臆病な医師 ~処置~
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息抜きは次の回
翌朝、診療所の若者は顔色も戻り回復していた。
でも、事件は何も終わっちゃいない。あの中毒は事故じゃない。誰かがあの若者を、有機リン系の農薬で毒殺しようとしたんだ。明確な殺意を持って。
問題は"なぜ"だ。あの若者――村田っていうらしい――は街で働いてて、たまたま帰省してただけ。農作業もしてなけりゃ、村で恨みを買うような人間にも見えない。なのに、なんで狙われた? そこが分からなきゃ犯人にも辿り着けない。
それに、もう一つ。昨日の夜、七尾が言いかけた「診えない傷」だ。昔いた場所で大勢が同じ症状で運ばれてきて、自分は竦んで何もできなかった――っていう、あいつの過去。それと今回の毒殺未遂。この二つが無関係だとは、どうしても思えなかった。偶然にしちゃ症状が似すぎてる。俺の嫌な予感がするシックスセンスが、朝からずっとちりちりと鳴ってやがる。
「……月見くん」
朝の澄んだ空気の中、七尾が俺の隣に立ってぽつりと言った。昨日までなら背中合わせでしか話せなかったのに、今はちゃんと横に。
「姫那、今回は……逃げたくない。誰が村田さんを、こんな目に遭わせたのか……姫那の力で突き止めたい。だから――手伝って、くれる?」
俯きがちだけど、その声には昨日にはなかった芯があった。俺は思わず口の端を上げた。
「おう。上等だ。乗りかかった船だしな。……ただし無茶はさせねぇーぞ。」
こうして、俺と七尾のちいさな捜査が始まった。
「いや、盛り上がってるところ悪いけど、そっちは警察に任せて今日のお仕事お願いできるかな?」
とりあえずは、待合室の患者の対応を終わらせて。
ひと段落したところで、俺は仲間に連絡を入れた。こういう時、Dクラスの連中は無駄に頼りになる。
《あー、ツッキー? 村田って若者のこと調べてって? はいはい……うわ、これ、きな臭いなあ》
電話の向こうで、海斗がキーボードを叩く音がする。相変わらず、こいつの情報収集は化け物じみてる。
《その村田くんね、街で薬剤師をやってるんだ。で、毒を盛られる二週間前に、警察へ一件、問い合わせした形跡がある。相手は――「八年前の、青葉総合病院の連続毒殺事件」の逃亡犯についてみたいだね》
「八年前の……連続毒殺? なんだそりゃ」
《医療業界じゃ有名な、未解決事件さ。入院患者が何人も同じ症状で亡くなってね。犯人は病院の医者。でも証拠不十分で捕まらないまま、雲隠れ。……で、ここからが本題。その村田くん、八年前、事件が起きた当の青葉総合病院で、駆け出しの研修生だったんだよね》
「……ってことは、だ」
《そう。事件を間近で見てた、生き証人。犯人の顔も、直接知ってる。……その男を、里帰りした自分の村で見かけた、ってわけ》
「……はぁ? 八年も逃げてた殺人犯が、たまたま昔の職場の後輩の実家の村に、隠れてたって? 世の中、狭すぎだろ」
いや、俺が言えた義理じゃねぇーか。トラブルの引きの強さなら、俺だって人のことは言えねぇーからな。まぁ、それだけ村田って若者は運が悪かった――いや、運が悪いのは、よりによって顔見知りに正体を見抜かれた、犯人の方か。
その時、隣で聞いていた七尾の顔がさっと青ざめた。手にしたスマホを取り落としそうになるのを、俺は横から支えた。
「七尾。……お前、その事件に心当たりがあるんだな」
「……あおば、そうごう、びょういん」
絞り出すような声だった。
「姫那の……お父さんが勤めてた病院。……その事件が、起きた場所」
