白露は全皇と呼ばれたい
白露は海を眺めながら思う。
「いや〜遠くまで来たもんだな」
白露達が上陸した大陸には何があるのか、白露は少しワクワクしていたのだが
「マスターこの大陸は既にイーグレット傘下ですが」
ラスティ多分二号が言ってくる。
「へっ、そうなの」
白露は血湧き肉躍る冒険を想像したのだが、白露は現在大陸の住人達の歓待を受けていた、この大陸の住人はケンタウロス、ハーピー、象の獣人など普通の人間はいなかった。
「魔王様の到来に我ら一同、心待ちにしておりました」
ケンタウロスの一人がそんな事を言ってくるが、その目は怯えており明らかに力で支配してます、との感じであった。
『さっきからラスティの顔色ばかり見てるな、何があったんだろ』
白露は何があったのか気にはなるが、追求するのも怖かったので
「そうなんだ、ありがとう」
無視する事にする、こと流れ主義それが白露である。
白露達はお世辞にも発展してるとは言えない街に案内される。
「こちらが王都となります、王がお待ちなので」
そうケンタウロスが言ったところで
「王都はここではありませんし、あそこのボロ屋にいるのは王では無い、まだ理解してないのか?」
ラスティが低い声でケンタウロスを睨みつける、するとケンタウロスは
「ひぃ、も、申し訳ありません、白露様の下僕があります」
土下座を器用にしながら頭を下げる、白露はそんなケンタウロスを可哀想に思い
「よい、ラスティ勘違いをするな」
「はっ! 何がでしょうか?」
ラスティは何が勘違いか分からない、急に魔王モードになった白露は
「王とは我のことでは無い、余は絶対者である魔王を超える存在、そして余の配下から種族をまとめる者、もしくは余が認めた者それが王と名乗る、今回で言えばケンタウロス族をまとめる者ならば王でも構わん」
白露の考えでは白露の立場は全ての王を統べる者なのだ。よって白露の部下の中で優秀な者に特にゴブ郎かゴブ蔵のどちらかにゴブリンの王を任せようかと思っていたりする。
「そうだったのですか、申し訳ありませんマスター、王を統べる者こそマスターに相応しいと思います」
ラスティはすぐに白露の考えを理解し、王とは絶対者では無く白露の支配下に置く者で白露が認めた者なのだと納得する、ならばケンタウロス族のトップが王を名乗るのは問題ない、無いが
「しかしマスターがまだ承認してないのであれば王を名乗るのは問題があるかと」
「ふむ、確かにそうだな、ならば相応しいかどうか見てやろう」
白露の魔王モードを震えながら見つめる大陸の住人達、そこに逆らうなどの選択肢を選ぶ事が絶対に出来ないと思わせるものだった。
そんな中で勇気があるのか馬鹿なのか白露に質問する者が現れる、近くにいた象の獣人、名をサイフォス
「あっのー?」
その失礼な態度にラスティが殺してやろうかと睨みつける、しかしサイフォスはゆったりとした言葉で白露に質問する。
「あなた様は王でないなら、何なんですか?」
ラスティはなんと無礼な質問かとサイフォスを殺そうとするが白露に制され
「なんだ王より上の者を知らぬのか?」
「そうだ、王様より偉い人なんて、おらしらねぇだ」
サイフォスは象の獣人の中で一番の力持ちだが、一番アホでもあった。
「そうか、確かに知らぬのなら仕方あるまい、王より上の者は……そうだな皇帝は少し違うか、大王もなんだかな」
白露は魔王モードの時でもその場のノリで語るのだ、今回で言えば王様を任命する者ってカッコいいな程度の考えでラスティに語ったのだ。深くは考えてない、これは普通の時でも魔王の時でも変わらない白露の基本的な性格である。
「全皇と呼べ」
白露はそう命じる、サイフォスは
「分かっただ全皇様、おらサイフォスは全皇様に忠誠を誓いますだ」
「ほお、すぐに忠誠を誓うとはなかなかの心掛けだな、そなたの忠誠を受け入れよう」
この日、後に三騎獣と呼ばれる三人の獣人騎士の一人が生まれる、地の支配者サイフォス、山を平地に変える化け物の誕生の瞬間であった。
「進化? した」
周りの人々が驚きの声を上げる、基本的に獣人は進化しない、しないのだが例外的に英雄と呼ばれる者が進化を遂げる。そして目の前に進化を遂げる象の獣人
「これはなんなんだ?」
「サイフォスよ、余がお前の忠誠を受け入れたから進化を遂げた、それだけだ。これからも余の為に励めよ」
「は、はい全皇様」
サイフォスは進化したおかげで分かった事がある、目の前にいるのは確かに王では無い、王なんて役職では無く絶対の支配者なのだと、自分が忠誠を誓い全てを捧げるべき人なのだと、象の獣人では無くマンモスの獣人になったサイフォスは喜びを持って頭を下げる。
「マスター、あまり気軽に忠誠を受けるのは」
ラスティが一連の流れを見て、少し苦言を呈するが白露は
「余が適当に受けてると思うのか?」
白露はラスティに一言そう告げる。
「いえ、マスターがその様な事をなさるとは」
「そうだ、サイフォスはこの大陸で一番に忠誠を誓い、そして力もある、それだけで十分であろう」
「はっ!」
ラスティはただ白露に従う、そして白露はケンタウロス族の王に会いに行く
「サイフォス、ついて来い」
「はい全皇様」
白露はサイフォスが気に入っていた、彼的には技巧派より完全なパワーファイター型が好きだった。
「こ、こちらです全皇様」
ケンタウロスはとにかく早く案内してしまいたかった、緊張の頂点にいたのだ。
「うむ」
白露が連れられたのは城と言うよりは大きな平屋で、確かに馬が住むには平屋の方が適しているだろう、白露は感心しながら王の間に向かう
「タウロス様、全皇様をお連れしました」
「分かった」
白露はケンタウロス族の王と対面する。王の名はタウロスと呼ばれ、ケンタウロス族で最も勇敢な戦士であった。
「あなた様がイーグレットの王でありますか」
王の間でタウロスは臣下がいる様な場所にいた、王の椅子(ケンタウロス族はフカフカの座布団)に座るわけにいかず横で立っていた。白露はその座布団に当たり前の様に座り
「うむ、ケンタウロス族の王よ、して貴様は余に忠誠を誓うのか?」
白露のいきなりの言葉にタウロスは
「我らの安寧をお約束頂けるのなら、この命全てを捧げます」
ケンタウロス族の忠誠の誓いを行い、そして前足を見せてくる。
「うん? なんだそれは」
白露はケンタウロスの習慣に明るく無く、タウロスが何をしたいのか分からない
「我が一族は前足に蹄鉄を自分の主人に任せるのです、そして主人の為に走る事を誓うそれが忠誠の証となります」
「なるほどな」
白露が軽く手を振ると、タウロスの足に蹄鉄が付けられる。
「なんと!」
そして始まる進化
「マスター!」
ラスティが何か言いかけるが
「余に絶対の忠誠を誓う、その心に嘘はない、気にするな」
「分かりました」
ラスティはすぐに下がる、それと同時にタウロスの進化が終わる、タウロスの背中に大きな羽が現れる。
ここに三騎獣の一人、空の支配者タウロスの誕生である。白露は頭の中で次は海だなー、と思いながら丁度いい獣人を探す事を誓っていた。




