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家事で世界を救う!?  作者: 安鼠
第一章 チーム結成編
17/23

主夫の帰路

 ドバイ国際空港というのは、無駄に豪華だ。


 天井は高いし、床はピカピカだし、免税店には俺の全財産を積み上げても釣り合わない時計が平然と並んでいる。金塊を売る自動販売機まであるらしい。誰が買うんだよそれ。というか、こんな場所に、破れたメイド服を器用に直したミニ丈の黒髪美少女と、二日は寝てない目つきの悪い高校生が並んでいるのは、控えめに言って場違いだった。


「月見様、そのように挙動不審にきょろきょろされますと、いよいよ本物の不審者に見えますわよ。ただでさえ人相が悪いのですから」


「うるせぇ、初めての海外の空港なんだから物珍しいのは仕方ねぇーだろ。というか俺の顔は生まれつきだ」


「あら、生まれつきその目つきとは、ご両親もさぞお困りでしょうね」


「俺の親のことはいい、あいつらはもっと問題児だ」


 俺は、搭乗ゲートの近くのベンチに腰を下ろして大きく息を吐いた。やっと帰れる。人攫いと喧嘩して、CIAと手を組んで、砂漠のど真ん中で危うく人を「解体」しかけて。何が家事の実習だよ。俺の実習、明らかに募集要項と違うんだけど。訴えていいですかね、これ。




「ツキ君、瑠璃ちゃーん!」


 のんきな声と共に、プラチナブロンドを揺らして走ってくる小さな影があった。八実だ。その後ろから、両親の八実夫妻もついてくる。


「なんだ八実、見送りに来たのか?」


「そうだよ〜。ウチたちの便はもうちょっと後だから、それまでお見送り!」


 そう言って、八実は肩から提げた大きなバッグをぽんと叩いた。そのバッグの中から、蝶ネクタイを付けた白いネズミがひょこっと顔を出して、俺に向かって敬礼をした。チュー太郎の奴、無事に回収されたのか。


「そいつら、ちゃんと全部集まったのか?」


「うん!GPSついてるからね!コブラんがホテルのプールで泳いでたのはちょっと大変だったけど!」


「セレブがパニックになってなかった?それ」


 俺が呆れていると、母親のリーシャさんがずいっと前に出てきて、俺の両手をがっしり握った。うわ、目がキラキラしてる。この人、いつもテンションが振り切れてるな。


「月見君!本当に、本当にありがとう!瑠璃ちゃんを助けてくれて!あんなに危険な場所へ、たった一人で乗り込むなんて、まるで映画のヒーローよ!」


「いや、あの、それは瑠璃がうちの班のメンバーで、放っておけなかっただけで……」


「そういうところがヒーローなの!ねえあなた、この子、うちの婿にどうかしら!?」


「リーシャ、落ち着きなさい。月見君が困っている」


 父親の和久さんが、苦笑いしながら奥さんの肩を掴んで引き剥がしてくれた。助かった。この一家、テンションの落差が激しすぎて、一緒にいると情緒がおかしくなりそうだ。まぁ、悪い人たちじゃないんだけどな。娘のために本気で心配して、助けたやつに本気で礼を言う。……うちの親も、少しは見習ってくれよ。


「月見君。娘が世話になった。この礼はいずれ必ず」


「いや、礼なんていいですって。それより、八実がいてくれて助かりました。あいつの動物たちがいなかったら、瑠璃を見つけるのも一苦労でしたから」


「えへへ、ウチ役に立った?」


「ああ、お前は役に立った。……主に動物が」


「そこは素直に褒めてよ!」


 ぷくっと頬を膨らませる八実に、瑠璃がすっと歩み寄って、綺麗な角度で頭を下げた。


「アイラさん。此度は、本当にお世話になりました。あなたがいなければ、わたくしは今頃どうなっていたか」


「やだなー瑠璃ちゃん、そんな畏まらないでよ!ウチたち、友達でしょ?」


「……ええ。そうですわね」


 瑠璃が、珍しく柔らかい顔で微笑んだ。おいおい、こいつこんな顔もできたのか。初めて会った時なんて、俺のことを「その眼はビー玉かしら」とか言ってきた毒舌メイドだったのに。人は見かけによらないって、本当だな。