診療所の裏、誰もいない場所で、七尾は震える声で、少しずつ話してくれた。昨日、言いかけて言えなかった「診えない傷」の、全部を。
「あの事件を起こしたのは……久瀬っていう、お医者さん。優しくて腕もいいって、評判の人だった。でも、あの人は……患者さんを、実験みたいに、毒で……。ある日、たくさんの人が同じ症状でいっぺんに倒れて……姫那のお父さんは、それに気づいて止めようとして……」
七尾の声が途切れる。
「でも、逆に、全部の責任を久瀬に押し付けられて……。お父さんは病院を追われて、しばらくして……無理がたたって倒れて、そのまま……。最後まで"自分がもっと早く止めていれば"って、謝ってた。悪いのは、久瀬なのに」
握りしめた拳が、白くなるほど震えている。
……あんまりだ。悪党がのうのうと逃げ延びて、真面目な人間が、着せられた罪を背負ったまま潰されて死ぬ。世の中ってのは、どうしてこう理不尽にできてやがるんだ。七尾のお父さんは、患者を救えなかったことと、真実を証明できなかったこと、その両方を悔やみながら、消えるように逝ったんだろう。
「……あの日、姫那は、まだ小さくて。病院の廊下で大勢の大人に囲まれて、怒鳴られて、頭が真っ白になって……何もできなかった。目の前で人が運ばれていくのを、ただ見てることしか……。姫那が人前で手が動かなくなったのも……その時から」
ああ、そうか。父親を奪われて、なのに自分は竦んで何もできなかった。その二重の後悔が、こいつをずっと縛り続けてきたんだ。
「その久瀬が、この村に隠れてやがるってわけか。……で、正体に気づいた村田を、昔と同じ毒で口封じしようとした」
筋は通る。逃亡犯にとっちゃ、正体を知られるのが一番怖い。だから慣れた手口で、さっさと消そうとした。……反吐が出るやり口だ。
「七尾。念のため確かめるぞ。村田に使われた毒――お前、有機リン系だって言ったよな。あれ、八年前の事件のと同じ特徴か?」
「……うん。あの独特の、症状の出方。瞳孔、発汗、呼吸……姫那、忘れるわけない。同じ……ううん、たぶん、同じ人の手口」
俺の中でも確信に変わった。過去と現在、二つの毒は一本の線で繋がってる。……こういうのは、味や匂い、症状の出方で大体分かる。料理で舌を鍛え、洗剤を自作して薬品を知り、山で獣を解体して身体の仕組みを覚えた。毒も薬も飯も、突き詰めりゃ全部「化学」だ。つまり――家事の延長線上にある。そして化学ってのは、嘘をつかない。
村田の症状、毒の抜け方、回復の経過。それを、七尾の記憶にある八年前の症例と一つずつ照らし合わせていく。合致する。細かいところまで綺麗に。素人がたまたま盛った毒じゃない。同じ知識を持った同じ人間が、慣れた手つきで使った毒だ。間違いない。
「よし。……そのクソ野郎、引きずり出すぞ。今度こそお前の手で決着つけろ」
海斗が割り出した久瀬の潜伏先は、村外れにぽつんと建つ一軒家だった。
偽名で、村の人間には「街から越してきた、物静かな元・薬剤師」で通っているらしい。時々、年寄りの薬の相談に乗ってやって、感謝されてさえいる。……そうやって善人の顔で、村に溶け込んでやがる。悪意ってのは、いつだって優しい顔してやってくる。八年間、大勢の命を奪った罪を綺麗な笑顔の下に隠して、こいつは平気で生きてきたわけだ。
その笑顔を引っぺがしてやる。七尾の父親の、無念のためにも。
俺は若月先生に連絡して、正式な調査だという体裁を整えてもらい、七尾と二人、正面から乗り込んだ。
