ゴブ郎対勇者
圭介は目の前のゴブリンを見て震える。
『Sランクだろうな、それが上限なんだから』
間違いなくランクはSなのは間違い無い、しかしそれは人間が決めた基準であるだけで彼の知る最低辺のSランクとは桁違いの、最初に戦ったアイムすら軽く凌駕する化け物と圭介は見る。
『この前戦ったアイムは何故か知らねえが化け物になっていた、今目の前にいるこのゴブリンは間違い無くあの時のアイムクラス』
圭介は死を覚悟する、死にたくはなかったが教会に施された紋章により記憶を奪われ機械のように戦わされるくらいなら、意識があるうちに死んだ方がマシだと、この戦場にやって来た。
「圭介、大丈夫かな、あのゴブリンの魔力凄すぎなんだけど」
「倒す、それしか考えてね」
圭介はユキを戦わされる気は無かった、恐らくこの場で自分が殺されてもユキだけは守ると、ユキは賢者と言う職である以上、意識を無理矢理奪うより後方支援を任される確率の方が高いと思っていた。
圭介の少ない希望だがどちらにせよ、この場は勝てば問題無い、相手は強敵だがアイムほどの力を感じながらも脅威を感じなかった。
『このゴブリンはアイムほどの残酷さが無い、どこか戦いに潔癖さを求めてる感じだ』
この見立ては間違ってなくゴブ郎は卑怯な手段を用いて戦う事を良しとする性格では無い、もちろん白露の命令であればどの様な作戦でも躊躇無く出来るが、そうで無いなら
「なんだ一騎打ちでもしたいのか人間?」
圭介が真っ直ぐ魔王軍に歩いてくる、その姿を見てゴブ郎はそう問う
「そうだ、お前が指揮官か?」
「そうだ人間」
圭介はこの場で最も勝てる確率の高い、大将との一騎打ちを選択する。正確に言えば唯一勝てる手段であるが
「ならば俺と戦え! 我が名は勇者、勇者圭介だ!」
圭介が大きな声で叫ぶ、その声にゴブ郎は
「良いだろう、少しは人間と遊んでやろう」
ゴブ郎は魔王軍とベルベア軍が睨み合っている平原の丁度中央付近にいる圭介の元に歩み寄る。
「俺の名は偉大なる白露様により名付けられたゴブ郎、魔王軍の将軍の地位にいる」
「そうか、ならばゴブ郎よいざ尋常に勝負!」
圭介は剣を構え
「よかろう、人間を殲滅する前に遊んでやろう」
ゴブ郎も構える、そして
「「ゆくぞ!」」
ドン!
二人のぶつかる衝撃の余波で最前線の兵士に物凄い爆風がやってくる。
「うわー! 下がれ勇者様の邪魔になるぞ」
ベルベア軍が少し後退する、しかし魔王軍はその程度の風では動じない。
「ゴブ郎様がイキイキしてるな、よっぽどストレス溜まってたんだろな」
魔王軍の感想はその程度である。
圭介はこの前ミーコと戦った時より強くなっていた、その強さは人間の限界に近いものであったが
「どうした人間、この程度か!」
「ぐっ、くそ!」
ゴブ郎の力の剣をなんとか防ぐ圭介、その攻防は一撃一撃が必殺のぶつかり合いに人間側からは見えて魔王軍側からは
「ゴブ郎様手加減しすぎでは」
「まあすぐ終わってもつまらないだろう」
遊んでる様にしか見えない。
圭介の剣は様々な戦場を乗り越えて来ただけでなかなかの腕になっていた、今尚振るわれる剣の一撃一撃がゴブ郎の命を狩るために襲いかかるが
「くっくっく、人間にしてはやるな、今まで戦って来た中ではマシな方だな!」
「そりゃどうも!」
ゴブ郎はその全てを受ける、笑いながら楽しそうに戦うゴブ郎、勇者の強さを信じる者には化け物に勇敢に挑む勇者と映るが、勝てないと思ってる者からしたらそれはただの遊びにしか映らない
『圭介! やっぱり勝てないの』
ユキは二人の戦いを見ながら圭介の勝つとはとても思えなかった。
「ブレイブソード」
「おっ! なかなかだな人間」
ブレイブソード、それは勇者にとって最大の必殺剣であり、無敵の剣……
「ちょっと強めだが、腰が入っとらんぞ人間!」
「ぐあ!」
圭介はゴブ郎がブレイブソードを簡単に受けた後に軽く払った剣で吹き飛ばされる。
「はぁはぁはぁ、化け物め」
圭介はなんとか立ち上がりゴブ郎を睨みつけようと顔を上げようとしたが
「まあまあ楽しめたよ人間、だがもう死ね」
ゴブ郎が剣を振り下ろしたと同時に魔王軍は進軍を開始し、そしてその後数日のうちにベルベアとその周辺諸国がイーグレットの属国に成り下がるのだった。
「圭介!」
一人の女性の叫びは誰にも聞こえぬままに




