第30話 巨大倉庫を埋め尽くす超絶戦利品!アキート商会を大パニックに陥れ、街の胃袋を救う『秘伝のタレ』を入手せよ!!
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重厚な鉄の扉が開き、俺たちはアキート商会の1階にある特大倉庫へと案内された。
そこは広大なスペースを誇り、倉庫の半分ほどには各種商品やコンテナがうずたかく積まれている。だが、残りの半分はぽっかりと空いていた。
俺は空いているスペースを指差し、腕まくりをした。
「とりあえず、ここに出していけばいいのかな? 魔石から出すか? それとも魔物の素材から出すか?」
「では、まずは査定のしやすい魔石からお願いいたします!」
アキートさんが手帳とペンを構え、意気揚々と頷く。
俺はハクの『異次元収納』を解放し、魔石を次々と取り出していった。
ジャラジャラジャラッ! ドサドサドサッ!!
透明感のある美しい魔石が、まるで山崩れのように床へと吐き出されていく。小山は一瞬で大きな山になり、さらには倉庫の天井に届きそうな勢いで増殖していく。
「ち、ちょっと待ってくださいヒロト様ぁっ!?」
アキートさんが目玉を飛び出さんばかりに見開いて大悲鳴を上げた。手帳を落としそうになりながら、必死の手つきで制止してくる。
「の、残りはあとどのくらいあるのですか……っ!?」
「ん? まだまだ山ほどあるよ。これでも10分の1くらいかな」
「10分の1ぃぃっ!? す、ストップ! 一旦魔石はストップです! あ、先にゴブリンジェネラルの魔石と、例の盗賊たちからの収穫品を出してください!」
「了解」
俺は言われた通り、禍々しい輝きを放つゴブリンジェネラルの特大魔石と、アジトから押収した金銀財宝、上質な武具をドカンと山積みにしてやった。
「ふぅ……魔石と言えばさ、大百足の魔石もあるんだけど、見る?」
「えぇぇぇっ!? 大百足ですと!? あ、あの深淵の樹海の主の一角、巨大な脅威とされる大百足ですか!? そ、素材……素材もまさか……!?」
「うん、甲殻と巨大な顎の牙があるよ。出すね」
俺が異次元収納から大百足の魔石と、凶悪に尖った二本の巨大な牙、そして黒光りする頑丈な甲殻を取り出し始めた。
だが──大百足の甲殻があまりにも巨大すぎて、出しかけた途端に倉庫の天井や壁を圧迫し始めた!
「あ、これアカンわ。ここじゃ出し切れないな」
「ひぃぃぃっ!! ごごごご容赦くださいヒロト様!!」
アキートさんが泡を吹きそうな顔で頭を抱え、床に膝をついた。
「無理です! 当商会の買い取り許容資金と倉庫容量を完全にオーバーしております!! 甲殻の買い取りは……後生ですからまたの機会にしてくださいっ!」
「おや、もう終わり? まだまだ出したい素材、山盛りなんだけどなぁ」
「どんだけ溜め込んでいらっしゃるんですかぁぁっ!? ですがご安心を! 今回いただいた魔石やゴブリンジェネラルの素材、盗品はどれも市場で極度の品薄状態! すぐに売り捌いて資金を作りますので、残りの素材も必ず! 絶対に! 我がアキート商会にお売りくださいね! 他店へ浮気したら私、泣きますよ!?」
「ははは、分かってるって。アキートさん以外に売る気はないから、準備ができたら教えてよ」
快く約束すると、アキートさんは何度も深々と頭を下げて感謝してくれた。
まあ、俺としてもこの街で信用できる商人は彼くらいだし、冒険者ギルドはなんだか利権やトラブルが臭い出して信用しきれないからな。
「今すぐ全総力を挙げて査定を行いますが、なにせこの量ですのでお時間がかかります。ヒロト様、その間に当商会の売り場で欲しいものを何でもご覧になってください!」
