毒舌の家政婦 ~フラグ建築~
――メイド――
主人が留守の間の家を守ったり、様々な家事をこなす存在である。そのため、この職業に就く者たちは賃金を得るために家事や雑務を行う。決して自身の都合は考えずに職務を全うする。これが理想的なメイドとしての資質ではないだろうか。―――これは、昔世話になった元皇室家政婦の言葉である。
だからこそ、香坂瑠璃は【D】クラスの一員である。
『はい?ちょっとよくわからなかったからもう一度言って貰える?』
俺は自室で日課となっている香苗さんと電話で話していた。
「だからさ、この間他国のスパイを捕まえたから口止め料としてかなりの額が振り込まれてその金でプレゼント買ったから、そろそろそっちに着くころだよって」
『ツッコミどころが満載なんだけど⁉スパイ捕まえたってあんたその学校で何をしてるのよ!こっちにいた時より酷くなって……ないか、同じくらいだけども!危ないことはしちゃダメって言ったでしょ!』
「いや、俺だって好きでこんなことしてる訳じゃないんだけど……」
『言い訳しない!あんまり危ない事ばっかりしてると来月の参観日に行くからね!』
なんで俺こんなに怒られてんだろ……あれもこれも社会が悪い!ってあれ?なんかおかしいこと言ってなかったか?
「今、変な事言いませんでした香苗さん?」
『もう決めました!来月の参観日に私が行きます!美恵にもどんな様子か直に聞きたいしね』
「いやいやいや!高校の参観日とか普通来るもんじゃなくね⁉ってか平日だし、そっちだって仕事あるだろ?それに、なんで香苗さんがそこまでするんだよ!つうか参観日あるって俺言ったっけ?」
なんなの?俺ってそんなに信用ないわけ。それにこういうのって来るとしたら親とかじゃないの?いや、親が来る方が嫌だけどさ。
『そんなの、一日くらいやらなくても支障はないわよ。何せ、問題児がいなくなったんですからね。それと参観日の事は美恵から連絡貰ったのよ、どうせあなたの事だからそういうのは言わないと思って連絡事項があったら私に言うように言ってあるからね』
「見透かされてる訳ね……というか、いくら葵の野郎が問題児だからってそういうのはよくないぞ?それに一人で書類の整理できてんのかよ?」
『失礼ね!私だってそれくらいできるわよ!後問題児はあなたですからね!もうお休み!』
「お休みって……俺かよ!?あ、切れたし……」
え?マジで俺なの?そりゃ確かに面倒事も経験してきたけどあれって葵のせいだよね?俺はいけなくないと思うんですけど!?
俺は、過去の面倒事を指折り数えながら電話が切れた液晶を見つめた。すると、バイブと共に【若月美恵】の文字が表示された。
「はい、月見です」
『あ、月見君?こんな時間にゴメンね~新しい実習が決まったから連絡したんだよ?』
「もうですか?聞いてたのよりもスパン早くないですか?」
流石に前回のから、一週間も間があいていないとこの俺でも不安になるんだけど……これって面倒事の気がしてヤバい!
『いや~月見君達【D】班は、その~なんていうか去年のポイントが低かったり、テストの成績の問題があって実習をたくさんやらないと……ね?』
「待って!やらないとどうなるんすか!?ねぇ!ちょっと!」
『それじゃあ詳しいことは明日ね!おやすみなさい!』
「おい!待て!っクソ切りやがったあのアマ!」
楓、お兄ちゃんこの学校を五体満足で卒業できるか不安です。
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実習の説明ということで、D班の全員は会議室に集まって若月先生の話を聞いていた。
「すみません、若月先生よく聞き取れなかったのでもう一度お願いできますか?俺と誰がペアで実習行くんですかね?」
「えっと、実習場所が五反田財閥の跡取り息子の五反田幸平さんのお屋敷で、募集が『家事』に従事できる者二人ということでしたので、月見君と香坂さんの二人にお願いしたいんですけど?」
「マジですか……先生それはお「お断りしますわ、転校生さんのしょぼい腕では足手まといです」ことわりだ!ボケコラ誰が足手まといだってメイド女!」
こっちが下手に出てれば付け上がりやがって!ここはガツンと言うしかないな。
「おい、てめえこれでも俺は『家事』の技能でこの学校に入ってんだから、『家政婦』でしかないお前に家事で負けるわけないだろ?むしろお前のが足手まといになるんじゃね?」
「あらあら、転校生さんはなにもわかっていらっしゃらないようですね」
「あ?なんだって?」
香坂はどこからか出したのかティーセットで紅茶を入れながらドヤ顔でこちらを見てきた。どうでもいいんだけど、俺とコイツ以外空気になってない?大丈夫?
