卒業式 ~逃走~
理事長と二人で必死に楓に説明して、顔を洗ってから席に着くと壇上で楓がテンパってるのが見えた。
あれだね、絶対信じてくれてないよあれ。
『なんで私がこんな目にあうの!?』
「なぁ有、楓ちゃんテンパってね?」
「そうだな」
「ってか、これ挨拶だよな?」
「……多分な」
楓よ、それは愚痴じゃないか?
「……なんか楓ちゃんずっとコッチ見ながらお前の事言ってるけど?なにしたん?」
「……さあ?何はともあれ、あいつは間違えなく俺の妹だと実感したよ……」
なんなの?ウチの家系は壇上に立つと荒れるの?
これは、本格的に呪いの線で調査をした方がいいかもしれない。霊媒師の知り合いはいたっけか?
『……さぁ答えなさい、兄さん!』
「おい、呼ばれてんぞ有!」
「……誰の事だろ?」
やめてくれ我が妹よ……。これ以上、身内の恥部を全国のお茶の間に発信しないでくれ!本当に、穴があったら入りたい!
『……月見有あなたのことですよ!』
「……本当になにしたんだ有?」
「……」
『……口が滑りますよ!』
おい?楓?それはまずくないか?ほら輝虎の表情が……。
「有?そういえば、あの理事長の映像演技か?」
「……当たり前だろ?」
「さっき、理事長と舞台袖行ったけどなにしてたん?」
「…………なにも」
「なぁ有、冷や汗ダラダラだけど俺に言う言葉はあるか?」
「俺は無実だ!」
「てめぇ覚悟しろよ!葵、夏奈、茜ちゃんに引き続き理事長までかこの野郎!」
「「「なんだとてめぇ!」」」
「落ち着けお前ら、今は式の最中だろ!」
「「「知ったことか!ぶっ殺してやる!」」」
ヤバイ!輝虎のせいで男どもがバーサーカー状態に!
一体この学校の男どもはどうなっていやがんだ!こうなったら仕方ない、奥の手を使うしかないようだな!
「よし、お前ら落ち着け!あっ楓パンツ見えてんぞ!」
「え?うそ!」
「「「なに!」」」
「バカ共が!じゃあな!」
「兄さん!」
「「「野郎!自分の妹犠牲にして逃げやがった!」」」
俺は、真ん中に空いた通路を出口に向かって走り去った。男だから気になっちゃうのはしょうがないと思うけど、携帯構えた奴は後で屋上な。
「「「待てコラ!!」」」
中等部の男を引き連れて……。カメラマンさん、別に頑張って映さなくてもいいですからね!
「待てと言われて、待つ奴はいねーよバカ!!」
だから、いやな予感してたんだよ!俺らの卒業式が平和に終わるなんてありえないのに。これ放送されてんだろ?死にたいな……。
毎日毎日、何かしらトラブルが起きるんだけどこれは神様のせいでしょうか?だとしたらちょっと話したいことあるから、下界まで下りて来てくんねえかな!
俺は、見ず知らずの神に対して肉体言語を使用して話をすることを夢見て、屋外に飛び出した。
「A班は東階段、B班は西階段からだ。奴を逃がすな!」
「「「サーイエッサー!」」」
「……流石、一体感が違うね!」
いつの間に準備したんだよ、奴らはインカムを装備してやがる……。
どこに、男子生徒の全員がインカムを持つ学校があるんだよ。この学校なら、自衛官養成学校として成り立つんじゃねえのか?
そんなことを考えながら、俺は空き教室で息を潜めていた。こんな年になってかくれんぼに本気になるとは思わなかった……まあ、ならなきゃ死ぬんですけど。
そんな時……。
[ピンポーンパンポーン]
「放送?」
[中等部男子一同に告ぐ、生徒会長権限により全員の捕縛が実行された。抵抗するなら容赦はしない]
我が妹よ、早速使うかそれを?任期中一回しか使えない最終権力を!
あの、葵ですら使うときはじっくり考えて使ったのに!
