第14話 ポンコツ吸血鬼と同居開始!?拠点防衛の家畜&大蟷螂テイムで、最弱ダンジョンが瞬く間に最強要塞へ!!
ダンジョンの奥深くに隠された、あまりにも現代的な一室。
そこにいたのは、フォークを口にくわえたままボロボロと涙をこぼす、ポニーテールの美少女ダンジョンマスター──『スズキ ヒナ』だった。
吸血鬼の『五世代』。
吸血鬼の祖たる『真祖』を起点とし、血が伝播するごとに二世代、三世代と薄まっていく血統。五世代ともなれば吸血鬼特有の超常的な力も殆ど継承されず、ただ「日に当たると死ぬ」という致命的な弱点だけが残った、実質最弱の不遇種族だ。
「……なるほどなぁ」
俺はベッドの端に腰掛け、ヒナからこれまでの経緯を聞き終えて思わず苦笑いを浮かべた。
女子高生だった彼女はトラック事故で死亡し、白い部屋で転移の神様に会ってダンジョンマスターとして異世界へ転移。
しかし、右も左もわからないまま生活環境を整えるため、貴重なDPを水洗トイレ、お風呂、自室の家具、そしてカップラーメンの箱買いなどに浪費。
防衛用のゴブリンを数匹召喚したものの、突如外から侵入してきた狂暴な一角兎に暴れ回られ、ゴブリンは全滅寸前。恐怖のあまり部屋に閉じこもり、泣きながら震えていたという。
実際、俺の腕に抱えられているアルミラージの『アル』を見て、ヒナは未だに「ひえっ……!」と俺の後ろに隠れて震えている。
「種族を聞かれたから、カッコいいと思って『吸血鬼』って答えたら、何の説明もなく五世代にされて……レベル1のままだし、外にも出られないのぉ……」
「はぁ……計画性がなさすぎるだろ……」
呆れる俺に、ヒナはウルウルと瞳を潤ませて上目遣いを向けてきた。
「ヒナちゃん、どうしたらいいと思う……?」
「五世代の吸血鬼って、昼間に外を出歩けるのか?」
「無理! 日光を浴びたら一瞬で灰になっちゃう!」
「なら、俺たちと一緒に行動して街を目指すのは無理だな」
「ひん……っ! 見捨てないでぇぇっ!」
絶望的な顔で泣きつくヒナ。俺はやれやれと首を振った。
「落ち着けって。提案があるんだ。俺たちは今、野宿直前で拠点がない。だから、このダンジョンを俺たちの『ホーム拠点』として使わせてくれないか? 俺たちが住めばヒナの安全は完璧に保障されるし、俺たちが中にいるだけでDPも勝手に貯まるはずだ」
「おおっ! それめちゃくちゃ良いじゃん!!」
「さらに、ヒナも俺の『眷属』にならないか? 眷属になればステータスが二倍に跳ね上がって、経験値効率も劇的に上がる。レベルを上げて進化を重ねていけば、いつかは日克服の『真祖』になれるかもしれないぞ」
「えっ!? 眷属になる!! 今すぐなる!!」
「即決だな!? 一生俺の眷属になるんだぞ、少しは考えなくていいのか?」
「どうせここで飢えて死ぬだけだったし! ヒロトはこの世界に超詳しそうだから、全部お任せして一生養ってもらう気満々だから!」
ニヒヒと悪い顔で笑うヒナ。……こいつ、現金な奴だな!
「言っておくけど、俺の見た目は中学生くらいだが、中身は元大人の社畜だぞ? 後でいいように使おうとしても無駄だからな」
「ふへ? 中身おっさんなの!?」
呆然とするヒナに自分の事情を説明すると、彼女は感心したように頷いた。
「へぇ~、ヒロトって勇者じゃなかったんだね」
「まあね。元はしがない【魔物使い】だよ」
「ふ~ん……でもそのうち魔王になっちゃったりして?」
「それはないな。ハクの話じゃ、今代の魔王は既にいるらしいし」
「ハク?」
「俺の右腕に巻き付いてる、この美しい白蛇のことさ」
『初めまして、スズキヒナ様。ハクと申しますわ』
ハクが右腕からスッと頭を上げ、優雅にお辞儀してみせる。
「うわあぁっ!? お喋りできるの!?」
「眷属になれば頭の中で念話ができるようになるんだ。……よし、それじゃあ行くぞ。【テイム】!!」
『──吸血鬼(五世代):スズキ ヒナのテイムに成功しました──』
「うおおおっ!? なんか体に熱いエネルギーが満ちてきたぁぁっ! 力が倍になってる!?」
ステータスの上昇を肌で感じたヒナが、ぴょんぴょん跳ねて大はしゃぎする。
その後、眷属ネットワークを通じて仲間の魔物たちと一斉に自己紹介を交わさせると、ヒナは「モフモフがいっぱい……!」とうっとりした表情を浮かべた。
「あ、そうだ。ハク、異次元空間に捕らえてあった気絶ゴブリン三匹を出してあげてくれ」
ハクが黒い歪みを広げ、ドサリと気絶したゴブリン三匹を床に転がす。
「こいつらは起き次第解放して、ダンジョンの警備員になってもらおう。……それからヒナ、カップラーメンを一杯譲ってくれないか?」
「いいよー! 湯沸かし器もあるから使って!」
お湯を注ぎ、待つこと三分。
割り箸で麺を持ち上げ、勢いよく啜る!──ズズズッ!