「あら、気が付かないんですか?貴方は一般家庭とお屋敷が同じだと本気で思ってらっしゃるの?それはまたお気楽な人ね」
「んなこた知ってるわ!だてにバイトでマフィアの屋敷に放り込まれてねぇよ!銃の整備をしっかりやればいいんだろ!?」
「「「「「……え?」」」」」
「……貴方、やっぱりいらないわ」
「あれ!?なんで皆そんな呆れた表情してるんだよ?おい香坂なんでお前そんな可哀そうな奴を見る目で俺を見てんだよ!?しかもなんで急に紅茶入れてくれんの!?怖いんですけど!!」
ねえ、俺がおかしいの?お屋敷でやることって血糊のついたカーペットの染み抜きとか、放り込まれる爆弾の解除とかじゃないの!?
「いや~ユッキーはこの間のことからただ者じゃないと思ってたけどまさか俺っち以上に危険な橋を渡ってたとは思わなかったよ……」
「いやいや!スパイより危険な生活ってなんだよ頼む海斗、嘘だと言ってくれよ!」
頭を掻きながら、慈愛の目でこちらを見てくる海斗に俺はすがりつくよう問いかけた。
「ゴメンなユッキー俺って嘘はつけないんだ」
「テメェ元スパイだろ!?それ自体が嘘じゃねえか!」
「あらあら、いつの間に金髪と仲良くなったんですか、転校生さん。イチャつくならどうぞ自室でわたくし薔薇には興味ありませんので」
うわ~まるでゴミを見る目で蔑まれてんだけど、俺にもそんな趣味はないんですがきっと聞いてくれねえんだろな~
「あの~実はですね、もう申し込んじゃってるんですよ?」
「「え?」」
ウチの担任は何をぬかしてるんだ?ほら、香坂に至っては紅茶注ぎっぱなしで零れてるしさ。
あ?他の奴ら?あいつらなら全力で班替えの嘆願書書いてるよ……絶対に受理させないけどな!
「それで、申し訳ないんだけど今から空港行ってね?」
「「はい?」」
「あっ荷物は、それぞれ頼んでおいたからそろそろ着くと思うんだけど……「持ってきました~」ほら?」
どうしよう、状況が全然掴めないんだけど!?香坂の唖然とした顔なんて初めて見たぞ俺。というか、今の声すごく聞き覚えがあるんだけど!?
「失礼しまーす、有荷物まとめてあげたんだから感謝なさい!」
「げ!葵、お前勝ってに俺の部屋入ったのかよ!なんも弄ってねえだろうな!」
目の前にドスンとボストンバックを視界に入れながら、恐らく手遅れであろうことを問いかけた。まぁこいつが俺の部屋に入って何もしないなんてことはありえないからな……
「あら、失礼ね!本棚の下に落ちていた本もしっかり並べておいてあげたのに~」
「……え?」
「なんだっけ~あ、そうそう『女教師とのイケナイ遊び』だっけ?」
「もう殺せよ!なに俺のトップシークレットをばらしてくれちゃってのマジでさ!」
「不潔」
「あ~有君ってやっぱり……」
膝をついて項垂れている俺を、香坂からは汚物を見るような目で見られ、若月先生は顔を赤らめ何かを呟いていた。葵?大爆笑してましたけど何か!
「あ~久しぶりにこんなに笑ったよ~サンキューね有!」
若月先生は、会議があるとか言って無理やり封筒を俺に渡して走り去っていった。あのアマ、逃げやがったぞ!
「人をだしにして笑いやがって……お前碌な死に方しねえぞ」
「まあまあ、そんなに怒らないの。ところでそちらのメイドさんは紹介してもらえるのかな?」
「ああ、こいつはこ「わたくしは、香坂瑠璃と申します。草凪葵様」だよ……ってあれ?」
なんなの、コイツは俺の会話に割り込むことを生業とでもしてるんすかね!つうか俺、葵のこと教えたっけ?