出てきたのは、白髪頭に無精髭、黒縁の眼鏡をかけた、穏やかそうな中年男だった。人当たりのいい笑顔。……なるほどな。八年前の指名手配写真とは、だいぶ雰囲気が違う。髭と眼鏡と白髪。この程度でも、初対面の人間や村の年寄りを騙すには、十分だ。だが、目の奥だけは、笑ってない。こういう手合いは、腐るほど見てきた。
「これはこれは。若いお客さんが、どういったご用件ですかな?」
「単刀直入に言うわ。あんた、久瀬だろ。八年前、青葉総合病院で患者を毒殺して、逃げた」
その名を出した瞬間、男の笑みがぴくりと固まった。
「……はて。人違いでは? 私は、しがない薬剤師ですが」
「その変装、村のジジババは騙せても、昔あんたの下で働いてた人間の目までは、誤魔化せなかったな。村田だよ。八年前、あんたと同じ病院にいた研修生だ。あいつは、あんたの顔を忘れちゃいなかった。里帰りして、あんたを見かけて……怪しんだ。だから、あんたは口を封じにかかった。昔と同じ、有機リン系でな」
俺は、一歩踏み込んで、男の襟元を睨みつけた。
「証拠ならある。村田に盛られた毒の成分も、症状の出方も、八年前の事件と、ぴったり一致した。同じ知識を持った、同じ人間の手口だ。……手口ってのは、指紋よりも雄弁なんだよ、おっさん」
久瀬の顔から、笑みが完全に消えた。代わりに浮かんだのは――追い詰められた獣の、醜い焦りだった。
「……気づかれたか。ならば、仕方がない」
久瀬は、じりっと後ずさりながら口の端を歪めた。
「言っておくが、あの若者はまだ死んでいないだけだ。私はあの晩、"念のため"の第二の毒を、あの男に仕込んでおいた。遅効性でね。……今頃、そろそろ効き始める頃だろう。解毒剤の在り処を知りたければ、私を見逃すことだ」
――こいつ。
保険をかけてやがった。若者の命を、自分の逃げ道の人質にして。診療所にいる村田が、今まさに二度目の毒に蝕まれ始めてる。ここで久瀬を捕まえれば村田が死ぬ。久瀬を逃がせば、村田は助かるかもしれない。そういう最低の取引だ。
俺の隣で、七尾の体がびくりと固まった。
――大勢の前で、大事な命が消えかけてる。八年前と同じ状況。こいつの一番古い傷を、そっくりそのままなぞる場面だ。
「……ふん。そこの小娘。その顔、まさか七尾の娘か。あの時と同じだな。何もできずに、ただ震えて見ているだけの……」
久瀬の、嘲るような言葉。それは七尾の一番深い傷を、的確にえぐるものだった。七尾の肩が跳ねる。膝が笑ってる。……ここで折れるか。俺が一歩踏み出そうとした、その時。
「――違う」
七尾がはっきりと言った。俺の助けなんて、いらない声で。
「今度は、竦まない。姫那は――医者だから」
そして七尾は、久瀬に背を向けて駆け出した。診療所へ。村田を救うために。
「月見くん! 久瀬は任せた! 姫那は、村田さんを助けに行く!」
「おう! 任せろ! ……そっちこそ任せたぞ、名医!」
振り向きざまの七尾の顔は、もう震えていなかった。逃げるためじゃない。救うために走る。臆病な少女の背中に、確かに芽生えた一人の医者の、覚悟だった。
――久瀬の取引に乗る必要なんてない。あいつは「解毒剤の在り処を教える」なんて言ったが、そもそも七尾がいる。俺たちの班には、久瀬なんかよりよっぽど腕のいい医者がいるんだ。人質の意味なんて、最初からありゃしない。それをこいつは分かってなかった。「何もできない小娘」なんて、見くびってたからな。
その慢心が、あんたの敗因だよ、久瀬。
「さて、と。……逃がすと思うか?」
七尾が飛び出したのを見て、久瀬も慌てて裏口へ走ろうとした。が。
「――そこまでだよ、おっさん」