まあ使ったのは、結局俺の捕獲にだったけどな……。二代続いて生徒の捕縛に使うってどういうことよ?もう名前変えて『捕縛権』とかでいいんじゃね。
「どうしたチームA……、なに全員捕縛されただと?」
下からは、一人の指揮者の焦った声が聞こえてきた。早いなオイ、今放送が流れたところだぞ。
男共の情けなさにちょっと涙が出てきた。
「どうやら着実と捕まえてるようだな。まぁ俺は捕まらないがな!」
「へ~そうなんだー流石だねー」
「そうですね、有君は私達以外からなら逃げられるでしょう」
どうしよう、冷や汗が、止まらないぜ!
背後に、二人の悪魔の気配を感じた。体感としては心臓が握りつぶされるようなプレッシャーと共に。ああ、悪魔じゃなくて魔王だったか……。
「……どうしたんだ葵、夏奈?武器はいらないだろ?」
「なんで?今からお話するんだからいるでしょ?」
「そうですよ有君、理事長とのご関係を喋って頂かないことには捕まえられないじゃないですか~」
こいつらの目は獲物を狩る目だ、これは命に関わる。どうする?このまま何もしないで死ぬのか!いや、俺は最後の最後まで諦めない、どこかに抜け道はあるはずだ。
「そっか~お話か~」
ちらりと背後にある開いた窓を見やった。ここは四階、ちょっと厳しいがこいつらに捕まるよりは安全だ!
三階までなら、衝撃をきちんと逃がす着地が可能なんだから、もう一階分ぐらいできてもおかしくはない!やってやるさ!
「後でな!」
「「あっコラ!」」
流石に、スカートをはいたあいつらは追ってこれまい!不敵な笑みを浮かべて悔しそうな面を拝んでやろうとした俺の目には不思議なものが映った。
あれ、なんで悔しそうな顔してないんだ?むしろ、不敵な笑みを浮かべている?
「「「あっ、本当に飛び降りたし!」」」
「なにー!」
まさか、女子集団がいるなんて……、ってもしや、これは嵌められたのか!
俺は、着地点を見極めるために下を見て顔をひきつらせた。
「茜、裏切ったな!」
「あはは~有先輩が悪いですよ~理事長とイチャイチャするから~。オハナシシマショ?」
着地の衝撃をうまく逃すことができずに、倒れこんだ俺の周囲を女生徒の集団に囲まれる。
ここで俺の記憶は途切れた、恐らくはオハナシの所為だと思われる……
「……はっ!」
「起きたか有?」
身動きができないと思ったら、何故か手錠で椅子に固定されていた。しかも隣の輝虎も含めた男全員……。」
「いや~まさか、茜ちゃんと楓ちゃんが女子に手錠を装備させてるとはね~」
あいつら、学習してやがる……、こうなったら男子の装備強化だな、副委員長に後で連絡しておこう。
装備は、ピッキングツールがいいのか?しかし、悪用も可能だからな。これからの男子生徒の装備を真剣に考えていると。
「つか、気づいたら卒業式も終わりみたいだぞ?今から理事長が、来年のクラス分け発表するみたいだ」
輝虎が檀上を顎で指してそう言った。
えっもう、式終っちゃったんですか?俺、卒業証書貰ってないし、校歌も歌ってないんだが?こんなことってあんのか、男子生徒全員椅子に拘束されてんだけど、式成り立ったの?そもそも、なんで自分の卒業式に意識を飛ばさなきゃならないのだか……。
「ハァ、けどお楽しみが残ってて良かったよ」
そう、ウチの学校では卒業式のなかで高等部に進む生徒のクラス分けが発表される。これがいいのか悪いのかは知らんが。後ろの方を見てみると、さすがにここだけは、個人情報なので撮影は許可されていないようでカメラマンとアナウンサーは椅子に座っている。あの人たちこの光景見てよく落ち着いていられるな。間違いなくウチの町の住人だな。
「……以上一組」
「ふむ、始めて一組以外になるな……」
「そうなんか?」
「……以上四組」
なるほど俺は五組か……、輝虎とは別のクラスだな。こいつとは、入学から一緒だったからちょいと寂しい気もしねえな、やっぱり。
「まぁ、隣のクラスだからちょくちょく遊びにいくわ」
「あいよー」
さーて、クラスメイトの名前でも覚えるか~
俺は、四月からの新しい顔ぶれを覚えるため、スクリーンに表示された名簿を眺めることにした。
「……以上五組。彼らが高等部に進む生徒です」
「あれ?俺の名前は?」
「有?お前の名前あったか?」
「聞き逃したか……?まぁ後で理事長に聞くわ~」
「そして、今年は三人の生徒が別の学校を受験します」
えーと、俺が知ってのは葵と夏奈だけだぞ?受験しなくても進学できるこの学校で別の学校に行こうなんて酔狂な奴がまだいたとは。過去最多なんじゃね?