「あれ?瑠璃ちゃん私、自己紹介したっけ?それとも有に教えて貰った?」
「何を仰いますか、草凪葵様。編入生ながら先日行われた国際会議の場で十ヵ国語以上の同時通訳を成功させた実績今や知らない者はいません」
え?そうなの俺知らなかったんだけど?香坂さん、知らない人もいますよ?
「ありゃ~あんなん、大したことじゃなかったんだけどな~そういえばそこでぶっ倒れてるのはなんかやった?」
誰のせいでこうなってるか教えてやろうかゴラ!なんて言えないけどね!言える奴がいるなら頼むよマジで!
「そうですね、先日の実習で他国のスパイを何人か捕えたとか……」
「……な~る、どおりで最近顔を見せないと思った。やっぱり問題起こすのは有だったってことだもんね」
「そ、そんなことないんでない?」
ヤダ~なんかキョドっちゃったんだけど、あれだね、夏奈にばれたら酷い目に遭うな間違えなく。ハァ、だから言わないようにしてたのにさ。
「あ、そろそろあたしは用があるから行くね!有!帰ってきたら、話聞かせてね~そんじゃ!瑠璃ちゃんもまたね~」
「へいへい」
「それでは、草凪様」
背中を向けて手を振り去る葵に対して、俺はおざなりな返事だが香坂は、なんとまあ御丁寧な事でしょう身体の前で両手を組み、綺麗な四五度の角度で頭を下げていた。オイ誰だよコイツ!俺に対するのと差ありすぎじゃね?俺コイツに見送られたことすらないんだけど?同じ編入生ですよ香坂さん⁉
「瑠璃ちゃ~ん、荷物まとめてきたよ~」
のんきな声と共に、トランクケースを転がす音が聞こえてきた。
「あら、アイラさんありがとうございます。……よけいな事はしてませんよね?」
「やだな〜そんなことするわけないじゃん!ちゃんと下着も勝負用を入れといたからさ!っひ!」
流石だな八美、しっかり余計な事してるよ……勝負用って。香坂のブチ切れも初めて見たけどあいつってキレたら能面みたいに表情が無くなるんだな。マジでヤバイ!なんで女共はこんなにも怖いの?もうこれからは、外交官はみんな女性でいいんじゃないかな、きっと強引にこっちの要求飲ませられる気がするよ……
「さて編入生さん、大変遺憾ですがこうなったら行くしかないと思われるので、そろそろ出発しますよ」
「遺憾なのはこっちだよ……まったく、つうか空港行くっていったけどどこに行くんだ?」
俺は、先生に強引に掴まされた封筒をあけてチケットを確認した。あれ?俺の目がおかしいのか?変な文字が見えるんだけど!?
「どうしました?字が読めないんですか?やはりその眼はビー玉でしたか……」
「うるせえ!見てみろよ!俺らの行先を!」
俺は、チケットを香坂の目の前に突出した。これでも俺の目がおかしいってか?俺じゃなくてこの学校がおかしいんじゃねえかな?
「はい?……え?」
チケットに書かれていた行先は
世界有数の金融センター……
『ドバイ』
あれかな?五反田グループってそんなに稼いでたんだーしかも海外って危険じゃないですか~あれ?俺死んだんじゃね?
そうじゃなくても、なんかミスったら財力に物をいわせて社会から抹消されそうな気しかしないんですけど?大丈夫だよね?マフィアとかの抗争に巻き込まれたり、テロリストと関わりあいになったり、密輸グループと喧嘩したりとか、お決まりのパターンにはならないよね?やっぱり日頃の行いが良い俺はこういう時安全な旅が保障されてるよな、神様!マジでお願い!
そうやって、天に向かって祈ってると香坂が問いかけてきた。待てよ今忙しいんだからさ!
「編入生さん、ホンッッットに余計なことしないでくださいね!」
「……俺はしないよ?ホントだよ?」
あはは~香坂がこんな大声出すなんて初めて知ったな~
……たぶん何かは絶対起きるよなこれって、フラグバッキバキに立ってるしさ。
せめて、命の危機になるようなことじゃない事を祈りましょう?
ここまで読んでいただきありがとうございました。
遅くなってしまい申し訳ありません……




