救出だ!」
俺たちは完全な臨戦態勢を整える。
右手にハク、左手にレイとスパ。腰にはムラマサ、鎧の胸元にはスラオ。さらに今回はコボミも戦闘要員として同行させ、一斉にガリアの衛兵詰所へと転移した。
ちなみに、スラオは最近『マジックスライムワイズ』へと進化を果たしており、属性魔法の【闇】【光】【氷】【雷】を完全にマスターしている。
スラオの放つ高位の【闇魔法:隠蔽】によって姿を完全に消し、静かに詰所の内部へと侵入する。
衛兵たちの大部分はアキート商会の接収に向かって出払っているため、留守番の衛兵は驚くほど少ない。
鼻歌交じりに地下牢へと下りていく。
地下牢の入口にいた見張りの衛兵は、スラオが指先から放った極小の【雷撃】を受けて、「バチチッ!」と一瞬で白目を剥いて気絶した。
(スラオさん、いつも本当に頼りになるよ)
地下牢の鉄格子の前で、俺たちは隠蔽を解除して姿を現した。
「アリア! レイク! 大丈夫か!? 助けに来たよ!」
鉄格子の奥でへたり込んでいたアリアとレイクが、弾かれたように顔を上げた。
「「ヒロト様ーーーっ!?」」
同じ牢にいた見知らぬ傭兵たちが驚愕の声を上げる。
「君がヒロトかい!? アリアとレイクから噂は聞いているよ!」
アリアが申し訳なさそうに涙目で駆け寄ってきた。
「ヒロト、本当にごめんなさい……! 報奨金も奴隷売買の代金も受け取れなかったの……『盗賊が持っていたはずの魔剣が現物として無いから認めない』なんて無茶苦茶な難癖をつけられて……助けに来てくれた傭兵団の仲間まで捕まっちゃって……拷問されそうになって、ヒロトの情報を少し喋っちゃったの……!」
「いいさ、アリアとレイクは何も悪くないよ。悪いのは不当な難癖をつける衛兵たちと、裏で糸を引いている強欲な領主だ」
俺は腰のムラマサに手をかけた。
「とりあえず……この邪魔な牢屋を斬る!」
サクッ──!
ムラマサを一閃。漆黒の斬撃が空を切り、分厚い鉄格子がまるでトーフのように斜めに切断されて崩れ落ちた。
「さあ、みんな出てください!」
アリアたちと傭兵団の仲間を牢から外へと連れ出す。
だが……ただ助けて逃げるだけじゃ、どうにも納得がいかないな。
(スパ、詰所の金庫の場所は調べてあるか?)
『バッチリです、ヒロト様。奥の執務室の地下に、街から不当に巻き上げた金銀財宝が眠る巨大大金庫がございます』
(よし……金庫ごと丸ごと持って来れるかい?)
『お任せください。スラオ様と私の【闇魔法:影収納】を合体させれば、金庫ごと影の中に呑み込んで奪い去ることが可能です』
(いいね! 強欲な奴らへのお返しだ、頼んだよ!)
逃げ道へと向かいながら、俺はアリアたちに問いかけた。
「アリア、レイク、この後に逃亡先のあてはあるのかい?」
レイクが悔しそうに首を横に振る。
「いや……領主に指名手配されたら、この国で逃げ込めるあてなんてどこにもないんだ……」
俺はニッコリと微笑んだ。
「じゃあ、俺たちの『家』においでよ。最高に快適な場所だからさ!」
「「えっ……!?」」
金庫を丸ごと影に呑み込み、強欲な衛兵たちに絶望のプレゼントを残した俺たちは、全員の手をつないで、光とともに快適すぎる【拠点】へと爆速で帰還したのだった──!
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