釣りをする
この湖には名前は存在しない、何故なら人の領域から闇の森を越えるか、険しい山を越えなければ到達出来ないからだ。
しかしこの湖はこの大陸最大で様々な生物が存在し、自然豊かな素晴らしい光景が広がっていた。
そのなかで白露とヨシコは釣りに興じていた。
「うーん、静かだね」
白露のそんな感想も納得の光景、耳をすませば鳥のさえずり、木々の擦れ合う音、魚が時々バシャンと水面に現れて、穏やかな日の光に
「あー、これが幸せかな」
白露は仕事に追われ、都会に疲れ、人付き合いに疲れ、そんな現代人が感じる疲れを癒している最中だった。
「ふぉー、すごい引きなのじゃーー!」
横で物凄い勢いで引っ張られるヨシコを見ながら
「ふふ、平和だな」
そう自分の釣りに集中……
「してる場合ちゃうやんけ!」
とヨシコに駆け寄り、ヨシコを支える。
「よ、ヨシコちゃん、て、手を離すんだ」
白露はヨシコに釣竿を手放すように言うが
「嫌なのじゃ、妾はこれを絶対釣るのじゃ!」
頑固なヨシコは決して竿を手放さない
「ぺ、ペス助けて」
「がう」
ペスが白露を加え引っ張る、するとザバーンと水面からデッカい亀が
ドスン!
と白露達の近くに釣られ、地面に落ちる。
「釣れたのじゃ!」
ヨシコは大喜びで亀に駆け寄り、甲羅を抱えて
「とったどー!」
テレビを見た、モノマネをしながら亀を掲げるのだった。
「うわー、ペス、ペス離して」
白露はペスの口の中でジタバタしていた、ペッと離すペス、白露はもう少しで食われるところであった。
「がう」
ペスは申し訳なさそうにしているが、白露が美味しかったのか、ペロペロ舐めていた、その時白露は生きた心地がしなかったそうだ。
「白露! 大物なのじゃ!」
ヨシコが喜びに満ちた表情で自慢してくる、そこにジタバタしながら動けない亀、推定二メートルほどの大きさ、が釣れて来られる。
白露は思う、ヨシコの何処にこれほどの亀を抱える力があるのかと
「う、うん大きいね、やったねヨシコちゃん」
「やったのじゃ、バーベキューは亀なのじゃ!」
その言葉に亀は命の危険を感じたのか、暴れるが
「うるさいのじゃ、こうなのじゃ」
ヨシコは亀の甲羅を下にした状態で亀を置く、亀はジタバタしても起き上がれないためにどうすることもできない
「ぐっふふ、亀は美味いのかの」
ヨシコは楽しみで仕方ないが
「困ったな、俺亀の調理なんて出来ないよ」
ここで白露は衝撃の告白をする。それに驚くのはヨシコ
「な、な、な、なんじゃとー!」
ヨシコは地面に手をつき、絶望の叫びを放つ
「ごめんよ」
白露の素直な謝罪に
「いいのじゃ、肉で我慢するのじゃ」
そう素直に納得しバーベキューを待つヨシコ
「いやまだ釣りをしようよ、始めてから十分しか経ってないよ」
「そういえばそうなのじゃ」
こうして又釣りを始める。白露は背後でペスが亀をつついて遊んでいるのを気に留めず釣りを再開する、後方から
「やめてけれ、やめてけれ、許してけれ」
そんな亀の悲鳴を聞いても……
「いや流石に助けるけどさ」
白露は誰に向かって言ってるのか分からないが亀を助けに行く
「こらペス、亀をいじめてはいけないよ」
強い口調の白露にペスは落ち込む、しかしそこで甘い顔をするのは躾に良くないので
「ペス!」
「がう」
肉の塊を渡して亀を救う、これは躾だと自分に言い聞かせながら、決してドラゴンスタイルのペスが怖くてでは無い
「大丈夫かい、えっと亀さん」
「ありがてえです、助けて貰ってあんたは命の恩人だ」
「あ、うん」
白露は釣り上げたのは自分達なので少し引っかかる。
「あとひっくり返してくれるともっとありがてえ」
ジタバタする亀はお願いしてくる。
「無理だよ、俺じゃ君みたいに大きな亀はひっくり返すのは」
白露は無理をしない、それを亀に告げ再度釣りに戻る。
「うせやん、うせやん、旦那、旦那おら旦那しか頼れねんだよ!」
こうして昼まで釣りを楽しむ白露達であった。




