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【60万PV突破】傲慢な世界よ、私が壊してあげるわ~公爵令嬢に転生したOLは悪の覇道を突き進む  作者: かずまさこうき
第八章 連衡編

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第155話 反乱

 それから三週間後、女王の執務室で、宰相代行を務めるカインは、ミレーヌと相対していた。黒檀の机越しに対峙する銀髪の女王は、いつも通り、まったく感情を表さずに、カインの提出した書類を眺めている。その冷ややかな美しさと絶対的な威圧感の前に、カインは常に胃の痛くなるような緊張を強いられていた。

 報告が一段落しようとしたその時、重厚な扉が慌ただしくノックされ、行政庁長官のオーブリーが入室してきた。普段は冷静な彼の顔に、珍しく焦りの色が浮かんでいる。


「陛下、お話し中のところ失礼いたします。火急のご報告がございます」


 カインが一歩下がって場所を譲ると、オーブリーは早口で言葉を紡いだ。


「クライナイン王国の各地で、暴動が発生したとのことです。確認されただけでも、旧ラプノー家領、旧ジュイノー侯爵家領、旧ブローリ公爵家領など広範囲にわたります。主に、旧体制に未練を持つ不平貴族の関係者などが首謀している模様です」


 そのただならぬ報告に、カインは思わず息を呑んだ。広範囲での同時多発的な暴動となれば、建国間もないこの国を揺るがす大事件だ。しかし、報告を受けたミレーヌは、書類から視線を外すことすらなく、退屈そうに呟いた。


「ふーん……もうすぐかしら?」

「……陛下、何かおっしゃいましたか?」


 オーブリーが怪訝な顔で聞き返すと、ミレーヌは微かに口角を上げて答える。


「なんでもないわ」

「はあ……。どういたしましょうか?」


 オーブリーの問いに対し、ミレーヌの氷のような視線が、不意にカインへと向けられた。


「……カイン」

「はいっ」


 急に名前を呼ばれ、カインの背筋がピンと伸びる。


「あなたが対処して」

「……は、はい?」


 カインは自分の耳を疑った。財務の専門家である自分に、反乱の鎮圧を命じるというのか。軍を動かすのであれば、ゲオルク大将の管轄のはずだ。


「宰相代行でしょ? 明日の朝までに策を練って報告して」


 ミレーヌに逆らうことなど到底できず、カインは「承知いたしました」と深く頭を下げ、足早に執務室を退室した。


◆◇◆◇


 自室に戻ったカインは、すぐに頭を切り替えた。軍事の素人である自分に、なぜ陛下は暴動への対処を命じたのか。そこに必ず「理由」があるはずだ。

 カインは部下たちに指示を飛ばし、暴動が起きたとされる該当地域のあらゆるデータをかき集めさせた。徴税記録、人口の推移、密告制度の報告書、そして何より——商取引や物価の変動記録だ。

 集まった膨大な数字の羅列を前に、カインはペンを走らせ、思考を整理していく。やがて、点と点が結びつき、明確な一つの結論が浮かび上がった。


(……なるほど。そういうことか)


 確信に満ちたカインは立ち上がった。


◆◇◆◇


 三時間後。カインは再びミレーヌの執務室の扉を叩いた。


「報告をまとめました」


 カインが堂々と告げると、ミレーヌはティーカップを置き、静かに彼を見据えた。


「早かったわね」

「推測ですが、反乱の規模は極めて小さい、もしくは虚報の可能性が高いです」

「どうしてそう思ったの?」


 ミレーヌは感情を交えずに問い返す。


「確かに、過去の特権階級にすがり付いていた不満分子はいると思います。しかし、その大半はすでに処刑されています。となると、首謀者となり得る不満分子の絶対数は極めて少ないと考えられます。さらに、新体制下で住民の税率は下がり、暮らしは目に見えて向上しています。仮に反乱が起きたとしても、民がそれに(なび)く理由がありません。そして、あの徹底された密告制度があるにも関わらず、事前に不穏な動きが全く上がってこないのも不自然です。それに……」


 カインはここで大きく息をつき、確証を口にした。


「もし、本当に大規模な反乱の準備が水面下で進んでいたのなら、必ず裏で武器や食料の買い占めが起こり、相場が動くはずです。しかし、該当地域の物価は極めて安定しています。経済の動きからも、大規模な反乱は偽装だと断言できます」


 カインの淀みない説明に、ミレーヌは冬の夜空のような青い瞳の奥で微かに満足げな光を瞬かせた。


「それで?」

「今回の件は、反乱が起きたという偽の情報を陛下に流し、鎮圧のための兵を地方へ向けさせるのが目的……すなわち、王都の守りを手薄にさせるための『陽動』だと思います。実地調査を含めて、すでに情報庁の者を派遣させています。後日、詳しい情報が現地からくるでしょう」


 カインが完璧な解答を出したと自負して胸を張ると、ミレーヌは薄く口角を吊り上げた。


「八十点」

「……間違っていましたか?」


 カインは予想外の採点に、思わず拍子抜けした声を出した。


「合ってるわよ」

「では、なぜ八十点なのですか?」

「それはね……」


 ミレーヌがそう言いかけた、まさにその瞬間だった。空気を激しく震わせる凄まじい爆発音が響き渡った。驚いたカインが窓の外を見ると、王都の郊外から、空を黒く染め上げるような巨大な黒煙がもうもうと立ち上っていた。


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