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【70万PV突破】傲慢な世界よ、私が壊してあげるわ~公爵令嬢に転生したOLは悪の覇道を突き進む  作者: かずまさこうき
間章

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第205話 幕間(捕らわれた女)

 見知らぬ異国の辺境の街。

 分厚い石壁に囲まれた、窓一つない豪奢な客室の中で、十数人の若い娘たちのすすり泣く声が響いていた。

言葉は通じないが、家族を引き離された絶望と恐怖を訴えていることくらいは容易に察しがつく。

 部屋には柔らかな絨毯が敷かれ、上質な寝台や、湯気が立つ温かい食事が用意されている。しかし、重厚な扉は外から厳重に施錠されていた。

 昨日、村を襲撃してきたならず者たちに攫われ、ここに監禁されているのだ。彼らは労働力になりそうな男たちには目もくれず、ただ「傷のない、器量良しの若い娘」だけを選別して連れ去った。

 そんな絶望的な空間の中で、ただ一人、泣き喚きもせず、豪奢な長椅子(ソファ)に深々と腰を下ろしている女がいた。

 泥に汚れた外套を羽織ってはいるが、現地の娘たちとは骨格から異なる彼女の際立った美貌は、薄暗い同室の中でも明らかに異質だった。女は出された温かい食事を平然と平らげ、艶やかな髪を優雅にといていた。

 ガチャリ、と重い鍵が開く音がして、上等な絹の服を着た小太りの男が、数人の護衛を連れて入ってきた。男は泣き叫ぶ娘たちには見向きもせず、部屋の奥で堂々とくつろぐその女の前で立ち止まる。

 男は下卑た笑みを浮かべ、見知らぬ言語で何やら機嫌良さそうにまくし立てた。

 言葉の正確な意味はわからない。だが、女の顔を舐め回すように見つめる視線と、まるで千金に値する宝を自慢するような態度を見れば、何を考えているかは一目瞭然だった。


 男が値踏みするように女の顔へ手を伸ばそうとした瞬間——彼女の暗く冷たい瞳が、スッと男を射抜いた。

 その、路傍の石ころを見下すような絶対的な「強者」の眼差しに、男は思わず背筋を凍らせて手を引っ込めた。


 男は誤魔化すように悪態をつくと、部下たちに振り返り、女を指差して厳しく何かを命じた。その切羽詰まったような身振り手振りから、「顔に傷一つでもつけたらタダじゃおかないぞ」と徹底管理を命じているのは明らかだった。


 男たちが足早に部屋を出て行き、再び重い扉が施錠された。 娘たちの嗚咽が響く中、女は満腹になった腹を撫でながら、内心で鼻を鳴らして(わら)った。


(……阿呆らしい。何が悲しくてピーピー泣いているのやら)


 女の思考は、この状況にあっても極めて冷徹だった。

 言葉は通じずとも、状況から自分がどういう扱いを受けているかは完全に理解している。

 どこぞの好色な大貴族か、王族クラスの富豪の慰み者として高値で売り飛ばされるのだろう。「傷をつけるな」と過剰なまでに徹底管理されているのが何よりの証拠だ。自分の美貌という「商品価値」がある以上、当面は殺されることも、粗末に扱われることもない。


(いいわ。私をどこへでも連れて行きなさい。死の危険が伴う荒野を、タダで美味い飯を食わせながらこの国の権力を持った男まで安全に護送してくれるというのだから、こんなに都合のいいことはない)


 女は、笑みを浮かべた。


(買い手がどれほどの権力者だろうと構わない。まずはそいつの寝所に潜り込み、喉元に噛みついてやる。そして金も、地位も、何もかもを喰い尽くし……私からすべてを奪ったあの銀髪の女を、必ず地獄へ引きずり落としてやる)


 豪華な鳥籠に囚われた女は、見えない鎖を自ら手繰り寄せるように、不敵な笑みと共に異国の闇を見つめていた。


 最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

 今後の励みになりますので、感想・ブックマーク・評価などで応援いただけますと幸いです。

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