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家事で世界を救う!?  作者: 安鼠
第一章 チーム結成編
14/23

残念な奇術師 ~動物の鳴き声~

――マジシャン――

 人間の錯覚や思い込みを利用し、あたかも「実現不可能なこと」が起きているかのように見せかける芸能を仕事とする者の事を指す言葉である。こうした技能は手先の器用さや、発想力さらに人を惹きつけるような話術が必要となる。そして何より重要となるのが『孤独』に耐えることのできる精神である。秘密を抱えることの多くなるこの職業では人に話すことができないものが存在する。これに耐えきれない者は決して成功することはできないだろう。―――これは、売れない路上パフォーマーの言葉である。





だからこそ、八美アイラは【D】クラスの一員である。





「え?何、アトランティス・ザ・パームってこんな高級ホテルなの?」

 イケメン捜査員から頂いた(・・・)紙に書かれていた場所を、スマホに打ち込み地図を見ながら走ってきた先には、駐車場にモーターショウ張りの高級車が止められていて、明らかに一般人とは思えない黒服のボディーガードらしき人物が何人も徘徊しているのが見て取れた。

「なんかスゲー場違いな気がしてきたぞ?」

 あれかな~大量に刃物を隠し持ったジーンズにシャツの高校生が入り込めるなんてミラクル起こらないんじゃねえかこれ?

「どーすっかな~マジで」

「何をどうするの?」

「え?どーやってこのホテルに忍びこ……え!?」

 無数にある監視カメラの一つを睨みつけながら唸っていると、背後から声をかけられた。この俺が背後を取られるとか同業者かな?と思ったが、振り返ると、つい最近見たようなプラチナブロンドの髪をしたミニスカート姿の女子が見えた。

 って、なんでこんなとこにいるんだよこいつは。


「は~い!あなたのアイドル、アイラちゃんだよ~ここに入りたいの?なんで?」

「八美か、いや何ちょっとこのホテルに用があってな。つうか、お前こそなんでこんなとこにいんだよ?」

「ウチ?家族旅行できたんだ~ほら、あそこにパパもママもいるよ?」

 八美が、指さす方を見るとジャケットを羽織った日本人らしき男性と、モデルかと見間違うような八美と同じプラチナブロンドの髪を三つ編みにして体の前に垂らしている女性が手を振っていた。何なの?あれが両親?めっちゃ優しそうじゃん!俺を家から追い出したどっかの奴らとはえらい違いだぜ!


「そうだ、なあ頼んだら俺も一緒にホテルの中に入れないか?兄弟とか適当なこと言ってさ」

「ん?ウチはいいけど、パパとママに聞いてからね〜」

 そう言うと、八美はテテッとかけていって身振り手振りで説明をしてくれた。頼んでくれるのはものすごくありがたいんだけど、ちゃんと伝わってるよね?なんかお父さんの顔がものすごく険しくなってくんだけど!お母さんもなんか、あらあらって頬に手を当ててんだけど!?

 嫌な予感がヒシヒシと感じられると、八美が両親を引き連れて俺のもとにやってきた。


「君が月見君かな?僕は、八美和久って言うんだよろしくね」

「ワタシは、八美リーシャです。よろしくね月見くん」

 美人の奥さんの微笑みを堪能し、父親である和久さんが差し出した手を握りながら自分も自己紹介をすることにした。決して見かけでは考えられない握力に屈した訳じゃないからね!八美の野郎どんな説明したんだよ!娘につく悪い虫を駆逐する対応だぞこれ!ウチの親父もよくやってたよ、そのせいでウチの前を通る男はまず一礼してくからね!


「っはい!月見です!月見有。アイラさんとは学校で同じ班のメンバーの関係です!決してお父「お父さん?」和久さんのお考えになっている関係ではありません!」

「ほぉ、じゃあどういう関係なら、娘と同じ部屋に泊まりたいなんてことを言い出すんだい?」


「八美ーーー!!!どんな説明しやがったーーーー!!」

「あれー?違ったっけ?」

 大声をあげて叫んでしまった俺は決して悪くないと思う。なんなのこれ?どうして言葉が通じなかったのこのお嬢さん!そりゃあ、ブチ切れる訳だよ!ほら、ご両親も頭にハテナマーク浮かべてるからね!


 その後、俺の必死な説明で八美の両親に納得をしてもらった。

 ……叫んだせいで、周囲の目が痛かったけど僕強い子だから負けないもん!目から汗が出てきたけど。




 八美家族が取っていた部屋に上げて貰い、簡単に現状を説明するとリーシャさんのテンションが滅茶苦茶上がった。なぜ?

