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【70万PV突破】傲慢な世界よ、私が壊してあげるわ~公爵令嬢に転生したOLは悪の覇道を突き進む  作者: かずまさこうき
第九章 併吞編

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第176話 激突

 フェラスレツ大公国の大公ヨゼフ二世の陣幕内に、怒号が響き渡った。


「反乱鎮圧の部隊が騎士団に攻撃されただと!?」


 ヨゼフ二世は、報告を持ってきた伝令を青筋を立てて睨みつけた。


「やはり奴らが反乱の元凶か! 全軍出撃だ!」

「大公閣下、カインエの包囲網はいかがいたしましょうか?」


 側近の問いかけに、大公は鼻息を荒くして吐き捨てた。


「包囲網? まずは目前の敵を撃滅するのが先だ!」

「敵とは……?」

「サデーナ騎士団に決まっているだろうが!」

「しかし、カインエの南側に配置した兵を呼び寄せるには時間がかかります。全軍の態勢を整えてからのほうが……」

「構わん、後から追ってくるように伝えろ。本軍は直ちに向かえ!」


 カインエの西側で包囲陣を敷いていた大公軍は、北で発生した武力衝突を鎮圧すべく、怒涛の勢いで進軍を開始した。残りの軍も順次それへ続く。


◆◇◆◇


 一方、ほぼ同じタイミングで、カインエの東側に陣を構えていたサデーナ騎士団領のベアディ・グルーデ総長も、怒りで顔を赤黒く染め上げていた。


「我が軍が大公軍と交戦状態に入っただと!? やはり我が領地を乗っ取る気か! 全軍出撃だ!」


 こちらもまた、カインエの包囲を解き、全軍をもって北へと雪崩れ込んでいった。


◆◇◆◇


 カインエの北側で偶発的に始まった小競り合いは、包囲網を構築していた両軍が次々と兵力を投入したことにより、瞬く間に全面戦争へと変貌を遂げた。

 互いに「相手が裏切った」と固く信じ込んでいる両陣営の間に、高度な策など存在しない。ただ純粋な殺意と、力と力のぶつかり合いだけがあった。

 総兵力ではフェラスレツ大公国軍が勝っていたが、個々の戦闘能力に秀でたサデーナ騎士団は一歩も引かない。剣戟の甲高い金属音と怒号、そしてむせ返るような血の匂いが平原を覆い尽くし、戦況は完全に互角の泥沼と化していた。


◆◇◆◇


 そんな激闘の最中。


「……なんだ、あの煙は!? 確認しろ!」


 ベアディ総長は、自陣の遥か後方から立ち上る黒煙に気づき、目を剥いた。


「はっ! ……総長、あれは我々が包囲していた際の本陣の方角です。もしかして、待機させていた補給部隊が……」

「補給部隊をなぜ置き去りにした!」

「戦いが生じた際、非戦闘員を後方に配置するのは当然ですが……」

「そんな机上の空論を聞いているわけではない!」


 苛立つ総長の元へ、血相を変えた伝令が転がり込んできた。


「大変です! 補給部隊が何者かに襲撃された模様です!」


◆◇◆◇


 その絶望的な報告とほぼ同じ口上が、ヨゼフ二世の元にも届けられていた。


「我が軍の補給部隊が襲われただと?」

「はい! ほぼ全滅し、食料などの物資には火を放たれた模様です!」


 大公は愕然として後方を振り返る。双方の後方、戦闘に参加していない補給部隊の方角から、空を黒く焦がすほどの煙が立ち上っていた。

 食糧を絶たれたという事実は、激戦を繰り広げていた両陣営の兵士たちにも瞬時に伝播し、目に見える動揺を生み出していく。


◆◇◆◇


 その混乱のさなか、サデーナ騎士団の側面に、空気を切り裂くような猛烈な銃撃が浴びせられた。


「側面から銃撃です!」

「銃撃だと!?」

「どうやら、クライナイン王国が城から打って出た模様です!」


 激戦による疲労に加え、兵糧を絶たれたという事態に陥っていた騎士団は、予想外の新手からの激しい攻撃を受け、大混乱に陥った。


◆◇◆◇


 それを見たヨゼフ二世は、口元を醜く歪めて歓喜の声を上げた。


「城に籠ったもぐらどもが、ついに這い出てきたか。この機を逃すな! 騎士団を撃滅し、返す刀でクライナイン王国を打ち破れ!」


 大公の発破により、大公軍の攻撃はさらに苛烈さを増した。


◆◇◆◇


 前面からは大公軍の猛攻、側面からはクライナイン王国軍の容赦ない銃弾の雨。ベアディ総長は、崩壊を防ぐため喉が裂けるほど声を張り上げて指揮を執ったが、その努力も虚しく、ついに撤退を決断せざるを得なかった。


「退け! 一旦兵を引け!」


 しかし、その号令はすでに統制を失った騎士たちにとっては、ただの逃亡の合図に過ぎなかった。サデーナ騎士団は、誇りも陣形も投げ捨てて敗走し、事実上壊滅した。


◆◇◆◇


「見ろ、あの傲慢な騎士団が逃げていくぞ! 勝った!」


 ヨゼフ二世は、馬上で高らかに勝利を宣言した。だが、その歓喜は数秒と持たなかった。今までサデーナ騎士団と戦っていた方角とは全く異なる方向から、突如として激しい騒乱の音が巻き起こったのだ。


「大公閣下、大変です! 後方部隊が猛烈な銃撃を受けています!」

「側面からも、新たな銃撃が!」

「騎士団を攻撃していたクライナイン王国の兵が、今度はこちらへ攻撃を開始しました!」


 クライナイン王国の別働隊が、死角となる後方や側面から、怒涛の勢いで大公軍へ襲い掛かってきたのである。勝利を確信した直後の無慈悲な奇襲。退路も兵糧も失っている絶望的な状況下で、大公の兵士たちは完全に戦意を喪失した。


「ば、馬鹿な……」


 ヨゼフ二世が呆然と呟く中、フェラスレツ大公国の軍は、三方からの激しい銃撃に耐えきれず、散り散りになって敗走していった。


 最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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