「では、そろそろ搭乗の時間ですわ。行きましょう、月見様」


「へいへい。じゃあな八実、また学校でな。リーシャさん、和久さんも、道中お気をつけて」


「バイバーイ!チュー太郎たちもバイバイして!」


「「「チュー!(クルッポー!)」」」


 バッグから顔を出した動物たちに見送られて、俺と瑠璃は搭乗ゲートをくぐった。あの動物たち、税関はどうやって通ったんだろうな。……いや、考えないでおこう。八実一家のことだ、聞いたら俺の胃に悪い答えが返ってくるに決まってる。




 さて、問題はここからだ。


 俺は、座席に腰を沈めながら、ぎゅっと拳を握った。行きの飛行機は、離陸から十八時間、なんやかんやあって六時間くらい余計にかかった。何があったって?ハイジャックだよ。俺の人生でハイジャックなんて、母校じゃ八割方経験するから慣れたもんだけど、瑠璃には一生モノのトラウマになったらしいからな。


「月見様、また何か失礼なことを考えていらっしゃいますね」


「なんで分かるんだよ」


「顔に出ていますわ。『また墜ちたらどうしよう』とでも思っていらっしゃるのでしょう?」


「思ってねぇーし!」


 思ってた。というか、こういう時の俺のシックスセンスはよく当たるんだよな。頼むから今回だけは静かに帰らせてくれ。神様、俺、そんなに悪いことしてないですよね?いや、麻酔でゾウが眠る量を人間にぶち込んだりはしたけど、あれは正当防衛の範囲だからノーカンで。


 離陸してからしばらく、俺は座席で全身を耳にして過ごした。誰かが席を立てば「テロか?」と身構え、機内アナウンスが流れれば「ジャック犯の要求か?」と身構え、キャビンアテンダントがワゴンを押してくれば「あの下に武器を隠してるんじゃ……」と身構えた。


「お客様、お飲み物はいかがですか?」


「っ、み、水を、いや、やっぱりオレンジジュースで……!」


 全力で警戒した結果がジュースの注文とか、我ながら情けなさすぎる。隣で瑠璃が、汚物を見るような目でこっちを見てるし。


「月見様。あなた、さっきから挙動が完全に密入国者ですわよ。もう少し落ち着いたらいかがです?」


「うるせぇ、備えあれば憂いなしって言うだろ」


「憂う前にご自身の胃を心配なさいませ。そんなに気を張っていては、着く頃には胃に穴が空いておりますわ。ああ、それとも縫合が必要でしたら、班の女医にお願いしてみます?」


「七尾に俺の胃を縫わせたら、緊張で気絶するわ」




 ――結論から言うと、飛行機は何事もなく飛んだ。


「……なぁ瑠璃、なんも起きねぇんだけど」


「良いことではありませんか。何を不満そうにしているんです?」


「いや、不満じゃねぇーけどよ。なんかこう、拍子抜けというか。逆に怖いというか」


「平穏を怖がる人間がどこにいるんですか。あなたの脳内は一度、専門の医師に診てもらった方がよろしいかと。ああ、ちょうど良い医師が班に一人おりましたわね」


「七尾に俺の脳みそ見せたら泣かれるわ」


 窓の外を流れる雲を眺めながら、俺はようやく肩の力を抜いた。隣では、瑠璃が備え付けの毛布を膝にかけて、静かに目を閉じている。さすがに、疲れてるよな。攫われて、薬打たれて、あんな目に遭って。普段どれだけ減らず口を叩いてても、こいつだって十六の女の子なんだ。