「キャー!!スゴイスゴイ!彼女を助けるために単身マフィアに乗り込むなんて!映画みたいー!」

「あの?リーシャさん?理解してます?自分でいうのもなんなんですけど滅茶苦茶危険ですからね?それこそ命がいくつあっても足りないくらい……それにあいつは彼女じゃねーです」

「月見君、リーシャはちょっと乙女が入っているから……すまん」

「ママの気持ちもわかるけどねー、そんなことより瑠璃ちゃんが危険な目に合ってるってのはウチちょーと嫌かな」

 頬に両手を当ててキャーキャー言っているリーシャさんを、俺と、八美、和人さんで見てながら今後の話し合いをすることにした。八美の無表情なんて初めて見たぞ、見た目美少女だから妙な迫力あったし。


「それで、月見君どうするつもりなんだい?」

「あーとりあえず、従業員の制服をかっぱらって乗り込もうと思ってます」

「乗り込むって相手はマフィアでしょ?大丈夫なのツキ君?」

 正直、マフィアとかお腹一杯だけどね。なんでこんなとこ来てまで面倒ごとの処理しなきゃならないんだよ、何?俺呪われてんの?まぁ、今回は急に遭遇するんじゃなくて装備を整える時間があっただけましだな。

 背中に隠し持ったモノ(・・)の重さを改めて認識することで俺は溜息をついた。


「まぁ、何とかなるんじゃね?とりあえず、高坂を無傷で回収することが目的だから戦うなんてことは必要ないしな~」

「月見君?自分が言っていることに違和感を感じないのかい?」

「あーパパ、ツキ君はこないだも怪しい組織とドンパチやってたから、多分頭がおかしいんだよ」

「どーいう意味だ八美コラ!そんな可哀想な人を見る目で俺を見るな!」

 あれ、あんなチンピラ相手でもそんな感じなの?ウチの村じゃ日常茶飯事だったんだけど、むしろ今回の飛行機ですらハイジャックに遭遇したんですけど!?銃なら当たらなきゃ問題ないとか思った俺がおかしいんかな?


「うん、月見君がちょっと普通じゃないのはよくわかったけど、制服の入手は難しいんじゃないかな?このホテルの監視カメラの数は異常だよ?」

「普通じゃないって……ええ、そうなんですよこんなにカメラがあるとこだと、適当な奴の身ぐるみを剥ぐのも難しいですからね」

「うーん、流石ツキ君!言っていることがヒーローとはかけ離れてるね!どっちかって言うと悪者のセリフだよ今の?」

「いいじゃないですか!ダークヒーロー!ワタシ大好きですよ!」

 さっきまでトリップしていた、リーシャさんがいきなり会話に入ってきて、俺たちは思わず飛び上がって驚いた。というか、この人だけテンションが違いすぎて怖いんだけど!なんなの?映画やドラマかなんかと勘違いしてんじゃね?現実のことですよーむしろ俺にとっては日常なんですけど。やべえ、自分で言ってて悲しくなってきた。それにみんな勘違いしてるしな、俺はヒーローなんて柄じゃお世辞にも言えねぇし。


「俺は、そんな綺麗な人間じゃねぇよ……」

「え?」

「いや、なんでもない。それよりどうすれば制服を手に入れられると思う?」

 思わず口から出た呟きに反応した八美を誤魔化し、制服の入手について八美一家に意見を求めた。

「(綺麗な訳ない、俺は自分の知り合い1人を助けるためなら多数を簡単に切り捨てられる人間だ)」

 口に出さないように気を付けながら、昔1人の友人を助けるために三十人以上の人間を再起不能にしたことを思い出した。

 今思い出しても、異常だといえる。







 返り血を浴びて体が真っ赤に染まった状態で、冷静に次の獲物を探そうとしていた自分を……



 









 そして、そんなことをしてなお後悔してない自分の心が。









 




「…キ……ツ…君、ツキ君!!」

「うぉっ!どうした八美?」

「どうしたはこっちのセリフだよ!いきなり上の空になって!何度も呼んだんだよ!」

「悪い、ちっと考え事しててさ。あれだよな~更衣室に忍び込めさえすればいいんだけど鍵がな~」

 大体なんでこのホテルは、こんなに厳重警備体制なんだよ!更衣室に入ろうとして、鍵壊そうとしてみろよ速攻捕まるからな!かといって鍵を拝借するのだって、結局その辺歩いてる従業員を襲撃するしかないしどーすんだよまったく。

 頭を抱えていると、隣からのんきな声が聞こえた。


「そんなん内側から開ければいいじゃん?」

「はい?俺は魔法使いじゃねぇんだけど?」

「?だからこの子にお願いしよ?ねえチュー太郎?」

 そういうと、八美はどこからともなく赤い蝶ネクタイを付けた真っ白いネズミを手に乗せていた。というか、二足で立って前足でネクタイ直してんだけど?ネズミってそんな器用なの?


「こら、アイラなんで連れてきちゃったんだ?というかどうやって連れてきたんだい?」

「え~だってこの子たち(・・)を連れてこないなんて可哀想じゃん!パパ、マジシャンがタネを明かしたらおしまいでしょ?」

「ねえアイラ?今たちって言った?チューちゃん以外にも連れてきたの?」

「うん!ハト三郎も、ウサ吉もコブラんもみんな連れてきた!」

「うお!?なんじゃこりゃー!」

 八美が名前を呼ぶたびに、シルクハットを被った白いハトや、ベストを着た白兎、尻尾にリボンを巻いた2メートルはある白いコブラがどこからともなく、集まってきた。いや、ハトやウサギはまだしも、毒蛇のコブラは不味いだろ!間違いなく、密輸入だよこれ普通なら絶対税関で止められるからね!