窓の外から、間延びした、けれどよく通る声がした。次の瞬間、逃げかけた久瀬の足元に、どこからか飛んできた小石が着弾して、久瀬が無様に転ぶ。……窓の外、遥か遠くの木の上。半目の狙撃手が寝転がったまま、片手でパチンコを構えていた。花咲だ。人を撃たないと決めた、あいつなりの援護。
だが、追い詰められた獣ってのは、最後にひと足掻きするもんだ。転んだ久瀬が、懐から注射器を引き抜いて、がむしゃらに突き出してきた。中身は聞くまでもねぇー。こいつの十八番の、毒だろう。
「っと。危ねぇーな、おい」
俺は、腰の道具袋から抜いた裁ちバサミを、迷わず投げた。刃が注射器の胴を的確に打ち抜き、久瀬の手から弾き飛ばす。中身が、あらぬ方向の床にぶちまけられた。……あぶねぇ。あれを浴びてたら、俺でもタダじゃ済まなかったな。
「投げるもんなら、包丁でもハサミでも、なんだって当ててみせる。……家事で鍛えた腕を、なめんなよ」
「わあ、間に合ったー! ツキ君!」
玄関を蹴破って飛び込んできたのは、八実と、その動物部隊。二メートルの白コブラが逃げ場を塞ぐようにとぐろを巻き、久瀬が「ひっ」と悲鳴を上げて尻もちをつく。ついでにシルクハットの鳩が久瀬の頭上を旋回し、白兎が足元をちょろちょろ走り回る。動物園に囲まれた連続毒殺犯、なんて間抜けな絵面だ。だが、これで逃げ場は完全に塞がった。八年間、誰にも捕まらなかった男が、高校生とその飼い動物たちに、あっさり追い詰められてる。……ざまぁねぇーな。
「あらあら。往生際の悪い御仁ですこと。……月見様、警察はもう手配済みですわ。海斗さんが証拠付きで通報してくださいましたので」
スマホの向こうから、瑠璃の涼やかな声。海斗の情報、花咲の援護、八実の足止め、瑠璃の段取り。……誰も、俺が呼んだわけじゃない。七尾のピンチだと知って、勝手にそれぞれのやり方で駆けつけてきやがった。花咲は「相棒の頼みだ」とか言って山を登り、八実は「瑠璃ちゃんの次は姫那ちゃんの番だね!」と動物を引き連れ、海斗は寮でカップ麺を啜りながら警察を動かし、瑠璃は電話越しに全体を差配する。
なんだよ、これ。普段はあんなにバラバラなくせして、こういう時だけ綺麗に一つになりやがって。……悪くない。悪くねぇーよ、まったく。ちょっとだけ目頭が熱くなるくらいには。……いや、泣いてねぇーからな。花粉だ、花粉。
俺は、動けなくなった久瀬の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「あんたの人質は、もう無駄だ。うちの名医が絶対に助ける。……あんたが壊したもんは、こっちで全部、元に戻してやるよ。だから、あんたは大人しく罪を償え。八年前の分も、まとめてな」
久瀬は、何か言い返そうと口を開いて――でも、もう言葉なんて出てこなかった。ただ呆然と、床にへたり込んでいる。八年間、優しい仮面の下に隠し通してきたものが、全部剥がれ落ちた顔だった。
ほどなくして、遠くからサイレンの音が近づいてきた。海斗が手配した、警察だ。
診療所では、七尾が独壇場を演じていた。
俺が久瀬を縛り上げて駆けつけた時には、もう、村田の第二の中毒の処置は山を越えていた。的確な診断、迷いのない手つき。付き添っていた老医師が目を丸くして、七尾の指示に従っている。大勢に見られても竦まない。そこにいたのは、頼もしい一人前の医者だった。
後で聞いた話じゃ、七尾は診療所に駆け込むなり、村田の顔色と呼吸を一目見ただけで、仕込まれた第二の毒の種類を言い当てたらしい。そこからは老医師に指示を飛ばし、点滴を繋ぎ、解毒剤を打ち、時間との勝負をたった一人で捌き切ったそうだ。あの、人前で竦んでいた少女が、だ。……八年越しのリベンジってやつだな。今度は、間に合わせた。今度こそ、誰も見殺しになんてしなかった。