「あぁぁ〜〜……!! これこれ! この体に悪いジャンクな濃い味! 無性に食べたくなるんだよなぁ!」
「わかる〜〜っ! 異世界に来て一番感動するの、カップ麺だよね!」
前世の味に舌鼓を打ち、至福のひとときを堪能した。
その夜──。
俺たちはヒナの部屋の手前にある広大な部屋を寝床に定めた。ヒナはさっそくお風呂を沸かし、綺麗に洗ったコボミを抱きかかえて「モフモフ天国〜!」と大喜びでベッドへ連れ去っていった。コボミも嬉しそうだ。
(DPが貯まったら、俺たちの分のフカフカのベッドも交換してもらおう……)
そんなことを考えながら、眷属たちに囲まれて心地よい眠りについたのだった。
◇
翌朝──。
「ん……ふぁあ……」
目を覚ますと、洞窟ダンジョンの広い空間で、眷属たちが仲良く雑魚寝していた。
すると、通路の奥からパタパタと足音が聞こえ、毛並みを整えたコボミが歩いてくる。その手には血の滴る一角兎の死骸が握られていた。
(ヒロト様、おはようございます! 朝の狩りに行ってまいりました!)
「おはようコボミ。朝早くから偉いな」
(朝食の準備をいたしましょう!)
コボミとスラオが手際よくアルミラージを解体し始める。
俺は横で大きなとぐろを巻いて寝ていたハクを突き起こし、昨日狩った大猪の極上肉を異次元から出してもらった。
ちなみに、昨日生け捕りにした大猪三匹は、防衛戦力として即座にテイム済みだ。
名前はそれぞれ『イノ1(いのいち)』『イノ2(いのじ)』『イノ3(いのぞう)』!
起きてきたスラオが『火魔法』で肉を香ばしく焼き上げ、目覚めたライゾウも『微弱雷撃』で表面をパリッと仕上げていく。
ギィと扉が開き、眠そうな目を擦りながらヒナがやってきた。
「おはよー……うわぁ、めちゃくちゃ良い匂い!」
「おはようヒナ。朝飯にしようぜ」
「ねえねえヒロト! 今朝DPを確認したら、ヒロトたちが泊まってくれたおかげで一気にポイントが増えてたよー!」
「おおっ! でも DP は重要だから、無駄遣いせずに貯めておいてくれよ?」
「はーい……(チェッ、ふかふかソファ欲しかったのに)」
悔しそうなヒナを横目に、みんなで焼きたての極上肉と甘い果実に飛びつく。賑やかで最高の朝食だ!
◇
食後、俺は拠点防衛と更なる戦力増強のため、周辺の魔物狩りへと出発することにした。
アル(アルミラージ)、イノ1~3(エリュマントス)、そしてコボ1、コボ2、コボ4、コボ5のコボルト隊は、ダンジョン留守番兼警備役に任命。日中外に出られないヒナの護衛もバッチリだ。
コボルト隊は朝の狩りだけで既にレベルが上がっており、本当に狩りが好きな連中である。
先頭を『コボミ』が走り、その後ろを巨竜リザに乗った俺たちが追う。
「コボミ、アイ、スパ! 手応えのある強い魔物を探してくれ!」
(承知いたしました!)
すると間もなく、コボミがビクッと耳を直立させた。
(ヒロト様! 前方から凶暴な『キラーマンティス』の匂いが接近してきます!)
アイが「スイーッ」と偵察に飛んでいく。
……が、次の瞬間! アイが大慌てで引き返してきた!
(ヒロトっ! 見つかっちゃったぁー!)
「えっ!?」
バサバサバサッ!!と不気味な羽音を立てて樹海から飛び出してきたのは──体長二メートルを超える巨大な緑色のモンスター!
人間を遥かに凌ぐ巨躯に、ギラギラと光る複眼。そして両腕には、研ぎ澄まされた巨大な『二本の鎌』!
大蟷螂『キラーマンティス』だ!
「スパ! 糸で拘束しろ!」
スパが口から粘着糸を激射! ……しかし!
シュバババッ!!
キラーマンティスは両腕の超高速の鎌さばきで、スパの糸を一瞬で細切れに切り払ってみせた!
「ウソだろ!? 糸を切り刻んだ!?」
ヤバい! 獲物の優先順位を理解しているのか、キラーマンティスはリザの頭上を跳躍で飛び越え、背上にいるリーダーの俺へ目掛けて鎌を振り下ろしてきた!
「ターゲットは俺かよ!?」
リザが咄嗟に巨大な前足の爪で迎撃するも、凄まじい空転で回避される!
その時──リザの頭上で優雅に二度寝を決めていたライゾウが、パチッと片目を開けた。
(わしの睡眠を邪魔するとは……無礼者がっ!!)
バチチチチカァァァンッ!!
ライゾウの身体から放たれた極太の紫電が、至近距離でキラーマンティスを直撃!
「ギシャアアッ!?」と絶叫をあげ、全身を麻痺させた大蟷螂は、力なく地面へと落下し、白目を剥いて気絶したのだった。
ハクが右腕から「ライゾウ、戦闘中に寝てちゃダメでしょ」と呆れ顔で小突く。
(すまんすまん、朝飯食ったら眠くなっちまってな!)
「ふぅ……間一髪だった……!」
俺は冷や汗を拭いながら、気絶してピクピクしている大蟷螂へと歩み寄り、右手をかざした。
こいつの攻撃力と速度は本物だ。味方にできれば最高の前衛アタッカーになる!
「【テイム】!!」
『──キラーマンティス(♂)のテイムに成功しました──』
「よしっ! テイム完了だ!……今日からお前の名前は『カマ1(かまいち)』だ!!」
うーん……自分でも思うが、つくづくネーミングセンスがないなぁ!
だが、強力な『鎌使い』を配下に収めた俺たちの進撃は、どこまでも止まらないのだった!
タイトルに第○話を追加しました。
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