「あらあら、みんなアイラが大好きだものね~」

「まあ、連れてきてしまったものは仕方ない、ちゃんとバレない様にするんだぞ?」

「うん!パパ、ママ。ちゃんと、目を掻い潜るようにするよ!」

「お前らバカだろ!!」

 なんなのこいつら、頭おかしいんじゃねえの?平然と犯罪を肯定したよ!?何がバレない様にするんだぞだよ、まず叱れよ!コブラなんて逃げてみろとんでもない騒ぎになること必至だからな!

 後、大声上げたことはすぐにでも謝るからみんなびっくりした目で見てる暇あったら早々に、胴体に巻き付いてきたコブラをどうにかしてくれません?マジで!


「あーびっくりした。コブラん?その人は悪い人じゃないから噛んじゃだめだよ?」

「いや~すまない、何せ国内で旅行する時も常に連れてきていたものだから感覚がマヒしていてね。確かに初めて見る人は驚くのも仕方ないな」

「けどねーウチのアイラちゃんは、ワタシたちもわからないようにあの子たちを連れてくるから多分誰にもバレないと思うよ?」

「世界的に有名なマジシャンがわからないってんならそれは確かに凄いっすけど、逃げたらどーすんすか」


「あっ、それは大丈夫!この子たちにはGPS埋め込んであるから!」

「「「……え?」」」

 呆気からんと言い張る、八美の発言に空気が凍った。というか、お前に足元の動物たちも信じられないことを聞いたみたいな顔してお前のとこ見てるけど?いや、実際はネズミや蛇の表情なんてわかんないけど多分そう思ってると思うぞ?



「……さて、気を取り直して行こうか!」

「「そうだね(ね)」」

「あれ?なんでウチを除け者にしてるの?」

 なんか、後ろで騒いでいる人でなしがいるが気にしないことにしよう。動物たちもこっちにいるから問題はないだろう。

「えーと、チュー太郎だっけ?更衣室の鍵を開けてもらいたいんだけど頼めるか?」

「へーん、チュー太郎はウチの言うこと以外聞かな「チュー」いもんってあれー!?」

 俺の肩に乗った、チュー太郎にダメもとで話しかけると後ろ足で器用に立つと、前足を胸?の辺りに当て元気の良い返事をした。

 何こいつ超賢いんだけど?ペットは飼い主に似るってのは嘘だな。八美?あいつは部屋に隅で膝抱えてるけどどうしたんだろな?


「よし、じゃあチュー太郎はそこの通気口から行ってくれ」

「チュー」

 俺は、通気口の蓋を忍び込ましたナイフでこじ開けチュー太郎を送り出した。あいつ敬礼までしてったんだけど元は人間とかじゃねぇよな?

 さらに、スマホを操作して班を結成したときに撮った写真を表示させるとそれをハト三郎に見せ指示を出した。自分で言ってて不思議に思うんだけどこいつら万能すぎね?

「ハト三郎、お前にはこいつを外から探して欲しいんだけど頼めるか?」

「クルッポー!」

 羽を伸ばしてお辞儀をし、高々に鳴くとベランダから外へと飛び立った。ハトってあんな綺麗なお辞儀ができるんだなー

 自分の常識がガラガラと音を立てて崩れるのを感じながら、こちらを見ているコブラんの方を見た。こいつまで俺がしたいことわかってんの?どんだけ頭いいんだよ?

「……頼んでいいか?」

「シャーッシャシャ」

 いつだか、七尾から貰った注射器をコブラんの口に持って行くと、牙から毒を出して注射器の中に溜めてくれた。もはや何も言うまい……

 後は、血栓さえあればいいんだけど、八美に聞くか?

「キュキュー」

「……ありがとな、ウサ吉」

 ウサ吉が引っ張って持ってきてくれましたよ、血栓が入ったケースをさ。本当によくできた子たち!八美?息してる?


「じゃあ、俺は行くんでハト三郎が戻ってきたら何階かだけ連絡してもらえますか?」

 俺は、装備を確認して呆気に取られている、八美夫妻にいうとメモ用紙に自分の電話番号を書いてそういった。八美?今は、ウサ吉とコブラんに慰めて貰ってるよ。俺は逆効果だと思うけどな……

「……驚いたよ月見君。君は、アイラのペットに対して驚かないんだね」

「ワタシたちでも、あの子たちのスペックにはビックリさせられるのにそれを使いこなすなんて君はナニモノなの?」

 二人の疑問に対して俺は、部屋のドアを開けて振り返るとちょっと考えてしっくり来た口上を伝えた。



「月見有、ただの『主夫』っすよ」



 


―――――この口上がすぐに使われなくなるなんてことは、このときは思いもよらなかった。




生存報告がてら投稿しました。

完結までは頑張ります(切望)!


ここまで読んでいただきありがとうございました。



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