「……呼吸、安定。もう大丈夫。二度目の毒も、間に合った」
そう言って、ふう、と長い息を吐いた七尾は、俺を見上げて泣き笑いみたいな顔をした。
「月見くん。……姫那、今度は、できたよ。誰も、見殺しにしなかった」
「ああ。上出来だ、七尾。……お前は、すげぇ医者だよ。お前の親父さんも、きっとそう言うさ」
その言葉に、七尾はぐすっと洟をすすって、それでもしっかりと頷いた。八年前、竦むことしかできなかった少女は、もういない。ここにいるのは、自分の意思で目の前の命を救い切った、一人の医者だ。
処置が一段落すると、村田の父親が、床に頭を擦り付けるようにして七尾に礼を言った。二度も息子の命を救われたのだから、無理もない。七尾はそのたびに顔を真っ赤にして「あ、あの、頭を上げてください」とあたふたしていたが……その手はもう、一度も震えていなかった。大の大人に人前で頭を下げられても、竦まない。昨日までのこいつからは、考えられない光景だった。
俺は、そんな七尾を少し離れたところから眺めていた。忙しなく揺れる、茶色いおさげを。
……ああ、変なもんだな。
あんなに怖かった茶髪が、今はなんだか頼もしく見える。俺の中で、ずっと「茶髪=恐怖」で塗り固められていた何かが、少しずつ「茶髪=仲間」に上書きされていく。……こいつのおかげで、だ。俺は七尾に、でかい借りを作っちまったな。
実習を終えて学校に戻ると、Dクラスの連中が、なんてことない顔で俺たちを迎えた。
瑠璃が紅茶を淹れ、海斗がヘッドホンを揺らし、八実が鳩を飛ばし、花咲が寝ている。そこに、七尾がほんの少しだけ胸を張って加わる。相変わらず、こいつは俺と目が合うと照れて俯くけど、もう背中合わせじゃない。ちゃんと同じ方を向いて、笑える。
……ようやく、揃った気がした。諜報員、狙撃手、家政婦、女医、奇術師、そして家事しか取り柄のない俺。才能を持て余した、凸凹だらけの問題児の集まり。世間から見りゃ、落ちこぼれを集めたDクラス。でも――こうやって誰かがピンチになりゃ、なんだかんだ全員でなんとかしちまう。悪くない。悪くねぇー班だと、俺は思う。
――ただ、心のどこかに、小さな棘が刺さったままだった。
七尾が、自分の過去と向き合ったように。花咲が、自分の腕と向き合ったように。……じゃあ、俺は? 俺は、いつまで逃げてるつもりなんだ?
仲間が、一人、また一人と自分の傷を乗り越えていく。その隣で、俺だけがずっと同じ場所で、蓋をしたまま立ち尽くしてる。そんな気が、してならなかった。
七尾のおかげで、茶髪への恐怖は薄れ始めた。でも、薄れたからこそ、その奥に隠れていたものが、輪郭を持って浮かび上がってくる。
茶髪の、先輩。俺を風紀委員に引きずり込み、スタンガン片手に、俺をさんざん厄介事へ連れ回した、あの御曹司。あいつと過ごした日々のその先に、俺が今も固く封印してる"二度目"の記憶がある。たった一人を守るために、三十人以上を「解体」した、あの日の記憶が。
……最近、そのあいつから何度も、呼び出しがかかってる。俺はずっと居留守を使って、無視してきた。でも――そろそろ逃げ切れなくなってきた気が、するんだよな。
「……マジ勘弁、なんだけどな」
嫌な予感ってのは、どうしてこう、よく当たるんだろうな。
その「過去」が、すぐそこまで来ていることを――俺は、まだ知らずにいた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