 俺は、自分が羽織っていたジャケットを、そっとその肩にかけてやった。


「……月見様?」


「寒そうにしてたからな。寝てろよ、着いたら起こす」


「……別に、寒くはありませんでしたけれど」


 そう言いながらも、瑠璃はジャケットを払いのけようとはしなかった。代わりに、小さな声で、俺にだけ聞こえるくらいの声で、ぽつりと呟いた。


「……ありがとうございました。助けに来てくださって」


「あん?聞こえねぇーな」


「二度は言いません。おやすみなさいませ」


 ふん、と顔を背けて目を閉じた瑠璃の耳が、ほんの少し赤い気がしたが、まぁ、これも気のせいってことにしておこう。俺は、なんだか妙にむず痒くなった気分を誤魔化すように、窓の外の月を見た。行きに見たのと同じ月だ。でも、帰りに見る月は、なんだか少しだけ優しく見えた。




 ――と、柄にもないことを考えていると、ポケットのスマホが震えた。


 機内モードにしていたはずなんだけどな。恐る恐る画面を見ると、見慣れたアプリに、見慣れない通知が来ていた。銀行の入金通知だ。


「……は?」


 俺は、思わず二度見した。桁を数える。一、十、百、千、万、十万……。おいおい、なんだこの金額。俺の全財産がゼロを二つほど増やして帰ってきたんだけど。差出人の欄には、素っ気なく『諸経費』とだけ書いてある。


 諸経費って、なんだよ。心当たりが、ありすぎて逆に分からない。あのキザなCIA野郎か?それとも、変装してた偽の五反田財閥の方か?どっちにしろ、口止め料ってことだよな。「このことは黙ってろ」っていう。


 と、思っていたら、続けてもう一件、通知が来た。今度はメッセージだ。番号は非通知。嫌な予感しかしない。


『気に入ったかい?ほんの気持ちだよ。困った時は、いつでも僕に連絡してくれて構わない。――君のファンより』


 ……あのキザ野郎、いつの間に俺の連絡先を知りやがった。ファンより、じゃねぇーよ。ストーカーかお前は。俺は、迷わずその番号を着信拒否リストにぶち込んだ。関わったら最後、碌なことにならないのは目に見えてる。世界を股にかけるスパイなんて、面倒の塊に決まってるからな。二度と関わるもんか。


「……なぁ瑠璃、これ」


 声をかけようとして、隣を見ると、瑠璃は俺のジャケットにくるまってすやすや寝ていた。起こすのも悪いか。俺は、スマホをポケットに戻して、深く座席に沈み込んだ。


 金が入ったのは、まぁ、ありがたい。装備の消耗品だって馬鹿にならないし、道具は金がかかるからな。でも、なんだろうな。この金は、瑠璃が攫われて、俺が「解体」しかけた、その代償みたいなもんだ。素直に喜べる金じゃない。


 ――報酬が高級玉露のお茶っ葉だった頃が、懐かしいな。




 日本に着いたのは、それから半日後のことだった。


 奥多摩の山奥の学校に戻ってくると、都会の喧騒も砂漠の熱気も嘘みたいに、ただ静かな緑と鳥の声が出迎えてくれた。ああ、帰ってきた。ここが俺の、平穏……とは程遠い日常か。まぁ、それでも、砂漠よりはマシだ。


「有くーん!無事だった!?」


 寮の前まで戻ってくると、担任の若月先生が血相を変えて走ってきた。相変わらず小柄で、俺の妹の楓と同じくらいの背丈だ。とても俺たちの担任には見えない。


「若月先生、ただいま戻りました。ご心配おかけしました」


「もう!報告書がドバイから来た時、心臓が止まるかと思ったんだから!なんで『実習先で人身売買組織を壊滅させました』なんて一文がしれっと書いてあるの!?私、これ校長にどう説明すればいいの!?」


「あー……それは、まぁ、成り行きで」


「成り行きで組織は壊滅しません!」


 半泣きで叫ぶ若月先生に、俺は乾いた笑いを返すことしかできなかった。すいません、俺だって好きでやってるわけじゃないんです。向こうから面倒が飛び込んでくるんです。信じてください。


