伝説の生き物
「ほぉここが湖か、なぁミーコ」
「はい白露様」
「ここを我の避暑地にしようか?」
「それは素晴らしいお考えかと」
未だに口調が治らない白露、彼の歩みは王者の歩み、湖に向かうまでの間全ての魔物が平伏していた。
『本当に静かで良いところだな、コテージみたいなの建ててとか、良いな、ゴブ郎にお願いしたら出来ないかな』
「ミーコよ」
「はっ!」
「この湖では何が釣れるのか?」
「釣り、ですか?」
「そうだ」
ミーコは釣りと言われて戸惑う、魔族でも高い地位にいたミーコは釣りをした事が無かったのだ。
「えっと、その」
「分からぬのか?」
「も、申し訳ございません」
必死に頭を下げるミーコ
「よいよい、知らぬのなら今から知れば」
「はい」
「竿を持て!」
「はっ」
ミーコはゴブリンガードに進化したゴブリンに釣竿を要求する、(ゴブリンガードは白露の近衛兵としての能力に特化したゴブリンとして進化したエリートである)ゴブリンガードは迷いなく竿を渡す、彼らは白露の趣味を熟知し全ての要求に応じられるように準備しているのだ。
「白露様、竿です」
「うむ」
そこから白露は釣りを始める、ミーコもゴブリンガードも後ろで待機する、もちろん一部のゴブリンガードは網を用意済みである。
「さてと、ルアーでやって見るか、ここは生き餌でいくか?」
白露は悩みながらも、とりあえず生き餌で様子を見る。
釣りを始めると辺りには静寂が訪れ、木々の葉の擦れる音が支配する。
白露は落ち着いた気持ちで釣りを楽しんでいた。
そして数刻の時が流れ
「ワン!」
ペスが吠えると(ちなみに今はドラゴンの姿、異世界に入るとドラゴンになるようだ)
「来たか」
そして白露の竿がすごい勢いでしなる。
「大物か!」
そこから始まる白露と獲物の戦い
「くっ、デカイな」
リールを巻くのも一苦労する、かかった獲物はかなりの大物らしい
「うっ、うおーーー」
格闘する事、30分
「弱って来たな、おい網を」
「はっ!」
網を持ったゴブリンガード達が構える。
「よし、ここだ!」
白露はチャンスとばかりに一気にリールを巻き上げる、そして
「せや!」
ザバーンと水面から大きな、それは大きな……
「なんだこれ?」
一気に引き上げた勢いで獲物は地面に叩きつけられる、そして獲物を確認すると白露にはそれが何か分からなかった。
「にゃお、これはまさかにゃ」
驚くミーコ
「凄い、流石白露様だ」
騒めくゴブリンガード達
「ふゃー、許してけれ」
許しを請う釣り上げた獲物
「ふむ、とりあえず魚拓だな」
そう言って墨を塗ろうとした時
「やめて、とうちゃんを虐めねえでくれ」
湖から現れる変な生き物の声に白露は
「大丈夫だ、死にはしない」
そう言って墨を塗りたくる、彼は喋る程度では動じない位には異世界に慣れて来たのだ。
「あっぷ、ぷへ」
こうして見事な魚拓に満足した白露は
「さぁお帰り」
キャッチアンドリリースを行い、親子を見送るのであった。
「い、いいのかにゃご主人!」
「えっ何が?」
すっかり口調も元どおりになった白露は、何故ミーコがそこまで驚くのかよく分からなかった。
「にゃってあれは伝説の生物【カッパ】にゃ」
「えっ? カッパいるの?」
「いたにゃ、にゃーも初めて見たにゃ、大発見にゃ」
この世界でカッパは伝説の生き物の見つけたら一生遊んでも使い切れないほどの報奨金が送られる、超S級魔物(見つけにくさという意味で)なのだ。
「そ、そうなの?」
「勿体無いにゃ、カッパは売れば一財産にゃ」
「ミーコ」
「ハイにゃ」
「俺は金なんかで彼らの平穏を壊したくは無いよ」
「にゃあー」
ミーコはなんか感動して泣いてる
「にゃんて心が広いんだにゃ、流石ご主人にゃ、偉大にゃ」
「まあね」
内心白露は失敗したと思ったが、そんな感情を一切出さずに大物ぶる小心者だった。
「よしみんなで昼飯だな、バーベキューだ」
「「「やっほー!」」」
大喜びのゴブリンガード達、これがあるから白露の護衛はやめられないんだそうだ。
そうしてバーベキューを初めて、少し皆に酔いがまわってきたところ(バーベキューは基本的にはビール付き)バーベキューを無心に食べるカッパの親子の姿が
「父ちゃん、これ滅茶苦茶うめぇよ」
「そうだな、よし食え」
そこに白露が
「何をしてる?」
ビクっと白露の方を振り向き、肉をむさぼりながら、ゴクンと飲み込んで白露をジッと見つめるカッパの親子、そして
「「おかわり」」
こうしてカッパの住む湖が完全に白露の支配下に入る。
「父ちゃん、うめーよ」
「おう、これからは白露のあんちゃんにいっぱい食わしてもらおうな」
後に作られる、と言うより即日着工した白露の別荘の管理人になるカッパの親子であった。
「なんだかな、異世界って餌付けで支配できそうだよな」
こうして着実に闇の森の支配域を増やす白露であった。




