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【70万PV突破】傲慢な世界よ、私が壊してあげるわ~公爵令嬢に転生したOLは悪の覇道を突き進む  作者: かずまさこうき
第十一章 反逆編

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第207話 降伏

 九月上旬。ズタリア王朝の王都ホムトフにある王宮には、重苦しい沈黙が降り積もっていた。玉座に腰を下ろす国王ラファエロの顔には、隠しきれない疲労と苦渋が色濃く滲んでいる。

 事の発端は、数日前にクライナイン王国の本国から届けられた、ミレーヌ女王からの急報であった。アルノー・ルベ中将が反旗を翻し、独立を宣言したというのだ。ラファエロは即座に国中の兵をかき集め、十五万というかつてない規模の総動員を命じた。しかし、国境を越えてズタリア領内へと侵攻してきたアルノーの軍勢は六万。彼らから放たれた使者が、今、ラファエロの眼前に不遜な態度で立っている。

「アルノー・ルベ様のお言葉をお伝えします。直ちに武器を捨て、軍門に降れ。さもなくば、隣のイの国と同様に、このズタリアの地を一切合切、灰燼に帰すまで攻め滅ぼす、と」


 使者の傲慢極まりない恫喝に、居並ぶズタリアの家臣たちは一斉に顔を赤くして怒号を上げた。だが、ラファエロの心は冷え切っていた。彼は玉座の上で静かに目を閉じ、絶望的な戦力差を冷静に推し量っていた。


(クライナイン本国からの援軍が到着するのは、どんなに早く見積もっても二ヶ月はかかる。対するアルノーの軍は、あの恐るべき新型銃を完璧に装備している精鋭だ。数の利など、あの無慈悲な火力の前に何の意味も成さない……)


 イの国を五十万の民もろとも焼き払ったというアルノーの狂気的な残虐性は、ラファエロの精神を芯から震え上がらせていた。まともに戦えば、ズタリアの兵士はおろか、罪なき民草までが一人残らず惨殺されるだろう。


(誇りを抱いて国ごと滅びるよりは、泥を啜ってでも民の命を繋ぐのが王たる者の務めだ……)


 ラファエロはゆっくりと目を明け、重々しく口を開いた。


「……武器を置き、降伏する。城門を開けよ」


 その決断に家臣たちは泣き崩れたが、ラファエロの声は、悲痛なまでに揺るぎないものであった。


◆◇◆◇


 九月中旬。ズタリア王朝を無血で制圧したアルノーは、国王ラファエロを速やかに拘束し、城内の奥深くへと軟禁した。そして、彼が防衛のために集めていた十五万の兵力は、そのままそっくりアルノーの陣営へと組み込まれたのであった。


「これで、我が軍の総兵力は別働部隊を入れて二十四万。無駄な血を流さずに併吞する美しいやり方です」


 イの国の住民を根絶やしにしたことなど忘却したかのようにアルノーが涼しい顔で呟くと、傍らに控えていた副官のエディ少佐が恭しく報告した。


「閣下。ズタリア領内に駐留していたミレーヌの軍、およそ二万が、ザルム少将の指揮の下で本国へ向けて急ぎ撤退を開始した模様です」


 クライナイン王国から派遣されていた駐留軍は、ズタリアが降伏したと知るや否や、素早く反転して逃走を図っていた。その報告を聞いたアルノーの薄い唇が、冷酷な弧を描いた。


「逃がすわけがないでしょう。全軍をもって背後から急襲しなさい。一兵たりとも生かして帰す必要はありませんよ」

「はっ!」


 アルノーの命令により、即座に追撃戦が開始された。撤退を急ぐザルム少将の二万の軍勢に対し、アルノー軍は圧倒的な軍勢で襲い掛かった。ザルム少将も決して無能ではなく、地形を活かして懸命に防衛線を構築しようと指揮を執った。だが、アルノーが緻密な半包囲網を構築し、防衛線は次々と食い破られていく。乾いた銃声と断末魔の悲鳴が荒野に響き渡る中、ザルム少将は全身に銃弾を浴びて戦死。二万の駐留軍は、わずか数日のうちに完全に壊滅したのである。


◆◇◆◇


 硝煙と血の匂いが重く立ち込める戦場跡を、アルノーは小高い丘の上から見下ろしていた。彼は、軍服の袖に飛んだ微かな泥の跳ねを不快げに見下ろし、純白のハンカチで丁寧に拭い取る。


「閣下、残敵の掃討および物資の回収が完了いたしました」


 血と煤にまみれたエディが駆け寄り、恭しく報告の羊皮紙を差し出す。アルノーはそれを受け取ることもなく、ただ言葉の続きを促した。


「壊滅した駐留軍の装備の中から、無傷で利用できる新型銃を、一万丁以上回収いたしました。さらに、莫大な量の弾薬と火薬も併せて確保しました」


 その報告に、アルノーの涼しい瞳の奥で、どす黒い野心が静かに燃え上がった。同じ火力を有する敵の戦力を二万削り、さらに一万以上の強力な武器を無傷で手に入れたのだ。単純な兵力差以上に、この戦果がもたらす軍事的なアドバンテージは計り知れない。


「上出来です」


 アルノーは、はるか西の彼方、ミレーヌが君臨する王都クーロンヌ・ダルジャンの方角へと射抜くような視線を向けた。


「私が世界の頂点に立つための舞台は、いよいよ完璧に整いつつあります。あの女が絶望に顔を歪める日が、今から待ち遠しいですよ」


 秋の乾いた風が吹き抜ける丘の上で、端正な青年将校はただ一人、狂気に満ちた静かな笑い声を漏らしていた。


 最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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