「そして、その三人とも国立先進技術研究学校を受験します!」
「「「おー!」」」
マジか!そんな天才が三人もいるなんて凄い年だな。そのうち二人と知り合いなんて俺って幸運だな~
いや、むしろそいつらの世話を押し付けられてたってのは不幸なことだったんじゃねえか?
俺は呑気にそんなことを思っていた。
「その生徒さんたちをこの場を使って紹介させていただきます。呼ばれた方は返事をして壇上にお上がり下さい。まず、普通科受験の陽本夏奈さん」
そーだよな、あいつは普通科だよな~勉強もできるし、剣道の腕も一流だし。まさに、文武両道ってやつか?俺なんかとはえらい違いだぜ。
アイツの10ばかり並ぶ通知表と、自身の通知表に並ぶアヒル達を思い出し溜め息をついた。
「そして、専門科を受験する草凪葵さん……」
そうだろうな、あいつは言語の化け物だからな。今、何ヶ国語しゃべれるんだっけ?
そもそも、あいつはそれくらいしかできないな。けど、あれだけの才能なら仕事には事欠かないよな。
壇上には、葵と夏奈が互いに睨み合ってる姿があった。一緒の学校行くんだからちっとは仲良くしろよ。
「そしてもう一人、専門科を受験する月見有さん。以上の三人です」
へ~月見って奴が三人目か、俺以外に学年で月見なんていたんだな~
「……なぁ、有?もしかしてお前なんじゃね?」
「まさか~きっと俺以外の月見君だよ!」
「……この学校月見はお前ら兄妹だけだぞ?」
「…………転入生とか?」
「いたら知ってるだろ?」
「………………理事長の悪ふざけとか?」
「本気でいってるか?」
「オイ!菊原香苗!最後の一人の名前をもう一回だ!」
クソ、手錠が邪魔だ!立ち上がって、叫ぶことができない。
俺は、椅子をガタガタ鳴らしながらそう叫ぶ。
「あのね、呼び捨てにしないで頂戴な……。最後の一人はあなたよ、月見有君」
「な、なん、だと?」
「なんでも、お母さんが書類を出したみたいよ?」
あの、アマ……そこまでやるとは……。
「夏奈!!」
大声で彼女を呼ぶと、すぐに目の前に現れた。実はこいつが忍びか何かなんじゃないだろうか?
「なんですか!有君!」
ニッコニコの笑顔だなーオイ!
「手錠を壊せ!」
「了解です!」
そういって、夏奈が木刀を振るうと手錠が壊れた。これで動ける。まずは電話だな……。あいつのことだ、マナーモードになんてしてないだろう。
絶対に見つけてやる!俺は、連絡先を開き『家』というグループの中の一つを力強くタップすると電話を掛けた。
[チャンチャンチャカチャカチャンチャンチャン~]
「見つけた!」
三分クッキングの音楽を着信にしている奴はあいつしかいない!
