第13話 ダンジョン奥深くに秘められた謎!?まさかの『日本人女子高生』とカップ麺を啜る吸血鬼ダンジョンマスター!!
「はぁ……しかし、まったく樹海を抜ける気配がしないな……」
俺はドレイクへと進化したリザの背の上で、深くため息をついた。
異世界転移した朝の段階では「まあ一日くらい歩けば人間の街くらい着くだろ」なんて高を括っていたのだが……大自然の樹海というものを完全に舐めていた。
すでに周囲の木々の隙間からは茜色の夕暮れ時が差し込み、薄暗い影が伸び始めている。
異世界に来て初日だというのに、怒濤の連続バトル、大量の眷属ゲット、眷属たちの超進化、そして魔物解体BBQと……あまりに濃密すぎる一日だった。
「歩いてるのは全部リザだから、俺自身はまったく疲れてないんだけどな」
リザの角の間では、雷獣ライゾウが「くぁ……」と小さく欠伸をしてコックリコックリと船を漕いでいる。その姿は完全に丸くなった愛猫そのものだ。
「となると……今夜は野宿かぁ」
異世界の夜の森なんて、どんな凶暴な魔物が徘徊しているかわかったもんじゃない。
俺が不安げに呟くと、即座にコボルト隊の『コボミ』がピンと犬耳を立てた。
(ヒロト様! 野宿に適した安全な拠点を周囲から探索してまいります!)
シュタッ! シュタタタッ!
効果音が聞こえてきそうな圧倒的俊敏さで、コボミ率いるコボルト5兄弟が放射状に森の中へと姿を消していった。
(うーん、鳥系の眷属も一匹テイムしておいた方が良かったかな。上空からの広範囲索敵ができるようになれば、拠点探しもさらに捗りそうだ)
そんなことをつらつらと考えながら、リザの背で揺られていると──。
(ヒロト様! コボ4です! 前方三百メートル地点に頑丈そうな洞窟を発見いたしました! 内部はかなり広い構造になっております!)
(でかしたコボ4! 全員、コボ4のポイントへ合流だ!)
【魔物使い】のスキルは本当に凄まじい。念話一つで全眷属に即座に位置情報を共有し、集合させることができる。前世の「電話」と一字違いなだけだが、便利さは次元が違う。念じるだけで地図や視覚映像まで完璧に共有できるのだから、まさに神スキルだ。
◇
「おお……確かに『これぞ洞窟』って感じだな!」
到着した現場を見て、俺は思わず声をあげた。
RPGに出てくる最初のダンジョンのような、男心をくすぐる『THE 洞窟』といった佇まいだ。
入口は高さ180センチほどで、人間一人なら余裕で立って通れる広さ。奥へ向かうにつれて横幅も広がり、二人並んで歩けるくらいの空間になっている。
「……ん? ちょっと待てよ、体長三メートルを超える巨竜のリザは入れないんじゃないか?」
そう心配した瞬間──リザの全身が眩い光に包まれ、一瞬にして中型犬ほどのコンパクトなサイズへと縮小した!
(ヒロト様、大丈夫。レベルアップで『肉体縮小』のスキルを覚えた。いつでもヒロト様の傍にいられる!)
「おおおっ! リザ、有能すぎるだろ!!」
撫でてやると嬉しそうに喉を鳴らすリザ。後でみんなの追加スキルもじっくり確認しておかないとな。
奥へ進むにつれて外の光が届かなくなり、洞窟内は漆黒の闇に包まれ始めた。
「うわ、真っ暗だな。灯りが欲しいところだけど……」
(ヒロト、ぼくにまかせてー! 『ファイアー』!)
お尻の下にいたマジックスライムのスラオが、身体の一部をポコッと棒状に伸ばし、その先端に明るい炎を灯してみせた。
「うおお! 松明スライム! めちゃくちゃ頼もしいなスラオ!」
(えへへー! ランタンのかわりだよー!)
前衛にコボ1とコボ2、後衛にコボ4とコボ5。中央に俺とハク、レイ、スパ、アイ、リザ、スラオ、ライゾウという完璧なフォーメーションで慎重に奥へと進む。
すると突然、前方を歩いていたコボ1が立ち止まり、低い声で念話を飛ばしてきた。
(ヒロト様、この先から不快なゴブリンの匂いが漂ってきます)
(アイ、先行して『魔力探知』と鑑定を頼む!)
(はーい! スイーッと見てくるね!)
