第16話 蜂の大群に悲鳴!?美少女と密着進軍&瀕死のリーダーたちを救出!迫り来る『ゴブリンキング』の陰謀!!
ハクの『空間転移』によって一瞬で帰還したダンジョンの奥深く。
転移直後、異次元空間からゾロゾロと姿を現したキラービーとミツバチの大群を目撃したヒナは、喉が千切れるほどの悲鳴をあげた。
「ひやああぁぁぁぁっ!? は、蜂がいっぱい!? 刺される! 食べられるぅぅっ!?」
「落ち着けってヒナ! この子たちはもう俺の眷属だから絶対に襲わないぞ!」
俺が宥めると、新顔の『カマ1(キラーマンティス)』と女王蜂の『ビー(キラービークイーン)』が、留守番組の魔物たちへと順番に恭しくお辞儀をして自己紹介を始めた。
「よし、カマ1とビー達は拠点防衛の要としてダンジョンに常駐してもらおう。(ヒナ、ダンジョンの一部屋をキラービーたちに開放してやってくれ。ミツバチたちが外へ蜜を集めに出られるよう、入口に近い部屋がいい。ビーと相談して決めてくれ)」
「う、うん……! わかったよー!(モフモフじゃないけど、かっこいいかも……!)」
ビーも(承知いたしました。大切に使わせていただきます)と嬉しそうだ。
さて、拠点が整いつつあるところで問題になるのが食事である。
「(今日の夕飯はどうしよっか?)」
(ヒロト様、異次元空間には昨日狩った大猪の肉しか残っておりませんわ)
「だよねぇ……」
ヒナに確認したところ、これまでダンジョンポイント(DP)で交換していたのはコンビニ弁当や宅配ピザばかりで、調理器具や食器の類は一切交換していなかったらしい。
「生活に必要なものが全然足りないな……」
包丁や鍋などの調理器具をはじめ、皿やスプーン、箸にフォーク、果てはちゃんとした家具まで。
だが、これらを貴重なDPで交換するのは悪手だ。DPはダンジョン自体の拡張や防衛ラインの構築に温存し、必要な生活雑貨は人間の街へ行って金で買うべきだろう。
「そういえば……俺たち、お金が一分もないな」
定番の異世界転生小説よろしく、討伐した魔物から回収した『魔石』や希少な素材はハクの異次元空間にたっぷり溜め込んである。これがギルドや商会で高く売れることを祈るばかりだ。
今夜も大猪の絶品肉をみんなで美味しく焼き上げて腹を満たす。
「よし! 夕食の後はヒナのレベル上げと、更なる食料確保&戦力増強のための夜間狩りだ!」
防衛組として、気絶から覚めた3匹のゴブリン、エリュマントス3匹、アルミラージのアル、カマ1、そしてキラービー群をダンジョンに待機させる。
コボミを除く4匹のコボルト隊には、レベル上げを兼ねて周囲での食料狩りを命じた。
さらに、スパ(土蜘蛛)が生み出す無数の小蜘蛛たちには、人間の国を探すために南方の索敵を依頼した。人間が生活するには必ず『水』が必要になる。川を発見し、その沿岸を下流へと下っていけば、効率よく人間の町へ辿り着けるはずだ。
すると、出撃の準備を進める俺のもとへ、ビーが羽を休めて歩み寄ってきた。
(ヒロト様、私も同行させてくださいませ。キラービークイーンは、魔物の『キング種』の中では最も弱小な種族……ヒロト様のお陰で劇的に強くなれましたが、他のキング種と比べればまだまだ未熟です。もっとレベルを上げ、ヒロト様の真の戦力としてお役に立ちたいのです!)
「えっ? でもビーが留守にしてもキラービーたちは大丈夫なのか?」
(問題ございません。細かく指示を出さずとも、彼女たちは己の役割を理解して動けますから)
「そっか。なら心強い! 一緒に行こう!」
◇
夜の樹海へ足を踏み出す。
先頭を行くのは、コボルトシーフへと進化したコボミだ。耳と鼻をぴくぴくと動かし、『音探知』と『匂い探知』で広範囲の警戒に当たっている。
空からはアイが『魔力探知』を展開し、敵の気配を探る。
俺は巨大なドレイク・リザの背に跨がっていた。背中にはマジックスライムのスラオが絶妙なクッションとなって極上の鞍となり、右腕には白蛇のハク、左腕にはアルラウネのレイ、土蜘蛛のスパ、イビルアイのアイが仲良く寄り添っている。
そして俺の後ろには──吸血鬼のヒナがぎゅっと腰に手を回して同乗していた。
「……ねえヒナ、ちょっとくっつきすぎじゃないか? 背中に柔らかいのが当たってるんだけど……」
「えぇー? だってリザの背中高くて怖いんだもん! ヒロトがおっさんでも、見た目が同世代なら気にしないもーん!」
ニヒヒと笑いながら密着してくるヒナ。……たく、無防備すぎるだろ!
リザの頭上には雷獣ライゾウが鎮座し、その上空をビーが「ブブン! ブブン!」と勇ましい羽音を立てて飛行していた。
「(あ、ビー! 羽音で敵に気づかれるかもしれないから、リザに乗ってくれ!)」
(あ! 大変失礼いたしました! ではヒロト様の後ろに失礼します!)