「助かるよ。あ、ちなみに概算でいいんだけど、この量だと俺はどれくらい買い物ができそう?」
アキートさんは極上のビジネススマイルを浮かべて言った。
「そうですね……当商会で現在売り出している全商品をそのまま買い占めても、余裕でお釣りが出ます」
「マジで!? よーし、爆買いしてくるわ! あ、その前にハピの服も数着選んでやってくれ」
「承知いたしました! 寸法を合わせる必要がありますので、ハーピー様を召喚していただけますか?」
俺がハピを召喚すると、ハピはまだ裸のままパチクリと目を瞬かせた。
「ハピ、アキートさんについて行って服を選んでもらってね」
「はーい! ご主人様、可愛い服にしてくるね〜♪」
アキートさんにハピを託し、俺はヒナと一緒に1階と2階の広大な売り場を回ることにした。
◇
「これと、あの最高級ベッド! あとふかふかの寝具セットを10組! それからテーブル、椅子、調理器具に、この棚のスパイスや食材を全部! あっちの極上ワインや干し肉も全部買いで!」
俺は並ぶ商品を指差し、後ろについてくる店員に片っ端から伝えていった。
(ハク、今注文したやつ、全部『異次元収納』に入るか?)
脳内でハクに尋ねると、ハクの呆れたような念話が返ってきた。
(ふふ、何を言っているのヒロト? 私の収納容量を舐めないでちょうだい。余裕の中の余裕よ!)
(おお! あとどれくらい入りそう?)
(さあ? 自分でも限界が分からないくらい広いから、まだまだ余裕じゃないかしら)
「凄すぎるなハク……ありがとう!」
深く考えるのはやめよう。入らなくなったらその時考えればいい。
売り場を進み、魔石コーナーへとやってきた。棚の半分以上が空になっており、噂通りの品薄状態のようだ。
「店員さん、やっぱり魔石は不足しているんですか?」
店員が困り顔で頷いた。
「ええ……魔石は街の魔道具や生活魔法の触媒として必需品なのですが、最近は入荷が激減しておりまして、価格が高騰しているのです」
「なんでそんなに入荷が少ないの?」
「実は、深淵の樹海で『ゴブリンの大量発生』が起きているらしく……ゴブリン共が他の魔物を乱獲・駆逐してしまったため、街に回ってくる魔石や素材が極端に減っているのです」
「へぇ……冒険者ギルドの人たちは樹海に入って素材を取ってこないの?」
「それが、熟練の腕利き冒険者でないと返り討ちに遭うため、ほとんどの冒険者が樹海に近づけないのです。命からがら逃げ帰ってくる猛者も多いとか……」
「なるほどね……冒険者ギルドも大変だな」
「ええ、ギルドの売り上げも存続の危機らしく、近々ギルドの総力を挙げてゴブリン大討伐作戦を張るという噂ですよ」
(……村を襲おうとして返り討ちにした、あの最悪なCランク冒険者どもを思い出すな)
情報のお礼を言って売り場を離れると、ヒナが俺の袖をクイックイッと引っ張ってきた。
「ヒロト! これはもう、冒険者ギルドに行ってみるしかないわね!」
「えぇ……俺は別に行くつもりなかったんだけど」
「なんでよー! 『異世界転移』の定番中の定番じゃない! 行こうよ、行こうよ〜っ!」
「しょうがないなぁ……絶対、あの『テンプレ絡まれイベント』が発生するぞ?」
「ふふん、生意気な冒険者が絡んできたら、ヒロトがサクッとやっつけちゃえばいいでしょー!」
呑気なヒナに苦笑しつつ服のコーナーへ向かうと、そこには村人の服を着たハピが待っていた。背中から翼が出せるように、背部が綺麗に加工されている。
「う〜、ご主人様ぁ……なんか服着るとゴワゴワして違和感があるよぉ……」
「裸で街を歩くのは犯罪だから、我慢しなさい」