保護者席で電話を鞄から出した女性を見つけ、声を張り上げた。
「やば!」
「逃がすかー!」
俺は、ターゲットまで一直線に走り、懐の裁ちバサミを投げ、奴を壁に貼り付けた。
こんなことばっかりやっているせいで無駄に投擲の技術が上がるな。
自身に身についた余計な技能のことを思いながら奴の目の前に立った。
「ちょっとー!バカ息子、なんでお母さんに向かって裁ちバサミなんて投げるのよ!穴空いちゃったじゃない!」
こっちを、睨んでくるのは、子供を二人も生んだとはとても信じられないほど若々しい、愛嬌のある童顔で肩のあたりで切りそろえられた、少し灰色がかった黒髪を持つ俺の母親の月見遥香だ。
「てめぇ、俺を家から追い出すつもりだな?俺の平和な日々を奪うつもりか!」
「だって~お父さんが毎日毎日、不貞腐れるのよ!みっともないでしょ?」
「それは、親父が勝負で負けるからだろ?修行させろよ!」
「……、一応あの人、世間では凄腕料理人として有名なんだけど?」
「はん!知ったことか!俺に負けてる事は事実だろうが!」
まったく、息子に負けたからって悔しがるなっての。というか、調子にのって俺に仕事を割り振りすぎたアイツの自業自得だろうが!いくら楓が可愛いからって、俺にも限界はあるんだぞ。
「……ねえ知ってる?先研校には調理部があるらしいわよ?」
「あん?だから?」
「まったく、鈍いわね!だから料理の才能がある人が集まるって事でしょ?」
なるほど、俺に修行して来いと……。とんだドM野郎だな。よほど店を明け渡して無職になりたいと見える。
「いいのか?そんなとこに俺が行ったら、帰って来た時が親父の最後になるぜ?」
「何言ってるのよ?いつまで甘えるつもり?独立しなさい!」
「……はい?」
この母親は何を言っているんだ?実の息子に向かって帰ってくるなだと?
むしろ、こいつは実の母親じゃないんじゃなかろうか?あまりにも若すぎると思うのだが……。
「私達には、楓がいるわ!後はあの子に継がせるから貴方は自分の店を持ちなさい!あっでもこの街はやめてね?」
「なにを仰っているかわからないのだが母上よ……」
「先研校に進学し、卒業したら自分の店を持ちなさい!」
こんな放任主義の親はなかなかいないと思う。やっと、高校生になる息子を家から追い出すなんて。扶養の義務怠ってんじゃね?きっとそれ憲法違反と思うんだけどさ。
「大丈夫よ、貴方がこっちに帰ってくることあったら理事長先生が泊めてくれるって言ってたから」
「俺は自分ん家に帰って来ることも許されないのか!?」
まさか、本格的に追い出しに掛かってくるとは、コイツら本気だ。本気で俺を潰しにかかってる、訴えたら勝てるんじゃねえかこれ。
つか、理事長っていいのか?女だぞ?それに、先ほどの事が頭の中を渦巻いて要らん妄想がはびこる!
「少なくとも、楓がウチを継げるだけの力を付けない限り無理ね!」
俺のこれからは、楓に掛かっているらしい……。
大丈夫だろうか?あいつは、家のことを任された俺と違い全くやってこなかったんだぞ、大丈夫か。いや楓ならきっとやってくれると思うけどね!……ホントだよ?
「ちょ、ちょっとお母さん!私が継ぐの?てっきり兄さんだと思って料理なんか全然してないんだけど!」
いつの間にか隣に来ていた楓がそう叫んだ。まあ、どっかの幼馴染のように料理と偽って、殺人兵器を作らないから希望はあるがな。黒く焦げるだけなら全然希望はある!……はず。
「もしかして嫌?なら別の手を考えるけど?」
「継がせてくれるなら嬉しいけど……。それなら兄さんが継げばいいんじゃないの?」
確かに、料理屋を継ぐってのは夢があるよな。俺のは今日砕かれたけど。
「この子はダメよ」
「なんで?」
「教えることが何にもないんだもん!むしろ教えて貰ってるくらいなの!」
「「…………」」
「わかる?夕飯を作れば、『母さんこの煮付け後五分煮るべきじゃないか?』って言われる気持ちが!他にも『今日のお弁当いつものご飯より美味しかったよ!』って満面の笑みを浮かべて言われても、それを作ったのは息子って現実!どうしろというの!」
「うん、すまなかった!」
「ごめんなさい!」
そうだな、悪いことをしたらしいから謝るべきか……、
「「本当の事言って!」」
嘘はよくないよな。泣き出した母さんを楓に任せて俺は席に戻った。みんなからの視線が痛いぜ!