アイが黒悪魔の翼を羽ばたかせ、音もなく暗闇の奥へと消えていく。
数秒後、アイから詳細な鑑定データが送られてきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】なし
【種族】ゴブリン
【性別】♂
【レベル】10
【HP】95/95
【MP】10/10
【スキル】なし
【その他】ダンジョンに従属
━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ん……?『ダンジョンに従属』……!?」
俺は思わず眉をひそめた。ただの野良の穴ぐらかと思いきや、ここはまさかの『自然発生したダンジョン』だったのか!
(ライゾウ、手早く雷撃で気絶させてくれ!)
(ふふっ、任せときな!)
寝起きの雷獣ライゾウが目にも留まらぬ速度で疾走していった。
バチチチチッ!!
ほんの数秒後──。
(任務完了! 奥にいたゴブリン三匹、まとめて炭焼き……じゃなくて気絶させておいたぜ!)
(仕事が早すぎる! ありがとうライゾウ!)
(しかしヒロト、一番奥まで来たが……他に魔物の気配が一切ないぞ?)
「えっ……マジで?」
ライゾウを追って奥の広場へと足を踏み入れると、そこは拍子抜けするほど狭い行き止まりの部屋だった。
気絶した三匹のゴブリンを速やかにハクの『異次元収納』へ放り込み、俺は腕を組む。
「たった三匹しかいないダンジョンなんてあるか……? 普通、ダンジョンの奥には『ダンジョンマスター』か『ダンジョンコア』があるはずだろ」
(アイ、壁の奥の魔力反応を調べてみてくれ!)
(はーい!……あ、ヒロト! この壁の裏側に、何か大きな魔力反応があるよ!)
アイが指し示した岩壁を念入りに捜索すると、一箇所だけ不自然に削られた「石」を発見した。
試しにグッと押し込んでみる。
ズズズズズ……ッ!!
地鳴りのような音とともに岩壁が上へとスライドし、奥へと続く隠し通路が現れた!
通路の突き当りには、現代風の重厚な『扉』がぽつんと設置されている。
「こんなところに扉……? 警戒しながら開けるぞ」
ギィィ……と扉を開けた瞬間、俺たちの視界に飛び込んできたのは──あまりにも異様な光景だった。
「……は……???」
そこにあったのは、冷たい石造りのダンジョンなどでは断じてなかった。
ふわふわのピンクのベッドカバーがかかったシングルベッド。
可愛らしい白いチェストタンス。二人掛けのモダンなソファ。
清潔感のある白い壁紙。
そこはどこからどう見ても──『日本の女子高生の部屋』だった。
さらに俺の鼻腔を突いたのは、異世界では絶対に漂うはずのない、懐かしすぎる『あの匂い』──。
「ズズッ……ズズズッ……」
部屋のソファに深々と腰掛け、テレビもない空間でズルズルと『カップラーメン』を夢中で貪っている一人の少女がいた。
艶やかな長い黒髪をポニーテールに結び、吸い込まれそうな黒目。カジュアルなジーンズに、長袖のカットソーTシャツ。
どこをどう切り取っても、典型的な日本の女子高生だ。
扉が開いた音に気づいた少女は、フォークを口にくわえたまま、ポカーンと口を開けてこちらを見つめてきた。
あまりの衝撃に、俺の口から言葉が暴発した。
「か……『カップラーメン』だああああっ!?!?」
純度100%の日本語で俺が叫んだ瞬間、少女の瞳にダバッと涙が溢れ出した!
「に……日本語……!? 日本人なんですか!? 良かったぁぁぁぁぁっ!! 助けてくださいぃぃっ!!」
泣き叫びながらすがりついてくる少女!
その瞬間、気を利かせたアイから彼女の鑑定データが脳内へ送られてきた。何も言わずとも察して動いてくれるアイ、有能すぎる!
しかし──そこに表示された文字列を見て、俺は再び思考がフリーズした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】スズキ ヒナ
【種族】吸血鬼(五世代)
【職業】ダンジョンマスター
【性別】♀
【レベル】1
【HP】10/10
【MP】10/10
【スキル】ダンジョンマスター(Lv.10)
【SP】100
【DP】3
━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ダンジョンマスター……で、『吸血鬼』!?」
しかも、伝説の吸血鬼の血を引く『五世代』!?
カップラーメンの汁を口元につけたまま号泣する女子高生と、恐ろしいステータス画面を見比べながら、俺は言葉を失うのだった──!!
すいません。
亡くなった傭兵団の方達の事をすっかり忘れていたので一部修正しました。
タイトルに第○話を追加しました。
いつも読んでいただきありがとうございます。
下段ポイント評価を選択後、
ポイントを選んで「評価する」ボタンを
押していただけると嬉しくなって、
モチベーションが上がるので、
宜しくお願い致します。




