第10話 かつてのトラウマを瞬殺!進化スライムの神業解体&魔法BBQ!眷属総出の賑やか異世界グルメ!!
ちょこちょこ誤字脱字を直してます。
「うーん……やっぱりドラゴンの背中は快適だなぁ……!」
俺は巨竜となったリザの首の付け根に腰を下ろし、ゆったりとした振動に揺られていた。
リザは足音を殺しながら、巨躯に似合わぬしなやかな足取りで深淵の樹海を進んでいく。
その身体には、俺を筆頭に眷属たちがギッシリと収まっていた。
右腕にはハクが巻き付いて『白蛇の手甲』となり、左腕には幼女姿のレイと、その肩にミニ化スパ、手首にイビルアイのアイが鎮座。
そして、俺のお尻の下には──虹色に輝くスライムのスラオ!
「スラオ、本当に俺の下に敷かれてて大丈夫かい? 重くない?」
(えへへー、ぜんぜん平気だよー! ヒロトのお尻、痛くならないようにクッションになってるの! ぼくがやりたくてやってるんだよー!)
物理耐性Lv.5を誇るマジックスライムのスラオにとって、俺の体重など羽毛のようなものらしい。至高の生体ジェルクッションのおかげで、長時間の移動でもお尻は快適そのものだ。
さらにリザの角の間には、二本尻尾の雷獣ライゾウがちょこんと座り、周囲を見渡している。
そんな長閑な道中、右腕のハクが「ふぁあ……」と可愛らしい欠伸を噛み殺した。
(ねえヒロト様……なんだかお腹が空いてきてしまいましたわ)
(うむ。わしも何百年ぶりに何か『食事』というものを楽しんでみたくなったぞ)
ライゾウも頭の上で同意する。
(そうだね。リザも身体が三メートル超に大きくなったから、その辺の木の実じゃ足りないだろ?)
(肉……! 大きな肉、食べる!!)
リザが期待に胸を膨らませて鼻息を荒くする。
(肉かぁ……。ハクさん、何か良い獲物の心当たりはあるかい?)
(以前、ヒロト様を死ぬ気で追いかけ回した、あの大きな『魔猪』が良いのではありませんか? 身が引き締まっていて美味しそうですわ)
(肉! あの猪、食べる!!)
(よし。スパ、近くに大きめの猪の気配はあるかい?)
左腕のスパがハつの目をパチパチと輝かせ、網の目のように巡らせた糸の気配察知を働かせた。
(はい、ヒロト様! ここから右手前方、数百メートル先の樹の陰に、一頭の巨大な魔猪が潜んでおります!)
(手際が良い! アイ、上空から一瞬だけ高精度な偵察と鑑定を頼む!)
(はーい! スイーッと見てくるね!)
アイが不吉で洗練されたコウモリ翼を羽ばたかせ、音もなく上空へと舞い上がった。数秒後、脳内に詳細な鑑定結果が届く。
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【名前】なし
【種族】大猪
【性別】♂
【レベル】20
【HP】200/200
【MP】20/20
【スキル】匂い探知(Lv.2)/ 突進(Lv.3)
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「エリュマントス……! やっぱりあの時俺を死の恐怖に陥れたトラウマ猪の同種か!」
体長三メートル超。黒褐色の剛毛に覆われた筋肉の塊。鋭い牙と血走った赤い目。
【匂い探知】を持つ警戒心の強い魔物だ。
(風下から静かに回り込むぞ。気配を消して接近しよう)
リザの木登りスキルと足音消しで風下から忍び寄り、茂みの隙間から狙いを定める。フゴフゴと能天気に向日葵の根を掘り返している大猪の姿が見えた。
(ライゾウ、一撃で頼む! 肉が黒焦げにならない程度の加減でね)
(ハハハッ! このわしに加減を求めるとは粋だな! 任せておけ!!)
ライゾウの頭部から、青白い一筋の閃光が放たれた。
バリシャアアアンッ!!
ピンポイントで頭部を撃ち抜かれたエリュマントスは、悲鳴をあげる暇すらなくドサリと崩れ落ちた。絶命だ!
『──討伐確認:経験値獲得──』
『──スラオ、レイ、リザ、アイのレベルが上がりました!──』
「おおっ! またみんなのレベルが上がった! ……って、あれ? 俺のレベルアップ通知は?」
シーーン……。
「知ってた……俺だけレベル上がらないの知ってた……」
一瞬ガックリしたものの、気を取り直して巨体へと近づく。
「さて、美味しいお肉にするために『解体』をしなきゃいけないんだが……解体できる人ー?」
全員((((((…………))))))
静まり返る脳内念話。
(だよねー! みんな魔物だもんね! 包丁もないし困ったぞ……)
肉を腐らせないためには、まず迅速な『血抜き』が必要不可欠だ。
(スラオ……体内の血液だけを『消化吸収』することってできるかい?)