 ちなみに、実習の評価は満点だったらしい。人身売買組織を壊滅させたことが、どういうわけか「危機対応能力が極めて高い」と評価されたそうだ。おかしいだろ。俺は家事の才能でこの学校に入ったはずなんだけど、いつの間に危機対応の専門家になったんだ。俺の履歴書、字面だけ見たら完全に傭兵のそれだぞ。




 若月先生がようやく落ち着いた頃、俺と瑠璃は寮の前で解散となった。ここは男女で棟が分かれるからな。ドバイからの長い道のりも、ようやく終わりだ。


「月見様。……これ、お借りしていたものです」


 瑠璃が、飛行機で貸したジャケットを差し出してきた。きちんと畳んで、皺ひとつない。さすが元家政婦、こういうところは律儀だな。


「おう。……ちゃんと休めよ。疲れただろ」


「あなたに心配されるほど、やわではありませんわ。……ですが」


「ですが?」


「……いえ。なんでもありません。ただ――助けに来てくださったこと、感謝しております。」


 そう言って、瑠璃は女子棟の方へ歩いていった。その背中が、いつもよりほんの少しだけ小さく見えたのは……まぁ、気のせいってことにしておこう。


「つうか、二度言ってるじゃねえか」




 その夜、俺は久しぶりに、自分の部屋の台所に立った。


 ドバイでは執事服を着て他人の屋敷をぴかぴかに磨いていたが、やっぱり俺の居場所はここだな。狭いシステムキッチンに、使い慣れた包丁。冷蔵庫の中身は相変わらず調味料しかなかったから、実習前に仕込んで冷凍しておいた出汁と、寮の管理人のおばちゃんに分けてもらった青菜で、適当に煮浸しでも作る。


 包丁を握って、青菜を刻む。とんとん、と一定のリズムで音が響く。この時間は、嫌いじゃない。何も考えず、ただ手を動かして、誰かがこれを美味そうに食う顔を思い浮かべる。料理をしてる時の俺は、たぶん、一番「まとも」だ。


 ……そうだよ。これが俺だ。ただの、家事が得意なだけの高校生。そのはずなんだ。


 煮浸しを小鉢によそって、一人分の夕飯を平らげた頃、スマホが鳴った。三分クッキングの音楽……じゃなくて、普通の着信音だ。画面には『菊原香苗』の文字。


「もしもし、香苗さん?」


《有!無事に帰ってきたのね!よかった……本当に、心配したんだから。》


 電話口から聞こえてきたのは、少しだけ震えた声だった。ああ、そうか。毎晩電話してたのに、ドバイに行ってる間は、ろくに連絡も取れなかったもんな。


「おう、ただいま。……ってか、そんな今にも泣きそうな声出すなよ。こっちまで悪いことした気分になんだろうが」


《だ、誰が泣きそうよ!心配して損したわ!……で?美恵から聞いたわよ。また無茶したんでしょう。組織を壊滅させたって、あなた今度はいったい何をやらかしたのよ!》


「いや、あれは向こうが勝手に絡んできたんであって、俺は悪くねぇーの。毎度のことだろ?」


《毎度のことじゃないわよ!普通の高校生は組織なんて壊滅させないの!……もう。少しは心配するこっちの身にもなってよね》


 相変わらず、この人には俺の考えることなんざ全部お見通しか。俺は、椅子の背もたれに体を預けて天井を見上げた。


《ふん。……ねえ、有。前に言ったこと、ちゃんと覚えてる?》


「前に言ったこと?」


《参観日よ。今度、私が先研校に行くって言ったでしょう。あれ、本気だからね。もう美恵にも話は通してあるの》


「はぁ!?正気か香苗!わざわざ月見町からこんな山奥まで出てくる気かよ!」


《香苗じゃなくて、香苗さんでしょ!まったく、あなたはいつまでたってもその呼び方……!》


「へいへい、香苗さん。つうか、理事長が仕事サボって教え子の学校を覗きに来るとか、それこそ問題になんじゃねぇーの?」


《一日くらい平気よ。私がいなくたって学校は回るんだから。……それに、あなたがどんなところで、どんな連中とつるんで暮らしてるのか、この目で確かめないと落ち着かないのよ。悪い?》