「さぁ、閉会の言葉をお願い、茜~」
「「「ちょっと待ったー!」」」
何故終わらせてくれない……。
折角、混乱に乗じてうやむやのままに終わらせようとしたのに。
「なんだよ?もう疲れたから終わりにしようぜ?」
「有先輩!本当に先研校に行くんですか?」
「あぁ、なんか行くしかないみたいだな、試験はどうか知らんけど……」
「有は、書類審査だけで受かったみたいよ?」
「いつ間に!?」
「確か、四日前だったかな?合格通知が届いたはずだけど?」
「ウソだろ?見てねぇぞそんなん」
「だって貴方ろくに家に帰ってないじゃない!」
確かに最近は面倒に付き合わされて、ろくに家に帰ることもできなかったが……。
「そのかわり理事長の家に入り浸ってたろ?なんでそん時に教えてくれなかったんだよ!」
「……だって聞かれなかったし~」
「オイ?もしかして忘れてたんじゃねえだろうな!」
理事長の家に泊まるときは、毎回彼女の趣味である将棋の相手をさせられる。なんでも『あの』爺さんに勝ちたいらしい。
でも、俺の飛車角落ちにやっと勝てるような実力では先は遠いだろう。
といった具合に、顔を合わせている時間が多くあるのだからそういった話が出てもおかしくはないと思うのだが。
「……てへ!」
「オイ!」
「「「ちょっと待て!」」」
なんだよ、今は理事長と話してるんだがな!
「あん?ってどうしたみんな?とりあえず手に持ってるモノを降ろそうか」
なあ知ってるか?パイプ椅子ってのは座るためにあるんだぜ?
「ねぇ有?なんで理事長の家に入り浸ってたの?」
「有君、理事長も女性の方なんですが、一つ屋根の下というのはよろしくないのではないですか?」
「有先輩?理事長の依頼ってお泊りが必要なんですか?」
「有、とりあえず裏来いよ!みんなで遊ぼうぜ?」
ちょっとヤバイかな~みんな目がマジだ。特に、輝虎なんて変なオーラを纏っているように見える。って理事長逃げる気か!
「「理事長どこ行くんですか?」」
葵と夏奈に捕まったようだ……。あいつら二人から逃げるのはまず無理だろう、こうなったら仕方ない。俺と理事長は頷き合って……、
「「やましい事はしてません!」」
同時にそう叫んだ。帰してくれよもう……。
今日って卒業式だろ?
俺は、そう思い天を仰ぐのだった。
「……はぁ、やっと帰れるよ」
「お疲れ様です有君」
「まっさか、有も先研校に来るなんてね~」
「兄さん……これから大変だと思いますけど頑張って下さい!」
「有先輩!ロッカーの荷物は忘れずに持って帰って下さいね!」
あれから、なんやかんやあり帰宅する事ができたのは午後七時のことである。
まさか、死の追い駆けっこ第二部があるなんて思いもしなかった。
「はぁ、ってことはあの人たちがいるのか……」
ヤダなートラウマの元凶の先輩が揃った学校に行くなんて……
俺は、まるで死神のような二人の茶髪の先輩の顔を思い出し身震いをした。
「大丈夫です!有君は私が守ります!」
「そうそう、あたしだっていんだからどんどん頼りなさい!依頼として引き受けるわ!」
夏奈には頼りたくねぇよな~こいつにはかなり世話になってるから、葵は……うん、頼るわけねぇーな!
「兄さんがウチに帰ってこれるように私料理頑張るからね!」
「有先輩、必要なものあったら言って下さい!用意しますから!」
まったく、年下の連中にまで気を使われるなんてな……。
新しい学校ね~、どんな奴らと出会えるのかは楽しみではあるな。人脈こそ自身を救うものだからな!
「サンキューな!俺がんばるよ!」
早く帰ろう!これからは忙しくなる!
それに……
「兄さん、家帰ったら少しお話ししようか?」
「……奇遇だな、俺も話したいと思ってた」
今日は、『あの事』について楓と話し合う必要があるからな……。
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