(できるよー! お血、だーい好き!)
スラオがポヨンと跳躍し、倒れたエリュマントスの口から体内へと侵入!
巨体が「モゾモゾ……」と怪しく蠢くこと数十秒。
(お血、きれいにぜんぶ飲んじゃったー!)
(凄すぎるだろスライム能力……! じゃあスラオ、表面の寄生虫やダニの除去、フン尿の処理……それから、皮、肉、内臓、骨をキレイに切り分けて分離することってできるか?)
(やるー! やってみるー!)
スラオが再び体内に潜り込み、超スピードで細胞レベルの外科手術を開始!
モゾモゾ、モゾモゾ……。
(面倒なことをするのだな。そのまま豪快にガブリと引きちぎって食えば良かろうに)
ライゾウが退屈そうに欠伸をする。
(皮は防具の素材になるし、牙や骨も武器や道具に加工できるかもしれないだろ? せっかくの命の恵みだから、無駄なく使いたいんだよ)
(ふむ……異世界の人間は細やかだな。感心するぞ)
(あ、スラオ! 肉を冷やした方が美味しくなるらしいから、覚えたての『水魔法』と『風魔法』で冷やしながら解体できるかい?)
(やるー! 冷や冷や魔法ー!)
数分後──驚愕の光景が広がっていた。
ポンッと飛び出してきたスラオの後ろには、一切の血生臭さを感じさせない、美しい『霜降り肉の山』『キレイに剥がされた一枚革』『巨大な白骨と牙』、そして『新鮮な内臓群』が完璧に部位分けされて整列していた!
「マジで神業解体すぎる……! 凄すぎるよスラオ!」
(えへへー! ヒロトに褒められたー!)
(さて、まずは内臓系だ。下処理なしで生で食べるのは寄生虫が怖いんだが……食べる人いるかい?)
(誰も召し上がらないのでしたら、私がいただいても宜しいでしょうか?)
スパが申し出ると、内臓へ歩み寄って『消化液』を注入し、ジュワッと溶かした濃厚な栄養を効率よく吸い上げていった。蜘蛛ならではの完璧な食事スタイルだ。
「よし! 次はメインの肉を焼くぞ!」
俺はゴブリンのショートソードで肉を豪快なブロック状に切り分け、レイが集めてきてくれた太い枝に刺して地面に立てた。
(スラオ、火魔法でじっくり炙ってくれ!)
(はーい! ファイア~♪)
スラオが小さな火炎を吐き出し、ライゾウも「わしも手伝おう」と微弱な雷撃で表面をパリッと香ばしく焼き上げていく。
(ハクさん、残った皮と骨と牙は素材になるから『異次元収納』に頼むよ)
すでに生焼きの極上ロース肉を「モグモグ」と豪快に頬張っていたハクが、口をモゴモゴさせながら答える。
(モゴッ……ふぁい、お任せくださいわ……ゴクンッ。……んんっ、このお肉、とってもジューシーで美味しいですわ!!)
ハクが黒い歪みを展開し、素材を一瞬で回収。
リザもライゾウもスパも、焼き上がった極上肉に夢中になって喰らいついている。
俺もこんがり焼けた枝付き肉をガブリと噛みちぎった!
「う……うまいっ!!」
塩コショウなどの調味料はないが、ジューシーな脂と肉本来の強い旨味が口いっぱいに広がる。社畜時代のコンビニ弁当とは比べものにならない、野性味溢れる極上の肉料理だ!
「ふぅ、食った食った! ……ところでアイとレイは肉を食べないのかい?」
俺が尋ねると、左腕の二匹が可愛らしく答えた。
(アイはね、魔力がごはん! MPがいちばんおいしいよ!)
(レイは……お水と、お日様があれば……大満足……)
(アイはさっきゴブリンから吸収したMPで足りてるかい?)
(ちょっと不足だけど、空気中の『魔素』を自動で吸収してるから平気だよー!)
(なるほど。レイのお水は……スラオ、頼めるかい?)
(まかせてー! わき水魔法ー!)
スラオが虹色の体から清涼な『水魔法』を射出し、レイはその澄んだ水を嬉しそうにゴクゴクと飲み干した。
満腹になり、絆をさらに深めた俺たち最強パーティ。
「よーし! 腹ごしらえも完璧だ! このまま南の街へ突っ走るぞーっ!」
「「「「((おおおおおっ!!))」」」」
満ち足りた歓声を響かせながら、俺たちのドレイク騎乗の旅は、いよいよ森の出口へと近づいていくのだった!
タイトルに第○話を追加しました。
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