勇者の状況
現在イーグレットの隣国は大小様々存在する、その中で最も強大なのが魔法大国【ベルベア】である。
ベルベアのトップはイーグレットをどうやって滅ぼすか考えていた。しかし人間側の最大戦力である勇者をあっさり倒した魔物達に恐怖を感じない訳でなく、イーグレットに攻めるために何が必要かを考えていた。
「陛下、我らの戦力だけで倒すのはリスクが高すぎます、ここは他国を利用すべきかと」
「わかっておる、しかし他国の奴ら、我が人類一丸となろうと訴えてもビビってあれこれ理由を付けて兵を出さん」
ベルベア王は他国に魔王を討ち亡ぼすために一丸となるべきと何度も訴えたが、そもそもベルベア自体が他国に侵略行為を何度も行なっていたために、全く信頼されていなかった。
イーグレット近郊の小国は現在ベルベアとイーグレットに挟まれ中立を決めている。何度もベルベアの使者がやって来たがどちらにも付きたく無いとあれこれ理由を付けて使者と会わないようにしていた。
「くそ、あの国もか、こうなれば他国に侵攻して奴隷を増やすか」
「なりません陛下、それはホーレットが行いイーグレットに負けました。我らの見解では全てイーグレットの戦略かと」
「戦略?」
「はい、イーグレットはレチュピアに付いてホーレットを倒しました、そしてそのまま両国とも属国に」
「ああ書いておる、鮮やかな戦術と皆が言うておるの」
「ホーレットを潰すのにレチュピアの力を利用し、そして逆らう力のないレチュピアをそのまま支配下に置く、考えてみれば簡単な策ですがホーレットがレチュピアを攻めねばこの形にはなりません」
「だがホーレットは攻めた? 何故だホーレットは何故そのような愚かな事を敵を増やすだけでは」
「イーグレットを倒す為の戦力を手っ取り早く手に入れようとした、が普通の見方ですが私としてはイーグレットが攻めさせた、とも見れます」
「まさか我が他国との交渉が上手くいかないのは」
「イーグレットが介入してると見て間違いないかと」
「ぐぬぬ、危うく我もホーレットの過ちを」
「そうです陛下、イーグレットは我らに策を講じているはずです」
完全に裏を読みすぎである。世にある陰謀論は大抵、裏を読みすぎた人間の妄想である、彼らは何もしていないのに疑心暗鬼になり戦略を間違える。今回ならばベルベアが少しでも軍事行動を起こせばその他の小国は無条件でベルベアについたであろう。彼らとてイーグレットに滅ぼされるわけにはいかないのだから、しかしベルベアも怖い、その事が行動を制限させられているのだがベルベアが動けばベルベアを選択するはずなのだ。
「動けぬか」
「現状では、打開策としては何とかエリポスに勇者の派遣を要請するしかありません」
「勇者は負けたのであろう」
「確かに、しかし敵の本拠地に3人でですからね、勇者と魔王の一騎打ちに持ち込めば」
「そうか、勇者ならば勝てるか」
「おそらく」
ベルベアだけでは無いのだが、勇者の力は絶大で一対一ならば負けるはずが無いと何故か信頼されていた、こうしてベルベアの要請により再び勇者がイーグレットに牙を向ける。
「魔王と戦えと、無様に負けた俺にか」
圭介はヒョロっとした細い老人を睨みながら怒鳴る。
「そうだ、神の威光を愚かなる者共に向けねばならぬ、お前はその為に存在する、出来ねばその紋章が、分かるな」
「ちっ、下衆どもめ」
紋章、それは圭介とユキに新たに付けた決して逆らえなくなる悪魔の紋章である。ミーコに負けた圭介達は勇者を辞めると騒いだので教祖であるエリポスの王が断罪紋と呼ばれる魔法を彼らに施したのだ。断罪紋は命令に逆らえば記憶を全て奪うと言う恐ろしいものだった。
「圭介ダメよ、ここは行くしかないわ、勝てないと分かっても」
「ユキ」
「ふむ、再度ダンジョンに潜りレベルを上げさせたのだ、勝てないことはなかろう」
目の前の老人は軽くそう言うが
「知らないのは幸せだな、確かに俺たちは強くなったが相手の悪魔はそれ以上だろう、次の勇者を召喚するんだな、どうあがいても俺達に勝ち目は無いんだがな」
圭介のその言葉に老人は笑いながら
「ほっほっほ、お前達は自分を卑下しすぎだな、神の召喚で呼ばれたお前達がそんな壊れやすくは無いだろう、死ぬまで働くのは構わないが魔王は倒せよ」
そう言って去って行く老人、それを見ながら圭介は
「正直胸糞悪い奴らだが間違い無く悪魔どもに殺されると思うと」
圭介は笑いながら
「爽快だな」
圭介は死を覚悟する、記憶を消されるのは死んでもやだし、ユキを守りたい、その為には命を捧げても魔王を倒すしか無いと
「いいの圭介」
「ああ、戦うしか道はないからな」
「圭介」
勇者は再び挑む、負けられない理由があるから。




