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異世界へお引っ越し!  作者: にんにん
第四章 リフォームと映画化
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怒り

 白露の作品はファンタジー小説もあればSF、恋愛、サスペンスと多岐にわたる。

 今回映画化になった【傷の正体】は白露の10作目に当たり、大きな賞を貰った出世作である。

 精神に障害を持った少年少女が集まる特別な学校に赴任してきた主人公の教師が、生徒の心の傷と正面から向かい合い、少年少女の心を癒していくことで現代社会の闇を書き、日本の今を皮肉った傑作であった。

 その作品は評価が高く、かなりの映画会社から映画化のオファーがあった。その中で白露にどこが良いかと一切尋ねずに露美が


 「ここが良いって言ってたっす」


 と勝手に言って映画化の企画が進む、役者選びも白露に相談をして来いと言われた露美だったが


 「えっと、やっぱり」


 乙女全開でイケメン俳優を次々指名して言った、もちろん白露は知らない


 「先生が言うなら」


 と頭を捻る配役もあったが白露の作品は次々と映画化オファーがある為、白露の言葉ならと受け入れてきたのだ。白露は知らないけど


 「露美、白露は顔合わせにも来れないのか?」


 「先生は今、締め切り前で追い込まれてます」


 「そうか、仕方ないか」


 その頃、白露は家探しの真っ最中であった。


 「おい露美、流石にプロデューサーや監督に挨拶させないと」


 「先生家から出れなくなりました」


 「はぁ?」


 「とうとうあっちに」


 「何! 聞いてないぞそんな事!」


 千歳は露美を怒鳴りつけるが


 「いや、違うんですよ、今日行ったらそうなってたんです、マジです、本当です」


 「本当か?」


 「はい、おかげで先生の家に泊まり込みですよ、はっはっは」


 「泊まり込み?」


 「買い物をして来いと」


 「なるほど、しかしいつの間に家を見つけたんだ」


 「さぁ!」


 とぼける露美、彼女は映画化の話を一切白露に伝えてないのでバレると大変まずいのだ、編集長に殺される方向で


 「しゃあないか、じゃあお前が役者の方に挨拶して来い」


 「はーい」


 露美の目的はこれである、露美はファンの俳優に会いたくて白露に内緒にしていたのだ。そして現在


 「どう言うわけかな露美ちゃん?」


 「先生、私は言いました、間違いありません」


 露美は信じられないほどに目を泳がせながら答える。


 「言ってないよね」


 「言いましたよ、先生は忘れっぽいから」


 ちなみに白露に隠していただけならここまで動揺しない、現在この場には白露以外にももう一人


 「露美、確認をちゃんと取ってなかったのか?」


 「あはは、そんなバカな編集長信じて下さい、先生がボンクラなだけです」


 「嘘を吐くな!」


 「ぴぎゃー!」


 この後露美はしこたま怒られて、泣きながら白露に


 「ご、ごめんなさい先生!」


 両頬を真っ赤にしながら、目を充血させ泣いて謝る露美に白露は


 「はぁ、もういいよ露美ちゃん」


 白露は何故か露美をきつく怒らないのだ。


 「たく、お前が叱らないから露美が調子に乗るんだぞ」


 「うん、でも今回の配役とかそんなの別に口出すつもり無かったし」


 「そう言う問題じゃ無いんだが」


 「編集長せっかく先生が、そう言ってるんですからいいじゃないですか」


 露美は既に煎餅を食べながらお茶を飲んでいた。切り替えの早い子である。


 「ぐぐぐ、なんちゅうバカな子なんだ、これも白露! お前が甘やかすからだ!」


 「うへ」


 この後白露はしこたま怒られてしまう。


 「あう、何故俺が!」


 白露は両頬を真っ赤にしながらソファーに倒れこむ、その近くでナギが


 「お兄ちゃんの小説、映画になるの?」


 「そうみたいだな」


 「ヒロト君出るんだよね」


 「誰だよ、そのヒロトって」


 「日本最大のアイドル事務所ジャーズのヒロト君だよ、知らないの?」


 「知らないよ」


 「でもお兄ちゃんの小説で主役でしょ」


 「主役は冴島って役者だよ」


 「えっ、その人は教師でしょ」


 「そうだよ、教師が主役だからな」


 「えっヒロト君主役じゃ無いの?」


 「生徒役でいい役なら主役級かもな」


 「そうなんだ、でもお兄ちゃんの小説だよね」


 「おう」


 「なんで知ら無いの?」


 「さぁ何でだろうな」


 白露は疲れてしまったが、映画化事態は悪い話でもないし、配役等注文も会社の言い分がかなり通ったらしいから、別に良いかと思っていた。

 ヒロト君が来るまでは


 「あの何か御用で?」


 「先生、俺、先生の作品のファンなんだ、今回もヤマト役をやらせてもらって凄く光栄だと思ってる」


 目の前に人気アイドルのヒロト君がいた、現在露美とナギにサインを書いている。白露は申し訳ないなと思いながら、何故来たのか尋ねる。


 「この脚本をみて下さい」


 白露は渡された脚本を読んで、怒りがこみ上げて来る。


 「なんじゃこの駄作は!」


 ブチギレである。


 「でしょ、俺もこんな作品に出たくないんです」


 ヒロトも同意する。


 「な、なんでこんな事に!」


 そう思い編集に鬼コール、電話に出たのは露美でも千歳でも無い普通の編集者だが、いつもと様子の違う白露の言葉にビビってしまう、それは社長にまで電話がいくほどに


 「はい、はい先生、しかしその件は」


 「あん、俺がこんな脚本にゴーサイン出すわけねえだろ、誰だよこんなのにオーケー出したのは!」


 ここまで怒るのは珍しく、出版社全体が恐怖に包まれる。


 『おいー、早く千歳を呼び出せ、先生を説得しなければ』


 社長が小声で秘書に千歳を呼び出すように伝える、秘書も冷や汗かきながら必死に千歳に鬼コールをする。そして何度目かのコールで千歳が出て


 「千歳さん、早く帰って来て下さい、白露様がブチギレてるそうです、社長もパニックなんですよ!」


 「ああん、分かったすぐ帰るよ」


 社長の必死の説得に徐々に落ち着いて来た白露だが怒りは収まらない、映画会社から監督にまで電話をしようと番号教えろの言葉を何とかかわして千歳を待つ社長


 「白露が怒ってるって」


 社長室の部屋をバンと開けて千歳が入って来る。


 「お、おー千歳、早く、早く白露様を」


 「ちっ、白露がこんなに怒るなんて珍しいな」


 そう思って電話に出る千歳、そして話す事数時間


 「だめだ社長、全員で頭下げに行かないと」


 「えっ!」


 初めて千歳でも白露の怒りを止められなかった案件である。

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