「はーい……」
ヒナも数着の服を購入し、動きやすい可愛らしい村人衣装に着替えた。
その後、異例の超高額取引(というか倉庫丸ごと級の買い取り)に大喜びしたアキートさんから、「せめてもの感謝の標です!」と商会3階の最高級客室を無料提供してもらった。
魔石や盗品の「内金」として信じられない額の金貨を受け取り、用事も一巡した俺たちは、昼食と情報収集のために街へと繰り出した。
◇
「ふふふ……昼食と言えば、異世界定番の『屋台の謎肉串焼き』で決まりね!」
ヒナが胸を張ってドヤ顔を決める。
「ヒナも結構、向こうで異世界小説を読み込んでたんだな」
「当たり前じゃない! 私、異世界知識に関しては詳しいんだから!」
「その割には、DPを使いすぎて洞窟で詰みかけてたけどね?」
「うぐっ……! そ、それは言わない約束でしょーっ!」
ギクシャクしたやり取りをしつつ香ばしい匂いに惹かれて屋台へ向かうと、威勢の良いおじさんが肉を焼いていた。注文して買ってみると──謎肉の正体は大猪の肉! 秘伝の濃厚なタレに漬け込まれていて、めちゃくちゃ旨い!
「はぁ〜、満足だわ! おじさん、このタレすっごく美味しい! タレだけでいいから売ってよ〜!」
ヒナが目を輝かせると、頑固親父風のおじさんが笑った。
「ダメダメ! このタレはウチの命だから売れねえよ!……と言いたいところだがなぁ。最近は肉の入荷がさっぱりで、近いうちに店を畳まなきゃいかんかもしれん」
「あ、それなら大猪の肉、持ってるよ。どれくらい欲しい?」
「え!? お、おいお兄ちゃん、本気かい!? あるならいくらでも買い取るが……!」
「とりあえず渡すよ。代金は、その秘伝のタレをツボごとでいいや」
俺たちは屋台から少し離れ、周囲の死角になる露地の影へ移動。ハクの異次元収納から、綺麗に解体された大猪の新鮮な肉の塊をドッサリと取り出し、驚くおじさんに手渡した。
「なっ……!? こんな上質な肉、どこから持ってきたんだ!?」
「それは秘密。また手に入ったら持ってきてあげるよ」
「助かった! 本当に助かったよ!!」
ホクホク顔で秘伝のタレが入ったツボを受け取り、俺たちは屋台を後にした。
「よし、次は『図書館』だ。俺がなんで樹海の真っ只中に転移したのか、この世界の異世界転移について調べたい」
「私も協力するわ!」
二人でガリアの大図書館へ向かい、数時間にわたって古い文献や歴史書を漁ってみたが──結果は徒労に終わった。
「うーん……異世界転移や転生に関係する本、たった2冊しかなかったね」
「ね。どれも昔の童話レベルで、勇者と魔王の物語くらいしか書かれてなかったわね……」
「もっと帝都とか、巨大な大都市の図書館に行かないとダメかもな」
「そうね! 今度行ってみましょう!」
「まあ、機会があればね。……ところでヒナ、さっき言ってた冒険者ギルド、ちょっと覗いてみるか?」
ヒナがパッと顔を輝かせた。
「行く行く! 見たい!」
「ヒナは冒険者になりたいの?」
「う〜ん、そういうわけじゃないけど……本物のギルドってものを見てみたいじゃん!」
「異世界物で『ひっそり暮らしたい』って言いながら冒険者ギルドに登録して、個人情報がバレて大騒動になるパターン、めちゃくちゃ多いからな〜。個人情報を知られる危険が大きいし、登録はパスだ」
「たしかに! うん、今日は冷やかしで見るだけにしよ!」
俺たちは顔を見合わせてニヤリと笑い合い、活気と怒号が飛び交う『冒険者ギルド』の大扉へと向かって歩き出したのだった──!
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