「悪かないけどよ……はぁ、わかったよ。来るなら来い。飯くらい作ってやるから」


《……ふふ。言ったわね?約束だからね》


「あんまり期待すんなって。……それと、来るなら前の日はちゃんと寝ろよ。寝坊して、寝癖つけたまま来て生徒の前で恥かくのは、あんた自身なんだからな」


《なっ……ど、どうしてそれを!も、もう、余計なお世話よ!》


「はは、昔っからそうだろうが。……じゃあな、運転、気をつけて来いよ」


《……うん。おやすみなさい、有》




 電話を切って、俺はしばらくスマホの黒い画面を眺めていた。


 香苗の声を聞いたら、少しだけ、心が軽くなった。でも、その軽さの奥に、まだ何か重たいものが沈んでいる。ドバイで、あの女性が俺を見た目。攫った男よりも、助けたはずの俺を、化け物を見るような目で見た、あの視線だ。


 いつもの俺なら、こういう時はこう言って笑い飛ばすんだ。


 ――大丈夫だよ。俺は、ただの主夫っすから。


 料理も掃除も裁縫もお手のもの、家事の延長で大抵のことは片付ける、しがない主夫。それが月見有って人間だ。そう名乗って、へらへら笑って、深く考えないようにする。それが俺のやり方だった。


 でも、その言葉が、喉の奥でつっかえて出てこない。


 だって、あの砂漠と高層ビルの国で二本のナイフを握った俺は、どう考えても主夫じゃなかった。鍋を振る手でも、花に水をやる手でもなかった。あれは、もっと昔に封印したはずの、「解体屋」の手だ。


「……ダメだな、俺」


 ぽつりと呟いて、俺はベッドに倒れ込んだ。考えても仕方ない。今は疲れてる。とりあえず寝よう。寝て、起きて、飯を作って、また馬鹿みたいな日常に戻れば、きっとこんな気分も忘れる。……忘れられるといいな。


 それに、うかうかしてる場合でもない。ドバイで散々連絡を無視した結果、葵と夏奈からのメールが、それはもう地層みたいに溜まってやがる。


 試しに、一番上の一件を開いてみる。葵からだ。『有、生きてる?生きてたら返事。死んでたら化けて出て報告して』……こいつは俺を何だと思ってるんだ。その下は夏奈。『有君、ご無事ですか。もし危険な目に遭っているなら、すぐに居場所を教えてください。今すぐそちらへ向かいます。木刀は常に携行しています』……ドバイまで木刀持ってくる気か。それ、確実に空港で止められるやつだぞ。さらにその下、また葵。『既読つかないんだけど?浮気?浮気なの?』……いや、実習だっつーの。


 スクロールしてもスクロールしても、二人のメールで埋め尽くされた画面を見て、俺は静かにアプリを閉じた。あいつら、俺が帰ってきたと知ったら、間違いなく「話を聞かせろ」と乗り込んでくるだろう。あの二人に、瑠璃を助けた経緯なんて話したら、どうなることか。想像するだけで胃が痛い。さっき瑠璃に胃の穴を心配されたばっかりだってのに。


 ……いや、それだけじゃない。


 もっと嫌な予感がする。ドバイに行く前から、ずっと無視し続けてる、あの茶髪の先輩からの「呼び出し」。あれを、いつまでも放っておけるとは思えない。


 俺の背筋に、じわりと冷たいものが走った。


「……マジ勘弁だな、ホント」


 その予感が、そう遠くない未来に最悪の形で当たることを、この時の俺は、まだ知らずにいた。


連続投稿2日目

いつまで続けられるか…

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