白露は休みを要求する
「露美ちゃんこれ」
「ん? なんですか先生」
「とりあえず半年分の原稿と言うか、小説だよ」
「はぁ、締め切りはまだまだ先ですけど」
「分かってるよ、でもこれだけあれば半年は休めないかな?」
「無理ですけど」
白露は露美に休みを懇願していたが、あっさり却下される。
「いやいや、これだけあればどうとでも」
「はぁ、先生原稿だけ書き上げたら仕事休めるなんて本気で言ってるんですか?」
「いや、でもさ」
「先生の作品はアニメ化も、アニメ化の為に動いてるのもありますし、半年分の原稿と言っても編集作業もありますし、この原稿が完成品ってわけでは無いでしょう」
「そ、そうだけどさ」
「全く、サボることばかり考えてないで働いて下さい」
露美はそう言って、昼のワイドショーを見ながら煎餅を食べていた。
「あー、それは旦那が悪いわ」
ズズズとお茶を飲みながらテレビにツッコミを入れている、完全に昼間の主婦である。
「ねぇ露美ちゃん」
「なんですか先生?」
「会社に行かなくていいの?」
「大丈夫ですよ、私の仕事は先生に原稿を書かせることなんですから」
「でもそこに原稿あるよね?」
「そうですね」
「会社、行かないの?」
「何言ってんすか先生」
露美は寝転がりながら白露を見上げ
「半年分もあるんすよ、サボりまくれるじゃ無いですか」
露美の悪びれない言葉に
「このアマ!」
「きゃー、なんですか先生! セクハラですか」
とじゃれ合いながらも白露は何とか一月分の休みをゲットする。
「よし、これで異世界探検が出来るぞ」
はっきり言って国はどうする王様! と思われるが白露の言葉に逆らう者はこの家には露美だけなので
「先生、今度こそ金銀財宝をよろしくっす」
「うーん、今回はありえるかも」
「えっ、ありえるんですか」
露美もまさか肯定されるとは思わずに驚く、今回の白露はその辺の探検もする気なのだ。
こうして露美の許可を得た白露は、いつの間にか森の外まで出来上がった道をキャンピングカーに乗り込み冒険に出かけるのだ。
この時ガソリンはどうするのか? と思った白露だったがマールが
「ご安心下さい、その辺は魔法でどうにかしておきました」
どうすればそうなるのか、何も説明されない白露だが
「そうなんだ便利だね」
特に気にせず旅に出かける、そのお供はゴブ郎、ヨシコ、ペスである。
ミーコはお留守番、と言うより何やら客を待たねばならないらしい。マールはやる事があるらしく同じくお留守番、そして露美は白露への監視の名目でお家でダラダラするらしい、完全に社会を舐めていた。
「じゃあ行ってくるよ」
「はい、いってらしゃいませ白露様」
マールのお辞儀に見送られ白露は闇の森の領域を初めて出て行く、まさかすぐにUターンするとは思わずに
「ふんふんふん、異世界の冒険だけどキャンピングカーでの移動だから楽だな」
白露は野宿出来るほど野生児では無い、田舎出身だがすっかりコンビニ無しでは何も出来ない現代人になっていた。
「しかし何でみんな土下座してるんだろ?」
白露は闇の森の道をキャンピングカーで走っているとその道を利用している人々が道を開け、土下座の形で道の端っこに行くのを見て首をかしげる。
「白露様は王ですから」
ゴブ郎の短い説明に、白露はそんな事しなくても良いのにと思ったが、渋滞知らずで進むので気にしない事にした。
「森の外に何があるかな? 異世界人の街とかあるのかな?」
白露は建国宣言が各国、いや世界中に中継された事が記憶に無い、それゆえ自分が人間の忌むべき魔王だと認識されてないと思ってた。
『白露様が早くも人間の街を欲するのか』
そう思ったゴブ郎は白露の軽トラを勝手に使用し、(白露では無いがマールには許可を取ってある、マールは白露の家の責任者と認識されている)その荷台に精鋭の魔物を詰め込み跡を追わせている。
これは人間の街を滅ぼす為である。
「さてどんな旅になるかな」
そうして一泊したら人間の街が見えてくる。この時白露の手料理が振る舞われたが軽トラ組の魔物はゴブ郎に怒りを覚えたのは仕方ない事だった。何故なら
「うまーーーーい!」
そんなゴブ郎の声を聞きながら、不味くてよく分からない携帯食を食べていたからだ。
「さて初めての街だな、異世界の街ってどんなのだろう」
その期待がすぐに裏切られ、白露は人間の営みを見れるのは、ここからずっとずっと先のことだった。