ビーがすっと降下し、ヒナのすぐ後ろへと着地する。
「ひゃいっ!? は、蜂さんが後ろに……っ!?」
ビクッと身体を強張らせたヒナが、さらに「ぎゅーっ!」と俺の胴体に強く抱きついてきた。感触がダイレクトに伝わってきて、俺の理性が大ピンチである。
その時、前衛のコボミがピタリと足を止めた。
(ヒロト様! 右前方、約百メートル先の草むらからゴブリンとオークの匂いがします!)
(ヒロト……魔力、すごく少ない。弱ってる……!)
アイがスイーッと夜の闇に消え、すぐさま鑑定データを念話で飛ばしてきた。
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【名前】なし
【種族】ゴブリンリーダー
【性別】♂
【レベル】20
【HP】3/195
【MP】1/100
【スキル】同族眷属化
【名前】なし
【种族】オークリーダー
【性別】♂
【レベル】20
【HP】5/200
【MP】1/100
【スキル】同族眷属化
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「HPが3と5……!? 瀕死じゃないか! しかも二人とも『リーダー種』か!」
ゴブリンキングの眷属ではない独立した個体だ。
「みんな、無力化して眷属にする! 絶対に攻撃しないでくれよ!」
急いで現場へ駆けつけると、そこには傷だらけで倒れ込む二頭の魔物がいた。
片方は身長190センチほど、茶色の毛並みに覆われたボロボロの布服を着た、猪頭の巨漢──オーク。手には巨大な斧を握りしめている。
もう片方は、血を流しながらもオークを庇うように刃を構える緑色のゴブリンだ。
オークが警戒して唸り声をあげる前に、俺は速やかに手をかざした!
「【テイム】!!」
『──オークリーダーのテイムに成功しました──』
「ガッ……!?」
オークが呆然としてこちらを見つめる。間髪入れず、瀕死のゴブリンへ!
「【テイム】!!」
『──ゴブリンリーダーのテイムに成功しました──』
二人とも目を見開いて絶句している。俺はすぐさまレイへ指示を出した。
「レイ、『ハイヒール』! ハク、二人にMPを分けてやってくれ!」
緑色の聖なる光が二人を包み込み、刻まれていた無数の傷が一瞬で塞がっていく!
俺はオークへ向き直った。
「俺はヒロトだ。よろしくな。君の名前は『オク1(おくいち)』だ」
「……ッ!? 承知いたしました! 命を救っていただき、誠にありがとうございます!」
「あれっ!? 念話じゃなくて普通に喋れてる!?」
思わず叫ぶと、ハクがフフッと笑った。
(ヒロト、スキルの『異世界言語理解』の効果ですわ)
「なるほど! ……よし、君の名前は『ゴブ1(ごぶいち)』だ。よろしくな」
ゴブ1も深々と頭を下げた。
「ありがたき幸せ……! 命の恩人とお呼びさせてください!」
「オク1、一体何があったんだ? なんでそんなボロボロだったんだ?」
オク1が悔しそうに拳を握りしめ、重い口を開いた。
「私は樹海南東部にある集落から狩りに出ていたのですが……突如、見知らぬ凶暴なゴブリンの大群に急襲されたのです。多勢に無勢で追い詰められたところを……偶然通りかかったゴブ1に助けられ、命からがら逃げ延びてきたのです」
ゴブ1も悲痛な面持ちで言葉を繋ぐ。
「私は用事で樹海の外の集落へ出ておりました。しかし戻ってみると……私の集落は跡形もなく壊滅していたのです。生存者を探していたところ、謎のゴブリン群に襲われ、逃げる途中でオク1が襲撃されているのを見つけ、無我夢中で飛び込んだのですが……」
「……なるほどな」
俺は腕を組み、事態の深刻さに思案を巡らせた。
「おそらく今、この樹海では『ゴブリンキング』が巨大な群れを形成しているんだ。雄の魔物は殺してレベルアップの餌にし、雌は集落に持ち帰って苗床にし、一気に戦力を拡大させているんだろう。……アラクネクイーンの影もあるし、完全に戦争の匂いがするな」
「「ゴブリンキング……!?」」
二人が息を呑む。
ゴブリンキングの手口は苛烈で凄惨だ。放置すれば、いずれヒナのダンジョンや俺たちの生活圏にも脅威が及ぶのは目に見えている。
ゴブ1が熱い眼差しで俺を見つめ、力強く膝をついた。
「ヒロト様! もし……もしもゴブリンキングの軍勢と戦撃を交える日が来るならば、どうか私めを末端の兵としてお加えください! 同胞の無念を晴らしたいのです!」
「今のところ積極的に戦いを挑むつもりはないが……向こうが襲ってくるなら容赦はしない。その時は頼むぞ、ゴブ1、オク1!」
「「ハッ! 御意!!」」
心強い二人のリーダーを配下に加え、暗雲立ち込め始める樹海の夜を、俺たちはさらなる強さを求めて進んでいくのだった──!!
タイトルに第○話を追加しました。
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